それではどうぞ!
「と言う訳で、簪の専用機を作るの手伝ってくれませんか?」
「うん!いいよ!ただし、条件が……」
早速俺は、新聞部の黛さんのところに行き、簪の専用機を作る手伝いをしてもらえないかを提案しに来た。
「条件…ですか?」
「うん! 今度私とデートしてくれたら考えてもいいけど? あと、ツーショット写真撮らせて!」
「は、はぁ… まぁ、それ位でいいなら……」
「よおっしゃ〜‼ 俄然やる気出てきた!」
飛び跳ねて喜ぶ黛さん。そんなに嬉しかったのかな?
「それじゃあ先に行ってて! 整備科の私の仲間も誘って行くから!」
「ホントですか⁈ ありがとうございます!」
そう言うと黛さんは廊下を走って行ってしまった。千冬姉に見つからなきゃいいけど。
「さて、簪の方はどうなったかな?」
黛さんの了解も取れたので俺は一足先に整備室に向かった。
場所は変わってここはIS学園第ニアリーナ。そこに二つの人影が…
「あれ? セシリア」
「あら? 鈴さん、居らしてたんですか?」
「まぁ、自主練がてらね〜」
「そうなんですの…わたくしもですわ」
「ヘェ〜、って事はあんたも『あの噂』、聞いたのね?」
「えぇ、それはもちろん」
鈴達が言っている噂とは、今度の学年別タッグマッチトーナメントで優勝すると冬ニと付き合えるというものだった。
事の発端は、シャルルが編入して来た事により冬ニの部屋にいた箒が別の部屋に移る事になり、居ても立ってもいられなくなった箒が、
『今度の学年別タッグマッチトーナメントで私が優勝したら……つ、付き合ってもらう!!』
っと、言ったのだが周りには自分たちが付き合えると間違って伝わってしまったのだが。
「でも、残念ね〜 今回は私が優勝するから!」
「あらあら、そんな事ないですわよ…なぜなら優勝するのはことわたくし、セシリア・オルコットですわ!」
「ヘェ〜、言うじゃない! だったらいっその事今ここで決着をつけるってのもありかもね…」
「おほほ…めずらしく意見が合いましたわね!」
互いに睨み合い、武装を取り出す。セシリアはライフルを鈴は双天牙月をそれぞれ展開する。
「はあぁぁ!!!!」
「参りますわ!!!!」
桃と蒼が共に動き出した……その時だった。
ガシャン! ズドォォォン!!!!
「はぁッ…⁉」
「なぁッ…!」
途端に横ヤリをいれる様にして、一発のキャノン砲が二人の間を通り過ぎていく。
そこには黒い機体を纏い、二人を見下しているラウラの姿があった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……!」
「いきなり撃ってくるとは、中々のご挨拶ですわね…」
「……」
鈴がラウラを見て睨み、セシリアは挑発混じりにラウラに言う。それに対して、ラウラは無言のままだった。
「な〜にぃ? わざわざドイツくんだりからここまで来て、ボコられに来たの?」
「鈴さん…相手の方は言葉がわからないご様子ですから…あんまりいじめるのは良くありませんわよ…」
そんなラウラを見て、鈴さんとセシリアが挑発する。
「ふんっ、イギリスと中国の第三世代機か……データで見ていた時の方がもっと強く見えたんだがな?」
「ヘェ〜、言いたい事はそれだけ?」
「あまり、甘く見ない方がよろしくてよ?」
ラウラの言葉にカチンときて、その挑発に殺気混じりの言葉で返す。
「ふんっ! くだらん種馬争いをしている貴様らに…この私が負けるわけがない!」
くだらない種馬…それは当然、冬ニと一夏の事を指していた。
「ッ!……今、何て言った?! 私には『どうぞ! 好きなだけ殴ってください』って聞こえたんだけど⁉」
「この場にいない人の侮辱までするなんで許せませんわ‼」
一夏の事はもちろん、自分たちが好意を寄せている冬ニの事まで馬鹿にされたのであっては、黙っていられなかった。
「フンッ…どうせなら二人同時にかかって来たらどうだ?」
ラウラが余裕の顔で挑発混じりに手招きする。
「上等!!!」
「上等ですわ!!!」
突然始まった三国によるIS戦が……開始された。
「ヤッホ〜、いっちー!! かんちゃ〜ん!!」
「織斑く〜ん、簪ちゃ〜ん!! お待たせ〜!」
一方、整備室には約束通り本音と黛さん、そして、整備科の先輩達が来てくれた。
「ありがとうございます。黛さん、先輩方」
「ありがとう……本音」
「いいって、いいって! ほら、そんな事よりさっさと始めるよ!」
「「はい!」」
そう言って、簪の専用機、『打鉄弍式』の製作が始まった。
「えぇ〜と、で? 機体はどこまで出来てるの?」
「えっと、機体の基礎は出来ていて、後は武装がまだです……スラスターも一応完成してるけど…まだテスト飛行してないから、データを取らないと…」
「うん! そこまで一人で出来れば、上出来だよ!これだと短時間で終わるわね」
「ホントですか⁈」
「もちろん♪ 一夏君! しっかり手伝ってね!」
「了解です」
基礎フレームやメインシステムはほぼ完成している。そして武装もある程度は考えていたみたいだ。やっぱり、簪は楯無さんに劣ってなんかいない。
「ごめ〜ん、一夏君! そこの一番から三番のケーブルを持って来て!!」
「は、はい!」
「織斑! そのレーザーカッターをとってくれ!」
「はいはい!!」
「いっちー、お菓子食べさせて!」
「ほらよ! 本音」
「う〜ん!! うまうま〜!!!」
「織斑! ジュース飲ませろ!」
「あ、あれ? なんか関係ないものになってません⁈」
「気のせいだ! それより織斑! 売店でシャンプー買っておいてくれ。フルーツの香りがするやつ」
「気のせいじゃないよね!? ガッツリ俺をパシリに使いたいだけだよね?!」
「フフッ…」
何や感やで作業は進んで行き、何とか完成した。
「あの……その…ありがとうございました!……私一人じゃ何も出来なくて…」
「いいって事よ! それじゃあ〜後は頑張ってね〜 一夏君、約束覚えててね〜」
「私もな〜!!」
「なら、私も〜!!」
「かんちゃ〜ん! 後はガンバレ〜」
作業を終え、今は俺と簪の二人だけだ。
「一夏…そのありがとう……手伝ってくれて…」
「気にすんなって…それにほとんど手伝ったの黛さん達だし、データを提供したのもエストだったしな…俺はほとんど何もしてないよ」
そう、基本的にデータ提供をし、完成に近づけたのはエストだ。
「一夏、一夏…エストは頑張りました…褒めて下さい」
「あぁ、エスト、良くやったぞ。 えらい、えらい」
「ふぁ〜、一夏」
エストの頭を撫でてやると、エストは目を細め、くぅ〜っとやっていた。
「今度、どこかに出かけた時は、デザートなんでも頼んでいいからな」
「一夏…私は一夏と契約してよかったです」
「大袈裟だな〜」
まるで親子のようだと思ってしまう簪であった。
「いいな…エストちゃん。私も…」
「うん? 簪、なにか言ったか?」
「う、ううん! 何でもない!……それより一夏、この後、打鉄弍式の飛行テストと武装チェックをしたいんだけど……その…付き合ってくれない…?」
「別にいいけど、大丈夫か? あまり根を詰めると体にはよくないぞ?」
「大丈夫。早くこの子と一緒に空を飛んでみたい…それに……」
「ん?」
「一夏達にも追いつきたい……! そして、いつかは、お姉ちゃんにも……」
己の思いを言葉に込め、一夏に語る簪の姿には、以前のような内気な雰囲気は一切見られなかった。
「オッケー。なら、早速アリーナに行って飛行テストをしよう! エスト、あと少しだけ付き合ってくれないか?」
「はい一夏。 私は一夏の剣……あなたの望むままに…」
エストの体が光り、待機状態のブレスになり、簪の打鉄弐式は指輪になって簪の右手中指にはめられていた。
「よし! それじゃあ、行くか? 簪…」
「うん!」
そう言って、俺たち二人はアリーナへと向かって行った。