機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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守りたいものがある

 

 

 

 

「私の見解では、ナナフシのマイクロブラックホールの生成は十二時間。ほぼ半日ね。攻撃を受けたのが・・・」

 

現在、イネス印のホワイトボードを前に説明を受けています。

余裕は後十一時間とちょいしかないという現状。

しかも、相転移エンジンに被害が及んでいる為に、ナデシコの脱出は不可能。

とにもかくにもナナフシを潰すしかないという結論に達した。

不幸中の幸いは人的被害がなかった事かな。軽傷を負った人はもちろんいたけど、重傷患者はいなかった。安心したよ。

整備班は今から相転移エンジンの突貫作業に入るらしい。少しでも修理しておいた方が良いのは確かだしな。

 

「これが想定していたという事なのか。冷静に物事を考えられる」

 

ジュン君がなにやら感心したように呟きます。

 

「緊急事態になっても冷静でいられるのは良い事よ。誰の差し金かは知らないけど・・・」

 

げっ? そこで何故俺を見る? 俺じゃないし。アキトさんだし。

 

「ま、いいわ。それでは、以上で説明を終わります。起立。礼」

「ありがとうございま―――」

「って、違う! ここは学校じゃないっての!」

 

ナデシコクルーはノリが良過ぎます。

 

「後は艦長に任せましょう」

 

そう言って颯爽と去っていくイネス女史。

その途中、俺とすれ違いながら・・・。

 

「挨拶も碌に出来ない生徒は補習よ。覚悟してなさい」

 

・・・とかおっしゃっていました。

いや。勘弁してください。身も心も疲れ果ててしまいますから。

 

 

その後、しばらく時間を置いて、作戦が発表された。

どうやら作戦会議をしていたらしい。艦長、副長、ゴートさん、アキトさんの四人で。

 

「それでは、作戦を発表します」

 

ナデシコによる破壊が失敗した以上、エステバリスで叩くしかない。

それはもう最初から分かっていた事だ。

「エステバリスで地上よりナナフシに接近し破壊します」

「作戦開始は一時間後とする。砲戦を三機、陸戦を三機の構成で作戦を実行してもらう」

 

原作と違ってガイが生きている。

その分、砲戦が一機増えるから、攻略は楽になりそうだ。

あ、それと、多分、外付けバッテリーはガイが持つんだろうな。

アキトさんに持たせるとかまずないだろうし、エースパイロットだしね。

頑張れ、ガイ。それも愛の試練だと思って。

 

「作戦指揮はテンカワ。任せたぞ」

「ああ。了解した」

 

心強い返事。

不思議な事に不安や恐怖はまったくない。

きっとアキトさんを始めとする優秀なパイロット達に対する信頼がそうさせるんだろうな。

だから、ブリッジの皆にも負の感情はない。

彼らなら絶対に何とかしてくれる。

そんな強い信頼関係がナデシコクルーにはある。

あぁ。これがナデシコなんだな。

クルー達の団結力こそがナデシコが強い所以。

性能や武装ではない。クルー一人一人の強さがナデシコの強さなんだ。

 

「コウキ。留守は任せたぞ」

「はい。アキトさん」

 

俺に何が出来るか分かりませんが、任されました。

 

「ま、お前の出番はねぇけどな」

「うるさいよ。荷物番」

「て、てめぇ、それは言わない約束だろ」

「・・・信じているぞ、ガイ」

「おう! きちんと成功させて無事に帰ってきてやるよ」

「ああ。メグミさんを悲しませんなよ」

「あったりめぇだ!」

 

まったく。頼り甲斐のある男になりやがって。

 

「コウキは気楽に待っていてよ」

「おう。俺達がミスる訳ないしな」

「クックック」

「頼むよ、皆」

 

パイロット三人娘。

彼女達の腕なら大丈夫だ。

 

「ねぇねぇ、君はどうするのかな?」

「・・・アカツキ・ナガレ」

「もし、ナデシコが危機に面したら、何もしないで震えているの?」

「何!?」

「恋人が乗っているんでしょ? それなら、きちんと男を見せないとね。僕のように」

「軟派野郎は男らしくないと思うけど?」

「ま、この作戦で彼女達は僕に惚れるよ。男らしい背中を見てね」

「ないない。ま、精々頑張れよ」

「ふふっ。負け犬の応援はやる気が出るねぇ」

「クッ」

 

・・・ふぅ。落ち着け。怒った所で何も変わらない。

俺だって、いつまでもトラウマなんて言っていられないんだ。

いつまでも震えてはいられない。

 

「頼むぞ、皆」

 

次々とブリッジを去っていくパイロット達。

その心強い背中に作戦の成功を祈った。

作戦開始まで後一時間弱。

 

 

 

 

 

「えぇっと、何ですか? これ」

「無論、お前が着る奴だ」

 

パイロット達が出撃し、ブリッジには何とも言えない空気が漂っていた。

そんな時、まるでネルガル陣がブリッジにいない時を狙ったかのようにウリバタケさんがやって来て・・・。

 

「さぁ、これに着替えるんだ! 作戦司令部ならば当然の事だぞ」

 

・・・などなど言い出して、ウリバタケ秘蔵コレクションから色々と持ってきた。

いいよ。普通に軍服な人は。でもさ、ルリ嬢は・・・原作通りだから、覚悟はしていただろうけど、ラピス嬢とセレス嬢は何?

ラピス嬢は西欧の甲冑姿で凄く重そう。セレス嬢は騎士甲冑っていうの? 物凄く派手なんだけど。

地面に付きそうなぐらい長いマントっぽいのがあるのはどうかと思うんだ、うん。

それでさ、何で俺はこれなの?

 

「いいじゃねぇか。エリートのみが着る事を許された白服だぜ」

「あれですか? 仮面はデフォですか?」

「無論だ。あのシリーズの敵キャラは仮面と決まっているんだよ」

「・・・さいですか」

 

クソッ。こんなものを着なくてはならないとは。

認めたくないものだな・・・自分自身の若さゆえの―――。

 

「って、仮面違いだし!」

「あん? 何だ?」

「い、いえ。なんでも・・・」

 

はぁ・・・。素直に着るか。

 

「えっと、なかなか、似合っているの、かな?」

「・・・フォローになっていませんよ。ミナトさん」

「・・・仮面・・・ですか?」

「そうだよ。私の正体を隠す為には仕方なかったのだよ」

「成り切っているように見えて首が真っ赤よ」

「ク、クソッ。俺だって・・・。俺だってぇ・・・」

「使い方間違ってんぞ。マエヤマ」

「グハッ!」

 

完璧に負けました。ガクッ・・・。

 

「さて、俺は帰るぜ。またな」

 

ウリバタケ氏は満足して帰っていった。

 

「あら?」

「パイロット達は!? ・・・ん?」

「貴方達は何を・・・」

 

入れ替わるように現れるネルガル陣。

どこか嬉しそうな笑みを浮かべるエリナ秘書。

もはや諦めの境地に達したのか表情を変えないゴートさん。

絶賛胃腸炎中のプロスさん。

 

「ビシッ!」

 

ビシッ!

 

「・・・コスプレかね?」

「はい。司令部はこういうものだと聞きました。ビシッ!」

 

ビシッ!

 

「・・・作戦遂行中である。諸君、警戒を怠るな」

「了解! ビシッ!」

 

ビシッ!

 

「・・・・・・良いな」

 

・・・嬉しそうにしないでください。

それと、隠れていませんからね、そのガッツポーズ。

・・・あぁ。ゴートさんのイメージが。

 

「パイロットの方々の様子はどうなのでしょう?」

「順調に進んで―――」

「・・・き、機影反応です・・・」

 

え? 機影反応!? 敵!?

 

「ル、ルリちゃん!」

「・・・やられました。周囲、全方位囲まれています」

「な、何で? いつの間に・・・」

「罠だったようですね。ナナフシは」

 

う、嘘だろ? こんなの原作にはなかった。

エステバリスが留守の間に襲われるだなんて事はなかった筈だ。

 

「ナデシコは見事に餌に引っ掛かってしまったようです」

 

無情にも告げられる報告。

背筋が凍った。

 

「ル、ルリちゃん! 相転移エンジンの調子は?」

「整備班が頑張ってくれていますが、現状では半分程の出力しか」

「そんな・・・」

 

・・・完全に狙われた。

周囲を囲むように飛んでいるバッタ。

周囲を囲むように迫ってくる旧兵器。

戦車やら戦闘型飛行機やら装甲車やら。

どうやら制御が奪われてしまっているようだ。

現在、あれらは完全に木星蜥蜴の支配下にある。

敵戦力はエステバリスがいない今、圧倒的だ。

ただでさえ相転移エンジンが本調子ではないというのに・・・。

 

「敵反応、徐々に近付いてきています」

「DFを張ってください。攻撃を耐え抜きます」

「・・・駄目です。DFだけではとても・・・」

 

周囲を囲み徐々に近付いてくる敵。

攻撃されるのも時間の問題だ。

 

ガタンッ! ゴドンッ!

 

攻撃を喰らってナデシコが揺れる。

 

ドダンッ! ガガガ!

 

こうしている間にもナデシコは次々と傷付いていくんだ。

 

「相転移エンジン出力低下。DF弱まります」

「グラビティブラストは撃てますか?」

「不可能です。DFに回すだけのエネルギーしか得られません」

「・・・・・・」

 

このままだと危険だという事は誰にだって分かる。

でも、その対処法が何もなければ、俺達にはどうする事もできない。

 

ドドンッ! ガタンッ!

 

「キャッ!」

 

・・・今、動けるエステバリスパイロットはいない。

ナデシコには迎撃できるだけの力がない。

・・・俺には・・・何が出来る・・・いや。

 

「・・・コウキ君」

 

・・・俺がやるしかないんだ。

 

「・・・艦長。俺がエステバリスで出ます」

「・・・え? でも、マエヤマさんは・・・」

「正面から逃げずに立ち向かう」

「え?」

「そうやってトラウマを克服する事が―――」

「コウキ君。貴方、今、自分が震えている事を分かっているのかしら?」

「・・・嫌だなぁ。そんなの・・・分かっているに決まっているじゃないですか」

 

言われなくたって分かっているさ、そんな事。

指先だけじゃない。全身が震えている。

でも・・・。

 

「俺がやらずに誰がやるんです? 今、この状況を打破できるのは俺だけでしょう?」

 

・・・俺しかいないんだ。

エステバリスで出撃できるパイロットは。

 

「だから、俺が―――」

「貴方は背負い込んでばかりね」

「え?」

 

突然抱き締められた。

身体の震えは、不思議と収まっている。

 

「義務感で動いて欲しくないわ」

「でも、俺しか・・・」

「義務感や責任感に囚われていちゃ駄目よ。どうしてエステバリスに乗ろうと考えたのか思い出しなさい」

「俺は・・・」

 

俺しかいないという義務感。

ナデシコを護らないと、という責任感。

その二つで動いていた。

でも、その根本にあるのは・・・。

 

「ナデシコを護りたいからです。ミナトさんに、ナデシコクルーに死んで欲しくありません」

 

護りたいという思い。

思い上がりでも、己惚れでも。

俺に護れる力があるのなら、俺は皆を護りたい。

 

「そう。それじゃあ、その気持ちで行動しなさい。助けたいという思いで動きなさい」

「・・・変わりますかね?」

「ええ。自分が何故その行動を取ったのか。それをしっかりと自覚して、思いを乗せなさい。そうすれば、コウキ君なら出来るわ」

「・・・はい。分かりました。ミナトさん」

「いつも私達はコウキ君に辛い思いをさせようとしているわね。ごめんなさい」

「謝られても困りますよ。謝られるぐらいならありがとうって言われたいですね」

「それじゃあ、無事に帰ってきて。帰ってきてきちんとありがとうって言わせて」

「・・・ええ。必ず帰って―――」

 

唇に優しい感触。

 

「・・・おまじないよ。無事に帰ってくるようにって」

 

潤んだ瞳で見詰めてくるミナトさん。

彼女を死なせたくない。悲しませたくない。

その為にはナデシコを護り、その上できちんと帰ってこなくちゃ。

 

「それじゃあ、行ってきます」

「ええ。行ってらっしゃい」

 

ミナトさんが身体から離れる。

それだけで、再び身体が震え始めた。

それ程にミナトさんの存在は俺にとって偉大だという事だろう。

エステバリスの乗る為にブリッジから抜け出して、格納庫へ向かおう。

そう席を立ち上がろうとする瞬間・・・。

 

「・・・コウキさん」

 

・・・掛けられた声に俺の動きは止まった。

 

「・・・セレスちゃん」

 

声の主はセレス嬢。泣きそうな顔で俺を見上げている。

 

「・・・大丈夫なんですか?」

「怖いし、身体は震えているよ。でもさ、俺は皆を護りたいんだ」

「・・・でも、コウキさんは・・・」

「護れる力がある。それにね、俺はパイロットの皆に任せられたんだ、ナデシコを。彼らが作戦を成功して帰ってきた時に帰るべき家がなかったら悲しむだろ?」

「・・・コウキさんがいなくなるんじゃないかって心配です・・・」

「大丈夫。絶対に戻ってくるから」

「・・・・・・」

 

無言で俺の身体をよじ登ろうとするセレス嬢。

いつもの体勢だろうと思って、抱きかかえると・・・。

 

「・・・え?」

 

視界一面に映るセレス嬢の顔。

小さな唇の感触が俺の唇に暖かさを伝えてくれた。

 

「・・・私からもおまじないです。必ず帰って来てください」

 

照れもせず、涙目になりながらも真剣な表情で俺を見詰めてくるセレス嬢。

・・・そんな顔されたら、約束は破れないな。

 

「うん。セレスちゃんからおまじないをしてもらったんだ。絶対に帰ってくるよ」

「・・・はい。気を付けて下さい」

「任せて」

 

腿の上に座る小さく軽いセレス嬢をゆっくりと床に降ろす。

こんなに小さな子に激励されて、情けないな、俺。

でも、その期待に応えなくちゃもっと情けない。

 

「それじゃあ、行ってくるね」

「・・・いってらっしゃい。コウキさん」

 

今度こそ、ブリッジから抜け出し、格納庫へ向かう。

あれからコンソール越しの戦闘なんて練習してなくて、絶対に反応速度とか落ちている自信がある。

でも、俺に出来る精一杯を、やるだけだ。

 

「ウリバタケさん」

「おう。聞いてんぞ。お前がナデシコを護るんだ。いいな!?」

「はい!」

 

身体の震えを懸命に抑え、エステバリスに飛び乗る。

 

「・・・はぁ・・・ふぅ・・・」

 

落ち着け。落ち着け。

自分の思う通りにやればいい。

気負うな。我を失うな。気を強く持て。

 

「・・・はぁ・・・おし」

 

エステバリスのコンソールに手を置く。

戦闘の為にコンソールに手を置くのはどれくらいぶりだろう。

 

『搭乗者確認。マエヤマ・コウキ。カスタム状態に移行します』

 

大丈夫。大丈夫だ。落ち着いてやれば大丈夫だ。

 

「マエヤマ。オプション武器はどうする!?」

 

搭乗フレームは高機動戦フレーム。

現在の場所は対空迎撃が発動しないギリギリの位置らしい。

それなら、高機動戦フレームの方がやりやすい。

 

「レールカノンとラピッドライフルを片手ずつ持って―――」

「フィールドガンランス試作型。出来てるぜ。試してみるか?」

「本当ですか?」

 

長期戦になる。

フィールドガンランスなら時折近接攻撃に移る事で戦闘続行可能時間を延ばす事が出来る。

近距離と遠距離をどちらもこなせるのはかなり有効的だ。

 

「それなら、フィールドガンランスを持っていきます。腰にラピッドライフを二丁備え付けて置いてください」

「了解した。フィールドガンランスは背中に収められるように作られている。イミディエットナイフは装着パックの所だ。行って来い」

 

次々と運び込まれてくる武装。

 

「・・・ふぅ。冷静にな」

 

震える腕を抑えつけ、エステバリスを動かす。

武装装着を確認。・・・よし。行こう。

 

「マエヤマ・コウキ。高機動戦フレーム。行きます」

 

カタパルトに移動し、発進。

凄まじいGに襲われながら、開けた視界には数多の敵。

 

『コウキ君。私がここにいるわ』

『・・・頑張ってください。コウキさん』

 

ミナトさん。セレス嬢。

・・・こりゃあ気張るしかないな。

・・・震えが止まった。

 

「うし」

 

すれ違う戦闘型飛行機をフィールドガンランスで突き刺し、地面からこちらを狙ってくる戦車を貫く。

ラピッドライフルでは装甲が厚くて効果的なダメージを与えられないが、レールカノンを素体としているフィールドガンランスなら・・・。

 

「貫ける!」

 

地上にいる戦車を優先的に潰し、時折襲ってくる戦闘型飛行機は射撃ではなく近接攻撃で倒す。

戦闘型飛行機なんて高機動戦フレームの機動力にしてみれば的に等しい。

機関銃の攻撃はDFが弾く。

 

「次!」

 

フィールドガンランスを背中に収め、腰からラピッドライフを取り出す。

 

「やはり二丁拳銃が俺の武器か」

 

威力強化されたラピッドライフルならDFを纏う新型バッタとて貫ける。

戦車の攻撃は回避し、戦闘型飛行機とバッタをこれで潰す。

 

「・・・高速で移動しながら照準をつける。いけるか? 俺」

 

・・・違う! やるんだ!

 

「フィードバックレベルを上昇させる。意識を奪われるな。己に打ち克て」

 

フィードバックレベルの上昇はより鮮明なイメージを実現させる。

システムに意識を奪われるな。機械的になっても、敵だけを狙え。

 

「・・・・・・」

 

・・・意識が切り替わった。

何の感情もなく、機械のように身体を動かす。

 

「・・・・・・」

 

効率的に、効果的に、無駄を失くし、迷いを捨て、常に先を想定する。

 

『コウキ君! しっかり―――』

「・・・大丈夫です」

『・・・そうみたいね。安心したわ』

「・・・必ず守り抜きます。ミナトさんは―――」

『分かったわ。私は貴方を信じて、自分に出来る事をする』

「御願いします」

 

意識を奪われかけても引き戻してくれる人がいる。

恐れるな。立ち向かえ。逃げるな。真正面から打ち破れ。

 

「ハァァァ!」

 

雄叫びをあげ、視界を埋める程の敵へ突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

SIDE MINATO

 

意識を保ちながら、必死に戦うコウキ君。

身体を震わせていたのも最初だけ。

ナデシコを護るという意思がコウキ君を強くさせる。

 

「ルリちゃん。グラビティブラストをチャージしてください」

「しかし、DFにエネルギーを」

「時間をかけてしまっても構いません。DFの出力を少しだけ落とし、GBをチャージしてください」

「・・・分かりました」

 

たとえコウキ君といえど、一人でこの量全てを倒せる訳じゃない。

大量に撃破するにはやはりGBが一番よ。

 

「・・・せめて回避行動が取れれば」

 

移動も出来ないナデシコ。

私には何も出来ないの?

ううん。何かある筈。

 

「ミナトさんはいつでもマエヤマさんが補給できるようデッキの位置をマエヤマさんに合わせられるようにしておいてください」

「ッ! 分かったわ」

 

コウキ君の補給を迅速に行えるように回頭する。

今の私に出来る精一杯。

 

「頑張れ。コウキ君」

 

めまぐるしく動き回り、敵を引き付け、撃破していくその姿は他のパイロットにも見劣りはしない。

射撃をすれば高確率で敵を貫き、敵が近付けば槍のようなもので貫く。

ライフルを片手に一つずつ持って両手で敵を倒していく姿は正にガンマンというのに相応しかった。

この戦闘を後どれくらい続ければいいのだろうか?

 

「・・・コウキ君」

 

 

戦闘終了の合図が来たのはそれから数時間後だった。

コウキ君はそれまで五回もの補給を繰り返し、休む事なく戦い続けた。

戦闘が終了した途端、コウキ君はバタリと倒れてしまう。

もしや、また・・・と不安で潰されそうになったが、気を失う彼の顔を見ればそんな感情は吹っ飛んだ。

コウキ君は・・・満足したかのように穏やかな顔だったのだから。

・・・お疲れ様。コウキ君。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 


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