とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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第三話 姉妹

医務室では、少し冷たい空気が流れていた。

 

「……えっと…その…え?」

 

「あんたは今、俺の手はまだ守れるって言ってくれた。だったら試させてくれ。本当に、俺の手がまだ誰かを守れるか」

 

アキラはギンガに握られた手を握り返した。ギンガは顔が一瞬赤くなる。

 

「いいか?俺があんたの護衛になっても」

 

「えっと…」

 

アキラがぐっと顔を近づけるとさらにギンガの顔は赤くなった。

 

正直、ギンガはこんなことになるとは思ってなかった。ただアキラに元気になってもらいたかっただけなのに。アキラは本気だ。一体どうすればと悩んでいるのもあれなので、とりあえず受け入れることにした。それで彼が立ち直ってくれるならと…。

 

「それじゃその………まぁ、君がそれでいいなら…………」

 

ギンガはもじもじしながら、少し目をそらして答える。

 

「必ず守る。ギンガさん、あなたを」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

―翌日―

 

 

「えー先日はすまなかった。今後はこんなことがないよう、気を付ける」

 

アキラは後輩達の前に立ち、昨日の失態について謝罪している。さて、それを聞いている部下達は…………震えていた。完全にアキラのオーラに負けてる。昨日と違う、獣のような鋭い目つき、しゃべり方。何というか、アキラはいるだけで根源的な恐怖を植えつけられるような感じの人物だった。

 

「まぁ謝罪はここらへんにしといて訓練始めるぞ」

 

 

 

―訓練開始―

 

 

 

本日のメインは中距離射撃。おまけで格闘。訓練が開始されてから10分程すると射撃訓練中に数人がアキラに呼ばれた。ギンガはあのアキラがちゃんと教官ができるか心配だった。

 

「なな、なんでしょう。橘陸曹…」

 

呼ばれたメンバーはかなり震えている。やはり怖いらしい。

 

「お前達を呼んだのは…共通する癖があってな。ちょっと全員構えてみろ」

 

言われた通り全員がすぐに構える。

 

「…ほら肩に力がはいってんだよ…で肘を少し曲げて…ああそうだうめぇぞ…」

 

「へぇ…」

 

ギンガは驚いていた。アキラは教えるのが上手かったからだ。その性格と見た目に反して、ただ無駄に怒鳴ったりせず、優しく手取り足取りを分かりやすくゆっくりと、なおかつしっかり覚えさせる。そのおかげか全員命中率が格段に上がった。

 

格闘訓練の際もそうだった。

 

「だからな、ここをこうして…手で抑えて足をかけて相手の右手を……」

 

教官っていうか学校の先生のようだ。後輩の成長が早くなっている。それにギンガ達も教え方のいい勉強になっていた。

 

 

ー訓練後ー

 

 

昨日、橘君が私を守ると言ってくれた。あの時はつい了承したけど………正直それで本当に良かったのか分からない。

 

しかしそれはそれとして、橘君の護衛は少しやりすぎてる。

 

昨日も今もそうだけど、仕事中に友達だろうと仕事関係だろうと私に近寄る人がいるならその人にガンを飛ばし、いつの間にかどこから取り出したか分からない刀を手に持っている。帰りは送ってくれたのはいいんだけど、今朝なんか家の前にいて、管理局まで一時も離れない…橘君には悪いけど、少し異常だと思う。

 

さて、噂をすれば影。

 

「あ、いた…」

 

橘君はついさっきデータエラーの処理と戦闘中だったので声を掛けるのも悪いと思い、私は一人で食堂に来ていた。守ってくれるのは嬉しいけど一人の時間も欲しかったっていうのもある。

 

「相席…良いか?」

 

「うん、いいよ」

 

私の隣の席に橘君は座り、昼食をとった。刀を肩に掛けながら。

 

…これって相席って言わないんじゃ…。

 

「ギンガさん…」

 

「どうかした?」

 

「ギンガさんの家族はどんなんだ?構成とか」

 

「え…」

 

橘君はいつも何を考えているか分からない。なぜかよく私への質問が来る。今日は私の家族…みたい。知ったところでどうするわけでもなく、多分アキラ君にとっては話題のつもりなんだろうけど…。正直あまりプライベートに触れて欲しくはなかった。

 

「うん…お父さんと妹がいるよ」

 

「……失礼を承知で聞くが…母親は…」

 

「やっぱり気になるよね…お母さんは…死んじゃったよ。もう何年も前に」

 

「………すまない…辛い事言わせて…」

 

橘君らしくなく、少し暗い。いや、いつも明るい訳じゃないけど。

 

「ううん、いいのよ別に。誰かに話すのが初めてじゃないし。今さら気にしたってしょうがないしね」

 

 

―数日後―

 

 

俺がギンガさんを守ると決めてから数日。

 

「頼み事?」

 

「うん」

 

ギンガさんに突然頼み事をされた。なんでも前に話していた妹さん…スバルに届けて欲しいとのこと。俺は周りを一回見渡す。暇そうにしてる人物ならいそうだが…。

 

「べ、別の人間に頼めよ。俺はあんたのそばをなるべく離れたくないんだ」

 

「私も友達とかに頼もうと思ったんだけど、みんな忙しいみたいで………もうアキラ君位しか頼める人いなくて…」

 

ギンガさんは申し訳なさそうにする。俺は少し考えてからため息をついた。

 

「……まぁ今日はあんま仕事ねぇしいいか」

 

「ありがとう、橘君」

 

「なんてことねぇよ」

 

俺は荷物を受け取ると、ダッシュで駐車場まで走る。緊急用に108部隊の駐車場にバイクを止めといてある。とっとと済ませたいから俺はバイクで行くことにした。

 

 

―機動六課―

 

 

「さて…来てみたはいいが…スバルがどこにいるか分からないな…」

 

見たところ朝の訓練は終わってるみたいだ。

 

どうしようかと悩んでいるところで茶髪でサイドテールの人と金髪ロングの人が訓練場から出てきたので道を聞くことにした。

 

「ちょっといいか」

 

「ん?」

 

「どうかしたのかな」

 

「俺は陸士108部隊の橘アキラ。同僚…いや、先輩のギンガ・ナカジマさんにこの荷物スバル・ナカジマに届けて来て欲しいって頼まれたんだが…そのスバルってどこにいるかわかるか?あ、いや、わかりますか?」

 

質問を聞いた二人は顔を見合せる。

 

「ギンガってスバルのお姉さん?」

 

金髪の人が疑問に思ったのか聞いてくる。

 

「ああ、その筈だが。あ、その筈ですが」

 

「やっぱり…ああ、スバルなら今訓練終わったばかりだから訓練場の近くにいると思うよ」

 

「ありがとうございます。それでは」

 

俺はそのまま訓練場に向かっていった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「なのは、さっきの子…」

 

「うん…機動六課候補の…アキラ君だっけ。見た目は怖そうだけど、可愛いとこもありそうだね」

 

「いやそう言うことじゃなくて…」

 

「にゃはは♪」

 

 

―機動六課 訓練場―

 

 

「さて…着いたはいいが良く考えたらスバルの顔知らねぇな…どうするか」

 

アキラは訓練場を見回す。訓練場には合計四人の隊員がいて、訓練終了後の柔軟体操をしているが、アキラには気づいてない。アキラは当然分からないので人に訪ねる事にした。

 

近くにいたオレンジ髪のショートツインテールの子に訪ねる。

 

「ちょっといいか?俺は陸士108部隊のアキラって言う。スバルってやつに届け物があるんだが…スバルはどいつだ?」

 

「え、ああ…スバルならあそこにいますよ」

 

その子が指さす先の席にはショートカットの青髪の子がいた。確かにギンガと似ている。アキラはそう思った。

 

「ありがとな。また」

 

「はい…」

 

アキラが近づいていくとスバルはアキラの存在に気づいた。

 

「いっちに…ん?」

 

「お前、ギンガ・ナカジマの妹のスバル・ナカジマだな?」

 

「え……そうですけど…」

 

スバルだと確認をしたアキラはスバルにギンガから預かった紙袋を差し出す。

 

「ギンガさんの使いで来た橘アキラだ。これをお前に渡すよう頼まれた」

 

「あ、わざわざすいません。姉が迷惑かけて…」

 

「いや、迷惑じゃないからいいんだ…」

 

「そうですか…ありがとうございました」

 

そしてアキラは一つ礼をして、「じゃあまたな」と言って訓練場を後にした。

 

アキラが帰ろうとした時、六課のアラートが鳴り響く。機動六課にとって初の仕事ファーストアラートだ。アラートに身体が勝手に反応し、走り出そうとするが、自身にはとってはあまり関係ないことを思い出す。

 

「アラート!?って俺には関係無いよな」

 

アキラがギンガの元へ帰ろうと、バイクに跨った時。

 

「あ、いたいた。おーい!」

 

さっきの茶髪サイドテールの人がアキラを呼び止めた。

 

 

続く


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