とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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もうすぐコミケ………ギン姉本が出るみたいだから買って燃やそうかなw

…………………………冗談ですよ!?どうぞ本編をお楽しみください!

コメント、評価、お気に入り、随時募集中です!


第十六話 経緯

薄暗いテントの中に光が射し込む。

 

「アキラさーん?起きてますかー?」

 

「う…………?」

 

テントの中で寝袋に入ってた男が目を覚ます。茶髪の男、橘アキラだ。テントを開けたのは青い髪とエメラルド色の瞳の少女。

 

「ギンガ?」

 

「ふふ、今日はお寝坊さんでしたね。まぁ、今日は日曜日だから良かったんですが……妹達がアキラさんと一緒に出かけようって…」

 

ギンガはクスクスと笑った。アキラは頭に疑問符を浮かべている。アキラはこの状況を理解出来てなかった。まず、なぜ自分はこんなテントの中で寝ていたのか、そして、自分の前にいる人物はギンガと分かるのだが、アキラの知ってるギンガとは結構違う。

 

いつもよりもずっと幼い感じで、11〜13歳って感じだ。というかアキラ自身もなんだか小さくなってる感じがした。リボンの色とかも違う。じっとギンガを見つめていると、ギンガが不思議そうな顔をする。

 

「どうか…しましたか?顔になにかついてます?」

 

「お前……ギンガだよな?」

 

「なにいってるんですか?……もう、まだ寝ぼけてますね?朝ごはん出来てますから顔洗ってきてください?」

 

またギンガはクスクスと笑ってアキラの腕を引っ張る。アキラはなされるがままテントの外に出た。アキラはテントから出た瞬間いくつかの衝撃を受ける。一つ、自分が寝ていたテントが何処かの家の屋根の上に設置されていたこと。二つ目、屋根から見る景色が自分が知ってる景色とはずっと違うこと。細かく言うと、文化的な建物がほとんどない。ミッドチルダのどこにいても視界に入る、時空管理局地上本部のあの馬鹿でかいタワーがないこと。三つ目、立ってみるとギンガと自分との身長差が結構あったこと。

 

アキラの知ってるギンガは自分との身長差は頭一個分くらいあったが、それ以上。このギンガはアキラの腹筋までくらいの身長しかない。

 

(どこなんだここ………)

 

小さいギンガは屋根に掛けてある梯子を降りて行く。アキラもそれについて行った。梯子はベランダから掛けられており、ベランダから家の中に入る。和風の家で、入った部屋は早速畳だった。階段を降り、居間に入る。

 

「あ、アキラ君、おはよう」

 

「おはようッス!」

 

「おはよう」

 

「おはよー!」

 

「おはよう…」

 

「うむ、おはよう」

 

居間には、今は亡き筈のクイントと、スバル、チンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディをそのまま小さくしたような(チンクは大して変わらないが)少女達がいた。一体これはどういう状況なのかさっぱり分からないでいる。ギンガとスバルは小さいし、今のアキラはクイントに関する記憶がないのでクイントの事はわからないし、その他の姉妹はあったことすらないので姉妹かどうかすらわからない。

 

それに、この世界は魔力を感じられないのもまた不思議だった。

 

「おはよう…?」

 

「さ、パパッと顔洗ってきてください。朝ごはんにしましょう」

 

クイントが笑いながら言う。アキラは頷いてから居間をでた。

 

(誰なんだろうかあのお母さん的な人は誰なんだ?ギンガに似てたが………そもそもこの世界は?)

 

とりあえず顔を洗って居間に戻り、朝食を共にすることにする。自然に溶け込みながらこの世界の情報を得ようという魂胆だ。

 

「いただきまーす!」

 

全員が元気良く言う。アキラは少し驚きながらも控えめに「いただきます」と言う。とりあえずアキラはギンガを見た。ギンガは文字通り山盛りのご飯を美味しそうに食べている。アキラの知るギンガなら楽勝だろうが、ここのギンガはあの小さな身体によくあれだけの量が入るなと関心するが、今はそれどころではなかった。

 

アキラは次に自分の隣にいる小さいスバルを見る。スバルもギンガよりか小さいとは言え、山盛りのご飯を食べていた。アキラは名前がちゃんと一致しているか不安だったが、とりあえずスバルから情報を得ようと小声で尋ねる。

 

「………なぁスバル」

 

「んぅ?なぁに?アキラさん」

 

「飯うまいか?」

 

「?……うん」

 

スバルは急に変な質問されて首を傾げていた。

 

「ところでさ、俺朝から寝ぼけてんのかな?ギンガやスバルが小さくなってるように感じんだけど」

 

「そうかなぁ?」

 

(ふむ、この様子だと、おかしいのは俺だけか………)

 

アキラはそう考え、周りに合わせることにする。家族団欒でワイワイと騒がしい食事、その景色を不思議と懐かしい感じとアキラは感じていた。食事も終わり、少女達はバタバタと自分たちの部屋に向かって行く。

 

部屋に残されたのはクイントとアキラだった。

 

「アキラ君は準備しなくていいの?」

 

クイントが尋ねる。

 

「準備?なんのですか?」

 

「ああ、アキラ君は聞いてなかったっけ。今日はこの間スバルが見つけた小川に行くらしいわよ?」

 

アキラはとりあえずベランダから屋根に登り、自分が寝ていたテントに入った。中には、寝袋の他に色々入っている。しかし、その中には刀やナイフと言った戦闘用の物はなくトレジャー用品ばかりだった。

 

そのアキラに背後から近づく影がある。

 

「アキラ君」

 

「あ……えと………何ですか?」

 

クイントだ。

 

「実はね、今日は………

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

僅かに聞こえる電子音と、少しだけ開いた瞳に射し込んでくる電灯の明かりでアキラは目を覚ました。

 

「う………?」

 

「目が覚めましたか?」

 

天井しか見えてない視界に入ってきたのはウェーブの掛かった紫色の髪と、イエローの綺麗な瞳を持った女性。アキラはまだはっきりしない意識の中で女性を見つめ、誰だったか必死に思い出そうとする。

 

アキラが必死に思い出そうとしていると、ピンクで長髪の女性がグラスを持って入ってきた。しかし、アキラはそのピンクの髪の女性が着ているスーツに見覚えがある。

 

「お持ちしました、ウーノ姉様」

 

「ありがとうセッテ。下がっていいわ」

 

「はい」

 

紫色の髪の女性はウーノと言う名前だというのはわかったが聞いたことはない。周りの景色や設備を見る限り病院ではなさそうだ。となるとここは自分の知らない何処かになる。

 

「どうぞ、身体が少しは楽になりますよ」

 

アキラはグラスを受け取るために起き上がろうとした、しかしアキラの身体は全く言う事を効かず、指一本動かせない状態だった。動かせるのは顔まわりの筋肉と目くらいだろうか。呂律が回らず、声もまともに出せない状態だ。

 

ウーノはそのことに気づいた様子でストローをグラスにいれてストローの先をアキラに向ける。

 

「う………んぐ………」

 

ウーノが言った通り、それを飲んでいると身体の重みが少し減り、頭もはっきりしてくる。それと同時に何が自分の身に起きたかと言うのを少しずつ思い出す。アキラは頭の中で情報を整理する。

 

「どこだかわからないって顔をしているので教えますが、ここはジェイル・スカリエッティ研究所。私は…私達はドクターと呼んでいますが、ジェイル・スカリエッティの作った戦闘機人No.1、ウーノです。あなたはドクターの命令で他の戦闘機人に鹵獲され、ここに連れてこられたんです」

 

それを聴いた瞬間、アキラの脳内で整理された情報とウーノからの情報が繋がり、アキラはすべてを思い出した。そう、この状況は今から数時間前に遡る。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー数時間前 時空管理局地上本部ー

 

 

「うぐ………」

 

アキラが目を覚ますと、全身に激痛が走った。呼吸がまとも出来ない。アキラは瞳を動かして周りを確認する。どうやら自分は瓦礫の下敷きになっている様だと冷静に分析するが、状況的に分析している場合ではない。

 

(ああ……そうだ俺はギンガを守ろうとして…………あのチビの爆破魔法食らっちまって……俺がいたとこの床が抜けて瓦礫と一緒に下の階に落ちたのか……)

 

どうにか瓦礫の中から出ようともがこうとするが、魔力も身体も限界の状態で瓦礫を退かす程、身体を動かせられる出来る訳がない。瓦礫から出てるのは左手と首から上、残りは瓦礫の下。骨や内臓もいくつか潰れているだろうか。

 

どうするかと思っていると、アキラの前に誰かが歩いて来た。

 

見上げると、白い甲冑を纏ったあの謎の男だ。

 

「また………テメェかよ……」

 

「どうした?何がなんでも護るんじゃなかったのか?このままじゃギンガは戦闘機人に拐われちまうぞ?」

 

「そう言うなら、お前が行ったらどうだ………初めて会った時からギンガにやたら過保護じゃねえか……」

 

アキラは少しなげやりな感じに言う。

 

「残念ながら俺にはアドバイス位しかできない。この後、ギンガがどうなるかはお前次第だ。お前は…また護れずにいて悔しくないのか?」

 

「はっ……今の俺に何ができるよ………確かに悔しいが…だがよ……分かるんだ……っ!爆発の衝撃で身体の肉の一部は吹っ飛んでる…右脚は瓦礫に潰されてる!魔力はほとんど尽きてる!エクリプスウィルスの再生も追いつかない!もう……どうにもならねぇ!俺にはどうにも出来ねぇ!」

 

アキラは涙を流しながら抗議した。すると男はアキラの前にしゃがみ込み、アキラの左手に手を添える。

 

「できるさ、お前なら」

 

「なに?」

 

「………人間は脳にリミッターをかけているそうだ。脳が真の力を発揮させれば肉体と精神が保たないからだ。だが、橘アキラ。お前にはこの左腕がある」

 

アキラは自分の左手を見た。アキラのIS、「ハッキングハンド」はあらゆる物の記録やデータを書き換えることが出来る。脳は10パーセント程しか使われてないのはアキラも知っていたが、覚醒させればどうなるかもわかっている。しかし、身体と精神が保たなくなるのは100パーセントにより近づいた時。

 

この現状を乗り切れる程度にリミッターを外すのなら、少なくとも死にはしない。ギンガを護る。そう誓った筈だ。例えこの身を犠牲にしても。

 

「……IS……ハッキングハンド」

 

 

ー上の階ー

 

 

チンクとノーヴェはアキラが落ちた穴を覗いていた。下の階で瓦礫の下敷きになってるアキラを確認し、大きくため息をつく。

 

「ふぅ………なんとか倒したな…ウェンディ、立てるか?」

 

「ムリッス…膝下を深く切られたから…ボードに乗るのが精一杯ッス」

 

「ノーヴェ、傷は?」

 

「かなり色んな所斬られたけど、まだなんとか動けるよ、チンク姉。あたしがタイプゼロ運んで来るからチンク姉は休んでて」

 

ノーヴェは痛みに耐えて立ち上がり、ギンガの方に向かってローラーブーツを動かした。

 

全身に浅い傷を付けられ、風が吹くだけで傷口に染みる。ここまでボロボロになってまでタイプゼロを捕獲しなければならない訳では無かったが、やっと要注意人物の橘アキラを倒したのだ。

 

せっかくなので、倒した証に捕獲するのが良いとノーヴェは考えていた。氷の壁から上半身だけ出して意識を失ってるギンガの前に立ち、ギンガを引きずり出そうとすると、チンクの声がノーヴェの動きを止めさせる。

 

「ノーヴェ!逃げろ!」

 

「!?」

 

ノーヴェが振り向くと、そこには血で全身が赤く染まっているアキラが自分のいる方向に飛びかかって来ている。

 

ノーヴェはブレイクランナーでアキラの攻撃を避け、アキラの後ろに着地した。アキラは空中で方向転換し、右手を地面に擦り付けブレーキを掛けて止まる。

 

「ありえねぇ…あの怪我で下の階から飛び出して来たのか?」

 

右脚は膝から下が無く、右手もひどい状態で、薬指の第二関節から先がない。左腕は激しすぎる脳信号に対応しきれず、動いていなかった。

 

「はぁ……はぁ………」

 

チンクが流石にこれは撤退するのが賢い選択だと思っていると、トーレからのメッセージ通信が来た。どうやらこちらにトーレとセッテが向かってるらしい。チンクはノーヴェにそれを伝えた。

 

(ノーヴェ!トーレとセッテがこっちに向かってる!あと少し持ちこたえられるか!?)

 

(うん…………多分大丈夫。こいつ、まともに動けてない)

 

アキラは近くにあった折れた刀を掴む。

 

(あいつ、あんなんで何するつもりだ?)

 

ノーヴェが警戒するが、アキラは中々動こうとしない。ただ刀を構えてノーヴェを警戒していた。しかし、折れた刀でも油断していれば急所を狙われれば返り討ちにあう可能性もある。

 

「………っ!」

 

ノーヴェはアキラの企みに気づいた。どこからかローラーブーツの音が聞こえてきたからだ。アキラは戦うと見せかけて六課の仲間の到着を待っていたのだ。

 

しかし、ノーヴェが気づいた時にはすでに遅い。ギンガを囲ってる氷の壁の横の通路からスバルが走って来た。

 

 

「アキラさん!」

 

「スバル!ギンガ連れて逃げろ!」

 

アキラは叫んだが、スバルはそれを拒否してナンバーズに向かおうと構える。

 

「ううん、私も戦う!」

 

「ここはいい!お前はとっととギンガ抱えて来た通路に戻れ!」

 

「でもっ!」

 

二人が話してると、ノーヴェがスバルに向かって突っ込んだ。アキラは慌ててノーヴェに飛びかかり、全身でノーヴェを押さえつける。

 

しかし、今度は奥にいたチンクがスティンガーをスバルに投げた。スバルはそれを避けた。スティンガーは通路の端に刺さり、チンクのISで爆発が起こる。その衝撃で、ギンガの周りを包んでいる氷の壁が削れ、スバルは軽く吹っ飛ばされる。

 

「くっ!」

 

スバルが起き上がり、チンクに向かって走り出そうとした。その瞬間、スバルの顔の真横をアキラの持ってた折れた刀が通り抜ける。

 

スバルの頬から血流れた。

 

「いいからギンガ連れて逃げろつってんだろぉ!!!!!!テメェからブッ殺すぞ!!!!!」

 

今まで見たこともないような剣幕でアキラは叫んだ。スバルはそれに一瞬怯え、歯を食いしばりながらギンガを氷の壁から出し、背負ってから来た通路に戻る。

 

逃げようとするスバルをチンクが追いかけた。それを見たアキラはノーヴェを体重で押さえつけながら、懐から何かのスイッチを出す。

 

「いかせねぇよ………ギンガだけは……………俺が…」

 

「お前……何を……」

 

「これが…俺に出来る最大限の行動だ」

 

アキラはスイッチを押した。その瞬間、爆発音が鳴り響きアキラ達がいた場所の床が崩れ落ちる。

 

アキラは下の階にいた間、その階の天井と床にありったけの爆弾を仕掛けておいたのだ。床が爆発し、ナンバーズ三人とアキラは二つ下の階に落ちて行く。

 

(ああ……守れて良かった…………これだけで満足だ……守れたんだ…)

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

アキラの記憶はそこで途切れていた。

 

「………ああ…そうか。なら…話は速い。傷が治ったらテメェ等全員、皆殺しにすればいい話だ」

 

輝きの無い瞳で怪しく笑う。その笑みから伝わってくる負の感情がウーノを一瞬怯えさせた。だが、ウーノは敵に流されない様に冷静さを保たせながら喋る。

 

アキラは今脳を弄って無理矢理身体を動かした反動で動けないのだ。恐れる必要はない。

 

「まぁまぁ、あなたが私達を怨む気持ちもわかります。ですが、私達の話も聞いてください」

 

「………何だよ?」

 

発する一言一言に重みを感じるが、ウーノは弱みを出さないように必死で堪えた。

 

「私達……いえ、ドクターはあなたの戦闘能力を高く評価しています。そして、あなたがタイプゼ……ギンガ・ナカジマに対して護衛行動を行っている事もご存知です。ドクターは、もしあなたが私達に加勢し、見事管理局を打ち倒したのなら………あなたとギンガ・ナカジマに、暮らす場所と、地位と、一生分の財産を与え、その後は何があろうと私達はあなた方に干渉しないと仰ってます」

 

「なん………だと………?」

 

 

ー同時刻 管理局員用病棟ー

 

 

「ん………」

 

「ギン姉!」

 

「ギンガ!」

 

「ギンガ!」

 

とある病室で、ギンガは目覚めた。起きたギンガの視界には、父親のゲンヤ、妹のスバル、親友のメグの姿が写る。

 

「父さん……?スバル…それに………メグ?」

 

ギンガはまだ自分がどういう状況で、なぜここで寝ているかわからないという顔をしていた。そんなギンガの少しキョトンとしてる顔を見たメグは、ホッとした表情を浮かべる。

 

「大丈夫?あんた三日も寝てたんだよ?まぁ、医者が言うに命に別状は無いって話だったけどさ」

 

「何はともあれ、目覚めて良かった……。今はゆっくり療養してくれ」

 

ゲンヤも安心した顔で言う。

 

「三日……」

 

ギンガは電波時計の日付を見た。9月17日。なんだろう、何かすごく大切なことを忘れてる気がする………ギンガがそんな感覚に陥っていると、突然、大きな魔力波動がギンガを、いや、世界に流れた。

 

ギンガは慌てて全員に問いかける。

 

「!?………父さん!みんな!今なにか…………みんな?」

 

そこにいた三人は動いてない。いや、そこにいた三人だけではない。

 

動物も、植物も、空も、世界も……全ての時間が止まっていた。ギンガが困惑し、戸惑っているとギンガの病室のドアが開く。両目をバイザーで隠し、白い甲冑を纏った白髪の男が現れた。

 

「誰!?」

 

ギンガは男を睨みつける。

 

「そんなに警戒するな。俺はお前の敵じゃない」

 

そう言うが、明らかに怪しい男にギンガは警戒を解かない。しかし、今話が聞けるのはこの男しかいないため、恐る恐る聞いてみる事にした。

 

「…………この現象を起こしてるのはあなた?」

 

「ああ。だが別にギン………お前に危害を加える訳じゃない。むしろ現状打開の手助けをしたいだけだ」

 

「手助け?」

 

男は頷き、ギンガに一歩一歩近づいていく。

 

「今お前、何でここにいるか思い出せないだろう?だから教えてやるよ」

 

ギンガの目の前まで来た男は、ギンガの頭を掴んだ。その瞬間ギンガが気を失っていた間、自分の身の回りで起こっていた全ての情報が送り込まれていた。

 

記憶の中でギンガは、自分の記憶がどこまで抜け落ちていたのか、橘アキラがどの様に、どれだけ必死に自分を守ってくれたのか……。

 

「………アキラ君」

 

スバルがギンガを抱えたまま通路に入った瞬間、その後ろで爆発が起きたシーンで終わっていた。気づくと甲冑の男はいなくなり、時間も動き始めている。

 

ギンガは、はぁっとため息をつく。

 

「ギン姉どうしたの?お腹空いた?」

 

「ううん、ところでアキラ君の病室はどこ?お見舞いしたいの。すごい怪我してたみたいだし、入院…してるよね?」

 

全員の顔が暗くなった。ギンガがキョトンとしてると、スバルが近くに置いてあった布にくるまれてる何かをギンガに渡す。

 

「…………これは?」

 

「………」

 

返答はなかった。ギンガはくるんでいる布を解く。中には、ボロボロの折れた刀が入っていた。アキラが持っていた物である。

 

「これって……」

 

「アキラ君の刀……。現場には…アキラ君の遺体すらなくて……多分……誘拐されたんだと思う」

 

「なにそれ…………どういうこと?アキラ君が………どうして!?」

 

ギンガは不安な気持ちで押しつぶされそうになり、スバルが分かる筈のないことを必死に尋ねる。

 

「わからないよ!でも、アキラ君がどこにもいないってことは、拐われた位しかもう思いつかないし………」

 

ギンガの手がスバルの腕からスルリと抜けた。そしてその手は、そのまま布団をギュッと握りしめる。

 

ギンガの目には涙が浮かんでいた。メグとゲンヤがその手に自らの手を添える。その時、病室の扉が開かれた。見ると、焦った様子のフェイトが何かを持って入ってくる。

 

「フェイトさん?」

 

「ギンガ…これ」

 

フェイトが持ってきた何かをギンガに手渡した。フェイトから渡された物……それは何かのデータが入った小さな端末。フェイトを見ると、フェイトは「見て欲しい」と目で訴えていた。

 

端末を開くと、そこにはアキラの顔写真と、プロフィールらしき物が映し出される。

 

「フェイトさん、これは?」

 

「それは…管理局無限書庫内の……古代ベルカの未整理区画内で見つかったの」

 

「古代ベルカ!?」

 

 

続く


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