試合の時間になり、冬ニはすぐさま白式に乗り込む。
「今回は時間がないので、フォーマットとフィッティングは実戦でやれ。」
初戦は冬ニ対セシリアなのだが、セシリアはすでにアリーナの中央に飛翔しているため、冬ニも急いで準備に取りかからなければならなかったのである。
「これが、白式…」
「冬ニ…気分は悪くないか?」
「うん!いつでもいけるよ‼」
「ふっ…そうか……」
冬ニの事を名前で呼んだところをみると、どうやら千冬姉も冬ニの事が心配なのだろう。
「箒…一兄…行ってくるよ。」
「あっあぁ、勝ってこい!」
「応、行ってこい!」
「うん!」
そうして、カタパルトに入り、勢い良くアリーナ内に飛翔した冬ニを見送った後、俺も自分の専用機、白桜の準備に入る。
「ふー、ん?」
白桜に乗り込み、フォーマットとフィッティングを始めようとした時、ふいに違和感を感じた。
(なんだ?今の感覚?ISとのリンクが一瞬途切れかかった様な……でも、フォーマットとフィッティングは行われてる。俺の勘違いか?)
そう思いながら、試合を見ていると冬ニの劣勢で試合は進んでいた。
「わたしとブルー・ティアーズを前にして、初見でここまでもったのは、あなたが初めてですわね、、褒めてさしあげますわ。」
「それは、どうも。光栄だね。」
「それでは、そろそろフィナーレと参りましょう!」
途端、ブルー・ティアーズから四つのビットが切り離され、その一つ一つからレーザーが放たれる。冬ニもギリギリでかわしてはいるが、それでも被弾は多い。
「左足、いただきますわ!」
ビットを全て戻し、すかさずスターライトmkーⅢで狙撃する。冬ニはそれを斬り裂き、セシリアに接近を試みる。
「一か八か、やってみるか!」
「なぁっ!無茶苦茶しますわね!でも、無駄な足掻きですわ!」
うまく接近し、斬りかかる冬ニだったが、セシリアはそれをかわし再び距離をとる。そして、ビットを全部射出して、再び冬ニを狙う。しかし、そのレーザーを全てかわし、ビットの一つを斬り裂いた。
「なぁっ!どうして⁈」
「わかったよ!この兵器は、君が毎回命令を送らないと動かない。そしてその時には、君はそれ以外の攻撃ができない。制御に意識を集中させてるからだ!違う?」
そう言いながら、冬ニは二つ目のビットを破壊する。これで残りは二機。
しかし、左手を閉じたり開いたりしてると言う事は、冬ニも浮かれていると言う事だ。
「そして、必ず僕の反応が遠い角度から狙ってくる!距離を縮めれば、こっちが有利だ!」
残りのニ機も破壊し、一気に距離を詰めて勝負に出る冬ニ。だが、
「ふふっ。かかりましたわ!」
「えっ⁈」
「四機だけではありませんのよ!」
セシリアは、そう言うと、腰の部分に装備されていたミサイルビットの照準を白式に向ける。
「しまった‼」
冬ニも気づいたらしく、直ぐに回避しようとするが、時すでに遅し、ミサイル二発を被弾してしまった。
「冬ニ!」
箒が試合の映像を見ながら、叫ぶ。しかし、俺には冬ニが無事だとわかった。そして、千冬姉もそれがわかったらしく、
「ふっ、機体に救われたな。馬鹿者が。」
ーーー爆煙の中、白い翼を広げ、白い装甲に身を包んだ冬ニの姿があった。どうやら、今さっきフォーマットとフィッティングが終了したみたいだ。
「『一次移行』(ファースト・シフト)⁈あっ、あなた今まで初期設定の機体で戦ってたって言うの⁈」
「よくわからないけど…どうやら今この瞬間、この機体は僕専用になったみたいだね!」
そして、冬ニは、自分の手に握られていた刀を見る。
それはかつて千冬姉が世界一に輝いたときの武器、『雪片』の改良型、『雪片弍型』であった。
「僕は世界で最高の姉さんをもったみたいだ……これなら僕も家族を守れる!とりあえず、千冬姉の名前を守らなきゃね!」
そう言って加速する冬ニ。ミサイル四発を打ち、回避するセシリアを、ミサイルを全て斬り裂き、接近する。
「これで、終わりだ!!!」
「くうっ!!」
冬ニの剣が、セシリアのシールドエネルギーを切り裂いた。サイレンがなり、勝者を告げる。
「試合終了、勝者、セシリア・オルコット」
「えっ⁈」
「へっ⁈」
その場にいる誰もが頭の上に?マークを浮かべていただろう。試合は、どう言う訳かセシリアの勝ちで幕を引いた。
「なんで僕は負けたんだろう?」
冬ニ自身も腑に落ちない。っと言った所だった。
どうやら、冬ニの機体、白式は超攻撃特化した機体らしく、雪片弍型に搭載された『バリア無効攻撃』が自身のシールドエネルギーを消費して、相手にダメージを与えるのだ。初心者の冬ニには、少し扱い辛い機体なのだった。
「さて、少し休憩を挟んで次の試合にかかるぞ!」
千冬姉の合図とともに、準備をする俺。そして、セシリアはと言うと……
(どうしてこう落ち着かないのでしょう…勝ったのはわたくしですのに…)
「織斑 冬ニ……」
冬ニの名前を口にしながら、シャワーで汗を流していた。
今回は、冬ニ対セシリア、をお贈りしました。
次回はいよいよ一夏の試合です。気合を入れて頑張ります。