プロローグ
これは、アインハルト・ストラトスが少し騒ぎになるストリートファイト。それでノーヴェに出会う少し前に起きた大きな事件だ。大きな、本当に大きな事件だった。今もアレが暴れた街は修復が終わってない。バラバラになった街が完全に治るには今後何年かかるかはわからない。これは管理局がその存亡と市民の安全をかけて戦った。恐らく歴史に名を残すであろう事件だ。
ー黙示録封印の祭壇ー
ここは黙示録の書と黙示録の槍を封印している祭壇。サラが今も一人で封印をしながら監視をしている。警備は決して手薄ではなく厳重な警備をされていた。場所は管理局の超重罪人専用の牢獄施設の最深部。牢獄施設なのだから最初から警備も厚いのだ。
だが、この日は違った。
「…………おかしいですね。ここに父以外が来るなら、事前に私に連絡のあるはずですが………」
サラは背後に近寄る人物に言った。近寄っていた人物はその言葉で足を止めた。
「ほう、この位置からでも見えるのか。貴様には未来を見る力があると聞いたが、私のことは見えなかったか?」
「いえ、あなたがここに来るのは、予知夢で見てました。ですが、こんなにも幼いとは思わなかったので」
祭壇に侵入者が現れた。それも、幼い少女。服装はまるで何処かの民族と魔女を組み合わせたような服装。どう見てもミッドの人間ではない。
「ふ、見た目に騙されるとはキサマもまだまだ子供か」
「それより……何の御用でしょうか?」
「わかり切ったことを……」
少女が腕を動かした瞬間、サラはデバイスを持ち、振り向きざまに魔力弾を少女の腕に打ち込んだ。その瞬間、少女の腕は動かなくなり両足もバインドで縛られた。
「私は戦闘向きではありませんが、封印は得意なんです。さて、まずはお名前からお伺いしましょう」
サラの質問に少女はわずかに笑みをこぼした。
「……………私の名前はクラウド・F・オーガス!黙示録の主であり、この世界に復讐を、制裁を下す者だ!覚えておけ!」
叫ぶと同時にクラウドは封印魔法で動きを封じられた右手の封印を力尽くで破壊し、足のバインドを引きちぎってサラの横を通り抜けて後ろに回り込んだ。
「残念ながらお前の力では私には勝てん!」
「くっ!」
クラウドはサラが振り向き始めた時、袖の内側から一冊の本を取り出し、あるページを開いてそこに書いてある文字をなぞった。なぞった文字は光出し、本の上にエネルギーが溜まる。サラはエネルギーが溜まる直前に振り向き終わったがもう遅かった。
「力の差は歴然だ!!!」
溜まったエネルギーはサラの方に向かって拡散し、サラを入口まで吹っ飛ばす。サラは声を出す間もなく吹っ飛ばされ、壁に激突して気絶した。クラウドはそれを確認すると、祭壇の向こう側の洞窟に向かった。
「あそこに封印してあるのが…黙示録の書と槍か………」
◆◆◆◆◆◆◆
ー同時刻 ミッドチルダ 修行用滝ー
巨大な滝の中から上半身裸のアキラが刀を持ちながらフラフラと出てきた。アキラの前方の岩の上には白髪の男が立っていた。
「どーしたアキラ。お前、強くなったとか大口叩いてなかったか?」
「うっせぇよ義兄貴!!俺の魔力は殆どエクリプスと一緒に腕輪に封印されちまったんだ!無茶させやがって!」
アキラは滝つぼから出ると座り込んだ。そこに、ギンガがやってくる。
「アキラくん!レイさん!お昼にしませんか?」
「おう、ギンガ!ちょうどいい!今いくぜ!」
「まだ修行のメニューは終わってないがまぁいいだろう」
滝の横でナカジマ一家とアキラが義兄貴と呼び、ギンガがレイと呼んだ人物がお弁当を突っついていた。ギンガは哺乳瓶でアリスにミルクを与えていた。レイと呼ばれる人物は、フルネームで橘レイ。昔アキラのいた橘家にいた橘家の跡取りだ。今は、魔力とエクリプスを失ったアキラの修行を行っている。
「うん、うまい」
「俺の嫁の手作りだ。当たり前だろ」
「あら、ありがとうございます」
橘家専用修行用滝には似合わない和気あいあいとした風景が拡がるなか、滝の音が聞こえなくなったのに、アキラは気づくまで少し時間がかかった。
「…………ん?」
滝の音が止み、風は吹かず、落ち葉は空中で止まっていた。結婚式以来だ。時間が止まり、目の前に甲冑の男、リュウセイが現れるのは。
「………久しぶりだな」
「なんの用だ………」
「警告だ」
「毎度毎度ご苦労なこって。で、今回はなんだ?」
「黙示録の封印が破られた。命を張ってギンガを守れ。いいな」
続く