前回のあらすじ。
ウィードを倒したと思った日の翌日、アキラは突然小さくなってしまった。原因も不明なままとりあえず小さな姿でいることを受け入れたアキラ。そんな中、機動六課は黙示録の書を捜査することを管理局から指示が来ていた。アキラ達も捜査に協力し、管理局本部行きの次元船へ向かっている途中、倒したと思っていたウィードが、黙示録の書(レプリカ)の力を使って再びアキラの前に現れた。持てる力でアキラとギンガは可能な限り対抗したが、絶体絶命の危機に追いやられる。そんな時、二人を助けたのは………。
「お前………」
「何をしている。橘アキラ。ギンガを守るのはお前の使命だろう」
クローンはギンガを降ろして刀を抜いた。
「とはいえその体では難しいか?」
やや挑発気味にクローンは言った。アキラは無理に立とうとするが、すぐにその場に倒れる。ギンガはアキラを支えてやった。
「お前………何でここに……」
「………ケジメをつけるためだ…俺が、俺として生きて行くために、気がかりなことをなくしに来た」
クローンはウィードの方を見る。するとウィードはクローンの態度をあざ笑った。
「まさか僕を殺しにきたのかい?今、君は魔力のほとんどをオリジナルに渡し、戦闘力だって今のオリジナルより低いだろう?そんな状態で何ができる?何をする?」
「………………俺はすべてを橘アキラに託し、死ぬつもりだった。だが、ある人物によって生かされた。俺にはまだ役割があると………」
クローンは懐から、ギンガのブリッツギャリバーやスバルのマッハギャリバーと同じクリスタルタイプのデバイスを取り出した。それを手前に構える。
「それが何かはわからないが、本当にそうなら、可能な限り生きてやる!戦ってやる!!行くぞ!ナインギャリバー!!!!」
クローンが名前を叫ぶと、デバイスが起動してクローンは大人モードになる。そしてにナンバーズスーツが装着され、オットーと同じようなズボンと上着が着用される。
「それは………」
「ある男が渡してくれた。ナンバーズ達………1、5、6、7、8、9、10、11、12………全員のISと武器が使えるそうだ」
「ほぉ、面白いデバイスだ。けど、そんなもので僕を倒せるかな!?」
ウィード叫びながらクローンに襲いかかった。クローンは焦らず、手の甲に装着されたデバイスに小さな声で呟く。
「ナンバーズ12、ツインブレイズ」
[All Right]
クローンはウィードの攻撃を紙一重で避け、デバイスから出現したツインブレイズで振り向きざまにウィードの頸動脈のあたりを切り裂いた。しかし、そこからは一滴の血も流れず、すぐに再生する。ウィードはすぐに振り返り、身体から刃のついた触手を出現させてクローンに襲い掛かる。
「ナンバーズ5、ランブルトルネイダー」
クローンがふたたびデバイスに命じると、スティンガーが出現する。
「ハァァ!!!!」
クローンが投げたスティンガーはウィードの触手と足に突き刺さる。すかさず指を鳴らすと、スティンガーは爆裂し、ウィードの触手と足が吹っ飛んだ。だが、爆発により切断された箇所はすぐにウィードと一体化した。
「その程度じゃ僕は倒せないよ?」
ウィードは腕を今度は巨大な銃の形に変形させる。クローンはそれをみた瞬間、すぐに横に飛んだ。刹那、クローンの立っていた場所に何かが潰れる音と同時に弾けた。
ウィードが生成した銃口から同じ触手で作られた弾丸が飛び出したのだ。ウィードは続けざまにクローンに向けて弾丸を放つ。クローンは再びデバイスに命じた。
「ナンバーズ9、ブレイクランナー」
クローンの足にジェッドエッジ、そして、腕にはガンナックルが装着された。
「ふっとべ!!」
ウィードの弾丸が発射されたと同時に、クローンはブレイクランナーを展開した。そして猛スピードで敵を撹乱するように奇妙なコースを走り抜ける。
「くっ、ちょこまかと…」
狙いが定まらず、ウィードが慌てている隙に、一気に背後に回った。そして足のジェットエッジに魔力を込めた。
「ジェット!ブレイク!!!!!」
その攻撃を、ウィードは身体を分裂させて避ける。
「なに!?」
分裂した後、クローンの横でまた結合する。
「あはははははは、駄目だよそんなんじゃあ。足りないよ。気力が。君、僕を殺そうとしていないだろう?だからだよ」
ウィードは触手を大量展開させ、クローンに襲い掛かった。クローンは再びブレイクランナーを展開し、攻撃を避ける。
だが、触手はしつこくクローンを追い回し、かなりギリギリの場所に迫っていた。クローンが「まずい」と思ったその刹那…
「!?」
触手が何かにすべて切り落とされ、その何かは回転しながらクローンの進む先に突き刺さった。クローンは驚いて急ブレーキをかける。
「あれは………」
「こいつは……紅月………」
アキラの愛刀である紅月だ。アキラは今の身長では重いので今日は置いてきたはずなのに。なぜ紅月が一人でに動き出したかわからない。だが、アキラ本人にもクローンにも感じ取れることが一つあった。紅月がクローンに向けて「使え」と言っているのが。
「………………借りるぞ!橘アキラ!!!!」
「勝手に使え!ただし……………」
アキラは一瞬言葉を止めた………だが、すぐにまた続けた。
「絶対に勝て!!!!セシルの敵を…………俺らの過去を断ち切れぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
「………ああっ!!!!!!」
クローンは紅月を手に取り、ジェッドエッジを解除してウィードに向かっていった。ウィードは切られた触手を吸収し、再び大量の触手を展開させた。
「面白い刀だ!一緒にバラして解析してやろうか!!!」
「やらせねぇよ!」
クローンは紅月を構え、ウィードに突っ込む。その瞬間、クローンの背後から触手が襲ってきた。
「No.6、ディープダイバー!!」
今度はセインのIS、ディープダイバーだ。ジェッドエッジとガンナックルが解除され、触手の刃がクローンの体に命中する直前クローンは地面に吸い込まれるように潜って行った。
そして、刀を構えてウィードの足元まで泳いだ。
(奴は脳以外すべてあの黒い触手で身体が形成されている……色まで変わるのかあれは………だが、脳を潰せば………)
クローンはウィードの足元の地面から飛び出し、紅月で股から一気に頭まで切り裂こうとする。だが、股から胸まで刀が通ったのはいいが、途中でウィードの頭のみが身体から離れ、それから少し遅れて身体が黒い触手に戻り、ウィードの頭を取り込んで再び身体を形成した。
「くっ…………」
「へぇ、戦闘機人ってのも中々面白い力を持っているんだねぇ。今度捕まえて研究してやろうかなぁ……そこにいるタイプゼロとかもさぁ………」
ウィードがギンガを見る。ギンガは少し睨み返す。
「くそっ!俺が戦えれば……」
アキラが悔しがっていると、その横に何時の間にか誰かが立っていた。
「そんなに戦いたいか?」
「………お前……どこにでも現れるんだな……」
現れたのはやはり、白甲冑の男だ。
「今お前は、取り込んだ様々な人間の魔力が身体に馴染んでいないから動けない。身体が縮んだのは、小さい身体のクローンには馴染んでいたから身体が馴染ませやすくするために縮んだってとこか。魔力が入り混じると時に妙な現象を起こすからな」
「原因とか、理論とかどうでもいいんだよ!今は現状を打開するのがさきだ!!!!」
「アキラ君、落ち着いて……」
「元に戻すことも出来るが、それじゃダメだ……お前が次の力を手に入れるにはな。今俺が出来るのは………一時的にお前を動かしてやるだけだ」
「上等だ!」
◆◆◆◆◆◆◆
「はぁ、はぁ………ぐっ……」
「そろそろおしまいかなぁ、諦めなよ」
クローンの周りを触手が囲む。クローンは紅月を構えてそれに対応しようとしている。実はまだクローンも万全ではなかった。思ったよりも戦闘が長引いているいま、不利なのはクローンだった。
ウィードは触手を集結させ、巨大な刃に変える。
「さて、どこから真っ二つに切って欲しい?股下か………肩か……脇か……………頭かなぁ!?」
質問の途中に刃が襲ってきた。クローンは避けようとしたが、気づかぬうちに足を触手で拘束されていた。
(ここで………終わりかよ……………)
最期の抵抗にクローンは紅月を構えて刃を防ごうとする。刃が紅月に当たる直前クローンの横で声がした。
「紅月貸せ」
触手の刃は、その声があったすぐあとに切り落とされる。
「君は、動けなかったんじゃ………」
「悪りぃな話してる暇はねぇんだ……おい、俺………下がっててくれ。ここは俺がケリをつける。ギンガ!頼んだ」
「うん!」
ギンガがクローンの肩を担ぎ、壁の裏に隠れた。それを確認すると、アキラはウィード見る。
「なぜ君が動けるかは知らないが……さっさと死んでもらおう!」
「…死なねぇよ」
アキラは触手の刃の部分を素手でつかんで受け止めた。すると、アキラの右腕に巻かれていたあの腕輪が輝きだし、右手の指先から黒い魔力がアキラを包んでいく。全身を魔力が包んだ瞬間魔力が弾け、中から黒い甲冑を惑い、黒髪になったアキラが現れた。それを見たウィードは急に表情を変えた。
「その姿は……」
「大切なモンを…大切な気持ちを知っちまったんだ!!!!まだ、死ねるかよぉ!!!!!バースト!!」
鎧の腰に装着された烈風を掴み、トリガーを押して超高速移動を始める。
「ひっ!」
「さよならだ」
一瞬でウィードの身体は切り裂かれ、細切れに変わった。アキラはその細切れになった触手をディバイダーから発射した魔力砲で消し去った。だが、脳だけはまだ残っている。触手に保護され、むき出しにはなってはいないが普通にみれば人の頭がそのまま落ちている感じだ。
「なぜ……完全に殺さない………」
「俺たちは今黙示録について追っている。お前はその証言者なってもらう。それに、俺はもう誰も殺さない」
「ククク…………だから君は甘いんだよ!!!!!!」
「!!」
油断していたアキラの足元から触手が出現し、アキラの全身を拘束した。
「くっ……」
「あはは!残念だったねぇ!終わるのは君の方だったみたいだねぇ!!」
「チィ!こんな……」
アキラが触手を振りほどこうとしていると、その横を誰かがゆっくり歩いてきた。
「お前……」
「悪いな、ギンガは少しバインドで拘束している」
クローンが歩いてきたのだ。クローンはアキラが落とした紅月を拾い上げ、大きく振り上げる。
「ま、まさか…………よせ!今僕を殺したら彼が困るんだろう?」
「…………おれは過去を断ち切る為にここにきた。だから俺には関係ねぇ」
「やめろ……やめろぉぉおぉお!!!!!」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
クローンの怒号がなり渡り、紅月が振り下ろされた。
続く