機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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道中の些細な出来事

 

 

 

 

「よっしゃぁ! このダイゴウジ・ガイ様の力を見せてやらぁ!」

 

約束通りの模擬戦。

三人娘の合流も済んだし、早速やりましょうか。

 

「ガイィ! ガイィ! ガァァァイィ!」

「うるせぇ! てめぇなんてどうでもいいんだよ! おい、こら。テンカワ! 俺と勝負しろ!」

 

スバル・リョーコ。

熱い戦闘狂。

ボーイッシュな美人なんだけど、男勝りすぎてちょっとな。

 

「よろしくね。コウキ君だっけ?」

「あ。はい。コウキであっていますよ。よろしく御願いしますね、ヒカルさん」

「うんうん。コウキ君は爽やかだねぇ。お姉さん、感心しちゃう」

「えぇ~っと、どうもです」

 

アマノ・ヒカル。

独特なテンポの持ち主。

明るい可愛い系で、同級生とかだったら楽しそうだな。

 

「・・・・・・」

「あ。よろしくです。イズミさん」

「・・・・・・」

「えぇっと、はい」

 

マキ・イズミ。

まるでキャラが掴めない人。

シリアスなの? ギャグなの? これから大変そうだ。

 

「模擬戦を行うというが、どのような組み合わせにするんだ?」

 

テンカワさんもリーダーパイロットとして参加。

戦力把握にもなるんだし、当然かな。

 

「やいやい。テンカワ。俺と勝負しろ!」

 

断固としてテンカワさんを狙うスバル嬢。

じゃあさ、こうしよう。

 

「それじゃあ、テンカワさんとリョーコさん、俺とヤマダ―――」

「ガイだ! ダイゴウジ・ガイ!」

「俺とゲキが戦うってのはどうでしょう!?」

「クソッ! そう呼ばれたい俺もいる。どうすればいいんだ!?」

 

さっきからうるさいよ。ゲキガン野郎。

 

「てめぇ、誰が名前で呼んでいいって言った?」

「あ。すいません。名前の方が呼びやすくて。スバルさんの方が良いですか?」

「別に呼ぶなって言ってうる訳じゃねぇ。好きに呼べよ」

「そうですか。それなら、リョーコさんで」

「ふんっ。勝手にしろって言ったろ」

 

じゃあ、何でいちゃもんつけるんですか・・・。

 

「照れ隠しだよ、あれ」

 

あ。そういう事ですか。

 

「俺とスバルがか?」

「はい。戦いたいそうなので、俺もゲキガン野郎と決着をね」

「ふんっ! 予備なんかにゃぁ負けねぇよ」

 

既に勝った気でいますね。

でも、思った通りにはいかせない。

蜂の巣にしてやるから、覚悟しろよ。

 

「予備ってどゆこと? コウキ君」

「俺は色々と兼任していましてね。パイロット一筋という訳にはいかないんです。それで、予備扱いとして緊急事態だけにパイロットを引き受ける事になったんですよ」

「ふぅ~ん。そうなんだ」

 

そうなんです。

 

「はぁ!? 予備かよ? そんなの相手にならねぇな」

 

カチンッ!

そうですか。そういう事を言っちゃいますか。

 

「コ、コウキ君。落ち着こうよ」

 

ヒカルさん。残念ながら、そうは行かないんです。

 

「テンカワさんが終わったら俺とやりましょうよ。蜂の巣にしてやります」

「へっ。いいだろ。やってやるよ」

 

ほくそ笑むとはこういう事だろうか。

てめぇは俺を怒らせた。

 

「じゃあさ、私達は見学って事で良いのかな?」

「そうだな。後でチーム単位での模擬戦をするつもりだから、それまでは休んでいてくれて構わない」

「了~解っと」

 

さて、早速。

 

「ガイ。フィールドは宇宙空間。フレームは0G戦フレーム。武器はイミディエットナイフ、ラピッドライフル。それでいいか?」

「おうよ。かかってこい」

 

後悔させてやるからな。

近接馬鹿め。

ついでに、近接こそが最上の認識を改めてやる。

 

「それじゃあ、お先に失礼しますね」

「ああ。いいぞ」

 

シミュレーターの中へ飛び移る。

テンカワさん達も勝手に違うシミュレーターでやるでしょ。

俺は俺の模擬戦に集中だ。

 

「行くぞ! ゲキ!」

『おうよ!』

 

ゲキって言葉に反応しなくなってきたな。

受け入れたって事か?

それじゃあ、ちょっと弄くってG・G・ダイゴウジとかどう?

あ。なんか、どっかのライオンなチームの人みたい。

 

「レッツ!」

『ゲキガイン! って、お前、分かっているじゃないか!』

 

変なスタートの合図。

色々と弄くりながら戦おう。

笑える。

 

『よっしゃぁ! 行くぜぇ!』

 

モニターに映る宇宙空間。

深く暗いくせにどこか優しい。

宇宙に初めて出た時の感動を俺は忘れないと思う。

 

「ほぉ。いきなり必殺技とはな。ヒーローの風上にも置けない」

『な、何ィ!?』

 

突っ込んでくる体勢から突如停止するヤマダ機。

やはりヒーローという言葉には敏感なんだな。

 

「俺は断言しよう。最後の最後に必殺技を出してこそのヒーローであると」

『そ、そうだったのか・・・』

 

俺としては何故最後にしか必殺技をしないのかが疑問だけどね。

あれか? 弱らせないと捕まえられないポケットなモンスターみたいな感じで、必殺技も相手を弱らせてからじゃないといけないとか?

速攻で決められそうな奴にもいちいち格闘戦に付き合ってあげているとか。

ヒーローは空気に優しいね。空気をきちんと読んであげている。凍りつかせるような事はしない。

 

「必殺技は確実に決めてこそ必殺技だ。避けられてしまうような必殺技は・・・必殺技にあらず!」

『グ、グォッ!』

 

精神的なダメージを負わせて勝利する。

それもまたヒーロー。外道なヒーローさ。

 

「お前の武器は何だ!? そう。拳だ! お前はただ拳のみで敵を打倒する拳闘士なんだ!」

『拳闘士!? 何てカッコイイ響きだ!』

「男になれ! 肉体こそが男の武器だ! さぁさぁ。男として俺に立ち向かって来い!」

『よっしゃぁぁぁ!』

 

ラピッドライフル、イミディエットナイフ。

それら武装全てを投げ捨てて、肉体、即ち、機体のみで迫ってくるヤマダ君。

 

『うわぁ~。コウキ君って爽やかに見えて腹黒だね。散々男を主張しておいて自分はちゃっかりライフル構えているし』

 

ふっふっふ。勝てば官軍という言葉を知りませんか? ヒカルさん。

 

ダンッ! ダンッ!

 

『な、何ィ!? てめぇ男じゃねぇぞ!』

「お前の武器は拳かもしれん。だが、俺の武器はこいつだ。男にはそれぞれ心の武器がある。ただ得物が違っただけさ」

『そ、そうか。それもまた男の武器か。それなら仕方ないな』

『うわっ。それで納得しちゃうの?』

 

納得しちゃうのがゲキガンクオリティです。

 

「お前が本当のヒーローならば拳のみで倒せる筈。さぁ! お前はヒーローなのか!? そうでないのか!? 俺に示してみろ!」

『言われるまでもねぇ! 俺こそがヒーローだ!』

 

近接されたらおしまいなのでバーニアを吹かして後退します。

 

『うわっ。示してみろと言いつつ後退。コウキ君ってかなりの腹黒だね』

 

ダンッダンッダンッ!

 

後退しつつラピッドライフルを放つ。

 

『ふっふっふ。無駄無駄! 俺のスペースガンガーにはゲキガンバリアがある』

 

ディストーションフィールドだね。きちんと覚えようよ。

しかし、自分で張るとしたら頼もしい盾だけど敵に張られると厄介だよな。

よし。言葉攻めだ。責めじゃないよ。攻めだよ。

 

「ほぉ。拳が武器と言い放つお前が己の肉体ではないバリアなどに頼るとは・・・。ふぅ・・・」

『な、何だ? その溜息は!? いいだろう! バリアなんか張らん!』

 

自分の言葉でここまで自分を追い詰める人って中々いないよね。

 

ダンッダンッダンッダンッ!

 

『うおっと! ダァ! タァ! オラ!』

 

流石に反応が早いな。

あれだけ際どい所に撃っても全部避けるなんて。

 

『今度はこっちの番だぜ』

 

拳を突き上げて迫ってくるガイ。

接近戦で来られる以上、DFは意味がない。

それなら・・・。

 

「イメージ。イメージ」

 

右足に全DFを纏わせる。

向こうはDFを応用しようとも思わっていない筈。

ゲキガンフレアは封じたも同然だな。

拳のみが武器って言っていたし。

 

『よっしゃぁぁ! ゲキガン・パンチ!』

 

唯のパンチに技名なんか付けるなっての。

 

「その程度か!? ガイ!」

 

ゲキガン・キックなどと変な名前は付けない。

俺のは蹴りで充分だ。余分な技名なんていらん。

 

ガンッ!

 

『グォ!?』

 

迫ってくる右手を軽く避けながら、右足でローキック。

ただの蹴りでも充分ダメージを喰らうが、DFを纏わせているんだ。

小破では済まないだろ。

 

『ク、クソッ。まさかキックとは』

「全身が武器という事だ」

 

というより、反射的に俺は手ではなく足が出る。

多分、喧嘩とかしたら足での攻撃ばかりになる筈だ。

サッカー部だった事が原因なんだろうなぁ。

 

「左足が潰れたかな?」

『ふんっ。左足の一つや二つ。俺には関係ねぇ!』

 

関係あるよ。たとえ宇宙でもね。

右足がある限り、バランスが悪いでしょ?

両足がなければ、偉い人にはそれが分からんのですって断言してもいいけどさ。

 

『オラッァァァ!』

「考えもなしに飛び込んじゃ駄目だって」

 

ガンッ!

 

『ダハッ!』

 

動体視力は自慢です。

ガムシャラに飛び込んでくる程度の攻撃は容易に避けられます。

 

「次は左腕だな。どうする?」

『ふんっ。腕の一本や二本。俺には関係ねぇ!』

 

左腕と左足を失うという状況に追い詰められてまだいきり立つか。

勇気と言えばいいのか、無謀と言えばいいのか。いや。無謀だな。

 

「ギブアップをお勧めするが?」

『ヒーローは諦めない! 何度も何度も立ち上がり、そして、勝利を得るんだ!』

 

ヒーロー、ヒーローとうるさいな。

ヒーローなら何でも出来ると思ってんじゃねぇぞ。

 

「理想に溺れて溺死しやがれ!」

 

迫る右手を左手で掴み、向こうの攻撃手段を失くす。

その後、瞬時に右手にライフルを持ち、零距離射撃。

文字通り、蜂の巣にしてやった。

 

『ま、負けた』

 

気が抜けているジロウ君は放っておこう。

すぐに復活するでしょ。

 

「お疲れ様。コウキ君」

「あ。ども、ヒカルさん」

 

シミュレーターから出るとヒカルさんが労ってくれる。

やっぱり同級生に欲しいな。こういう人。

 

「さっきのはさ。コウキ君が強いのか、ガイ君が弱いのか。どう捉えればいいんだろう?」

「ガイは強いですよ。ただ精神的にムラがあるだけです」

 

ガイ自身は強いと思う。

反応も優れているし、格闘技能も冷静でいられれば強い筈。

元々軍人なんだし、射撃技能もあるのではないかと俺は思う。

精神的に安定すれば俺なんて相手にもならないんじゃないかな。

ま、それに関してはテンカワさんに丸投げするけど。

頑張ってください、精神修行。

 

「それにしても、コウキ君って見かけによらずあくどいね」

 

笑いながら告げるヒカルさん。

そうかな? あくどいつもりはないけど。

 

「ガイが単純なだけですよ。あれだけ断言しちゃえば、自分を縛り付けているようなものだし」

「いやいや。思考誘導も流れるようだったし、ガイ君じゃなくても引っ掛かるよぉ」

「少なくともリョーコはね」

 

あ。イズミさんが話しかけてきてくれた。

無言だったから、どうしようかと思っていたんだよ。

 

「あ。ノーマルモード」

 

え? まさか、シリアスモード、ギャグモードの他にノーマルモードがあったのか?

・・・知らなかった。俺はてっきりどっちか一方かと。でも、ま、あれだ。日常生活が極端だとやりづらいもんな。

 

「あ。そうそう。敬語なんていらないよ。同い年ぐらいでしょ?」

「え、そう? 分かった。ヒカルさん」

「さん付けもいらないって。その代わり、私も呼び捨てにしちゃって良い?」

「いいよ。ヒカル」

「うんうん。そっちの方が親しくなった気がして良いよ」

 

友人モード突入。

実は同じぐらいの歳の友人って初めてじゃない?

男性はミナトさんの事で眼の敵にしているし、俺の事。

女性はこっちから話しかけるのとか緊張して無理だし。

やっぱり友達感覚で話せるのって嬉しいかな。

 

「ダァ! チクショウ! 勝てねぇ!」

「まだまだだな、スバル」

 

お。テンカワさん達も終わったみたいだ。

でも、テンカワさんレベルならもっと早く終わったと思うが・・・。

 

「あ。二回目だよ、あれ。一回目速攻で終わったから」

「テンカワさんどうだった?」

「もうビュってズバってドカンって感じ」

「えぇっと、接近してナイフで突き刺して終わりって事?」

「おぉ。ご明察。そこまで分かってくれるとは流石だね、コウキ」

「ま、まぁね」

 

擬音ばっかりでも何となくは掴めますよ、はい。

 

「リョーコさんだって凄いんでしょ?」

「もちろん。私達だけでやったらどうなるかな? イズミ」

「状況次第では私達が勝てる。でも、真っ向勝負なら負ける」

「だってさ。そんなリョーコが瞬殺だもん。凄いよ」

 

やっぱり凄いんだな、スバル嬢。

 

「コウキ君なら勝負できるかもね」

「いやいや。無理でしょ」

 

近付かれたら終わりだし。

ガイに勝てたのは単純な動きだったから。

きちんと考えられた上での攻撃はどれだけ反射神経と動体視力が良くても避けられないよ。

 

「ダァ! 悩んでいても仕方ねぇ! おい。次だ! 予備、来い」

 

怒りの矛先が俺に向かいましたか。八つ当たりですね。分かります。

 

「どうせなので、男性陣対女性陣で模擬戦しながら決着つけましょうよ」

「ほぉ。一対一で負けるのが怖いからテンカワに頼ろうって事だな? 予備は腰抜けだな」

 

カチンッ!

い、いや。落ち着こうか。

怒りは模擬戦中にぶつければいいし。

 

「むしろ、チャンスじゃないですか? 俺とガイを倒せば三人でテンカワさんに挑めるんですから。チーム単位ですから卑怯でも何でもないですよ」

「ケッ。いいじゃねぇか。それでやってやる」

 

納得して頂けた様で。

 

「お~い。ガイ」

 

模擬戦の事を教えてやろうとガイのいるシミュレーターに向かうが・・・。

 

「・・・・・・」

 

見事に固まっていますね。

 

「ガイ。予備に負けた気分はどうだ?」

「・・・負けたのか? ヒーローが」

「ヒーローなら誰にでも勝てるという訳ではないだろ? それよりも、ガイ、男の武器は拳だけじゃないんだぞ」

「な、何ィ!? 俺の武器は拳だと・・・」

「お前が信仰するゲキ・ガンガーは拳で戦うか? 違うだろ? 剣や銃。多くの武器が搭載されている」

「た、確かに。じゃあ、俺の武器は何だというんだ・・・。何故、俺は拳だけで」

「ガイ。俺はお前に知って欲しかった。拳を含めて接近戦だけじゃ勝てないという事を」

「男は格闘戦だろ!」

「違うぞ、ガイ。お前にはライフルの悲鳴が聞こえないのか!?」

「ラ、ライフルの悲鳴だと?」

「そうだ。武器の一つ一つに魂が込められている。お前は魂の声が聞こえないのか!? 俺にはライフルの悲鳴が聞こえたぞ!」

「ラ、ライフルは何て言っていたんだ?」

「何故、自分を使ってくれないのかと。そう嘆いていた。武器は使われてこそ本望。ヒーローを目指すのなら多くの武器と触れ合い、語り合え。そして、使いこなしてみろ」

「そ、そうか。そうだったのか。格闘戦こそがロボットの醍醐味だと思っていた」

「ああ。それも一つの醍醐味だろう。だが、格闘戦だけと己を縛る事が正しいとは思えん。射撃で敵を撃つ事もロボットの醍醐味だと俺は思っている」

「あぁ。今の俺なら、その気持ちも分かるぜ。俺はライフルの喜びの声が聞きてぇ!」

「そうだ! ガイ! 格闘、射撃、その全てを極めてこそ、お前はヒーローと呼ばれるに相応しくなるんだ。もっと大きな男になれ!」

「オォォォ! やってやるぜ! 俺はもう格闘だけに拘らない。射撃も極め、一流のヒーローになってやる」

「それでこそ、ダイゴウジ・ガイだ! スーパー・ダイゴウジ・ガイだ!」

「オォ! 俺の魂の名がより一層光輝いてやがる!」

「ああ! 輝ける。お前なら出来るんだ! 輝け! ダイゴウジ・ガイ!」

「オォォォォォォ!」

 

ふっふっふ。計画通り。

 

「・・・コウキ。黒いよ。黒過ぎるよ」

「俺のキャラじゃないからな。勘違いするなよ」

 

呆れるヒカルを前にほくそ笑む俺。

乗せる為とはいえ、らしくない事をしちまったぜ。

 

「いや。多分、コウキもそんな所が―――」

「ない。断じてない」

 

テニスの人じゃないんだから。俺はそんなに熱くない。

熱くなれと激励する事はあるが。

 

「でも、流石の腹黒さだったね。単純だから、ガイ君、まっしぐらじゃない?」

「腹黒と言われたくないな。でも、ま、ガイはこれですぐに突っ込むような事はしなくなるだろ? ・・・うん、多分、きっと・・・そうなって欲しいなぁ」

 

ちょっと自信ない、実は。

 

「実際のガイのパイロット技術はかなり良いんだよ。性格でかなり低く見られるけど」

「ふ~ん。ま、それは模擬戦で見させてもらおうかな」

「今はまだ突っ込む癖が直ってないから分からないけど。ま、これから変わっていくでしょ。テンカワさんが指導すると思うし」

「そっか。それじゃあ、コウキ、いざ尋常に勝負」

「はいよ。お手柔らかに」

「あら? 何か気が抜けたよ」

「作戦」

「うっそだぁ」

「おら! さっさと来いよ。ヒカル、イズミ」

 

せっかちだねぇ、スバル嬢。

 

「テンカワさん。ガイの戦闘思考修正案を考えておいてください」

「そうだな。あいつは腕が良いのに勿体無い」

 

ほら。テンカワさんも認めている。

 

「火星に到着するまでには修正しておきたいな」

「お任せします。あ、修行には付き合ってくださいね」

「無論だ。リーダーとして全員の底上げをしなければならんからな」

 

責任感が強い事で。頼りにしています、テンカワさん。

 

「おら! 始めんぞ!」

 

スバル嬢の言葉をきっかけに模擬戦が始まった。

結果?

テンカワさん無双でしたよ。

あ、スバル嬢は提言通りに蜂の巣にしてやりました。

ガイと格闘戦している所を強襲です。

卑怯じゃないですよ? チーム戦ですから。

油断するのがいけないんです。

ほっ。スッキリした。

 

 

 

 

 

「あれ? メグミさんはどうしました?」

 

昼食を終えて、一人でブリッジへ。

そうさ。まだ一緒に飯を食べてくれる人はいないのさ。

はぁ・・・。男友達できないかな?

と、鬱になっているとある事に気付く。

通信士の席だけ空いているのだ。

要するにメグミさんが留守。

昼前までいて、俺より先に食事に行ったからもうとっくに帰ってきていると思ったのに。

 

「あら? 知らないの?」

「え? 何の事ですか?」

 

予想外と言わんばかりに眼を見開くミナトさん。

えぇっと? 知らないのって俺だけ?

 

「じゃあ秘密ね。こういう事は他人に言うものじゃないから」

「・・・気になるんですけど」

「それでも、秘密よ」

 

優しくない。

グレてやろうか。

 

「それにしても、暇ねぇ」

「ま、後は予定コースを通るだけですから」

 

緻密な操縦が必要な時以外はミナトさんの仕事はないもんな。

原作だと寝まくっていたし。

 

「とりあえずはオモイカネに任せておけば大丈夫です。もし、木星蜥蜴が攻めてきても・・・」

「木星蜥蜴、接近」

 

現れるバッタ達。

 

「DF正常発動」

 

攻撃するもDFに全て弾かれる。

 

「撤退しました」

 

結果、あっちもすぐに諦める訳だ。

DFは常時発動ですから。

 

「と、こうなる訳ですから」

「そうねぇ。緊張感なんてないに等しいわね」

「一応、緊急事態に対応する為にいるんですから。気を抜いていちゃ駄目ですよ」

「もぉ。真面目ねぇ。抜ける時に抜いておきなさいよ」

「は、はぁ・・・」

 

・・・そうですね。

 

「それでは、失礼します」

「・・・失礼する」

「うん。お疲れ様」

 

俺が来た事でルリ嬢、ラピス嬢は交代だ。

現在は時間帯毎にシフトを定めていて、俺が昼休憩から上がると彼女達は今日のシフトを終える訳だ。

朝からブリッジにいてもらったから、疲れている事だろう。お疲れ様です。

 

「メグミさんって違いましたっけ?」

 

これはシフトが違うかって事。

 

「交代してあげたのよ。私がここにいるでしょ」

「あ。そういえば、ミナトさんも午後は休みでしたよね」

「ええ。駄目よ、コウキ君。恋人のシフトを忘れるなんて」

「す、すいません」

 

シフトじゃなくても暇な時、ブリッジに顔を出していたからなぁ。

あんまり気にしてなかったんだよね。

 

「何で代わってあげたんですか? 何か用があるとか?」

「何でもパイロット組の休みにあわせたらしいわ。健気ね、メグミちゃん」

「あぁ、そういえば、今日は休みだって言われていました」

「そこじゃないでしょ。本当に知らないの?」

「え? 何がです?」

 

健気ってどゆこと?

 

「はぁ・・・。本当に知らないんだ。まぁ、コウキ君は色々忙しいものね」

「えぇっと、そろそろ教えて欲しいんですけど」

「耳貸して」

 

内緒にしなっきゃいけないような事なんですか?

何だろう?

 

「メグミちゃんね。ヤマダ君と付き合っているんだって」

「・・・・・・」

「コウキ君?」

 

・・・え?

 

「え、えぇ!? マ、マジですか!?」

「え、ええ。そんなに予想外?」

「い、いえ。そうではありませんが・・・」

 

ま、まさかガイとメグミさんが付き合うとは。

・・・でも、ま、せっかく生き残ったんだからな。

幸せになって欲しいもんだ。

 

「良かったわね。コウキ君」

「ええ。こういう事を聞くと俺の存在も無駄じゃなかったんだなって思います。まぁ、ガイに関してはまったく関与していないですが・・・」

 

ガイを助けたのはテンカワさんだ。

ムネタケ達が逃げる時にガイとシミュレーション室にいたらしい。

ムネタケが逃げたのを確認してから、ゲキ・ガンガーシールを張って良いと許可した。

勝てなければシールを張る資格はないぞと挑発したらしいが、見事にガイを操っているな。

流石は元親友。俺以上にガイを操るのが上手い。

 

「いいじゃない。もしかしたら、何か関与しているのかもしれないし。それに、コウキ君の存在が無駄だなんて誰も思ってないわよ」

「そうなら良いんですけどね。俺ってば補佐ばっかりだし」

「補佐だって大事な役職。コウキ君流に言えば、ブリッジで欠かせない役職なのよ」

「ハハッ。やる気出ました」

「貴方も単純よね」

 

そう笑うミナトさん。

別に単純じゃないですよ。

素直なだけです。

 

「それにしても、どういう経緯で?」

「サツキミドリコロニーの時にね、メグミちゃん、人が死んだって事で塞ぎ込んじゃったのよ」

 

あぁ。アキト青年が慰めた時と同じか。その代わりをガイが務めた訳ね。

 

「一応覚悟していたみたいだから、戦闘の途中で仕事を投げ出すような事はしなかったんだけど、その後に色々と考え込んじゃったらしくて」

 

原作では戦闘中もショックで動けなくなっていたよな。

戦艦だって事を少し自覚させてたからかな?

 

「でも、ヤマダ君の元気な姿を見たら少し気が晴れて、思い切って話しかけてみたらしいの。そうしたら、ヤマダ君はヤマダ君で死について考えていたみたいで」

「ガイは何と?」

「それは秘密だってさ。メグミちゃんが大切にしたいって言っていたわ」

 

メグミさんって一途だね。

というか、それら全てメグミさんが話したんですか?

 

「それで、メグミちゃんはきちんと死を受け入れられるようになって、今に至るって訳。一緒にいて楽しいって惚気ちゃってくれたわ」

「もしかして、今までの話って」

「そうよ。全部惚気で聞かされた事よ。でも、良かったじゃない。メグミちゃんも幸せそうだし」

 

原作ではアキト青年と恋に落ちながらも、結ばれずにナデシコを降りた筈。

それからアイドルになって、もしかしたら幸せだったのかもしれないけど、生涯の伴侶はいなかった。

ガイも折角生き残ったんだ。二人で幸せになってくれたら本当に嬉しい。

 

「何だか嬉しい事ばかりですね」

「そうね。きっとアキト君達はもっと喜んでいるんじゃないかしら」

「はい。でも、俺はテンカワさん達も幸せになって欲しいです」

「私もそう思うわ。アキト君達だって幸せになる権利はあるもの。幸せになって欲しいわ」

 

うん。何か今日は気分が良い。

 

「ミナトさん。今日の晩飯一緒に食べましょう。奢りますから」

「あら? 気前が良い。どうして?」

「気分が良いので。贅沢したい気分です」

「そう? じゃあ、御呼ばれになるわ」

 

偶の贅沢。

一人じゃ寂しいでしょ?

一人でやるくらいなら、奢った方がマシだ。

ミナトさんなら特に。

 

「さて、これからずっと暇ですが、何してましょうか?」

「コウキ君は何かやる事ないの?」

「最近は読書ですかね。オモイカネが色んなデータを持っているんですよ」

「へぇ。小説みたいなもの?」

「ええ。時代は進んでも内容はあまり変わらないんですね。でも、やっぱり感動する本は感動します」

「感受性豊かだもんね。コウキ君」

「そうですか? そんなつもりはないですが」

「あら? この前、映画のワンシーンで泣いていたじゃない」

「え? 見ていたんですか?」

「もちろんじゃない。コウキ君の泣き顔なんて中々見られないしね。写真に撮っておけばよかったかしら」

「それで弄るつもりだったんですか? 悪女」

「悪女だなんて人聞きの悪い。コウキ君は弄られるの好きでしょ?」

「いやいや。それじゃあ変な人ですって」

「あら? 変な人って自覚はないのね」

「え? 変ですか? 俺」

「さぁね。あ、そんな事よりさ・・・」

 

それから、結局会話だけで時間を潰しました。

いやぁ。時間なんてあっという間ですね。

楽しい時間はすぐに去ってしまいます。

もちろん、晩飯はとことん贅沢してやりました。

ナデシコ食堂の中でも最高級に当たる料理を頼んでやりましたよ。

あまりにも高過ぎて誰も手をつけなかったネタだけど伝説の料理という奴を。

しかも、一度に二つ。

ふふふ。英雄だったさ、正に。

犠牲は大きかったが、それだけの価値がありました。

・・・多分、二度とやりませんが。

あれは高過ぎです。

と、まぁ、こんな事ばっかりやっていました。

日常のちょっとした一ページです。

 

 

 

 

 

「へぇ。航海日誌を書いているんだ」

「・・・はい。書くように頼まれまして」

 

休日で、特にやる事がなかったから、ブリッジに顔を出してみた。

すると、セレス嬢が一生懸命にコンソールの前で何かやっているではないか。

これは気になる、と声をかけてみたら・・・。

 

「・・・航海日誌です」

 

・・・という言葉が返ってきた。

航海日誌ってあれでしょ? 艦長が書くべきものなのに、悟りを啓くとかでルリ嬢が押し付けられた奴。

なるほど。今回はセレス嬢という訳ですね。

艦長、迷惑かけていますよ。いいんですか?

 

「そっか。どんなの書いているの?」

「・・・何を書いていいのか分からず、ルリさんに聞いてみた所、その日にあった事を好きに書いたらいいって言われました」

「そうなんだ。まぁ、ナデシコは毎日のように何かあるからね。退屈しないでしょ」

「・・・はい」

 

ドタバタコメディだもんな。

騒がしいくらい毎日何かあるぜ。

 

「少し読ませてもらってもいいかな」

「・・・はい。構いません」

「えぇっと、何々・・・」

 

○○月××日

オペレートの練習をしました。コウキさんに褒められました。嬉しかったです。

○○月××日

オペレートの練習をしました。課題が終わりました。コウキさんに頭を撫でられて気持ち良かったです。

○○月××日

オペレートの練習をしました。課題を与えられました。頑張ります。

○○月××日

オペレートの練習をしました。いつもより早く終わった気がします。そうコウキさんに言ったら成長したんだよって褒められました。嬉しかったです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「えぇっとさ、これって」

「・・・何ですか?」

 

コテンッて首を傾けられてもね。

 

「オペレートの事ばかりだね」

「・・・はい。駄目でしょうか?」

「え、ううん。駄目じゃないよ。でもさ、他にも色々あったじゃん」

「・・・好きな事を書いて良いって言われました」

 

な、涙目!?

 

「そ、そっか。ウン。大丈夫。よく書けているよ」

「・・・ありがとうございます」

「うん。偉い偉い」

「・・・ポッ」

 

あ。また勝手に手が頭を撫でていた。

それにしても・・・これはどう解釈すれば良いんだろう?

幾つか考えてみると・・・。

1、まだオペレート以外に興味がないのか。

2、興味がないのではなく、ナデシコ艦内のドタバタを知らないのか。

3、己惚れじゃなければ、俺との特訓を大切にしてくれているのか。

う~ん。三番目だったら嬉しいけど、他だったらちょっと問題かな。

もっと周りに眼を向けるようになって欲しいし、ドタバタを見て笑って欲しい。

いや、マジで笑えるから。下手なお笑いより全然。

原作を知っている身としては、こういうドタバタも見せて欲しかった。

メインキャラクター以外にも至る所でドタバタコメディが起きているというこの喜劇。

これがナデシコかと深く感心してしまったものだ。

笑うって事は感受性を成長させる事になるから良い経験なのだ。

見るだけでも触れ合っている事になるし、色々な経験を積んで欲しい。

たとえそれがコメディ一色であろうとも。

 

「それじゃあさ、今度はナデシコの事を書いてみようよ」

「・・・ナデシコの事ですか?」

「うん。今日、ナデシコで何々がありました。きっと何々が原因でしょう。結末は何々です。私だったら何々すると思います。そんな感じの文章」

「・・・私のじゃ駄目ですか?」

 

ハッ!? また涙目!

 

「違う違う。しっかり書けているけど、オペレートの事だけじゃその日に何があったのか分からないと思うんだ。ナデシコは色々な事があるからさ。それを皆にも教えてあげようよ」

「・・・分かりました」

 

ほっ。何とか理解してもらえた。

折角書くんだからな。色々な事に眼を向ける良い機会にして欲しい。

 

「セレスちゃんの書いた日誌を誰かが見て。へぇ。こんな事があったんだって思わせる日誌がいいかな」

「・・・頑張ってみます」

 

ハッ! また撫でていた。

ハニカミ笑顔が止まらないんですもの。

無論、セレス嬢の。

というか、微笑ましさは抜群です。

僕の顔も勝手に緩みますから。

 

「それじゃあ、また今度見せてね」

「・・・はい。楽しみに待っています」

 

それは俺に会心の出来を見せるという自信から来る言葉だな。

それじゃあ、俺も楽しみに待っているとしよう。

 

 

後日、日誌を見せて頂きました。

 

「読んでも良い?」

「・・・どうぞ」

「ありがと。えぇっと。どれどれ・・・」

 

○○月××日

今日、ナデシコの格納庫で騒動がありました。きっと男の人が暴れだしたのが原因でしょう。結末は減俸です。私だったら良く分からないので何もしないと思います。

 

「あぁ。格納庫の騒ぎね。あれは大変だった」

「・・・何があったんですか?」

「ちょっと分かりづらいかもしれないけど・・・」

 

格納庫騒動。

これは整備班の一人がある一言を発してしまったが故に始まった騒動である。

・・・と格好付けても実際はしょうもない事なんだよ。

その一言は・・・。

 

「結局、誰が一番可愛いんだ?」

 

はい。来ました。整備班といったら騒動。整備班といったら女の子。整備班といったらスパナ。あれ?

数多のファンクラブが存在する整備班の中でその一言は禁句でしょ。

 

「俺はやっぱりヒカルちゃんかな。可愛いし、明るいし」

「馬鹿言え。リョーコちゃんだろ。ボーイッシュとか堪らんね。男勝りであればある程良い」

「極端だな。俺はミステリアスなイズミちゃんがいいけどね。あの人、スタイルいいよ、かなり」

 

というパイロット三人娘の話から、話が発展していった訳だよ。

ま、次々と妄想が出てきたけど。

 

「罵られたい・・・」

「お兄ちゃんって呼ばれたい・・・」

「見下して欲しい・・・」

「ツンデレって欲しい・・・」

 

数多の煩悩を引き連れた整備班が熱狂するのは時間の問題。

それぞれのファンクラブの代表が机を並べ、誰が一番かの討論会が始まる。

 

「てめぇらが分かんねぇのが分かんねぇ。いいじゃねぇか。コスプレしてくれるんだぞ。一緒にコスプレを楽しめばいいじゃないか」

「素が男勝りな女の子が女の子っぽい格好している所とか見たくないのかよ。いいぞぉ。恥らいの笑みは」

「謎の雰囲気があるから支えたくなるんだろうが。満面の笑みを向けてくれたら、あれだね、死んでもいいね」

「姉御肌の女性に勝る者なし。包容力に勝る女性のステータスはない。それが何故分からないんだ!」

「理性がもたん時が来ているのだよ!」

「年下に勝る強さはない。いいじゃないか。微笑ましい笑顔。可愛らしい笑顔。小動物のような放っておけない保護欲を湧かせる仕草。最高だね!」

「は、反論出来ん。だ、だが、年上こそが最強。俺はあんな身体に溺れたい。溺死したって構わない」

「天然娘を忘れてはならんな。問われた疑問に少しズレた答えで返す天然さ。そのちょっとしたズレがまた良い」

 

・・・妄想って怖いな。

 

「てめぇ! この野郎!」

「何ぉ!」

 

いつしか、掴み合いの喧嘩になるのは自然の理。

それもまた愛故か。

 

「何を暴れているんですか! あぁ。そこにある機材が幾らするか・・・。減俸です! 言語道断、減俸です!」

 

それを収めるは百戦錬磨の交渉人。

項垂れる者達に愛故の説教が飛んだ。

 

「・・・聞かなかった事にしてくれる?」

「・・・よく分かりません」

「そっか。それなら、大丈夫。気にしなくていいよ」

 

○○月××日

今日、食堂で非常事態がありました。きっと人手不足が原因でしょう。結末は無事に終わるです。私だったらお手伝いすると思います。

 

「そういえば、セレスちゃんもお手伝いしてくれたね」

「・・・はい。頑張りました」

「偉い偉い」

 

ちょっと文章が変だけど問題ないでしょ。

正しくは私もお手伝いしましたとかかな?

ま、ちょっと後で教えるとしよう。

これは葬式料理の時の奴だな。

料理の数が多すぎて人手が足りない時があって、暇だった俺が連れ出されたんだよ。

それを見て、セレス嬢が手伝わせてくださいって。

忙しい中、大丈夫かなって思ったけど、トコトコ歩く姿に癒されて仕事効率もアップみたいな感じで。

無事に、乗り切る事が出来ました。

いや、それにしても、ホウメイさん大変だなと実感した。

葬式料理ですら全て自分一人なんだから。

皿洗いや野菜切りしか出来なかった自分でも終わった時は達成感がありました。

ホウメイさんとその後、お茶会をしましたが、ホウメイさんは良い人です。

サイゾウ氏に並ぶ尊敬する大人として認定されました。

 

「また御手伝いする機会があったら来てくれるかな?」

「・・・はい。頑張ります」

「ありがと、セレスちゃん。それと最後の文をちょっと変えようか」

「・・・どうやってですか?」

「私だったら御手伝いすると思いますだとセレスちゃんがせっかく手伝ってくれたのに何もしてないみたいでしょ? だから、お手伝いしましたにしよう」

「・・・コウキさんに教えてもらった文と変わっちゃいます」

「え? あ、別にそのままじゃなくても・・・」

「・・・嫌です。このままが良いです」

「う、うん。このままでいいよ」

 

○○月××日

今日、ナデシコのブリッジでルリさんがアイゲームをするという事がありました。きっと退屈が原因でしょう。結末はハイスコアです。私だったら高得点は取れないと思います。

 

「あぁ。あのゲームやっていたんだ」

「・・・難しかったです」

「ま、ゲームは慣れだから。セレスちゃんだっていつか高得点が取れると思うよ」

「・・・頑張ります」

「うん。頑張って」

 

○○月××日

今日、ナデシコの食堂で辛い物を食べるという事がありました。きっと好奇心が原因でしょう。結末は辛かったです。私だったら二度と食べません。

 

「へぇ。辛いもの食べたんだ。舌とか痛かった?」

「・・・痛かったです。今でもちょっとヒリヒリします」

「セレスちゃんにはちょっと早かったかな。大人になればきっと食べられるよ」

「・・・む。私、子供じゃありません」

「じゃあ、もう一回食べてみる?」

「・・・シュンッ。子供のままでいいです」

「すぐに食べられるようになるよ」

 

何故にいつも擬音を声に出すのだろうか?

ま、いっか。とりあえず、今日の所はここまでだな。

 

「うん。何があったのか伝わってくる良い日誌だね」

「・・・ありがとうございます」

「また見に来るから、頑張って」

 

偉いぞって子供を褒める時は頭を撫でてしまいますよね?

あれは不可抗力です。自然の理です。

 

「・・・楽しみに待っています」

「うんうん」

 

色々な経験を積んで子供は成長するんだ。

日誌じゃなくて絵日記風にするよう提案してみようかな。

え? 日誌じゃなくなるって?

子供に描かせている艦長が悪い。

俺はセレス嬢の成長の為ならプロスさんにだって立ち向かってやるぜ。

 

 

後日、絵日記にさせる事に成功。

絵心はそれ程でもありませんでしたが、一生懸命絵を描く姿は和みました。

セレス嬢の航海絵日記を読む事が一日の楽しみになっている僕でした。

 

 

 

 

 


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