「・・・ハァ・・・ハァ・・・」
長い廊下を抜け、ようやくキクザクラが見えてきた。
運動音痴ではないが、あまり運動をしないミナトさんは息が切れてしまっている。
「あれは?」
「キクザクラです。詳しい事はまた後で」
「え、ええ」
「大丈夫ですか?」
「あと・・・ハァ・・・少しだもの。・・・ハァ・・・大丈夫よ」
最後の廊下を駆け抜ける。
ここを抜ければ、キクザクラの前だ。
「・・・ふぅ・・・」
「・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「お待ちしていました。こちらへ」
キクザクラの前で待機していた軍人にキクザクラの格納庫へ案内される。
「遅れました」
「・・・ハァ・・・ハァ・・・遅れました」
格納庫には整備班を始めとするナデシコクルーが揃っていた。
隣のミナトさんは息を吐きながらどうにか挨拶。
キクザクラ内でも休む事なく駆け足できたので、息があがるのも仕方がない。
「おいおい。そんなに急がなくてもよかっただろうに」
膝に手を付いて息を吐くミナトさんを見て、呆れるように告げるウリバタケさん。
周囲もそれで笑っている。まぁ、気持ちは分からなくもない。
でも、今は・・・。
「参謀。聞きたい事が―――」
「マエヤマ君。それに関しては後で聞こう」
「・・・分かりました」
ナデシコクルーを集めたんだ。
先に話す事がある筈。
仕方がない。終わるまで待っていよう。
「ミナトさん」
「ええ。分かってるわ」
すいません。お役に立てず。
「ナデシコクルーの諸君。よく集まってくれた」
ムネタケ参謀が前に立ち、話し始める。
あれ? でも、パイロット以外のナデシコ主要メンバーは揃ってないぞ?
いいのか? 話を進めて。
「知っていると思うが、改めて報告しよう。この戦艦の名はキクザクラ。私達改革和平派の旗艦として、明日香に依頼していた戦艦だ」
ナデシコをもとに明日香の技術を総結集して作られた戦艦、という訳か。
これはナデシコ以上の性能があってもおかしくないな。
擬似的にだが、二社が力を合わせて作ったものと言えるのだから。
「武装は可動式グラビティブラスト四門。機関銃。追尾式ミサイル」
ナデシコのYユニットのようなものは装備されていない訳だ。
しかし、可動式グラビティブラストか。便利そうだな。
一方向以外にも強力な一撃が撃てるというのは。
「出力源は相転移エンジンが四基、核パルスエンジンも四基が搭載されている」
確かナデシコは相転移エンジンが二基、核パルスエンジンが四基だった筈。
とりあえず、出力最大値はこちらの方が大きいって事だろう。
まぁ、多く積めば良いって訳ではないと思うけど。
「もちろん、DF発生装置も組み込まれており、強度はナデシコにも引けを取らん」
Yユニット搭載前だったら負けていたぐらいだと思いますが。
「そして、この艦のクルーだが―――」
「参謀。その前にナデシコの艦長を始めとした者達がいないのですが」
「ふふっ。すぐに会う事になるさ」
え? どういう意味ですか?
「紹介しよう。今回限りだが、彼らが当艦のクルー達だ」
そう紹介されてから、キクザクラから降りてきたのは・・・。
「艦長!?」
「副長も!?」
「おいおい! ブリッジメンバーが殆どいるじゃねぇか!」
「え? アキトさん?」
「セレセレも」
「ルリにラピスもいるじゃねぇか」
基地に残っていた筈のナデシコ主要クルーとテンカワ一味。
「戦闘開始後、しばらくして明日香から連絡があってね」
「そうなんですか? ミナトさん」
「えっと、ごめんなさい。知らないわ」
極秘事項って奴かな?
それだったら、ミナトさんが知らないのも頷ける。
「最終調整がようやく終わり、後はこれを動かせる人員さえ集まれば出撃できる。突然そう言われてね。指令室に残っていた者達に協力してもらったんだ」
「同時に参謀から俺達にも連絡が来た。地球の危機とあっては放っておく訳にはいくまい」
「必要最低人数だけ揃え、ミスマル艦長に御願いして前線へ向かって貰った訳だ」
「グラビティブラストによる奇襲とアキトのアドニスリアル型による撹乱。その後もグラビティブラストを連発する事で対処しちゃいました。ブイッ!」
流石はナデシコ級。
シンプルながら、最強の矛を持っている。
相転移砲は攻撃の規模が大き過ぎてこういう場面では使い辛いが、可動式グラビティブラストなら小回りもきいて、使い勝手も良い筈。
攻撃力も申し分ないだろうし。これはYユニット装着のナデシコでもピンチだぞ。
「あれ? でも、そうなるとミナトさんは・・・」
「・・・・・・」
ミナトさんはどうして?
「操舵士に関しては軍人から選出した。その時、既にハルカ君は倒れていたからね」
「・・・やっぱり、あれは夢じゃなかったのね」
「ミナトさん?」
夢じゃなかったって・・・。
「どうしてミナトさんは医務室に?」
「それは―――」
ドタッドタッドタッ!
「総参謀長!」
言い掛けたミナトさんの言葉を遮るように大きな足音と叫び声が聞こえてきた。
「落ち着け! 無様な姿を見せるな!」
「ハ、ハッ! 申し訳ありません!」
威厳ある声で告げる参謀。
・・・今は総参謀長だったんだ。
今まで失礼な事を言っていた気がする。
これからは気を付けないと。
「それで、どうしたんだ?」
「お、お耳を」
ゴニョゴニョゴニョ。
走ってきた軍人は誰にも聞き取れないような小声で総参謀長に何かを話す。
俺の強化された聴力でも流石にこの距離であの音量では聞こえない。
「・・・本当か?」
「申し訳ありません。私達が眼を離したせいで」
「・・・今は責任を追及している暇はない。引き続き、捜索に当たれ」
「は、はいッ」
頭を抱え、苦悩の表情を浮かべるムネタケ総参謀長。
・・・何があったんだ? 総参謀長があんな顔をするなんて・・・。
「・・・あの!」
「ミナトさん?」
突然どうしたんですか?
「先程の話はユキナちゃんの事ですか?」
「・・・何の事だね?」
無表情で逆に問いかける総参謀長。
でも、俺は確かに見た。
ユキナ嬢の名が出た時に眉がピクッと動いたのを。
「総参謀長!」
「・・・君まで何かね? マエヤマ君」
「もし、ユキナちゃんの事であるなら、俺達に教えてください!」
「・・・・・・」
「ナデシコクルーは家族です。家族の事は何だって知っていたい。それが危険な事だったり、知らずにいたら後悔するような事だったりするのなら、尚更」
多くの時間、多くの危機を共にしたナデシコ。
そんなナデシコのクルーは家族みたいなもの。
ユキナ嬢だって、そんなナデシコクルーの一員なんだ。
たとえ最近加入したからと、そんな事に拘るような狭い心の持ち主はここにはいない。
「総参謀長。私からも御願いします。艦長として、いえ、家族として知っておかなければなりません」
「私もです。総参謀長」
艦長と副長、いや、ユリカ嬢とジュン君が続いてくれた。
「俺達からも御願いします」
「ユキナちゃんの事ってんなら、放っておけないっすよ!」
「家族か。そうですよね。私達は家族です」
他のクルーも・・・。
ありがとう。皆。
「・・・後悔しないかね?」
ゴクリッ。
言葉の響きが尋常じゃない。
その声は本当に聞いたら後悔するような含みがある。
でも・・・。
「御願いします」
知らずに後悔するぐらいなら、知って無茶した方が良い!
「・・・分かった。心して聞いて欲しい」
「・・・はい」
「・・・シラトリ・ユキナが行方不明になった」
静寂が辺りを包む。
「え? 今・・・なんて言いました?」
「もう一度言おう。シラトリ・ユキナは現在、行方不明だ」
ユキナ嬢が・・・行方不明?
「・・・やっぱり」
「え? やっぱりって・・・」
ど、どういう意味ですか!? ミナトさん!
「・・・ムネタケ総参謀長」
「君は・・・何か知っているのかね?」
「はい。・・・彼女は私の前で誘拐されましたから」
「なっ!?」
ミナトさんの前でユキナ嬢が!?
「詳しく説明してくれるかな?」
「はい。思えば、私が迂闊でした。日頃護衛に囲まれているユキナちゃんを、基地内だからと安心して連れ出してしまったのですから」
「・・・君が倒れていたのは廊下だったね」
「はい。指令室からユキナちゃんの部屋へと移動している途中でした。いきなり背後から声が聞こえてきて、振り向いたら見た事のない男がいたんです」
見た事のない男?
「その男はなんて?」
「烏の枷だとか、我らの栄光の礎となれ、だとか」
「ッ!」
その台詞は・・・。
「服装や容姿は覚えているかね?」
「服装は連合軍の軍服でした。容姿は振り向いてすぐだったので、明確には・・・」
「・・・そうか」
「でも、とても気味の悪い男でした。まるで爬虫類のような」
「・・・草壁の・・・影」
アキトさんが呟く。
草壁の影・・・という事は北辰か・・・。
・・・そして、北辰の搭乗機は夜天光・・・。
「あの! 総参謀長」
「他にも何かあるのかね?」
「直接関係があるかは分かりませんが・・・」
もし、夜天光があの輸送機に載っていたものだとしたら・・・。
「本日、北米基地から輸送機が来る予定はありましたか?」
「輸送機? うむ。あの輸送機の事か。予定にはなかったが、弾薬がなくなったので補給がしたいと通信があった」
「引き受けたのですか?」
「作戦実行前に話を付けてあったのだ。互いに物資が不足したら返却を条件に譲り渡すと」
「北米支部と、ですか?」
「いや。作戦参加支部全てとだ」
「それでは、提供を拒否する支部が出てくるのでは?」
誰も好き好んで物資を提供しようとは思わない。
「いや。返却の際には何かしらのオプションを付ける事になっている」
「オプション?」
「ああ。提供してもらった以上の物資を返したり、その見返りとなる物を提供したり、などだ」
物資を提供すれば、同じ分だけは必ず返ってきて、それに加えて何かが得られる、か。
一時的に損をしても、長期的に考えれば拒否する必要はない。
無論、物資に余裕がある前提だけど。
「その案はどこの提案ですか?」
「ふむ。北米支部であったな。世界で最も影響力が一番強い支部の一つだ。作戦行動を円滑に進める為には互いに協力する姿勢が何より大事になると言われ理解を示した」
北米支部からの提案。
確かに団結する必要はあるだろうが・・・。
・・・その決まりが仇になったか?
「その輸送機がどうなったか御存知ですか?」
「途中で木連に撃墜されたと聞いた。弾薬はきちんと借りた分だけ返すそうだ」
下手に出ているように聞こえるが・・・怪しい。
「北米支部の被害は?」
「こちらより相当酷いと聞いた。上陸も許してしまったそうだよ」
・・・俺の勘違い? 単純に物資不足か?
自国にわざわざ被害を与えるような事は普通しないもんな。
もし、したとしたら、国民の事を数でしか考えてないって事になる。
そんな軍人は・・・いないと信じたいが・・・。
「あのその際に輸送機の中を見た人とかいますか?」
「輸送機の中は見てないけど、物資を積み込む人型兵器なら見たぞ」
お。整備班さん。流石。
「どんな機体でした?」
「ん? 普通に北米の新型機だったぞ。確かアウストラロ―――」
「ステルンクーゲルですか?」
「そうそう。それだ」
「・・・流石に間違えすぎだろうが」
突っ込む余裕はないので、あしからず。
しかし・・・夜天光ではない?
・・・それなら、夜天光は輸送機に載っていなかったって事か?
でも、もしそうだとしたら、何故、あんな場所に夜天光が現れたんだ?
攻撃してくるならまだしも普通に撤退していったし。
「輸送機の中身が気になるのかね?」
「あ、はい」
「ふむ。少し待っていてくれ」
そう言ってどこかに通信を入れる総参謀長。
「うむ。至急な。それでは」
通信が終わり、こちらを見てくる総参謀長。
「搬送の責任者を呼んだ。彼なら輸送機の中身も確認しただろう」
「ありがとうございます」
搬送関係の責任者なら到着時の輸送機の中身、出発時の輸送機の中身を確認している筈。
「その輸送機がどうしたのだね? 私には意味が分からないのだが・・・」
「ええ。でも、違っていたら、あらぬ疑いですから。確認してからにしたいのです」
「・・・うむ。それならば、仕方あるまい」
北米支部。クリムゾン。夜天光。
ステルンクーゲルの背景に木連があると知っているからこそ抱く事の出来る疑惑。
タッタッタッ!
「只今参りました。総参謀長」
「うむ。マエヤマ君」
「はい」
真実を見極める。
「輸送機が到着した際に何か積まれていましたか?」
「はい。コンテナが四つ程」
「それら全て確認しましたか?」
「いえ。亜細亜支部からの補給物資と言われた為、直接の確認は出来ませんでした」
「直接?」
「物資提供のリストを拝見させて頂き、不自然な所がないかは確認しました」
リストは確認しても、直接見た訳ではない・・・か。
怪しいコンテナが四つ。
「物資を提供する見返りは?」
「総参謀長。よろしいですか?」
「うむ。構わんよ」
「我々が物資を提供する代わりに、研究材料としてステルンクーゲルとその予備パーツを頂戴しました」
研究材料?
研究材料として新型機を提供してまで成し遂げたかった事がある、と見ていいか?
「その二つはどのような形で頂いたんですか?」
「コンテナの四つの内の二つがそうでした」
「コンテナごと頂いたと?」
「ええ。何かおかしいですか?」
「あ、いえ」
コンテナ内に人を忍ばせておけば、基地内に侵入できたかもしれない。
むしろ、それぐらいしか基地内に侵入する方法が思い付かない。
真正面から忍び込む事なんて不可能だし。
いくら戦闘中で警戒が緩くなったからって・・・え?
今、俺は何を考えた? 戦闘中で警戒が緩んだ?
・・・これが狙いか?
基地内の軍人の数も減り、警戒は緩くなる。
ましてや、戦闘が起きているのは太平洋。
そちらばかりに注意がいって、足元は疎かになる。
「こちらのコンテナはどのように?」
「格納庫の隅に提供する物資を纏めておきました」
「その事を整備班は?」
「ん? 知っていたぞ。俺達が用意したんだからな。まぁ、俺達も帰還した機体の修理やら補給やらで忙しくて、輸送機に詰め込むコンテナは完全に向こうに任せていたけどな。纏めて置けば、別に俺達が確認しなくても持ってけるだろうし」
本来であれば逐一確認して物資を積み込んだ筈。
でも、戦闘中の混乱でそんな余裕もなく、おざなりになってしまった。
「何か怪しい人影を見ませんでしたか?たとえば・・・輸送機への積荷を後から持ってきた軍人とか」
「見たか?」
「そういえば、でかいケースみたいなのを後から積み込んでいた奴がいましたね」
「確認したのか?」
「いえ。一応聞いてみましたが、なんでも責任者に頼まれたとか」
「わ、私は聞いていませんよ!」
「え? マジか?」
・・・ケース。
物を運ぶ為の箱。
大きさによっては、物だけじゃなく者も可能。
「どう運んでいました」
「荷台に乗せて運んでいたぞ」
「どれくらいの大きさでした?」
「そうだなぁ。言葉で表すのは難しいが割りと大きかったぞ」
「それに人は入れそうでしたか?」
「流石に人一人は入り切らないと思うぜ。さっきの話に出ていたのは男だろう?」
「いえ。そっちじゃなくて。たとえば中学生ぐらいの小柄な女の子ではどうです?」
「う~ん。それぐらいなら押し込めば不可能じゃねぇが・・・おいおい、嘘だろ?」
成人男性が入れる大きさのケースは限られてくる。
だが、小柄な女の子が入るケースぐらいならある程度探せばどこにでもあるだろう。
基地なら、ライフルやらキャノン砲やらを持ち運ぶ為のガンケースといったものが・・・。
それに、たとえそれがなくても、軍服の中にそれらしいものを折り畳んでしまっておけばいいだけの話だ。
もちろん、ハードタイプのケースではなく、ソフトタイプのケースをだけど。
そして、軍内でガンケースなどを持ち運んでいても、そこまで違和感は与えない。
連合軍の軍服なんて基地単位で変わらないし、北米基地から貰っておけばいいのだから。
「それを運んでいたのはどんな人でした?」
「軍服で帽子を深く被っていたから見えなかった。・・・なぁ」
「・・・何でしょう?」
「・・・もしかして、そこの中にユキナちゃんが?」
「その可能性は高いかと」
「嘘・・・だろ?」
「そ、それじゃあ北米基地の誰かがユキナちゃんを誘拐したってのか?」
「馬鹿野郎! ちゃんと確認しやがれ!」
「そ、そんな事言ったって、忙しくてちゃんと対応なんて出来ませんでしたよ!」
「クソッ! そんな奴、気付きもしなかった。気付いていれば・・・」
「北米基地は何の目的が!?」
ガヤガヤと五月蠅くなる。
・・・でも、この話はまだ終わりじゃないんだ。
「静粛に」
総参謀長が一言で場の混乱を収める。
「マエヤマ君。さっき君は確認したね。その輸送機はどうなったのか? と」
「はい。確かにしました」
「そして、私はこう答えた。途中で木連に撃墜されたと」
「撃墜?」
「ユキナちゃんを誘拐した輸送機が墜ちたってのか?」
「それなら、ユキナちゃんは・・・」
誰もが暗い顔をする。
もしかしたら、ユキナ嬢はもう・・・と。
でも、そうではないのだ。
「もし、先程ミナトさんがいった人物がその輸送機に乗っていたとしたら」
「・・・・・・」
「その輸送機は木連である可能性が高いんです」
「も、木連の輸送機?」
「し、しかし、それなら何故木連が木連の輸送機を墜とす必要があるんだ!?」
俺の発言が更にクルーを混乱させる。
アキトさん達未来を知る組も怪訝とした顔で俺を見ていた。
「ご存知の通り、俺は皆さんより遅れて基地に帰還しました」
「気になる事があったって言っていたな。コウキ」
そういえば、ガイには帰ってすぐにそう言ったな。
「何故かというと眼の前に先程まで話に出ていた輸送機を見掛けたからです」
「マエヤマ! お前はユキナちゃんがいるかもしれない輸送機を追っていたのか!?」
「はい。ウリバタケさん。なんか違和感があったので、気になって後を付けたんです」
「そ、それで、輸送機はどうなったんだ?」
「確認しようと通信を試みたのですが、通信拒否。その為、強引に繋ごうとした所を・・・」
「木連の兵器が輸送機を襲ったと」
「はい」
眼の前で撃墜された輸送機。
俺の未熟さを露呈させた瞬間。
「お前なら撃墜される前に破壊できたんじゃないのか?」
「戦闘終了後でボロボロでしたし残弾も残り少なく。ましてや、接触したのは日本を出た後です。重力波の範囲外であり、かなり不利な状況でした」
「それでも・・・」
「ええ。俺も俺なりに全力を尽くしました。でも、あと一歩及ばず。無理をしたせいで機体は空中分解です」
「・・・そうか」
「・・・はい」
出来なくはない。
以前の俺だったらそう豪語していた筈。
でも、それが如何に己惚れであったか。
今回の戦闘で思い知らされた。
「コウキ。それだけで終わりではないんだろう?」
「・・・アキトさん」
「お前が輸送機を木連とした理由。それを聞かされていない」
「はい」
北辰の事が気になるようですね。アキトさん。
「その後しばらくして、ある機体が突然現れました。それが・・・」
ヒラノからもらった映像をモニターに映し出す。
「この機体です」
「お、おい! コウキ! この機体は・・・」
「アキトの記憶で見た未来の機動兵器じゃねぇか!?」
ガイとスバル嬢が驚きながら告げる。
そう、その深紅の機体こそ・・・。
「夜天光。北辰が乗っていた機体だ」
北辰の愛機、木連のエースパイロット専用機。
「輸送機が爆破されてしばらくしてから現れた夜天光。これは俺が以前ボソンジャンプしてまで脱出してきた時に襲ってきた機体です」
「あの時ね。カグラヅキと初めて遭遇した時の撤退戦後」
「そうです。俺がカグラヅキからナデシコへ帰艦する途中で・・・」
「・・・という事は草壁派の機体という訳ね」
「・・・はい」
木連の機体が輸送機爆発後に突然現れた。
怪しい事この上ない。
「それでは、マエヤマ君は輸送機のコンテナ内にその機体があったと?」
「はい。コンテナ内に何があったのか分からない以上、その可能性もありえるかと」
「しかし、そのコンテナは亜細亜支部からの補給物資だ。きちんと亜細亜支部にも提供した事を確認してあるのだぞ」
「亜細亜支部で補給したのは確かでしょう。でも、途中で中身が入れ替わってないかは俺達には分かりません」
「でもよぉ、そうだとしたら、輸送機ごと爆発しちまうんじゃないか?」
確かにそんな疑問は浮かぶだろう。
もし、輸送機が墜ちる前に脱出するような形であれば不自然ではない。
でも、俺は言った筈だ。突然現れたと。
点にしか見えない距離でヒラノに言われて初めて気付いた場所に。
「確かに普通であればそうでしょう。眼の前で脱出した所も見ませんでしたし」
「それなら―――」
「でも、それは普通の機体であった場合です。夜天光はボソンジャンプが出来る」
「何!?」
「あの大きさでボソンジャンプが?」
可能だろう。
未来の情報があるのなら、未来技術の再現は不可能ではない。
時間は掛かるが、今までその技術にだけ集中していたとしたら、この時期にこのサイズでボソンジャンプできる機体が出て来ても不思議はないのだ。
「輸送機の爆破も木連が企てていたのなら、タイミング良く脱出すればいいだけですから」
そうすれば、輸送機は爆破され、全ての証拠を消し、夜天光だけが生き残る。
「しかし、木連にジャンパーは・・・」
劇場版で火星の後継者が遺跡を確保し、ユリカ嬢を演算ユニットに組み込んだのは、B級ジャンパーを擬似的にA級ジャンパーとする為。
分かり易く言うならば、機械補助で目的地を決め、短距離ジャンプしか出来ないB級ジャンパー、そのB級ジャンパーのイメージをユリカ嬢に介させる事で遺跡へと伝え、機械補助なく目的地を決め、距離的制限がないジャンプを可能とさせる為の行為。
現状、草壁派が遺跡を確保していたとしても、ユリカ嬢を組み込んでない遺跡では機械補助なくジャンプは出来ないだろう。
でも、今回はそれでも問題ない。
「一度跳べばいいだけですからね。パターンも関係ないですし、タイミングを合わせれば可能です」
「木連が輸送機を落とした。あらかじめ決めておいた事なら不可能ではない・・・という事か」
「はい」
機械補助でも跳べれば何の問題もない。
「・・・コウキ」
「何だ? ガイ」
「もし、だ。もしお前の話が全て本当だとしたら・・・」
信じたくない。そんな顔で話しかけてくるガイ。
「木連の悪事に北米支部の誰かが協力しているって事だよな」
「ッ!」
ガイの言葉に息を呑むクルー達。
「しかも、それだけの事が出来るのなら、かなりの権力者だろう」
アキトさんが告げる。
可能性としては基地の全員で木連に協力していると言うのもあるが・・・。
まぁ、まずないだろうな。
「・・・輸送機を準備して」
「・・・人数分の軍服を用意させた」
「・・・提供された物資を失う事も了承していた筈だよな」
そう、作戦の為の前準備は協力者がいなければ不可能。
しかも、必ず借りた分だけ返さねばならない物資が失われる事を承知で。
北米支部はそれらのリスクを承知した上で木連に手を貸した事になる。
「なぁ、もしかして、北米支部の被害が一番酷いのって・・・」
「この流れを演出する為でしょう。被害が少なければ、他の基地に補給などには来ない」
「そ、それじゃあよ、ユキナちゃんを誘拐する為だけにそこまでの事をしたってか?」
「北米基地にユキナちゃんの誘拐はそれだけの価値があったという事でしょうね」
「北米基地の野郎はこの戦闘が起きる事も知っていたって訳か。明らかな計画的犯行だ」
「馬鹿げているだろ! 国民を犠牲にしてまで・・・。狂っている。狂っていやがるぜ」
あぁ。本当に狂っている。
自身の野望の為に民を数で扱い、捨て駒とする事に忌避がない。
・・・人間の狂気だ。本当に、兵士が、国民が、報われない。
「ねぇ、コウキ君」
「はい」
「木連と北米支部の狙いは何なの?」
木連と北米支部。
手を組み、ここまでの事をするその理由。
「ミナトさん。その男は確かに言ったんですよね。烏の枷と」
「ええ。確か、檻から飛び立とうとする烏の枷となってもらおうって」
檻から飛び立とうとする烏の枷。
檻とは・・・草壁の手の上。手中。
烏とは・・・三羽烏。三羽の内の一羽。
枷とは・・・ユキナ嬢。もっと言えば人質。
・・・草壁の手の上から飛び立とうとする三羽烏を押さえる人質となってもらおう。
もしや、ツクモさん達が草壁の手の上から離れようとしているのがバレた!?
それでこんな強硬策に?
「ユキナちゃんを取り戻す事で木連が得する事は二つ」
「それは?」
周囲が静まり返る。
多分、俺の考えを聞く為。
正しいかどうか分からないけど、きっと間違ってはいない筈。
「一つはユキナちゃんの身柄を抑える事でユキナちゃんの身内の自由を奪える」
「ユキナちゃんの身内? それってシラトリさん?」
「はい。ケイゴさんから聞いた話なんですが、シラトリさんは木連内で二人の若手士官と共に三羽烏と呼ばれ、将来を有望視されているそうです。そして、その二人の若手士官もシラトリさんにとって親友と言える存在。ユキナちゃんを人質にする事でシラトリさんだけじゃなく親友達の自由も奪えると思われます」
アキヤマさんとツキオミさんの名前は出せない。
俺の事情をナデシコクルー全員が知っているという訳ではないからだ。
俺が木連に、しかも、軍内事情に詳しすぎたら、おかしいだろう?
シラトリさんについては皆知っているし、ある程度の事はケイゴさんから聞いたように振る舞えば違和感なく説明できる筈。
「檻から飛び立とうとする鳥の枷になってもらう。これは自由になろうとする三羽烏を抑える人質にするという意味だと思います」
「・・・ごめんなさい。ユキナちゃん。貴方の恐れていた事が本当になりそう」
「・・・ミナトさん」
ユキナちゃんを絶対に護ると俺はツクモさんに誓った。
それなのに・・・。
「もう一つは何なのだね?」
「総参謀長ならお分かりかと」
「うむ。地球に囚われていた人質を救出したとでも言うつもりだろう」
「恐らく」
「それによってどう変わるってんだ?」
ガイ。分からないかな?
「ガイ。ゲキ・ガンガーは地球を救った。ヒーローだよな?」
「おう。老若男女を魅了するヒーローだな」
「それと同じだ。囚われの人質を解放したヒーロー。有名になる」
「有名になれば、支持も得る。草壁派の勢力が増すという訳だね」
「そんなのヒーローじゃねぇ! ヒーローは正々堂々―――」
「ガイ。過程より結果。悪巧みの事なんて教える訳がないだろ。ただ人質の救出に成功した。過程を除いた結果だけで充分人は付いてくる」
「クソッ! そんなの許せねぇ!」
「でも、それが真実なんだ。草壁派の支持率が上がれば、より徹底抗戦の波が強くなる」
ユキナ嬢は木連では死んだ事になっている。
そんな者が生きており、草壁派によって救出された。
そうなれば、圧倒的な支持率を得るだろう。国民は何も知らないのだから。
三羽烏は既に話を大将から聞いており、それが草壁の陰謀だと分かる。
でも、それが分かっても、ユキナ嬢が人質にされていたら従うしかない。
結果、草壁派は曖昧な位置にいる三羽烏を完全に引き込む事が出きる訳だ。
完全に三人からの信用を失うだろうが、敵に付かれるよりは断然良い。
ユキナ嬢の誘拐により、草壁派は裏切れない仲間と強い国民の後押しを得る。
「それなら、北米支部はどうなんだ?」
「それは・・・」
思わず総参謀長の方を見てしまう。
何より被害を受ける人は、参謀なのだから・・・。
「マエヤマ君。分かっているのなら、説明してあげて欲しい」
「ですが―――」
「私には何の遠慮もいらない」
・・・既に総参謀長は理解しているんだな。俺なんかよりも早く深く。
「ユキナちゃんはナデシコの一員である前に木連より送られた和平の使者です」
「ええ。そうね」
「その為、俺達は何としても彼女を護らなければならないという義務があります」
和平の使者が殺された。
それは取り返しの付かない責任問題。
「たとえ木連に攫われ、木連に戻っただけだとしても、それを周囲は分からない」
「・・・知らない人間に攫われ、知らない場所に囚われている」
「そうです。たとえば、俺が誘拐されただけだったら、俺を切り捨てればいい」
「・・・コウキさん。そんな事、言わないで下さい」
「あ、うん。ごめん。セレスちゃん」
そんな辛そうな顔をしないでくれ。セレス嬢よ。罪悪感が・・・。
あくまで例え話なんだから、ね。
「コホン。とにかく、ユキナちゃん以外の誰かであれば、大きな問題にはなりません」
充分、誘拐は犯罪なんだけどね。
「ですが、ユキナちゃんだけはどうしても責任問題まで発展します」
「・・・護るという義務があるから。その責任は・・・」
「はい。ユキナちゃんを保護していた部隊の最高責任者の責任になります」
「それじゃあ、ナデシコか?」
「え? わ、私ですか!?」
艦長が慌てた様子で自身を指差す。
確かにユキナ嬢を保護していたのはナデシコだ。
でも、そのナデシコも組織図から見れば、末端に過ぎない。
「いや。ユリカ君。君ではない」
「それなら、一体誰が責任を・・・」
「私だ。私が責任を取らねばならない」
「総参謀長が!?」
そう、現時点の最高責任者はムネタケ総参謀長になる。
「ナデシコが保護していたという事は極東方面軍が保護していると同じ。極東方面軍の最高責任者はミスマル総司令官だが、現在、彼はいない。そうなれば、代理として最高責任者の席にいた私が責任を背負わねばならないのだ」
ミスマル総司令官の代わりに最高責任者の位置にいたムネタケ総参謀長。
彼の存在は非常に大きかった。
極東方面軍の最高責任者としても活動し、ミスマル総司令官がいない間の改革和平派を纏めていたのも総参謀長。
「北米基地の狙いは私さ。徹底抗戦派が多く属する北米基地にとって私は邪魔でしかない」
ミスマル総司令官が戻ってこない以上、この派閥を引っ張れる者はいない。
候補はいるだろうが、その席を奪い合い、関係性に罅が入りかねない。
ムネタケ総参謀長だから成立していたのだ。
ミスマル総司令官の右腕、改革和平派のNo.2として周囲に知られていた彼だからこそ。
ムネタケ総参謀長を失う事は改革和平派の勢力を弱める事に繋がってしまう。
「で、でもよぉ、北米支部のせいなんだろう? それなら、そう真実を告げてやればいいんじゃねぇか?」
スバル嬢。駄目なんです。
「そうできないように輸送機を撃墜させたんですよ。全ては証拠隠滅の為です」
「そんな・・・。ど、どうにか出来るだろ。いくらでも方法は―――」
「俺のもあくまでも疑惑でしかないんです。明確な証拠は海の底に」
「クソッ! どうしてだよ! こちとら正々堂々やってんのに!」
ユキナ嬢があの輸送機にいた。
誰がそんな事、証明できるんだ?
たとえ出来たとしても、その証拠源が不明確過ぎて無効扱いされる。
北米は木連と手を組み、輸送という名目で極東支部を罠に嵌めた。
戦闘で一番の被害を受けた北米支部にそんな事を言える訳がない。
言った瞬間、倫理に欠けるとされ、世界中から批判を喰らうだろう。
ユキナ嬢は安全を考慮し、木連に返した。
それこそ苦し過ぎる言い訳だ。誰もそんな事は信じない。
俺達が総参謀長に責任を負わせない方法は誘拐の事実を隠蔽するしかない。
どれだけ最善を尽くそうと俺達にマイナス以外はないのだ。
真実は闇の中、疑惑を突きつけようと、その前に誘拐された事実を公表しないといけない。
彼らは輸送機一機と補給物資分の損だけでこれだけ大きな利を得たのだ。
北米支部、いや、木連と手を組んだ者達のほくそ笑む姿が目に浮かぶ。
その者達は極東支部の弱みを握ったに等しいのだ。
対等になる為には最高責任者を犠牲にし、碌に人を護れない無能集団という汚名を被らなければならない。
それが今後、どれだけに悪い影響を残してしまうか・・・。
「ふむ。これ程の大事であれば悪くて銃殺刑、良くて追放だろうね」
「ど、どうしてそんなに冷静でいられるんですか!?」
「ユリカ君。落ち着きなさい」
「でも!」
・・・本当にいつもと変わらない。
もっと動揺したって、慌てたっていい筈。
それなのに、いつものように泰然としていて・・・。
「私には息子が、サダアキがいる」
「・・・提督が」
「そう。私がたとえ死のうとも、私の意志は息子に受け継がれる。私の願いは息子が叶えてくれる。何を恐れる必要があるのだね?」
・・・笑っている。どこまでも澄んだ笑顔で。
どうして・・・どうして、そんな綺麗に笑えるんだ?
「ふふっ。優秀な息子を持った私は幸せだな。私の後は息子が私以上にこなしてくれるさ」
・・・黙り込むしかなかった。
今、和平に向けて俺以上に世界を走り回っているこの場にはいない彼の息子。
総参謀長の顔はそんな息子を心から信じ切っている顔だった。
とてもじゃないが口は出せない。
「さて、ユリカ君」
「は、はい」
「遂に君の出番が来たようだよ。利用される前に手を打とう」
「え?」
「ミスマル・ユリカ!」
「ハ、ハッ!」
突然、大声で艦長の名を告げるムネタケ総参謀長。
艦長は慌てた様子で返事をした。
「本日より、改革和平派代表の座を君に譲る。命を懸け、和平に向けて働いて欲しい」
「わ、私が代表?」
「復唱はどうした!」
「ハ、ハッ! 私、ミスマル・ユリカは本日より改革和平派代表に就任致します」
「うむ。これで私も一安心だ」
突然のポスト交代。
困惑する艦長を尻目に総参謀長はにこやかに笑っていた。
「ユリカ君」
「は、はい」
「此度の責任は全て私が負う。君には何の関係もない」
「で、ですが!」
「それが和平の為だ。その信念の前に、私の生死など何の意味も持たない」
「・・・総参謀長」
「そう呼ばれるのもあと少しだろうね。私は連合軍最高司令官に自ら報告し、辞任しよう」
どこまでも理想の為に生きる人だ。
自身の死すら恐れずに、後世を若者に託して、自らを犠牲とした。
全ての責任を総参謀長が負えば、後任のユリカ嬢には何の負い目もなくなる。
「アオイ・ジュン」
「ハ、ハッ!」
涙を堪えながら、総参謀長に敬礼を返すジュン。
「代表を護るのは君だ。君の仕事だ」
「ハッ!」
「全力を尽くせ」
「ハッ。命を賭して、働きます」
ユリカ嬢と縁の深い総参謀長だ。
きっとジュンにとっても身近な存在であっただろう。
尊敬する上官が自らを犠牲にしてまで自分達の為に尽くしてくれた。
それが嬉しくて、それが悲しくて。
「・・・命を賭して・・・」
涙を抑えきれないんだと思う。
溢れんばかりの涙を溢すジュンに微笑みかけた後、総参謀長が俺達の方を向く。
「ナデシコの諸君」
「「「「ハッ!」」」」
軍人じゃないナデシコクルーの精一杯の敬礼。
形は雑。姿勢も雑。でも、その思いはどこまでも真っ直ぐだ。
「ユリカ君を支えてやって欲しい。仲間として、家族として」
「「「「はい!」」」」
「ナデシコの諸君ならばどんな苦境をも越えられると信じている。今後の未来を支えるのは老い先短い私のような老人ではない。君達のような未来ある、将来ある若者なのだ。私に若者の可能性を見せて欲しい。私に君達を信じさせて欲しい」
総参謀長の言葉が胸に響く。
「私は犠牲になるのではない。未来に希望を残す為の糧となるのだ。振り向くな。前だけを見ろ。自らの信じた未来だけをただ一心に見詰めて欲しい」
どこまでも澄んだ笑顔。
どこまでも俺達を信じきった笑顔。
・・・零れ落ちる涙なんてその笑顔のスパイスにしかならなかった。
悲観でもなく、絶望でもなく、憎しみでも恨みでもない。
総参謀長の表情にあるのは、希望、信頼、歓喜、ただそれだけだった。
未来を託す息子。未来を託せる若者達。
その出会いを心から喜び、ただ前だけを一心に。
策略陰謀に優れた男の心は誰よりも真っ直ぐ綺麗なものだった。
後日、ミスマル・ユリカ代表就任と同時にムネタケ・ヨシサダの処分が決定した。
彼に下された処分は連合軍からの永久追放。
国を憂い、国を愛し、ただ未来の安寧の為に尽くした男の悲惨な結末であった。
だが、その顔はどこまでも穏やかであったという・・・。
未来の為に無能者の汚名を被り、最後まで和平の為に尽力した彼の存在を俺達は忘れてはならない。