IS使いの剣舞   作:剣舞士

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えぇ、IS使いの剣舞……私、去年の9月以来、全く書いていませんでした!
申し訳ない。・°°・(>_<)・°°・。
久々過ぎてキャラぶれてないよね?
なんとか書き終わった……





第30話 電光豪嵐

翌日、定時通りに開会式が始まり、決戦の時を迎えた。

全学年合同と言う異例の変更があったが、それでも順調に事は進んでいった。

そして、第一アリーナでは、ヴェルサリアとサラ、エリスと簪がそれぞれスタンバイしている。

第ニアリーナの方では、箒とラウラ、冬ニとシャルルがスタンバイしている。

一回戦から波乱を呼びそうな組み合わせだ。俺は保健医の先生から無理な運動は避けると言う条件付きで、退室を許可されたので、今は第一アリーナの方でエリス達の試合を見る事にした。

 

 

 

(エリス達の試合が気になって見にきたが、冬ニ達は大丈夫だろうか…。冬ニは『任せて!』と言っていたが………。まぁ、あっちにはシャルルもいるんだし、向こうはあいつらに任せてみるか…)

 

 

 

 

そして、一夏の心配をよそにタッグマッチトーナメントの第一回戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 

 

 

 

〜第一アリーナ〜

 

 

それぞれのISを展開し、エリスとヴェルサリアは向かい合う。

 

 

「エリス、お前はもう少し賢い奴だと思っていたのだがな…」

 

「私は……私の信じる騎士道に従い、あなたを倒す。それだけです」

 

「フンッ! ではその騎士道とやら、今日ここで私が粉砕してやる…ッ!」

 

 

 

 

〜第二アリーナ〜

 

 

こちらでも冬ニとラウラによる睨みあいが続いていた。

 

 

「まさか一回戦から貴様と当たるとはな…待つ手間が省けたと言うものだ…」

 

「…………そうだね。僕もそう思っていたよ…」

 

 

 

 

カウントダウンが始まり、緊張感が全体を覆う。

 

 

 

3……2……1……Battle Start!!!!

 

 

 

「行きます!! 義姉上ぇ!!」

 

「来いッ! エリス!」

 

「「叩きのめすッ!!!!」」

 

 

 

開始と同時に空中へと飛び上がるヴェルサリアと駆け出すエリス。そして、同時に同じ言葉で啖呵を切る冬ニとラウラ。二つのアリーナから途轍もない歓声と熱狂が伝わってくる。

 

 

 

「うおおぉぉぉぉぁ!!!!!!」

 

「ふんっ!!!」

 

 

 

開始直後、冬ニはブースターを吹かせ、一気にラウラに斬りかかるが、シュバルツァ・レーゲンのAICが作り出す、停止結界の前に雪片ごと白式を停められてしまう。

 

 

 

「ぐっ‼」

 

「ふんっ! 開始直後の先制攻撃……絵に書いた様な愚直だな…至極読みやすい」

 

「そりゃあどうも。以心伝心で何よりだよ…」

 

 

 

 

ラウラの挑発に、冬ニも挑発で返す。

 

 

 

「ふんっ、やはり敵ではないな。貴様ごとき、私とシュバルツァ・レーゲンの前では有象無象に過ぎん! 消えろ!!!」

 

 

 

ガキャン!!!

 

 

「くっ…!!」

 

 

 

AICからのレールキャノンでの砲撃。素早いラウラの戦闘に冬ニは苦戦を強いられ、今まさにその砲口が冬ニに向けられる。

 

 

 

「冬ニ!」

 

「チィッ‼」

 

 

だが、冬ニにその砲弾が当たる事はなかった。後方からシャルルがサブマシンガンで援護し、ラウラは一旦距離を置くため、AICを解除し、冬ニから離れる。

シャルルはそれを逃さないとばかりに、常にラウラの動きを読み、マシンガンとショットガンのダブルでラウラを追い詰める。が…。

 

 

 

「私を忘れてもらっては困るなぁ!!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 

突如、箒が前に出て打鉄の装甲で弾を受け、標準装備である近接格闘用ブレード『葵』でシャルルを斬りつける。

 

 

「はあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「くッ!」

 

「シャルル!」

 

 

 

近接格闘においては、箒も引けはとらない。連続の斬りつけをシャルルはなんとか凌いで、冬ニとバトンタッチする。

 

 

 

「だったら、僕の事も忘れちゃダメだよ…箒!!!」

 

「こいッ! 冬ニ!」

 

 

 

雪片と葵が重なり合い、鋼独特の金属が軋む様な音が鳴る。

だがそこで、箒は気づいた。不敵な笑みを浮かべる冬ニの顔と、その後ろからオレンジの機影が迫っている事を…。

 

 

 

「もらったよ!!!」

 

「しまっーー」

 

 

 

シャルルの攻撃が箒に命中するかに思えたその時、後方から飛んでくるワイヤーブレードが打鉄の脚に絡みつき、後方へと引っ張る。

 

 

 

「なッ! 何もするッ!」

 

「………………」

 

 

 

そのまま後方へ投げ飛ばされた箒は、地面に叩きつけられる。その箒を投げ飛ばしたのは、他でもないラウラだった。

 

ラウラの行動にアリーナで観戦していた生徒達からは若干非難の声があがっていたが、ラウラは気にする事なく、ワイヤーブレードでシャルルを牽制しつつ、プラズマ手刀で冬ニと斬り合う。

 

 

 

「くうッ……、はあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「おっと! そうはさせないよ!」

 

 

 

 

態勢を立て直し、冬ニとラウラの間に斬り込もうとする箒。それを阻止する為に、間に入ってショットガン二丁で進路を阻むシャルル。

 

 

 

「冬ニが相手じゃなくてごめんね!」

 

「なッ!? 馬鹿にするな!!!」

 

 

 

防戦一方になった箒。こうなってしまっては、後はシャルルによる一方的な制圧攻撃だ。

箒の上段からの斬撃をシャルルは小型ブレードで受け、左のショットガンをゼロ距離で箒の腹部に放つ。

 

 

 

「これでお終い!」

 

「くッ! あッ……」

 

 

 

二発もゼロ距離で受けてしまい、絶対防御が発動し、打鉄はそのまま動かなくなる。その時点で、箒はリタイアを余儀なくされた。

 

 

 

「くッ! ここまでか……」

 

 

 

箒を倒したシャルルは、そのまま冬ニの元へと行く。

 

 

 

「お待たせ!」

 

「シャルル、箒は?」

 

「先にリタイアさせてもらったよ」

 

「流石だね…ッ! それじゃあこっちもとっとと終わらせますか!」

 

 

 

完全なニ対一の構図になってしまった。しかし、ラウラは依然、堂々と立ち、二人を見下す様に見る。

 

 

 

「ふんっ! 最初からあいつなどカウントに入れてはいなかった……。なんなら二人で来るがいい。雑魚とアンティーク……愚物が一人増えようが、私が勝つ事に変わりわないッ!!!」

 

「お望み通り……二人でぶっ潰してやるよッ! 行くよ! シャルル!」

 

「OK、冬ニ!」

 

 

 

ここから先は、専用機持ち同士の戦いとなり、バトルの激しさはさらに加速していく。

 

 

 

 

 

〜第一アリーナ〜

 

 

 

試合開始直後、地上から飛び立ち、空中から容赦無く砲撃を撃ち続けるヴェルサリア。エリスと簪はそれをうまいこと躱し続け、前衛をエリスが、後方支援を簪が行い、試合は拮抗していた。

 

 

 

「エリス!!」

 

「わかっている!」

 

 

 

開始直後、ヴェルサリアは上空に上がり、相方のサラはヴェルサリアに言われ、アリーナの隅で待機していた。

 

 

「サラ先輩は…動いてないみたい……。一人で充分って事?」

 

「だが、それを証明出来るほどの戦闘能力だ…。気をつけろ簪!」

 

「うん!」

 

 

 

未だ、空中に漂っているだけのサイレント・フォートレス。正に “静寂の要塞” と言ったところだろうか。

エリスの斬撃、簪の遠距離攻撃の応酬を受けてもなお、落ちる気配はない。むしろ、攻撃を続けているこちらが切迫してきていた。

 

 

 

「いっけぇぇぇッ‼ 山嵐ッ‼」

 

 

 

 

マルチロックオン・システムによって射出、誘導された弾道ミサイルが、サイレント・フォートレスに襲いかかるが、

 

 

 

「ぬるいッ‼」

 

 

 

背部からせり出した巨大な二門のキャノン砲が、その全てのミサイルを落としてしまう。

 

 

 

「くっ! これでもダメならーーッ‼ 春雷ッ!」

 

「私も続くぞ、狂えッ‼ 凶ッ風よ!」

 

 

 

背後に回った簪は二門の荷電粒子砲〈春雷〉を放ち、正面からはエリスの〈レイ・ホーク〉によって巻き起こった風の刃が迫りくる。

 

 

 

「はぁ……。何度も言わせるな。貴様らの攻撃はぬる過ぎるのだッ‼ はあぁぁぁぁッ‼」

 

 

 

左手に盾を展開し、エリスの刃を防ぎ、右手に展開したキャノン砲でビーム砲を放ち、簪の荷電粒子砲を相殺する。

 

 

 

「くそっ! これでもダメなのかッ!?」

 

「………必ず弱点は、ある! このまま波状攻撃を仕掛けるッ‼」

 

「あぁ、行くぞッ‼」

 

 

 

 

 

 

 

〜第一アリーナ観客席〜

 

 

 

 

「厳しいな……」

 

 

 

エリスと簪の試合を見ていた一夏が、ふとそう呟く。

 

 

 

「厳しいって……エリスさんたち?」

 

「あぁ、ヴェルサリア・イーヴァ・ファーレンガルト……もう一人の学園最強……その二つ名に恥じない強さだ……!」

 

 

 

一夏と言葉に反応した静寐が問いかける。

今もなお有効打を与えられていないこの状況で、エリスたちのエネルギーと士気はどんどん下がって行っている。

それに比べ、ヴェルサリアは未だ衰えを見せない。空中に浮かぶ要塞には、まだ戦えるだけの戦力を充分に持っていた。

 

 

 

(ヴェルサリア……昔の彼女も充分に強かった……。だが、たった二年でここまで差がつくものなのか? エネルギーの消費が激しい戦い方をしているって言うのに、先にエリスたちの方が消耗している……)

 

 

 

 

〜アリーナ中央〜

 

 

「ふん! どうしたエリス、貴様の吠えた騎士の理想とやらはその程度か?」

 

「くっ!」

 

 

 

未だに落ちる気配のないヴェルサリアの猛攻に、凌ぐのが精一杯だった。

 

 

 

 

「やはり、義姉上に勝つのは無理なのか……?」

 

「諦めちゃ……だめ!」

 

「簪?!」

 

「一夏は私に諦めないことの大切さを、弱さと向き合う事の大切さを教えてくれた! エリス、あなたは……あなたは自分の信念を諦めきれる?!」

 

「……っ‼︎」

 

 

 

簪は姉の刀奈とあまりいい関係を持っていなかった。優秀な上に、それを比較されることに、簪は逃げていた。

そして、エリスもまた、姉のヴェルサリアに憧れていた。同じ様な立派な騎士になるとまで誓った。

だが、ヴェルサリアは変わってしまい、何が正しいのかなんてわからなくなっていた。

しかし、今はもう違う。

 

 

 

「そうだな……。一夏が示してくれた、私たちの信念の道標……彼の為にも、自分の信念の為にも、絶対に負けられないーーー!!!」

 

「うん! 必ず……勝つ!」

 

 

 

 

二人の中で、一夏の存在はとても大きなものになっていた。

観客席に佇む一夏の姿を捉え、再び決心する。

 

 

 

「何としても義姉上を倒す! 行くぞ、簪!」

 

「うん! まずはあの人を墜とす!」

 

 

 

二人は一気に散開し、ヴェルサリアを包囲する。

 

 

 

「いくら足掻こうが今更遅い!」

 

「いや、まだ!」

 

 

 

簪とヴェルサリアが対峙し、砲撃戦が繰り広げられる。

荷電粒子砲に特大キャノン砲、弾道ミサイルの撃ち合い、お互いに一歩も引かない。

 

 

 

「ほう? 私に真っ向から挑むか……愚かな」

 

「そんなのはわかってる……だから、“二人” で押し切る!」

 

 

 

宣言と同時に、一旦距離を取り、山嵐を連続砲撃。

32発の弾道ミサイルがヴェルサリアをむかって飛んでいく。

 

 

 

「無駄だ!」

 

 

 

それを撃ち落とすべく、ヴェルサリアも砲撃する。ミサイルの軌道は読めている。

ならば、全てキャノン砲で撃ち落とせば問題無かった……。

が、放たれた砲弾は、ミサイルの横を通過していった。

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

驚愕するヴェルサリア。

よく見ると、他のミサイルにも砲撃が当たっていない。いや、よく見るとミサイルの方が砲撃を躱しているように見えた。

そして、砲撃を躱した32発の弾道ミサイル全てがサイレント・フォートレスに着弾し、大爆破を起こす。

 

 

 

「くう!? これは、一体!?」

 

一体何が起こったのか、目を点にしていると、ヴェルサリアの体をそよ風が緩やかに流れていった。

 

 

 

(風……? っ!? まさかーーー!)

 

 

 

状況を悟ったヴェルサリアは、すぐさま視線を簪から離し、妹の方を見る。

 

 

 

「私の専用機は、風を操る……。いくら軌道を読み、迎撃したところで、直前に軌道を変えられては、あなたも打つ手がないでしょう」

 

「エリス……! 貴様ぁぁぁ!!!」

 

 

激情し、より一層砲撃を強めるヴェルサリア。簪とエリスは一旦距離を置き、回避する。

 

 

 

「凶ッ風よ! 狂え!」

 

「春雷!」

 

 

 

回避しきれない攻撃は、それぞれで撃ち落とし、体勢を整える。

 

 

 

「よし! 手応えはあった。次で墜とすぞ!」

 

「うん! マルチロックオン・システム、REBOOT!」

 

 

 

システムを再起動し、照準をサイレント・フォートレス一点に集中する。

 

 

 

「行っけぇぇぇーーー!!! 山嵐ッ!!!!」

 

「風よ‼︎」

 

 

 

 

 

打鉄弐式から放たれる先ほどよりも多い40発の弾道ミサイル。

そして、そのミサイルを不規則に誘導する強烈な烈風。

 

 

 

「舐めるなぁぁぁっ!!!」

 

 

 

ヴェルサリアも負けじと応戦するも、風によって不規則に動く弾道ミサイルを正確に迎撃することが出来ず、多少は撃ち落としたものの、それでも大半は爆撃を受ける。

 

 

 

「おのれぇ……ッ! 小賢しい真似を!!!」

 

「まだまだ行くよーーー‼︎」

 

「っ!?」

 

「義姉上! 覚悟!」

 

 

 

 

いつの間にか間合いを詰めていた簪とエリス。

爆煙が上がっている隙に、イグニッション・ブーストで近づいていたのだ。

 

 

 

「春雷!」

「凶ッ風よ!」

 

 

 

簪が二門の荷電粒子砲《春雷》を発射し、エリスが《レイ・ホーク》を振り抜く。

放たれた荷電粒子砲を烈風が取り巻く様に絡みつく。そして、それは、大きな砲撃へと変わる。

 

 

 

「「《電光豪嵐(ライトニング・ストーム)》ーーー!!!」」

 

 

 

 

混ざりあった二つの技は、勢いそのままヴェルサリアを捉え、ヴェルサリアのいた地点を中心に、大爆発を起こし、これによって発生した暴風、爆炎、爆発音で、第一アリーナを、観客たち全員を震撼させた。

 

 

 

 

「す、すごい……っ! あんな合わせ技があったなんて……」

 

「これじゃあ、さすがのヴェルサリアさんも……」

 

「うん……今の一撃は効いたと思うよ」

 

 

 

観客席の誰もが口々にそう言った。

そして、一夏達も……。

 

 

 

「す、すごいね! 二人とも!」

 

「あぁ、息ぴったりだったぜ……。まさか、荷電粒子砲と風の複合技を使ってくるなんて……」

 

 

静寐と一夏は皆と同様に驚嘆し、一夏の隣で座って見ていたエストもまた、見事なコンビプレーに関心しているようだった。

そして、爆炎から大きな塊のようなものが落ちていき、地上に激突する。

 

 

 

「ヴェルサリア!」

 

 

 

そう、今しがたエリスと簪のコンビ技で落とされたヴェルサリアだ。

流石に心配になったのか、タッグを組んでいるサラが、落とされたヴェルサリアの元へと向かう。

 

 

 

「囀るな……。この程度で私が負けるはずないだろう……」

 

「「「ッ⁉︎⁉︎」」」

 

 

 

 

近づくサラに対して、冷たくあしらうヴェルサリアの声が、サラだけでなく、エリスたちの耳にも届く。

 

 

 

 

「ヴェルサリア……あなた……」

 

「義姉上……無傷だと……っ!?」

 

「そんなはず……ない……! あれだけの攻撃を至近距離から食らって、無事なはずない!」

 

「あぁ、確かにな。だから装甲は一部ボロボロになってしまった……。私にここまで傷つけられたのは、貴様らが初めてかもしれんな……。

いや、一人いたか……。私を打ち負かした者が……」

 

 

 

 

よく見ると、防御に使ったのであろう装甲は、見るも無惨に破壊されていた。

所々も、破壊できてはいないものの多少の傷は付けられていたみたいだが、こんな傷はヴェルサリアにとって、あって無いようなものだ。

 

 

 

「私を地上に落としたことは褒めてやろう……。だが、一つだけ忠告しておいてやるーーー!」

 

 

 

 

あいも変わらず、その余裕の笑みを崩さないままエリスたちを睨みつけるヴェルサリア。

先ほどよりも、集中している様な眼をしていた。

そして、宣言する。

 

 

 

「私は “地上に降りた方が強いぞ” !!!」

 

「「ーーーッ!!!」」

 

 

 

脚を固定し、重火器を展開。

照準をエリスたちに定める。先ほどのコンビプレーを見て、もう一切の油断はしないと決めた。

 

 

 

「さぁ、行くぞ……。私の “本気” に貴様らはどこまで耐えられる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜第二アリーナ〜

 

 

 

「シャルルが作ってくれたチャンス……! だったら僕はーーー!!!」

 

 

冬ニの機体、白式が黄金に輝きはじめる。

唯一無二の白式の能力。ワンオフ・アビリティー《零落白夜》だ。

 

 

 

「ほう……その斬れ味の鋭さは、たった一撃でシールドエネルギーを消滅させると聞いたが……それならば、当たらなければいいだけの話だ」

 

 

 

ラウラはイグニッション・ブーストで肉薄し、冬ニをAICで拘束するべく攻撃を仕掛ける。

冬ニもそれを急停止・転身・急加速を駆使し、なんとか回避していく。

 

 

 

「ええい! ちょこまかと!」

 

「捕まるわけにはいかないからね!」

 

「冬ニ!」

 

 

 

シャルルがラピッド・スイッチで援護し、牽制する。

そして、ラウラもまた、距離を取り、ワイヤーブレードで応戦する。

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ふん! 無駄だ!」

 

 

雪片を振り上げる冬ニ。

だが、その自慢の刃も停止結界の前では歯が立たない。

冬ニの動きは、完全にラウラによって止められてしまった。

 

 

 

「ふん、武器だけが良くても、それを扱う人間が三流ならば、ただの宝の持ち腐れだな……」

 

 

 

拘束された冬ニにリボルバーカノンを向けながら、皮肉を込めて嘲笑うラウラ。

だが、冬ニの顔にも……何故か笑みが溢れていた。

 

 

 

「あれ? もしかして忘れてる?」

 

「ん?」

 

「僕たちは……“二人” だって事!」

 

「なっ!?」

 

 

 

その言葉を発した直後、冬ニの後ろから影が現れる。

その影は、両手にサブマシンガンを持ち、ラウラに向けて連射していく。

そして、一瞬の隙を捉えたことによって、シュバルツァー・レーゲンの主砲であるリボルバーカノンを破壊した。

 

 

 

 

〜管制室〜

 

 

 

「篠ノ之さんのときもそうでしたが、今のも一気ぴったりの連携でしたね!」

 

「あぁ……。おそらくは、停止結界の弱点を見つけたんだろう……」

 

 

 

管制室でモニタリングしていた真耶と千冬。

真耶は少し興奮気味に話し、千冬は冷静に解説を交えて答える。

 

 

 

「弱点……ですか?」

 

「あぁ……。確かに停止結界は、どんな攻撃をも防御し、相手の動きすら止めてしまう強力な技ですが……」

 

 

 

千冬は確信を持った目で言い切った。

 

 

 

「止める対象に対して、意識を集中させておかなければならない。そんな時に全く別の攻撃が来れば、対応するのは難しい……」

 

「なるほど……!」

 

 

 

千冬の解説に納得のいった真耶は、再びモニターに視線を向けた。

 

 

 

 

〜アリーナ中央〜

 

 

「くっ!」

 

「シャルル、決めに行くよ!」

 

「了解!」

 

 

 

唯一の火器を失ったラウラ。

ワイヤーブレードで牽制しつつ、距離を取って態勢を整えようとするが……。

 

 

「その攻撃はもう当たらない!」

 

 

だが、冬ニはその猛攻を紙一重で躱していく。

後ろに下がるわけでもなしに、ただ前に進む。

そして、その勢いに押され、ラウラは後退するも冬ニは逃さない。

イグニッション・ブーストで一気に距離を詰め、上段から零落白夜で染まった雪片を振り下ろした。

 

 

 

キュウゥゥゥゥ……

 

 

 

 

「なっ!? こんな時にッ!」

 

 

だが、ラウラにあたる直前、その刀身から黄金の輝きが失われた……。

急速に自身のシールドエネルギーを消費し、攻撃転化する零落白夜。それを余すことなく全開で解放していたのだ……制限時間が早まっておかしくなかった。

 

 

 

 

「ふん! ギリギリまでシールドエネルギーを消耗しては、これ以上戦えまい!!!」

 

「させない!」

 

「邪魔だ‼︎」

 

 

 

今度は一転、ラウラに攻められる冬ニ。

シャルルも援護するが、ワイヤーブレードによって弾かれる。

 

 

 

「うわっ!」

 

「シャルル!」

 

「はあぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ぐあっ‼︎」

 

 

 

 

両腕に展開したプラズマ手刀の猛襲によって、地面に叩きつけられる冬ニ。

だが、ラウラはトドメを刺そうと追撃をやめない。

 

 

 

「ぬおおおーーー!!!」

 

 

冬ニにその手刀の刃が振り下ろされると思われたその時、突然ラウラが吹き飛ばされた。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

弾き飛ばされた方を見てみると、超高速に近づく機影が一つ。

 

 

 

 

「まだ終わってないよッ!」

 

 

一瞬で超高速状態になり、肉薄するシャルル。

そして、近距離で確実にサブマシンガンを当てる。

 

 

 

「なっ!? イグニッション・ブーストだと!? バカな、そんなデータはなかったはずだ!」

 

「そりゃあそうだよ。だって今日、“初めて” 使ったんだからねっ‼︎」

 

 

 

ここへきて初めてラウラが狼狽した。

彼女は軍人故に、あらかじめ敵のデータは見て、覚えている。そうすることによって、戦術に対応策などを練っているのだ。

だが、裏を返せば、アドリブには弱いことになる。

故に今シャルルが初めて使ったイグニッション・ブーストに対応出来なかったのだから。

 

 

 

「バカな! この戦いで覚えたとでも言うのか!? だが、それを無駄だ。私の停止結界の前では無力ーーー」

 

 

 

ドカァァン!!!

 

 

 

「なっーーー?!」

 

 

 

右手を突き出し、シャルルを拘束、撃破する……。そのシナリオは頭の中にあった。

が、今度は後方から思いも寄らぬ攻撃を受ける。

その攻撃を放ったのは……。

 

 

 

「へへ、これでその停止結界は使えないだろう!」

 

 

 

シャルルのアサルトライフル《ヴェント》を構えた冬ニだった。

シャルルに一通りの射撃を訓練は受けていた。

正直、射撃戦には向かない白式で、射撃経験が無い冬ニと不安要素はたくさんあったが、それでもなんとか当てることが出来た。

 

 

 

「こ、このぉ……‼︎ 雑魚がぁぁぁっ‼︎」

 

 

 

ラウラの怒りが頂点に達し、力任せにワイヤーブレードで冬ニを吹き飛ばす。そして、今度こそトドメを刺そうとして、隙を見せた。

 

 

 

 

「どこを見ているの?」

 

「くっ! だが、第二世代ごときで、私のシュバルツァー・レーゲンにダメージを与えるなどーーー」

 

 

 

パアァァーーーン!!!

 

 

 

「っ!?」

 

 

突然何かが弾けるような音が鳴り響いた。

そしてその正体は、シャルルの機体、リヴァイヴの左腕にあった。

 

 

「《盾殺し(シールド・ピアーズ)》っ‼︎」

 

「この距離なら外さないッ!!!!」

 

 

 

 

ガラ空きになった懐に、パイルバンカーの鋭く重い一撃が撃ち込まれた。

 

 

 

「があっはっ‼︎」

 

 

 

とても重い衝撃が、ラウラを襲う。ISには絶対防御が存在し、それによって操縦者の命は守られる……。が、それでも痛みは感じるし、ましてや体を貫いてもおかしくないほどの衝撃をピンポイントで、それも至近距離で食らったのだ……無事でいる方が難しい。

 

 

 

「まだまだ‼︎」

 

 

だが、それで終わるシャルルではない。

リヴァイヴの取り付けられたパイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)は、リボルバー方式になっており、次弾へと装填が可能である……。つまり、連射機能がついているのだ。

 

 

 

ドンっ‼︎ ズゥンっ‼︎ バンっ‼︎

 

 

 

 

「がっ! ああーー!!!」

 

 

 

 

連続しての衝撃。

実際に受けているラウラは、苦悶の表情を浮かべている。

そして、シールドを貫通し、直接攻撃をしている為に、絶対防御が発動。エネルギーがみるみるうちに減少して行く。

それを見たラウラの眼は、虚ろになっていく。

ラウラの中で、何かが弾け飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜第一アリーナ〜

 

 

 

 

「行くぞ! 我が愛機、《ドレッド・ノート》の進化を見せてやる!」

 

 

 

巨大な両脚を地面に固定し、土台を作る。

両手、両脚、両肩からキャノン砲を展開。背部からは大量のミサイルが収納されたポッドを出現させる。

 

 

 

 

「『サイレント・フォートレス』! 殲滅を開始する! ファイヤーーーーっ!!!!」

 

 

 

放たれる砲閃。大量のミサイルが撃たれる。

重砲撃型のISの中では、最強クラスの専用機《ドレッド・ノート》。

そして、それを扱うヴェルサリアの腕。再び展開する戦略殲滅型パッケージの使用によって、さらなる破壊力をました『サイレント・フォートレス』。

おそらくこと一機で、一国の軍事力と渡り合い、殲滅し、一国を堕とすだろう。

それほどの破壊力を持つ機体が、アリーナの中で砲撃し続けているのだ。中にいるエリスと簪はたまったものではないだろう。

 

 

 

 

「くっ! 先ほどよりも……! なんて攻撃力だ!」

 

「でも、なんで?! なんで、ヴェルサリア先輩の機体はエネルギーを消費しないの?!」

 

「確かに……いかにドレッド・ノートが実戦型の機体だったとしても、エネルギーには制限があるはず……」

 

 

 

先ほどの砲撃戦に加え、複合技によるダメージ、そして、さらに協力な攻撃を行っているにもかかわらず、一向にエネルギーが尽きる気配が無い……。

 

 

 

 

「考えても仕方がない。せめて、あのパッケージだけでも剥がさねば!」

 

「私に考えがある……。エリス、手を貸して!」

 

「無論だ。突破口を開くぞ!」

 

 

 

 

二人が動く。吹き荒れる砲弾の雨をかいくぐり、エリスは背後を取った。

 

 

 

「小賢しい真似を!」

 

「はあぁぁぁっ‼︎」

 

 

 

横薙ぎに槍を一閃。背部のミサイルポッドを破壊する。

 

 

 

「ぐうっ! エリス……貴様ぁ……!」

 

「固定砲台になっている今のあなたに、死角からの攻撃を防ぐ手立てはない!」

 

「黙れ雑魚どもがぁぁぁっ!!!!」

 

「確かに、私たち一人一人は弱い……。でも、二人ならあなたを倒せる……!」

 

 

 

 

エリスに気を取られている間に、簪は夢現を展開。

両腕の砲台を破壊し、春雷で両脚と両肩の装甲にダメージを与える。

 

 

 

「ぐうっ!」

 

「これは私のとっておき……! 山嵐、フリージングバレット‼︎ ファイヤ!!!」

 

 

 

放たれたミサイルが着弾する。すると、爆発が起きたと思ったら、やがて着弾したところから、装甲が凍り始める。

 

 

 

「氷のミサイルか?! そんなものまで用意しているとは意外だったが、それでもこの私を倒すにはまだ足りんな!」

 

「まだ……行くよ! 春雷、最大火力! バーストっ‼︎」

 

 

 

 

エネルギーを充填した大出力の荷電粒子砲が凍りついた部分に命中氏、大爆破を起こす。

 

 

 

「ふん、無駄だと言うのがまだわからーーー」

 

 

 

言い切る瞬間、ガシャ! と音を立てる。

よく見ると、攻撃された部分の装甲に、大きな日々が入っていたのだ。

 

 

「な! そんな、何故?!」

 

 

 

 

 

〜観客席〜

 

 

 

 

「なるほど、温度差を使った頭脳プレイか……。流石は簪だな……!」

 

「温度差……。そっか、冷たいものにいきなり熱いものをぶつけたから、装甲が脆くなったんだね!」

 

「あぁ、簪も案外えげつない戦い方をするよな……」

 

 

一夏も静寐も関心していた。

一戦力では、二人はヴェルサリアに到底及ばない。それでも、エリスの突破力と、簪の戦略が、ヴェルサリアを圧倒しているのだ。

 

 

 

 

 

〜アリーナ内〜

 

 

 

「ば、馬鹿な……この私が……」

 

「終わりです、義姉上‼︎」

 

 

 

 

レイ・ホークを振り被る。

その鉾先に、風が収束する。やがてそれは大きくなり、槍と一体化した。

 

 

 

「竜巻よ! 薙ぎ払えッ‼︎」

 

 

 

 

振り抜かれた一閃。

大きな竜巻は、ヴェルサリアを取り囲み、荒々しい暴風に包む。

そして、亀裂の入った装甲はその暴風に耐え切れず、 内側から破壊され、その巨体は宙に舞った。

 

 

 

「ぬおぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

重厚な装甲と無敵の砲台がバラバラに散らばり、丸裸も同然になったヴェルサリアのドレッド・ノート。

竜巻が止み、ヴェルサリアは重力に従い、地上に落下した。

 

 

 

顔を覆っていたツインアイの装甲も砕け散り、中からは苦悶の表情を浮かべるヴェルサリアが現れる。

 

 

 

「馬鹿な……こ、この私が……負けるのか……」

 

 

 

絶望的な表情を露わにする。

その口からも絶望がにじみ出ていた。

 

 

 

「ふざけるな……! “彼女” を倒すまで、私はーーー!!」

 

 

 

 

 

言いかけた時だった。ヴェルサリアの中でも、ラウラと同じ様に、何かが弾けた。

 

 

 

 

 

 

「うわあぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉーーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

二つのアリーナの内部で、ラウラとヴェルサリアの絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 






多分次でもう、終わる……多分終わる……かも……



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