とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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約一年ぶりの投降です。黙示録事件の後、Vividに至るまでの間話です。無理のない程度で更新すると同時にいろんな間話も投稿します。


アフターストーリー
プロローグ


「ん…ん?」

 

一体いつからしていたかわからない眠りから、アキラは目を覚ました。目の前に広がるのは綺麗な青空。その青さはまるで平和を表しているようだ。

 

「ここは…」

 

身体を起こす。全身が痛い。ギンガと出会う前、放浪を続けていた時も硬い床で寝ていたが、此処まで痛くなることはなかった。

 

「いてて……ここはどこだ?俺は、一体…」

 

「ここはミッドチルダから離れた廃市街地のビルの屋上だ」

 

聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

 

「ん?」

 

振り向くと、そこにはシグナムが座っている。

 

「なんでこんなとこに…」

 

「覚えてないか」

 

「覚えて………」

 

その瞬間、アキラはすべて思い出した。眠りにつく前のすべての記憶。戦い、想いを。

 

「!」

 

黙示録の書。その強奪から始まった、ミッドチルダ全域を巻き込んだ大事件。アキラは自身の名誉、信用、命、自身の全てを引き換えにしてでもその事件の解決と攫われたギンガの奪還に全力を尽くし、見事に黙示録の書、ギンガの奪還を成功。更にはゆりかごに負けず劣らずの最凶の兵器「黙示録の獣」をも打倒した。

 

しかし、そのために犯罪者を脱獄させ、戦闘機人を洗脳して私的戦力として扱い、無断で次元転移を行った。アキラの罪は相当重いものになるだろうと予見されていた。

 

「あれから…何日経った?」

 

「三日だ」

 

「三日……ギンガは…ナンバーズはどうなった!?ウィードは!?」

 

「質問が多いな。まぁ一つ一つ順に説明してやろう。まずギンガだが、お前の娘のアリス含めて安全な施設で守られている」

 

アキラはうまく動かない身体を無理やり立ち上がらせ、シグナムに抗議した。

 

「安全?それはどれくらいだ?またあんな奴が……「黙示録の獣」が現れても守り切れんのか!?」

 

その抗議を聞いてシグナムはため息をついた。気持ちは分かるがそんな地下シェルターの様なものを早急に用意できるほど管理局も有能ではない。そもそも街が、何なら国が大変なことになっている現状で個人の安全を確保しているのだ。

 

確かに一度ならず二度までも組織に狙われた身であるので保護が過激になるのは仕方ないが、それを差し引いても破格の対応である。

 

「無茶を言うな。またあんな人類の敵とも言える奴が現れたらその時こそギンガだけでなく人類そのものの終わりだ。絶対は保証できないが、少なくともただの病院よりは安全だろう。見ろ」

 

シグナムは端末をアキラに投げた。その端末にはベッドでアリスと眠るギンガの姿が映っていた。その近くにはセッテが座っている。

 

「これは…」

 

「ギンガの現状だ。ギンガの護衛は数時間ごとにお前の知り合いに交代でやらせている」

 

「……まぁ、仕方ないか」

 

アキラはギンガの顔を少し見て落ち着いたのか、冷静に判断した。

 

「そして、お前が兵器利用したナンバーズたちだが一通り検査と取り調べを終えてからすぐ解放されたよ。別に咎められるようなことはしてないからな」

 

「ああ…あいつらは悪くねぇ。悪いのは俺だ」

 

「最後に、ウィードはまた檻の中に戻った。暴れることもなく、素直にな」

 

「…そうか」

 

「質問は以上か」

 

アキラは小さくため息をついた。

 

「……まぁ。俺が重要視することはそれだけさ。で、ここは檻じゃねぇみたいだがなんで俺がこんなとこにいて、あんたがここにいる?」

 

「それについては私から説明しよう」

 

背後から声がした。聞き覚えのある声だ。振り返るとそこには見知った人物、小此木が立っていた。

 

「小此木」

 

「ああ。君がここにいるのはこれから君の生死を決めるためだ」

 

「俺の?」

 

「君にはこれから2ヶ月のトレーニングをしてもらってその後、君が「ファントム」にふさわしい人間かどうかを確認する模擬戦を行う」

 

「はぁ?」

 

急に訳の分からないことを言われアキラは眉間にしわを寄せた。「まぁその反応だろう」という表情で小此木は説明を続ける。

 

「君は局員として、大罪を犯した。しかし、同時に世界を救った。そんな君に最後のチャンスを与える。君がまだ、局員として有用だと示すことだ。そのために我々と同じファントムに入ってもらう拒否権はない」

 

 

 

続く


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