とあるギンガのPartiality   作:瑠和

40 / 118
遅くなりました。次回は多分10日位あとです。今年は私情から忙しい年になってますので、暇な時に上げられたらいいなと思ってます。頑張ります。今年も応援よろしくお願いします。


ウィード事件編 最終回 今後

「おあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

刹那、振り下ろしかけたクローンの腕を誰かが止めた。それは、ギンガだ。

 

「ギンガ………」

 

「残念だけど、私はあんなバインドじゃ押さえられないよ?」

 

「は、ははっ!今だ!」

 

ウィードが動こうとした、しかし、頭部だけのウィードに剣の先が当てられる。ウィードは急に黙り、瞳だけ動かす。そこには、シグナムが立っていた。

 

「時空管理局機動六課のシグナムだ。おとなしくしていろ」

 

「くっ!黙示rっぐぅ!あがぁ!これは………」

 

黙示録の書に指示しようとした瞬間、ウィードの頭が複数の包帯のようなもので縛りつけられる。突然の出来事にアキラが驚いた瞬間、物陰から誰かが出てきた。

 

「近くにあった黙示録の書のレプリカには封印をかけさせてもらいました」

 

「お…」

 

アキラを縛っていた触手もただの液体のようにアキラの身体から滑り落ち、消えていった。

 

アキラとギンガが声のした方を見る。そこには、眼鏡をかけた白髪の男性が立っていた。身体の自由が戻ったアキラは警戒しながら男に尋ねる。

 

「あんたは?」

 

「申し遅れました。私はテレジー………テレジー・シファクです」

 

「テレジー?それって俺らが会う予定だった………」

 

「ええ」

 

テレジーは眼鏡を上げ、にっこり笑う。ウィードは巻かれた包帯が痛むのか苦しそうな声でテレジーに話しかけた。

 

「ぐっ…………そうか……君なら……黙示録を封じれるって訳か…………」

 

「ああ、黙示録に魅入られた哀れな科学者君?」

 

「魅入られた?黙示録をコントロールしているのは他でもない!この僕だ!!!」

 

そう言って粋がるウィードを、テレジーは哀れむような目で見ながら持っていた包帯に似た封印具をウィードに垂らして行く。

 

「そう思いながら、黙示録に取り込まれた人間を私は何人も見てきた………まだ正気を保っていてくれて助かりました」

 

封印具がゆっくりウィードの頭を包んで行った。

 

「今に見ていろ!いつか僕は必ず、黙示録の力を手に入れ!この世界の頂点に……」

 

ウィードは封印具に完全に封じられると、声は聞こえなくなり、テレジーの部下たちによって封印用のアタッシュケースのようなものにレプリカの黙示録の書と共に収納され、車で何処かに運ばれた。

 

「シグナムさん……よくここがわかったな」

 

「いつまで経ってもお前がこないということでな、私が探しに来たんだ。テレジー一佐は偶然近くに来ていてな。部下を引き連れてくれたんだ」

 

シグナムは視線をテレジーに向ける。テレジーは手にしていた本を閉じ、眼鏡をあげる。しかし、ギンガには一つ疑問があった。

 

「え?でもテレジーさんは本部にいるんじゃ……」

 

率直なその疑問を言うと、テレジーは笑顔で答えてくれる。

 

「それはあなた方が合う予定だったのは、私の娘です。まぁ、共に本部へ参りましょう。おのずとわかりますよ」

 

 

 

ー時空管理局 中央地下ー

 

 

 

 

戦闘の後、クローンはシグナムによって保護され、戦闘現場からここまで移動する際に、アキラの身体のサイズは元に戻っていた。そして、アキラたちが時空船で連れてこられたのは、時空管理局本局の重要次元犯罪者の牢獄。その奥の奥のさらに奥深くの立ち入ったこともないような幽閉された空間。

 

「なんだここ…………」

 

「なんだか息苦しいような感じ…………………」

 

アキラはギンガを抱き寄せ、安心させるために頭を撫でる。

 

「まぁ、世界を滅ぼせるような代物ですから。おそらくもう日の下に出ることもないでしょう」

 

しばらく歩くと、巨大な扉がアキラ達の前に現れた。その扉の奥から滲み出た、ほんの僅かな魔力圧。それを感じた瞬間、アキラは反射的に紅月を掴む。

 

鍛えてきたアキラだからこそ感じた、僅かな魔力だった。

 

「アキラ君?」

 

「いや………」

 

「感じたんですね。黙示録の魔力を。流石は百戦錬磨と噂されるあなたらしい」

 

どうやらアキラはJS事件やウィードの事件などでの活躍から、管理局内では少しばかり名がしれているらしい。

 

「変な噂が流れちゃってるみたいだね」

 

「別に構わんがな……」

 

「では、ドアを開けますよ。御用が済み次第、呼んでください」

 

巨大な扉がゆっくりと開かれる。隙間から漏れてきた僅かな光。どうやらロウソクの灯りのようだ。扉が完全に開く。中には、まるで神社のように奉られた洞窟のような空間。その中心に誰かが座っている。

 

アキラとギンガはゆっくりと歩を進めた。

 

「私に客が来ると聞いていましたが……あなた方ですね」

 

「!…………ああ。君が………現状で黙示録を封じている……テレジー家の娘さんでいいのか?」

 

アキラが尋ねる。後ろ向きに座っていた少女が立ち上がり、アキラ達の方を向く。

 

「その通り……私が黙示録の封印者、テレジー家九代目。テレジー・サラ。よろしく」

 

サラは近くにあったクッションをアキラ達に投げつけ、自分のクッションを床に置いて座る。

 

「まぁ、立ち話もなんなので、それに座ってください。床がご覧の通り固いので」

 

「う、うん…」

 

二人は言われた通り座る。二人が座るの確認するとサラは被っていた封印の儀の為の帽子を脱いだ。帽子で押さえられていたサラの赤い髪がバサッと解放された。

 

「ふぅっ…すみません、ついさっき儀が終わったばかりなので…少々疲れていますが、どうぞ何なりとお聞きください」

 

「ああ、すまない…。じゃあさっそく………」

 

アキラの動きが止まる。

 

「俺たち何しに来たんだっけ?」

 

「あ、アキラ君は聞かされてなかったね。じゃあ私から…………まぁまず、黙示録って何なのか……かな」

 

「…………黙示録は、皆さんの……世間一般にありふれている噂通りです。黙示録の書……それは、この世の終わりをもたらすと言われ、黙示録の書は持つ者を選び、書を持つだけで強大過ぎる魔力を持ち、黙示録の槍、もしくは黙示録の獣を手にすることで、世界を滅ぼせると言われている。全く持ってその通りです。あちらを」

 

サラがさっきまで自分がいた場所のさらにその奥を指差す。そこには、何やら大きな空間があるようだ。サラは近くのロウソクを持ち、立ち上がる。

 

「ついてきてください」

 

言われるがまま、アキラとギンガは立ち上がり、サラについて行く。少し歩くと、出口のような光が見えた。そこに着くと……アキラの前に広がった光景は筒抜けとなった巨大な空間。一体上空何mから射し込んでるのかわからないほど小さな光が上空に見え、その下は底が見えない程深い穴が空いている。空間の横の幅は、直径20m程だろうか

 

そんな筒抜けの空間の途中で四方八方の壁から伸びた何かで巻きつかれ、宙吊りになっている何かが二つ、あるのが見えた。

 

「あそこにあるのって……もしかして…」

 

「お察しの通り、あそこで縛られ、吊るされているのが…………黙示録の書と、黙示録の槍………レプリカなんかじゃない…オリジナル」

 

「…………あれが…」

 

アキラが上を見上げていると、ギンガがアキラの服の裾を引っ張る。アキラがギンガを見ると、ギンガは何か怯えたような表情で底の見えない穴を見ていた。

 

「アキラ君……下から何か……感じない?」

 

「下?」

 

アキラが下を見ると、真っ暗な中に何かを感じるような気がしなくもなかった。

 

「……その下には……何者かが封印されていると聞いたことがあります。地下のことに関しては……私ですら知りません………。まぁテレジー家に伝わってないということは、単なる噂だとは思いますがね」

 

アキラは試しに、近くにあった石を拾って穴に投げ込んで見る。石はすぐに闇の中へ消えていき、十数秒後に金属と当たったような音がしたが、それからは何も聞こえてこなかった。まだ落ちているのか、底に到達したのかすらもわからない。

 

「本当に深いんだな。落ちんのにこんだけ時間がかかるってことは数キロはあるぞ」

 

「かつてこの空間を見つけた時の記録では、ここの底には到達出来ず、魔法が打ち消される為捜査を断念って書いてある」

 

「…………黙示録は数年に何度か、封印を破るレベルの暴走をします。その度に封じているんですが……地下に関しては私の父の代から何かが暴走して出てきたりということはなかったそうです」

 

「そうか………」

 

三人は元の位置に戻り、再び座った。

 

「他に聞きたいことは?」

 

「一つ聞きたい」

 

アキラがふと何かに気づいたようで、考え事を見せる素振りでサラに尋ねる。

 

「はい?」

 

「獣は…黙示録の獣はどこに封印をされている?」

 

そう、ここに封印されているのは、本と槍の二つだけ。殺戮兵器としては最強と呼ばれる「黙示録の獣」の存在が確認できていない。槍と書は、単体で凄まじい力を発揮するが、獣に関しては書が無いと起動できないというか話もあるので、書が封印されている限り安全とは言えるが、所在がはっきりしていなければやはり不安も残る。

 

「……………獣はここには封印されていません」

 

「じゃあ………」

 

「獣は、ミッドチルダの西側の海に…………先代……………一代目のテレジー家の人間がその身と共に封印しています」

 

「なっ!そんな近場に!?」

 

アキラは驚く。が、サラは冷静に対応する。

 

「落ち着いてください。魔法は……命を使う魔法は最も強力です。現代では禁じられていますが、かつて存在していた回復魔法で、命を使った回復魔法は死人をも生き返らせると書いてあります。不可能すら可能にする強力な魔法で今獣は封じられています。だから、安心してください……」

 

「………そう……か。じゃあ、もう一つ聞きたい」

 

「はい?」

 

「何で俺らを呼んだ?」

 

アキラとギンガは、はやての命令のもとここに来ていたが、はやて曰く黙示録の捜査を依頼してきた方から二人を呼んでくれとの依頼だったらしい。

 

アキラはそれが一番気になっていたのだ。

 

「私は、この家系に生まれ、黙示録の封印技術確保のため、幼い頃から魔法の修行に明け暮れていましたが……その途中、私は自分に予知の力があることに気づきました。この力は意図的に発揮できず、ごく稀に、ふと見えるだけの力ですが外したことはありません。そして今回は……あなた方二人の未来が見えました」

 

「なるほど?」

 

アキラは興味を示し、話に耳を傾ける。ギンガもどんな未来が見えたのか興味を持った。

 

「この先、二人には大きな困難が待ち受けます。それも、幾度も…幾度も…ですが、お二人の力があれば、決して諦めなければ……乗り越えられなくはありません。ですが………」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ーミッドチルダー

 

 

機動六課までの帰路で、アキラとギンガは海沿いを歩いていた。二人はずっと黙っていたが、途中でギンガがアキラの前に出て振り返る。

 

「アキラ君………やっぱり…わ、別れよう?」

 

「…………………ギンガ…」

 

さっき、サラに言われた最後の言葉。

 

「一歩でも間違えれば、アキラさん、あなたはギンガさんのために命を落とします」

 

ギンガは自分のせいでアキラが死ぬなんて絶対にお断りだった。でも、アキラと別れなければならないのも嫌だった。ジレンマってやつだ。そして、たったいま決めたのだ。

 

もう自分を会いしてくれる者などアキラ以外にいないだろうが、死んでしまうならおんなじだ。それに、ようやくアキラは自分の呪縛から開放され、やっと幸せになれかばかりなのだ。そんな自分の最も愛する人の幸せを自分が壊すくらいなら、こうするのが正解だとギンガは思ってしまったのだ。

 

「………」

 

アキラはギンガに無言で近づき、手を伸ばす。ギンガは何をされるかわからなかったのでギュッと目を瞑る。アキラはギンガの前髪をかきあげ、おでこにキスをした。

 

「…………え?」

 

「ありがとうな、俺のことそんなに考えてくれて」

 

ギンガの言葉の意味を勘違いするほどアキラも馬鹿じゃない。昔は見せなかったにっこり笑顔でギンガを撫でる。

 

「なんで………なんで、そんなに優しく………死んじゃうんだよ?私と一緒にいたら………やっと手に入れた幸せも…無くなっちゃうんだよ?死んじゃったら何も残らないんだよ⁉」

 

ギンガは目に涙を浮かべ、アキラに訴えた。

 

「サラが言ってたのはあくまで可能性の話だ。絶対じゃねぇ。それによ、命はって大切な人を護れなくて何が恋人だってんだ。何が護衛人だってんだ。俺はお前がいるから幸せだし、お前がいるから俺の全てがあるんだ。………………仮に死んでもお前のために死んで、お前が生き残ってくれたんなら……それでいい。お前がどう思おうと、その気持ちは変わらない……」

 

アキラはそっとギンガを抱きしめた。安心させるように、優しく。なんだかしんみりした空気になった瞬間、アキラはギンガを離し、頭をくしゃくしゃと少しばかり乱暴に撫で回す。

 

「ま!俺が死ぬなんてこたぁねぇから安心しろって!!知ってるだろ!?俺の強さ!この力でお前も、みんなも、全部護るんだ。だから俺は死なない!いいや、死ねないんだ!」

 

やり慣れないキャラを演じてアキラは急に恥ずかしくなり、ちょっと顔を赤らめて海を見る。

 

「ギンガは驚いた顔でアキラを見ていたが、恥ずかしがってるアキラを見たら急に笑えてきた。

 

「……クスクス……もぉ、アキラくんったら………わかったじゃあ、これからも一緒にいよう?」

 

「ああ」

 

ギンガはアキラ小指を差し出す。アキラが首を傾げる。ギンガはアキラの手を掴んで同んなじ風に小指を出させると、自分の小指を絡めた。

 

「指切りげんまん……嘘ついたら……リボルバーブレイクね?」

 

「罰がキツイんだが……」

 

「フフッ、スバルに、チョコポッドでも買って行こうか」

 

「そうだな」

 

二人は、夕暮れの街中を歩いていった。その間、手を繋いでいた。決して離れないように………互いに離さない様に。

 

 

 

ウィード事件編ー完ー

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。