機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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代替方法

 

 

 

 

 

「それにしても、ケイゴさんはどうしたんだろう?」

 

ナデシコが地球に帰ってきてから数週間が経つが、ケイゴさんからは未だに連絡がない。

う~ん。忘れているって事はないだろうし。

もしかして、草壁派の妨害工作にあっているとか?

・・・可能性としてはありえそうだな。

奴らの情報収集能力を軽視してはいけない。

実際、ケイゴさんの所から戻ってくる途中に俺は落とされたんだ。

ケイゴさんは、いや、神楽派は草壁派に監視されていると見ていいだろう。

そうとなれば・・・。

 

「コウキ」

「あ。アキトさん。お疲れ様です」

「ああ。コウキこそ、お疲れ様」

 

相変わらずクールなアキトさん。

若干汗を掻いているし、訓練でもしていたのかな?

 

「木連和平派から連絡は来たのか?」

 

その話でしたか。

ちょうど同じ事を考えていました。

 

「いや。残念ながら、まだです」

「・・・そうか。随分と待たせるな」

「・・・すいません」

「いや。コウキに言っている訳ではない。やはり大変なのだろうか?」

「恐らくそうでしょう。草壁派は優先的に神楽派の妨害をしていると考えられます」

「草壁派の策。和平交渉時の味方殺しか・・・」

「それを知っているというのが俺達の利点ですね。阻止し、かつ、利用できます」

「利用か・・・。人が死ぬか死なないかという瀬戸際なのに、な」

「・・・ええ。俺も随分と汚くなった気がします」

 

・・・若干、自己嫌悪。

昔の俺なら利用しようなんて考えなかった筈。

策略とか権謀とか、汚い世界に足を踏み入れてしまったからな。

嫌われちゃいそうだよ、本当に。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

・・・暗くなっちゃったな。

 

「と、とりあえず、俺達は待つ事しか出来ません」

「・・・そうだな。信じて待つしか―――」

 

ウィーンウィーンウィーンウィーンウィーン!

 

「敵襲か!」

 

突如鳴るエマージェンシーコール。

最近は忙しくて戦闘に参加できなかったけど、今回はここにいるし。

データ収集+自身に新型機を慣れさせる為にも参加しようかな。

 

「ブリッジへ向かいましょう」

「ああ。急ぐぞ」

「はい」

 

なんとなくだけど、今回の襲撃には意味がある気がするな。

流石に、木連も無闇に戦闘を仕掛けて来る程、愚かではないだろうし。

ひょっとしてケイゴさんが俺達に向けて何かを?

・・・まぁ、戦闘終了後には全てが分かっている事だが。

 

 

 

 

 

「なんでこうなる」

「しょうがないでしょ。実戦データが欲しいって言ったのはコウキ君なんだし」

 

戦闘が開始しました。

僕はそれをブリッジから眺めます。

・・・参加したいって言ったよね?

 

「確かに言いましたけど、別に乗りながらでも・・・」

「残念ながら、数が足りなかったんだってさ」

「ガーン」

 

数が足りない。

その理由は単純明快、分解中であるという事。

軍や明日香では生産ラインを整えてあるらしいから、それぞれの追加装甲について熟知していると思うけど、ナデシコ内では取扱説明書程度の知識しかない。

その為、一度完全に解体して組み立直す事で理解を深めようという訳だ。

いきなり実戦配備して損傷でもされたら、どうしていいか分からないからね。

一度きりならいいけどさ。

何度も整備しては実戦、なんていうのを繰り返すかもしれないし。

きちんと機体の内部、武器、外部、細部を把握して、いつでも完璧に近い状態に持っていけるようになって、その状態・環境で初めて戦場に出す事が出来るという訳さ。

新しいフレーム、武器なんかが来た時も同様の事をやっているので、今回だけの特殊なケースという訳ではない。

これから戦闘を続けていく上で欠かせない準備という訳だ。

今回は残念ながら、その分解中に戦闘が始まってしまったので、数が足りずにお留守番。

まぁ、致し方なしといった感じだ。

 

「・・・しっかし、俺も一応パイロットなんだしさ。乗りたかったよ」

「ほら。不貞腐れてないで。仕事しなさい」

「うっ。・・・はい。分かりました」

 

それもそうか。

仕事しましょう。

 

「セレスちゃん。手伝って欲しいんだけどいいかな?」

「・・・はい。任せてください」

「うん。よろしく」

 

さて、セレス嬢の協力も得られたので・・・。

 

「久しぶりに使いますか」

 

スチャッと懐からバイザーを取り出す。

若干進化したナデシコのレールカノンカメラ接続用の端末。

装着すれば全方位が視界になるという優れものだ。

ナノマシンの扱いもこれでもかという程で大分慣れたしね。

さて・・・今の戦況はどんな感じだ?

 

『各機散開。いつも通りだ』

『『『『『『了解!』』』』』』

 

・・・既に乗りこなしていますねぇ。

現在、パイロット勢が搭乗している機体には全て追加装甲が取り付けてある。

取り付けてあるのはおっちゃん達から支給された二種類の追加装甲。

この二種類に関してはどちらも分解は終了している為、いつでも使用可能なのだ。

明日香から支給された追加装甲に関しては分解している最中なので運用を見合わせている。

それなら、おっちゃん達からもらった追加装甲を付ければいいじゃないかって?

ナデシコでは、追加装甲ばっかりあっても意味がないってあんまり数は揃えてないのだ。

・・・それ故に、俺の出撃機会は失われた、という訳。

ま、いいんだけどさ。

 

「えっと、現在のナデシコ戦力は・・・」

 

ナデシコ内にあるのは、まずスーパー戦フレームが一つ。

まぁ、予備パーツ含め場所を取るから仕方ないとも言える。

そして、肝心のリアル戦フレームだが・・・。

何故か、六つしかない。そう、何故か。

スーパー戦フレームにガイが乗るとして、残るパイロットは七人。

あれれ? 数が合わないぞ? 状態に陥る訳だ。

ま、明日香の追加装甲を数に入れれば充分足りるのだけど。

リアル戦フレームはバランスが良いので、多めに数をもらったらしい。

どんな作戦にも対応できる万能な機体だからな。

知的お兄さんの理想を体現した機体って感じだ。

 

「ホント、良い開発をしてくれたよ。おっちゃんも知的お兄さんも」

 

軍としても大助かりだろうな、こういう開発をしてくれたら。

戦力の底上げができるし、木連にも遅れを取らなくなるから、軍の面目を保てる。

あ、そうそう、この新しい追加装甲だが、軍内における運用方針が決定したらしい。

軍の方針としては各基地にそれぞれエステバリスと明日香の新型量産機を配備させて、軍戦力の拡大を図る。

そして、その上で、リーダー機用やエースパイロット用に知的お兄さんのリアル戦フレームを、基地防衛用や大規模作戦用におっちゃんのスーパー戦フレームを、後方射撃部隊や後方支援部隊用に明日香の後方支援特化追加装甲をそれぞれ用意するつもりらしいのだ。

なかなかにバランスが取れた運用方針だと思う。

しっかし、リアル戦フレームやらスーパー戦フレームやら後方支援特化追加装甲やら名前がバラバラで言いづらいな。

これは簡略的な呼び名を用意した方が良さそうだ。

こんがらがってしょうがない。

 

「しっかし、鬼に金棒というかなんというか」

 

シミュレーターの時は慣れない機体に四苦八苦していたようだったけど・・・。

驚くぐらいの適応能力、そして、戦闘能力。

流石ナデシコパイロットだ。

 

「見た限り、かなり有効的な気がするわね、追加装甲」

「そうですね。以前よりスムーズに進んでいる気がします」

「・・・機体性能の向上に伴い、以前より数倍の速さで既定数を撃破しています」

 

なるほど。貴重なご意見をありがとう。セレス嬢。

 

「これらが軍で出回って、しっかりと扱えるようになればかなりの戦力向上になりますね」

「そうね。優勢に立てるかも」

「向こうが無人機である以上、殲滅戦でも問題ないですしね」

 

しかし、無人機の量産は本当に性質が悪いぜ。

そりゃあ、既にエステバリス一機で何体分もの活躍が出来るさ。

でも、やっぱりパイロットは人間な訳だし、人海戦術は堪える。

疲労がないのは結構大きいのかもしれん。

まぁ、無人機同士での戦争は唯のゲームになっちゃうから断固として反対だけどね。

人間の感情があるから戦争が起こる。

それは当然の事だけど、逆を言えば、人間の感情があるからこそ戦争は収まる。

それは被害だったり利益だったりするけど、確かに人間の力だ。

それがどうだろう、無人機同士の戦いだったら・・・。

恐らく戦争は永遠に終わらない。

その背後に人間がいようと、危機感も平和への意思も芽生えないのだから終わる事はない。

戦争を対岸の火事にしちゃいけないんだ。

当事者にならないと何も考えようとしない。

こうして和平へと意思を重ね合わせられたのは人間の意志があったからだと俺は思う。

 

「さて、そろそろ・・・ん?」

 

敵の数も少なくなってきて、そろそろ終わりかなという時、ちょっとした違和感に気付いた。

一体? 一匹? まぁいいや、そいつだけ妙に動かない。

そのくせ弾丸だけは見事に避けている。

これはさぞかし倒しづらいだろうなぁと思いしばらく眺めていたのだが・・・。

 

「なんだか何かしらの意味がある気がしてきたぞ」

 

近付こうとも逃げようとしない一定の距離感。

ひたすらにナデシコを見詰めるその瞳は普通とは違う気がする。

あ、ちなみに相手はバッタだから、あしからず。

 

『うおっしゃぁ! ラスト!』

 

というか、いつの間にか残りがそいつ一機に。

 

「ちょ、ちょっと待て!」

『う、うお、何だ? コウキ』

「撃破する前にちょっと様子を見させてくれ」

『あん? どうしてだよ?』

「いいから」

 

今、確かにガイの拳に反応していた。

しかし、攻撃されたというのに逃げようともしない。

これは明らかに意味がある。

 

「アキトさん」

『どうした? コウキ。あと一機なのだが・・・』

「その一機ですが、妙だと思いませんか?」

『妙?』

「ええ。他の奴らより俊敏さに優れているくせにまるで見守るように戦闘区域の外で待機。攻撃しようともせず、逃げようともしない。こいつの意図が俺には分かりません」

『確かに。だが、意味なんてあるのか?』

「恐らくは・・・」

 

もしかしたら、ケイゴさんからのメッセージかもしれない。

チューリップの受け渡しについての連絡とか。

いや、過信は出来ないけど。

元々、戦闘中にチューリップを紛れ込ませているから受け取ってくれ、というのが俺とケイゴさんの間で決めた受け取り方法だった訳だし。

 

「アキトさん。似たような事が以前にもありませんでしたか?」

『ん。いや。あったのかもしれんが、気付いたのは今回が初めてだな』

 

初めてかぁ・・・。いや、もしかしたら何度か送られていたのかもしれないな。

地球に帰ってきてからも何度か戦闘はあったらしいし。

ケイゴさんとしても妨害工作にあって、チューリップが送れないから、どうにかしてバッタで連絡を取ろう、としてくれたのかもしれない。

そして、未だに連絡が取れずに焦っているなんて事も・・・。

でも、あれがもし草壁派とかだったとしたら・・・。

安心しきった時に銃を放たれるなんて事があるかもしれない。

クソッ。どうする? どうするのがベストなんだ?

・・・俺が行くか。

 

「皆さんは一度帰艦してください。艦長」

「はい。何でしょう?」

「俺は今からあれを回収、もしくは解析してきます」

「そ、それは危険です」

「いえ。何かしらの意味がある。俺はそう考えています」

「し、しかし・・・」

『それならば、ひとまず推進装置やら武装やらを破壊してから回収すれば良かろう』

 

え? そんな事ができるんですか? アキトさん。

 

「アキト。そんな事、出来るの?」

『ああ。構造は把握しているからな。データに損傷が出ないよう慎重に回収しよう』

 

すごいな。俺じゃあそんな事はできない。

 

「御願いします」

『任せておけ』

 

助かります。アキトさん。

 

「どういう意味があるって考えているの?」

 

問いかけてくるミナトさん。

他のブリッジクルーからの視線も感じる。

 

「以前、俺が神楽派と伝手があるという話はしましたよね」

「ええ。連絡ができるように小型チューリップを受け渡してもらい相互に連絡が取れるようにするって奴ね。それで、ナデシコ内にその為の場所も確保してある」

「はい。しかし、期限の一ヶ月を過ぎましたが、なんの音沙汰もありません」

「それでコウキ君はあのバッタが神楽派からのメッセージだと考えているのね?」

「はい。でも、確実にそうとは言い切れないので怖いのです」

 

もしかしたら、草壁派の工作かもしれない。

暗殺や監視、バッタ単体でも出来る事は結構ある。

 

「監視している可能性もあるわよね、ナデシコを」

「ええ。木連でもナデシコは有名ですから」

「和平の神楽派から徹底抗戦の草壁派か、どっちのバッタか分からないから、コウキ君は慎重になっているのね」

「はい。草壁派の監視であればすぐに破壊した方がいいと思うのですが・・・」

「神楽派のメッセージならきちんと確保しておきたいわよね」

「ええ・・・」

 

連絡が取れないと話が進まないからな。

和平を実現させる為にも、少しでも早くに接触して話し合いをしておきたい。

 

「監視の可能性は低いんじゃない?」

「イネスさん」

 

またもやいつの間にか後ろに。

やっぱりボソンジャンプをマスターしたのでは?

 

「私達ナデシコは今まで遭遇した敵の機体は全て確実に撃破してきた。だから、相手はこちらの情報を手にしていないと言えるわ」

「ええ。そうなりますね」

「もし監視が目的で今までの実績を考えると、戦闘中にでも逃げようとする筈よね? それなのに逃げる素振りを見せないというのは監視が目的じゃないからと考えられない?」

「ええ。その通りだと思います」

 

俺もそう思います。でも・・・。

 

「分かっているのなら監視を候補から外せばいいじゃない」

「はい。でも、万が一、万が一ですが、それが敵の狙いだったらどうしますか? あえて回収させた後、生身のパイロットを狙って銃撃されたら・・・」

「・・・性質が悪いわね。でも、ありえない話ではないわ」

 

ありえない話じゃない。だから、安易に判断してはいけないんだ。

 

「なるほど。それならアキト君の提案は渡りに船ね。相手の攻撃手段を排除してから捕獲する訳だし」

「ええ。監視なら捕まえる事で意味を成しませんし、メッセージなら安全に受け取れます」

 

どちらでも問題ないという解決方法。

本当に感謝です、アキトさん。

 

「それにしても、貴方も色々と考えているのね」

「まぁ、備えあれば憂いなしといいますし。臆病ですから」

「ま、過信して油断を招くよりは何倍もマシだからいいんじゃない」

「アハハ」

 

一応、フォローしてくれたのかな?

 

『回収したぞ』

「お疲れ様です」

『ああ。とりあえず格納庫の方へ運んでおいた』

「分かりました。すぐに向かいます」

『一応、外側からは潰しておいたが、まだ不安だからな。内側から機能を停止してくれ』

「了解しました」

 

ソフト面で停止させないと怖いですからね~。

 

「艦長。ちょっと行ってきます」

「はい。後で報告御願いします」

「了解です」

 

さて、結果はどっちなのだろうか。

それは行ってからのお楽しみってか?

 

 

 

 

 

「これだ」

「ありがとうございます」

 

アキトさんに指し示されてバッタのもとへと向かう。

それまでは一応危険という訳でパイロットや整備班には隠れていてもらった。

まぁ、銃口側にいなければ万が一もないだろうけど、一応ね。

 

「機能停止っと」

 

いやぁ。バッタはソフト面のブロックが貧弱で助かります。

あっという間に制圧してしまいましたよ。アッハッハ。

 

「もう大丈夫ですよ」

 

その言葉をきっかけにぞろぞろ集まってくる連中。

 

「それで、何でこいつを回収させたんだ」

「奇妙だったから、こいつ。何かしらの意味があるんじゃないかなと」

 

再びコンタクト。

何かしらのデータが・・・。

 

「そんなもんあるのかねぇ?」

「ま、なかったらなかったでいいんじゃない?」

「そうね。別に問題ないわ」

「はい。あったら良いぐらいの気持ちでいいかと」

「とりあえず、早くして欲しいんだけど」

 

はいはい。

 

「えっと・・・」

 

お、あった、あった。

 

「ありました。とりあえず映像データらしいので流しましょう」

 

バッタの背中から映像が飛び出して空中に。

今更ながら、3D技術って凄いな。

 

『この映像を見ているという事は無事に辿り着けたという事でしょうか』

 

あ。ケイゴさん。

 

「誰だ? こいつ」

「この人はカグラ・ケイゴさん。神楽派の代表の息子さんです」

「お、という事は向こうの和平派からの連絡って事だな」

「はい。そうなります」

 

やっぱり、そうだったか。

ひとまず安心だな。

 

『こちらの不手際でご迷惑をおかけして申し訳ありません。連絡の取りようもなく、何度も襲撃をかけるような真似をして申し訳なく思っています』

「それじゃあ地球帰還後の戦闘はほとんど連絡を取る為だったって事か?」

「紛らわしいなぁ。おい」

 

でも、仕方のない事なんだよな。

バッタ単体でいたら確実に怪しいし。

違和感なく、連絡するならこういう形でやるしかない。

要するに、今までもずっと連絡を取ろうとしてくれたって訳だ。

もっと早く気付けてればって思う。

 

『こうして強引な連絡しか取れなかった事から分かるように、残念ながら約束していた方法は失敗に終わってしまいました。受け渡そうとする度に破壊されてしまったようで・・・。所属不明でしたが、恐らく草壁派でしょう』

 

やっぱり妨害があったのか。

神楽派は常に監視されている。

今後はその事を念頭に置いて物事を考える必要がありそうだな。

 

『急な話であり、そちらの都合を聞かずに大変申し訳ないのですが、妨害工作が繰り返される以上、私達と貴方達が連絡を取るには草壁派にバレないよう極秘で接触するしかありません。そちら側の移動時間などを考慮して、付属データの通りに所定の場所まで来て頂けないでしょうか』

「付属データ?」

「ああ。多分、これです」

 

もう一つのディスプレイを展開。

しっかし、厳重なロックだったな。

バレてはならない最も重要なものだから仕方ないか。

これは俺のソフト面の扱い、所謂ハッキングの腕を信頼していたという事だろう。

・・・なんか複雑な気分だ。

 

「地球近海って所か? まぁ、行くのには割と時間が掛かるが」

「それでも俺達にとっては近い方だろうよ」

「まぁ、向こうは便利な移動方法があるし遠くても大丈夫なんだろ?」

「しっかし、そこに着くのに一週間ぐらいは掛かるんじゃねぇか?」

「だからだろ。日時指定」

「一応、時間的に余裕はあるわな」

「移動時間を考慮してって言っているんだから、多めに取ってあるんだろ?」

「到着次第こちらから接触します、だってよ」

「・・・なぁ、これって罠じゃねぇのか?」

「確かに。その可能性もなくはないよな」

「おう。必ずしも確実にこいつが言ったとも限らないんだろ?」

「捏造っちゅう訳か?」

「怖いな。罠だったりしたらよ」

 

・・・その点も考慮しなくちゃならないか。

整備班の皆さん、ご意見ありがとう。

 

『そこで落ち合い、今後の話し合いを行いたいと思います』

 

両派閥のトップ同士の会談か。

出来る事ならば実現したいけど、罠である事を考慮すると・・・。

 

「コウキ。残念だが、その日はちょうどミスマル司令の演説の日だぞ」

「え? 正式に決まったんですか?」

「ああ。昨日、司令から連絡が来てな」

 

・・・ミスマル司令は当然演説を優先しなければならない。

そうなると、ミスマル司令をその場所まで送る事は出来ないな。

移動時間とかも考えて。

さて、どうするか。

 

『この事を和平派のトップの方にお伝え下さると幸いです』

 

そうだよな。トップには報告しておかないと。

しかし、用心しているなぁ。ケイゴさん。

既にトップである司令と接触しているのに、隠す為に知らない振りなんかしているし。

チューリップの受け渡しも約束の方法とか言って誤魔化しているしね。

所謂、必要最低限の情報しか載せず、重要なデータは厳重にロックって奴。

いやぁ。流石に色々と考えているわ。

必ずしも草壁派に拾われて漏洩しないとも限らないし。

秘密だったからな、ケイゴさんが極秘で地球に来ていたって事。

ロックされたデータさえ露見しなければそれほど影響はない。

・・・接触を図っているって事はバレてしまうだろうけど。

まぁ、そんなのはとっくに知っているだろうからやっぱり問題はないな。

 

「とりあえずミスマル司令に相談したいと思います」

 

罠とか色々と考慮しなくちゃならないし・・・。

 

「ああ。それが良いだろう」

「とりあえずデータをコピーして艦長と司令に提出しましょう」

「そうだな。そうしよう」

 

うん。まずはそれが最優先かな。

 

『また、ナデシコがメッセージを受け取った証として、次回の戦闘時でチューリップを破壊する前に捕獲したバッタを送って頂きたく思います』

 

まぁ、受け取ったって事を知らないと困っちゃうだろうしね。

 

「了解っと」

 

途中で誰かしらに拾われたら困るだろうからデータは全削除だな。

とりあえずこっちには今の映像を保存したデータがある訳だから問題ない。

向こうは向こうで自分達が送ったのだから理解しているだろうし。

 

『最後になりましたが、これを機に両陣営が歩み寄れる事を願っています。強引な方法で大変申し訳ありませんでした。それでは、私はこれで失礼させて頂きます』

 

ありがとう。ケイゴさん。

なんだか希望が見えてきた気がします。

おし。今まで連絡が取れなくて不安だったけど、ようやく連絡が来た。

急だけど、会談もセッティングできたし、これで足並みを揃えられる。

ミスマル司令は流石に厳しいだろうから、№2のムネタケ参謀にでも御願いするかな。

申し訳ないけど、大切な日だから、司令は諦めてもらうしかない。

 

「火星の方への報告は会談後すぐにしたいから・・・」

 

参謀はナデシコで送っていくとして、俺とアキトさんは火星の方達の所にいるとしよう。

司令の演説後、すぐに火星の方達を説得した方が納得してもらえる気がするし。

おぉ。なんか色々と明確なビジョンが見えてきたな。

更にやる気が出てきた。

二週間後の3月24日が勝負か・・・。

とりあえず、火星側で誰かしら味方を作っておこう。

出来るだけ求心力のある人を。

おっしゃ。和平提唱に火星再生機構の発足などなど。

やる事はまだまだたくさんあるぞ。

気合入れて頑張るとするか。

 

 

 

 

 


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