ナノセントのイベントと重なってたんであまりふでが進まず……次回は10日後の16日の0時です。←申し訳ありません。最新話に関しては活動報告をご覧になってください。
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「え……………」
機動六課が到着した時、既に手遅れだった。アキラはクローンの手によって心臓を貫かれていた。冷たい瞳でクローンはアキラから六課に視線を移しす。
全員が驚きで動けなくなっている時、最初に動いたのはフェイトだった。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「………」
クローンはバインドで六課の全員を縛り上げる。
「ぐっ!」
「アキラ君!」
試しにスバルはアキラ名を叫んだ。しかし、刀で心臓を貫かれたアキラに、動く気配はない。ギンガは声も出せなかった。目の前で起きた出来事が思っていたよりずっとショックだったのだ。
アキラの記憶がないはずなのに…。ここまでショックなのはおそらくギンガの頭ではなく、身体に宿る記憶が反応したせいだろう。
「橘……さん」
すると、森の奥の方から拍手をする音が聞こえた。全員の視線が音がした方に向く。森からは傘をさしたウィードが拍手を打ちながら歩いて来た。なのは達はウィードを見ると、なんとかバインドを砕こうとするがかなり強力なバインドで縛られており、動けなかった。
「うん、予想以上の成果だよ。モルモット君。まさかオリジナルを倒すとはねぇ。まぁ、ジーンリンカーコアだよりなところもあるけど、結果が全てだからねぇ。さ、オリジナルを持ってきてくれ」
クローンはアキラの身体を刀で刺したまま担ぎ、ウィードに向かって歩き出すが数歩いたところで跪いてしまう。
「おや?」
ウィードが少し驚いていると、クローンは大人モードから元の子供の姿に戻った。
「ふむ……負担が大きいとは思っていたけど、ここまでとはねぇ………まぁ、オリジナルと戦ったんだし消耗は激しいよね」
ウィードが笑っていると、シグナムが歯ぎしりをして叫んだ。
「起きろ橘アキラ!!!」
「ん?」
「お前は!お前の覚悟はそんなものか!?以前お前と戦った時、私は感じた!お前の強い覚悟と、信念を!ここにお前の最愛の女(ひと)、ギンガがいるんだぞ!?そんな簡単に諦めていいのか!?」
シグナムは必死にアキラに向かって叫んだ。しかし、アキラはやはりピクリとも動かない。クローンは一瞬シグナムを見たが、すぐにまたウィードに向かって歩き出す。小さな身体にアキラの身体を運ぶのはとても辛いのか、疲れているのかかなり息が荒くなってきている。
「はぁ〜……感動的だねぇ。うんうん。でもね、彼はもう死んだ。諦めなよ。死んだ人間はもう帰らない。まぁ、安心してよ。彼の身体は僕が有効活用してあげるからさ」
ようやくクローンがウィードの前まで到着し、ウィードの足元にアキラの身体から抜いた刀を投げ捨て、その上にアキラの身体を置く。ウィードはアキラの身体を掴もうと手を伸ばす。その瞬間、クローンを除く全員が驚く事態が起きた。
「が…………なんだこ………れ………」
死んだと思われていたアキラが起き上がりクローンが持っていた刀でウィードの胸を貫いたのだ。ウィードは口から血を吐きながらクローンを見る。
「測った………のかい?………怒りと、憎しみしか持たない君が…………」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
アキラは刀を引き抜き、天高く振り上げ、魔力を込める。
「氷牙、一閃!!!!!」
アキラは様々な思いを込めた一撃をウィードに食らわせた。ウィードは抵抗できずにその一撃をくらい、数メートル離れた木まで吹っ飛ばされた。
アキラは息を荒げながら刀を地面に落とし、髪をかき上げた。雨で濡れた髪は、上に持ち上がったまま動かない。髪をかき上げたことで見えたアキラの右目は、黄色く輝いていた。
刀が水たまりに落ち、水が跳ねたのと同時にクローンがその場に倒れる。アキラは急いでクローンを支えた。すると、六課を縛っていたバインドが消え、六課メンバーがアキラ達の元へ駆け寄る。
「アキラ君!」
「橘さん!良かった、無事だったんですね?」
ギンガが尋ねるとアキラはクローンを見て小さく呟く。
「こいつのおかげだ………ギンガの言葉がこいつには届いていたんだ」
「え?」
ー数分前ー
アキラは勝負に負け、もう魔力が尽きたところでクローンに一瞬の隙を狙われ心臓……正しくはアキラの体内のジーンリンカーコアを貫かれた。その時、アキラにクローンは耳打ちをした。
「今からお前に魔力と、お前の右目を返してやる。お前の手で奴を仕留めろ。………ギンガのことを頼んだぞ」
クローンはアキラのジーンリンカーコアに刀を仲介させ、直接魔力を送り、自分の中にあるすべての魔力をアキラに渡した。それにより失われていたアキラの右目の視力が戻ってきたのだ。
クローンがウィードのもとにアキラを運ぶ際、大人モードが解除されたり、息が荒かったりしたのは魔力を送っていたからだ。刀が抜かれた時、魔力が普段の倍以上になっていたアキラはECウィルスの力で傷を塞いだのだ。
ー状況ー
「そうだったの……」
フェイトはクローンの頭を撫でた。
「…………なぁ………………アキラ…………」
クローンがボソボソとアキラに尋ねる。
「なんだ?」
「お前はギンガ・ナカジマと一緒にいる時、幸せか?」
妙な質問だったが、アキラは頷く。
「そうか…………ギンガ・ナカジマに始めてあった時、身体が少し動かなくなった………攻撃も出来なかった…………それはきっと、お前の記憶が俺の身体に刻み込まれたからだろう…………」
「……もうしゃべるな。すぐ病院に連れて行くからよ」
その刹那、クローンは突然起き上がり、アキラ達の後方に立ったと思うと、一本の触手がクローンの身体を貫く。全員が驚いた。
「!?」
「ぐ………」
触手の伸びている場所を見ると、ウィードの手にする剣から伸びていた。触手はクローンの身体から抜け、ウィードが手にしている剣に戻って行き、剣の形に固定化される。
「おい!大丈夫か!」
「まだ………生きてるとはな」
「はぁぁぁ…っ!……はぁぁぁっ!…………クソっ!どいつもこいつも……」
アキラは近くに落ちていた紅月を拾い上げ、クローンも自分の刀を拾う。
「おい、無理は……」
「ギンガ・ナカジマの記憶は、あの男がデータ化して保存している。俺はその在り処がわかる」
クローンは傷口を抑えながら言った。アキラはその言葉で大体の意味を察する。ウィードを見ると、アキラにやられた傷は、深い様子だった。二人は刀を構える。
「俺らが奴を抑える。その隙に頼むぜ。みんな、手ェ貸してくれ。一気に畳み掛ける!!!」
アキラの声が合図となり、アキラとクローンは二手に別れ、アキラはウィードに、クローンは廃墟となっているアキラの生まれた研究所に向かった。それと同時にアキラは六課メンバーに念話で簡単に作戦を伝える。
「行かせない!」
ウィードはクローンに向かって触手を伸ばす。アキラはその触手を紅月で切り落とす。触手はすぐに結合され、ウィードの身体に戻って行く。
「やらせねぇよ……」
アキラの横に六課のメンバーが立つ。シグナムとなのははクローンについて行った。
「アキラ君、本当に二人で良かったの?」
フェイトが尋ねる。アキラは小さく頷く。
「この男は油断ならねぇ。どんな隠し球持ってるか……」
「そうだねぇ……」
アキラが言うと、ウィードはさっきまでの辛そうな態度から一転、余裕な表情になって笑う。アキラにやられた傷は血で汚れてわかり辛かったが、既に治っていた。 アキラは歯ぎしりをしながら刀を構える。
「いい判断だよ。でもね、どちらかと言うとあっちにもっと回した方が良かったかな」
「なに?」
ウィードが指を鳴らすと、地面の水たまりの泥が逆巻き人型になる。腕は刃の様な形をしており、足はほぼ水たまりと同化している。それがウィードの周りに四体。
「『泥人形』……今あの施設の前にこれと同じものが………」
説明の途中、アキラの一撃によって泥人形四体は真っ二つにされた。泥人形はその場に崩れ落ちる。
「なんの魔法使ってるか知らねぇが、こんな泥の塊でエースオブエースを落とせるかよ」
そう言った瞬間だった。アキラの背後に再び泥が逆巻き、泥人形を生成する。
「アキラ君後ろ!!!」
「!!」
泥人形がアキラを腕の刃で切り裂こうとした瞬間、間一髪でフェイトがアキラを助け出す。アキラはフェイトに抱えたれたまま紅月に魔力を込め、紅月に炎を纏わせる。フェイトがアキラを手放すと同時にアキラは地面に着地し、紅月を振った。
「火剣、烈火!!!」
これはクローンがジーンリンカーコアから得た魔法だが、アキラはそれらを与えられたのだ。アキラの放った火炎がウィードを襲う。
「僕を守れ」
泥人形は一斉にウィードの前に集まり、盾となりアキラの火炎を防いだ。泥人形は崩れ落ちるが、再び再生する。
「キリがねぇな」
ー研究所前ー
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
クローンとなのは、シグナムの三人は突如現れた泥人形に翻弄されていた。こちらには大体二十体ほどの泥人形が現れ、三人を襲っている。最初はどうってことはないと思っていたが、倒しても倒しても再生する泥人形相手には消耗戦は避けられなかった。
そして、一番辛いのはクローンだ。ただでさえ魔力をすべて渡し、アキラとの戦闘で体力は削られている。そしてついさっき腹を貫かれたばかりだ。
「くっ………」
クローンは腹部を押さえ、跪く。
「危ない!」
動けないクローンに襲いかかろうとした泥人形をなのはがアクセスシューターで撃ち抜いた。
「大丈夫⁉」
「………さぁな」
クローンは立ち上がる。
「どうする、なのは。いくらなんでも数が多すぎるぞ」
「……………私とシグナムさんで、一瞬だけこいつらを吹き飛ばします。だから、君はその隙に研究所に。あとの囮は私たちが引き受けるから」
クローンは頷く。
「じゃあ………いきます!」
「ああ!」
なのはとシグナムは軽くジャンプし、デバイスを構える。そして、それぞれの魔力を注ぎ込んだ。
「ディバイーン………バスター!!!!」
「飛竜……一閃!!!!」
二人の砲撃魔法が地面に炸裂し、その爆風で泥人形達も一時的にだが吹っ飛んだ。その隙にクローンは開いた研究所への道を駆けて行く。クローンが駆けていった直後、なのは達の周りに泥人形が再生した。二人は背中合わせになる。
「キツい闘いになりそうだな」
「大丈夫です…みんなでちゃんと帰りますから」
「それは…あのクローンもか?」
シグナムが訪ねると、なのはは少し笑って頷いた。
◆◆◆◆◆◆◆
「プラズマ、ランサー!!!!!」
一方こちらはアキラ達の場所。アキラ達は八人がかりでウィードを倒そうとするが、ウィードにはまだ傷をつけられていなかった。泥人形が邪魔だったのだ。唯一アキラが近づけたが、例の触手のような剣の前になす術もなくやられてしまう。なぜか右目の魔力が引き出せず、本来の自分の魔力も引き出せないのだ。
アキラは身体中を貫かれ、エクリプスの再生も間に合わず倒れる。
「クソ!あいつのどこにこんな魔力………」
アキラがボヤくとウィードはくすりと笑った。どうやら聞こえていたようだ。ウィードは倒れたアキラの顔を踏みつける。
「不思議かい?だろうねぇ。本来僕の体には自己再生能力もこんなたくさんの人形を使うほどの魔力も持ち合わせていない。じゃあ問題だ。どうして僕はここまでの魔力運用をしているか」
「知るかよ………。テメェのことだ、どうせ自分の身体で実験でもして生まれさせた力何じゃねぇのか?」
「ふむ……まぁ、55点ってところかなぁ……」
ウィードは踏みつける力を強くした。
「僕は君のクローンを見つけてから数年後、あるものを見つけた……それが、これさ」
ウィードが指を鳴らすと、突然空中に一冊の魔道書が出現した。全体は黒く、表紙に青い模様が入っている。ウィードがその本を手に取ると、それまでウィードが持っていた触手型の剣が本に吸い込まれて行った。
「それは………」
「黙示録の書………そのレプリカだ。オリジナルは管理局の地下区画に「黙示録の槍」と共に厳重に保管されている」
続く