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ースカリエッティ研究所ー
スカリエッティ研究所では、作戦開始まで数時間となった。アキラとナンバーズはスカリエッティから作戦を聞いている。
「さて、タイプゼロを含んだ部隊を襲撃するのはチンク、ノーヴェ、ウェンディ、ディード、フィフティーン、支援にオットー」
アキラにつけられた番号は15。これはスバルとギンガ……タイプゼロ二機を抜いた数である。アキラはそれを聞いた時、約束が違うと抗議したが、スカリエッティ曰くずっと前から作ってあったので変更がきかないそうだ。
「やることは敵戦力の分担。まずはリーダー的存在の彼女、ティアナ・ランスターからだ。三人ほどでオットーの作る結界に誘い込み叩く。一人ずつ……順調に。いいね?」
「わかりました」
「わかった…」
「了解ッス」
「はい…」
「……」
「はい…」
(険悪なムードだが………まぁ大丈夫だろう)
「では次に……」
スカリエッティが別の班の説明を始めると、アキラは会議室をでた。すると、誰かにぶつかった。正面を見ても誰もいない。アキラは視線を下にずらして行く。
アキラ視界に映ったのは、紫色の髪の女の子が立っていた。ルーテシア・アルピーノである。
「…………………っ!」
アキラは急に振り返り、走り出す。そして、いきなりスカリエッティの胸ぐらを鷲掴みにした。ナンバーズ達が動こうとしたが、スカリエッティは手で「来るな」と支持する。
「テメェ!まさか、あんなちいせぇ女の子まで利用してんのか!!」
スカリエッティの顔の目の前でアキラは叫んだ。スカリエッティは表情一つ変えない。それどころか「フッ」あざ笑った。
「彼女は昏睡状態のお母さんを助けたいだけさ。目覚めさせるにはレリックが必要。彼女のお母さんを目覚めさせる技術を持っているの私だけなのでね。協力してくれる様に頼んだだけさ」
「そんな言い訳…っ!」
アキラがスカリエッティに殴りかかる。しかしその刹那、紫色の魔力色のバインドでアキラの動きは封じられた。ルーテシアがやったのだ。アキラは驚いた表情を隠しきれなかった。
「ドクターに…手を出さないで」
「ぐっ………く…………そ…」
仕方なくアキラはスカリエッティの服を離す。それと同時にルーテシアのバインドが消滅した。
アキラは憎しみを込めた目でスカリエッティを睨んだ後、自分の部屋に帰って行く。アキラは自分と…自分の兄弟とルーテシアの姿を重ねて見たのだ。幼い頃から悪意ある戦いに巻き込まれる子をもうこの世に生みたくない………アキラの望みであり、ある意味目標であった。
アキラはセシルへの謝罪…そのために誰かを護る戦いをしていた。それと同時に、復讐を望んでいた。
アキラを造った研究所は大きな研究をしているにしては、小さい研究所だったのをアキラは覚えている。ならば、その研究を支援する大きな組織があり、その組織こそAtoZ計画を発案したのだとアキラは推測していた。
もしそうなら……アキラは必ず復讐したいと思っている。ただ、それはあくまで誰かを助ける旅の途中で見つけたらの話で、ギンガと出会ってからはその「復讐と言うか感情は薄れていった。
だが、ルーテシアを見た瞬間、復讐心と元々あったスカリエッティへの怒りが爆発してしまったのだ。
「くそっ……」
アキラは腹を立てながら壁を殴った。そんな様子を後ろで眺めてる人物がいる…………ノーヴェだ。アキラはノーヴェの気配に気付き、後ろを見る。
「あんだよ」
「……いや」
アキラは用事がないことを確認するとそのままその場を去った。ノーヴェは、自分に、大切な姉妹にあれだけ酷いことをしたアキラを恨めなくなっている。最初に捕獲した時、スカリエッティの計画に猛反対したのだが、アキラがたまに見せる重苦しく、悲しい表情。
それを見るたびに、なぜか恨み念が少しずつ消えて行くのをノーヴェは理解していた。
「あたしは………」
ーアースラ ギンガの部屋ー
ギンガは自室で、何かを大事そうに抱きかかえながらベッドに座っている。
寝ても覚めても考えるのはアキラの安否。作戦開始が近づくに連れ、ギンガの不安は募っていった。仮にもアキラは事件現場から姿を眩まし、行方不明扱いになってるだけで100%誘拐された訳ではないのだ。
ギンガが少しずつ嫌な方向に考えてしまっていたとき、誰かがギンガの部屋をノックした。
「はい?」
「ギン姉…私……」
スバルだ。スバルは扉を開けたギンガの表情を見ると、申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん、来なかった方が良かった?」
「ううん?誰かといた方がリラックス出来るから」
そう言ってギンガは微笑み、スバルを部屋に招き入れた。ギンガはスバルにお茶を出そうと備え付けの冷蔵庫向かう。スバルは部屋に入ると、さっきまでギンガが抱いていた物を見つける。
「?………ギン姉なにこれ……………アキラさんのぬいぐるみ?」
ギンガが抱きかかえていた物、それはスバルの言う通りアキラのぬいぐるみだった。ギンガは冷蔵庫からお茶を出し、それをテーブルに置いてアキラのぬいぐるみを抱きかかえる。
そして悲しそうな目でぬいぐるみを優しく撫でた。
「入院中にね、メグがくれたんだ」
「メグさんが?」
スバルも一応メグとの面識はあった。変わり者だが、とても優しいのを覚えている。
「昔メグの飼ってたうさぎが逃げた時…メグ、その子の事が心配だったから毎日うさぎのぬいぐるみ抱きかかえながらその子の無事を祈ってたんだって。そしたら三日後にそのうさぎが帰ってきたから……その時はまぐれで偶然だったかもしれないけど、あんたも祈ってみたらって」
「ふうん…ギン姉やっぱりアキラさんの事が好きなんだね」
スバルがからかうように言うと、ギンガはスバルの予想を外れて簡単に頷いた。
「うん…好き………」
「あ、あれ………結構簡単に認めちゃうんだね………」
「うん……大好き。こんなに誰かを好きになるのは初めてだから……だから、絶対に助けたい」
「ギン姉………」
ギンガは少し悲しそうな表情でそう言う。ギンガにとって「アキラを助ける」と言う選択肢が最後の希望だったのだ。そんな時、アラートが艦内に響き渡る。
それと同時に艦内の全てのモニターに映像が映し出された。
[廃棄市街地にて戦闘機人を目視しました!総員、戦闘配備の準備に取り掛かってください!」
ギンガとスバルはモニターを見る。今ライブで撮影されてる映像が映し出されると、二人は唖然とした。いや、二人だけでない。艦内の全員が驚いていた。
なぜなら、戦闘機人のスーツをトレンチコートの下に纏い、バイクに乗ったアキラが映し出されたからである。
「アキ………ラさん?」
「アキラ………君?アキラ君!」
ギンガは目に涙を浮かべながら歓喜した。いや、とても喜んで良い状態ではないがギンガにとって一番の不安要素が消えたのだ。アキラが生きている。その事実をギンガは求めていた。
それをギンガはたった今確認することができたのだ。ギンガは涙を吹きながら立ち上がり、ブリッツギャリバーを手に取る。
「行くよ…ブリッツギャリバー」
スバルは、ギンガが…自分の姉がいつも通りの姉の姿に…自分が目標とする姿に戻ったのを確認すると、安心したように部屋を出た。ギンガはスバルが出て行った気配を感じ、振り向くが既にそこにスバルはいない。
ギンガはスバルへ感謝の意を込めて微笑んだ。
「ありがとう、スバル」
◆◆◆◆◆◆◆
ー出動まで残り三分ー
FW部隊とギンガは作戦前の最後の集合をかけられ、なのはとヴィータの前に整列する。二人から……主になのはから話された事は、今まで積んできた訓練、努力は、決して自分を裏切らないと言うこと。
目を閉じてこれまでの訓練を思い出させられた時は、そんなに長い時間機動六課に滞在してないギンガでも、思い出したくない物があった。だが、辛い思い出が思い出されるたびにアキラが自分に手を差し伸べてくれた思い出も蘇る。
ギンガは今まで辛い訓練を乗り越えて来たのだから、辛い状況でも必ず乗り切って見せると誓うと同時にもうアキラに甘えない…いや、アキラに心配をかけないと決意した。
話が終わると、なのははギンガの方を見る。
「ギンガ、今回は辛い戦いになると思うけど……」
なのはの心配そうな表情を見ると、ギンガは笑った。
「大丈夫ですよ。私だって訓練してきたんです。アキラ君は私が絶対助けます!……もし、スカリエッティの手駒になってて…………もうこちら側に戻らないって言っても絶対連れて帰ります!
「うん、そこまで意気込んでるなら大丈夫だね」
なのはも安心した様子。
「じゃあ、機動六課、FW部隊…出動!」
「はいっ!」
そして…ミッドチルダを震撼させ、今後の歴史に刻まれた決戦が開始された。
ー廃棄市街地ー
アキラはビルの屋上で一人、耳を澄ましている。トレンチコート型の防護服が風にたなびかれ、それと同時にどこからかヘリの音が空気を振動させた。アキラは瞑っていた目を開ける。
「来たか…………」
アキラは普段肩に担いでいる刀を、今は腰に挿していた。アキラは姿勢を低くし、刀の柄に手を置く。いわゆる、居合切りの構えである。アキラが構えてから数秒………アキラが立っている目の前に、ガジェットからの追撃を何とか回避し終えた六課のヘリが下から飛び出して来た。
その刹那、目にも止まらぬ速さでアキラは刀を振った。
「え………」
ヘリの操縦席にいたアルトが目を大きく見開き、口から一言だけもれた瞬間、ヘリの羽が根から切断される。その刹那、アルトはヘリの操縦桿を離し、後ろに乗ってるFW部隊に叫んだ。
「今すぐ脱出し…」
アルトが叫び終わる前にヘリは急降下を始める。
落下するヘリの中で、全員壁に叩きつけられた。FW部隊はそれぞれ壁に技をぶつけ、脱出を試みる。ギンガ、スバル、キャロ、エリオは無事脱出を成功させた。ティアナも急いで脱出しようとする。
その時、アルトがヘリの中で気絶しているのを見つけた。ティアナは急いでヘリの中に戻る。
「ティア!?」
「すぐ行く!アルトさんが…」
上空にいる四人は落下して行くヘリを眺めるしかない。今から戻ってもヘリが地面に衝突する前に到着できないことは明白だ。しかし、ティアナは飛行能力を持ってない。スバルとギンガは、すぐに助けに行けるように構えていた。
しかし、ティアナもアルトもヘリから出てこない。あと一秒しない内に地面と衝突するとなった時、ヘリから黒い影が飛び出したと同時にヘリは地面に衝突し、爆発炎上した。
その黒い影はビルとビルの間に入り、左右の壁を蹴って上昇して行く。そして最終的にビルの屋上よりも高く飛び上がりFWに向かって何かを投げた。投げられたのはティアナとアルトだ。
「ティア!」
「アルトさん!」
ギンガはアルトを、スバルはティアナをキャッチして近くの道路に着地した。そんなFWの前に、アキラが上空から現れる。FWは全員構えた。ナンバーズはこの時、アキラとの作戦で隠れていた。
「アキラさん……」
「アキラ君…」
「…………」
アキラも刀を構える。スバルが突っ込もうとした時ティアナがスバルを止めた。
「待ってスバル!」
「なに?」
「アキラさん……どうしてさっき…助けてくれたんですか?」
FW達が驚いた顔でアキラをみた。アキラは刀を一旦下ろす。
「…俺は、人は殺さない。それが敵であっても…」
「敵……」
アキラが自我を保ってることを確認すると、FWは戦闘体勢を解いた。そして、全員を代表するようにギンガが前に出る。
「アキラ君………どうしてスカリエッティ側についたの?その様子だと洗脳とかはされてないよね……?なのに……どうして…」
「………俺は、スカリエッティと取引した。俺が戦闘機人と共闘し、管理局を打ち倒して奴らが世界を牛耳るのに成功したら俺とギンガに安息を与えるって契約だ」
「そんな………アキラ君!そんなことで私が喜ぶって思ったの!?自分だけ助かる未来なんて…………そんな未来、私いらないよ!」
「俺は!!!!!!!!!!!」
空気がビリビリと振動するのがわかるレベルの声で、アキラは叫んだ。
その声にギンガも流石に驚き、一歩後退する。普段は物静かなアキラが怒りの混じった真剣な表情で怒鳴ったのだ。誰だって驚く。アキラは構えを解いた刀を再び構え、歯を食いしばった。
「俺はもう、大切な物を失いたくない…………だから俺は!」
アキラはFWが固まってる場所の中心に向かって飛び、魔力を込めた刀を振り下ろす。FWはそれぞれバラバラに回避した。その刹那、身を隠していたナンバーズ達が飛び出して来る。
「!?」
「おらぁ!!!」
流石にスカリエッティの思惑通りにはならず、バラバラになったFWをナンバーズは一対一で潰す手に出た。キャロにチンク、エリオにオットー、ティアナにウェンディ、スバルにノーヴェ、ギンガに…と言うかギンガとアキラが向かい合ってる場所にディードが来た。
ディード以外のナンバーズはそれぞれ戦い安い場所にFWを誘い込んだ。最初の場所に残されたのはギンガとアキラとディード。
「お前は妹のとこに行かなくて良いのか?オットーはそんなに単独戦が得意じゃねぇんだろ?」
アキラはギンガと向き合ったままディードに尋ねる。ディードはISのツインブレイズを発動させながら答えた。
「大丈夫です。この場をさっさと終わらせれば支援に行けますから」
二人の会話を聞きながら、ギンガは構えをとる。アルトは一応瓦礫の影に寝かせたが、自分が負ければアルトも殺されかねない。
正直、アキラ一人相手でも勝てないのにそれにナンバーズが加わった状態で、どう戦おうか検討がついていない。だが、自分に出来るのは一秒でも多くの隙を作り仲間と合流するのがベストのことだとギンガは思っていた。
「たくっ………俺のことなんかほっといて妹のとこに行っときゃ良かったのに……よっ!」
アキラは急に振り返ったかと思うとディードに刀を振る。ディードは片手でそれを受け止めた。そして、もう片方の光剣をアキラに振る。片手で受け止められると思ってなかったアキラはディードの剣をよけきれず、額に掠った。
更なる追撃を避ける為にアキラはバックステップでギンガの横まで後退する。
「くそっ!もっと力入れた方が良かったか……っ!」
顔を上げたアキラの前髪は、今まで顔の半分を隠してた前髪を顔の中心に近い部分を残した状態で切られていた。アキラの白濁した右目があらわになった。
「アキラ君………?なんで…」
「フィフティーン。どういうつもりですか?」
「最初に言ったろ別にお前らに協力するわけじゃねぇ。だからギンガに手を出すんなら誰だって俺の敵だ」
「アキラ君………」
アキラは立ち上がり、ギンガの方を見る。
「………悪いな。心配かけて。しかし…俺が本当にスカリエッティの駒になったとでも思ったか?」
「うん…アキラ君のことだからって思って」
ギンガは苦笑いを浮かべる。アキラは小さなため息を付いた。
「護衛する人間はその人の心まで守らねぇと守ったってことにはならない……心まで守れて、そこでやっと一人前だってな……そうだ、ギンガ。これを持ってアルトさんと最寄りの管理局の防衛ラインまでいけ。そんで機動六課にこのデータ回すように言ってくれ」
「え?」
アキラがデータメモリーを取り出した瞬間、ディードが斬りかかって来る。アキラは刀でそれを防ぐ。
「何すんだよ?」
「裏切るのであれば、私はあなたを斬ります」
「はっ、裏切る?俺は約束は破っちゃいねぇぜ?管理局打ち倒すまでお前等と共闘するとは言ったが、それまで俺は大人しく命令に従うとも言ってねぇ!」
「そんな屁理屈………っ!」
ディードは歯噛みをしながら剣に力を込める。アキラはギンガにメモリーを投げた。ギンガは一瞬落としそうになったが、何とかキャッチする。
「いけっ!今日は魔力も体力も全開だ、こないだみたいにゃやられねぇから安心しろ!」
ギンガはアキラを信じ、最寄りの管理局まで向かった。ディードはそれを見ると、アキラから一旦離れて今度はギンガを追おうとする。当然アキラはその道に立ち塞がった。
「行かせるかよぉ!」
「ぐっ!」
刀を左手で振ってきたアキラの刀を避けたディードの顔に、アキラの拳が命中する。ディードは体勢を立て直し、剣を構えた。アキラは再び左手で刀を振る。ディードは片方の剣でそれを押さえアキラの右手を警戒した。しかし、今度はパンチではなく、頭突きがディードの頭に命中した。
「ぐぅ………」
「いてて……かってぇなぁ…」
そう言いながらアキラは構えを直す。ディードは「ふぅっ」とため息をはいた。
「………やはり強制的に従わせた方が良さそうですね」
「あ?」
アキラがディードの言った言葉の意味の理解に苦しんでいると、ディードは突然アキラの懐に飛び込んで来る。ディードは剣を振る、アキラは光剣を刀でいなす。
アキラの集中が片手の剣に言った瞬間、ディードはもう片方の剣を捨て、装備の隙間から何かを取り出した。その取り出した物をアキラの胸に押し当てる。アキラは慌てて距離を取ろうとするが、間に合わなかった。ディードが取り出した何かから、ドス黒い色の魔力が飛び出し、アキラを包んで行く。
「な…………うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
続く