とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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二三ヶ月ぶりです。お久しぶりです。かなり忙しかったのですが、ようやく時間が取れました。これからは定期的に投稿できると思います。


第六話 アノ日ワタシにナニが起きたのか

「痛ぅ……」

 

ギンガは身体のダメージを確認してから破壊されたループリングローラーを外した。

 

「………」

 

(今は無理矢理体を動かしているだけ……この戦いが終わればきっと動けなくなる…その前に…)

 

ギンガは準備を整え、戦場に戻ろうとした。しかしその時、ギンガの瞳から涙がこぼれた。涙なんて、とうに枯れていると思っていたのに。ギンガは涙を流していた。

 

(あぁ………心がぐちゃぐちゃだ…。さっきからうれしい感情と悲しい感情と怒りの感情が浮き出ては沈みを繰り返している。どうすればいいのか、わからない…)

 

一方、トーマを止めようとするなのはの戦闘にナナシは介入しようとしていた。

 

「お待たせ」

 

そこに、荷物を持ったシーラが現れる。そして荷物の中から刀を取り出し、ナナシに渡した。

 

「これでいけるの?」

 

「ディバイダーよりは使いやすい。まぁ見てろ」

 

ナナシはなのはがトーマと戦闘している場所に飛んだ。なのははトーマ相手にそこそこ苦戦していた。いくら感染者といえ知っている相手に本気をぶちこむのは気が引けたのだろう。さらに攻撃のパターンなどを銀十字の書に解析され、追い詰められていた。ほとんどの武装を破壊され、残るは盾一枚となった。

 

最後の一撃を盾で受けようとしたとき、ナナシがなのはの前に現れる。

 

「ナナシ………」

 

「下がっていろ」

 

「あなた…………っ!!」

 

なのはは瞬時にバインドで縛られた。なのはの技量であれば抜け出すのにそう時間はかからないだろう。ナナシはその前に決着をつけるつもりだ。

 

「さぁ、行くぞトーマ」

 

銀十字に戦闘命令を出されたトーマがナナシに襲い掛かる。ナナシは刀を両手で持ち、構えた。トーマのディバイダーが寸前に迫ったとき、刀を振り下ろした。

 

金属同士がぶつかる音がし、トーマのディバイダーの3分の1が吹っ飛んだ。さらに、振り下ろした刀の刃を上に向け、今度は切り上げる。ディバイダーは半分になり、更に刀を振り下ろしたことでトーマのディバイダーはほぼ持ち手から下の部分のみとなった。

 

この三撃は1秒とかからずに行われた。そのため、最初の一撃でトーマは離れることはできなかった。予想外の攻撃に戸惑ったトーマはすぐに離脱しようとする。その時にナナシは既に構えを取っていた。

 

「乱咲」

 

次の瞬間、トーマの左腕に付いていた刃の付いた盾型の装備はバラバラになった。

 

「!!」

 

トーマはすぐにディバイダーを構え、魔力弾を数発放った。ナナシは刀でその砲撃を弾く。

 

『ディバイダー破損。白兵戦困難。飽和射撃で殲滅します』

 

銀十字からページが出現し、飽和射撃の体制を取る。ナナシは刀を構え、追撃を行う姿勢を取った。しかしその時、上空から黒い鳥が現れた。

 

「黒の香No.9!ダスキーフラッシュ!!」

 

鳥はトーマの周りで爆発し、煙幕を出す。

 

『強可燃物による煙幕!緊急回避!』

 

緊急回避を行おうとしたが、それより先に爆発が起き、トーマにダメージを負わせた。

 

「………アイシス…」

 

「………ナナシ…これはあの無駄おっぱいにも言ったんだけど、あんたたちには感謝してる。でも、私にトーマを助けさせて!」

 

「だったら黙って見てろ。救いたい気持ちは同じだ」

 

「え?」

 

刹那、アイシスはバインドで縛られた。

 

『ドライバーの身体機能低下、戦闘継続困難。ドライバー保護のため転移の必要あり。緊急転移モードに移行します』

 

銀十字の書はこれ以上の戦闘を不可能だと考え、緊急転移を判断した。その瞬間、ナナシは刀を鞘に納めて腰を低くした。

 

「させねぇよ………………一閃必斬…時雨露走」

 

ナナシはその場から消え、それとほぼ同時に銀十字の書が真っ二つに切り裂かれた。それと同時にトーマは意識を失い、落ちていった。

 

「!!」

 

『緊急離脱………………ドライバーを………………保護』

 

「チッ、やっぱリアクターを持ってこねぇとだめか」

 

ナナシは刀を収め、トーマのところまで飛ぼうとしたがそこにリリィが転移してきた。

 

「!」

 

「トーマ!」

 

「…………やっと目覚めたか」

 

ナナシはリリィが現れたことを確認すると、トーマを追うのをやめた。リリィは自身の役割を思い出し、トーマのリアクトプラグとして制御をした。だが、起動したばかりのリアクトプラグには銀十字の暴走を制御するのが精いっぱいでそれだけでトーマの中で気絶してしまった。

 

「リリィ!?リリィ!」

 

トーマは飛行能力を失い、そのまま落下を始めた。そのトーマをナナシが受け止める。

 

「ナナシ!?」

 

「悪いな」

 

ナナシはトーマの腹を殴り気絶させた。

 

「…………」

 

「マスク!!」

 

ナナシの周りに、なのは、スバル、セッテ、ギンガが現れる。

 

「………しつこいなお前らも」

 

「トーマを離して投降しなさい」

 

「悪いがコイツはお前らにも、フッケバインにも渡すわけには行かない」

 

「……あなたは」

 

そこに、さっきとのトーマと同じ様に黒い鳥飛来した。

 

「!!」

 

「黒の香No.3ハミングバード!」

 

アイシスの攻撃だ。しかしナナシは刀を抜き、片手で構えた。

 

「一閃必刺、蠍刺!」

 

ナナシは黒い鳥の群れを一撃の突きで全て撃破する。

 

「トーマを返して!」

 

「散桜」

 

接近してきたアイシスに対して無数の斬撃を一気に放ち、アイシスの装備を切り裂く。

 

「ぐっ…!」

 

「邪魔をするな…死ぬぞ」

 

その時、ナナシの背後にいつの間にか別の黒い鳥が近づいていた。アイシスは雲の影に隠し、背後に接近させていたのだ。

 

「黒の香No.5、ランブリングスパロー!」

 

(しまっ…)

 

回避も間に合わず、思いっきり爆発に巻き込まれた。しかしナナシはそんな爆発の中でトーマを全力で護ったのかそこそこのダメージを負って爆炎の中から飛び出してきた。

 

そして、アイシスの攻撃によって生じたダメージでナナシのマスクにヒビが入る。

 

「!!」

 

そのままナナシのマスクが割れ、ナナシの素顔が露わになる。マスクが割れ落ちたと同時に茶髪の髪が風に揺れ、露わになった顔はその場にいたほとんどの人物が知る顔だった。

 

「………やっぱり」

 

「そんな……」

 

その顔は、見間違えるはずもなくアキラだった。

 

「アキラ君…」

 

「………どうしてお前らは……俺を静かに死なせてくれないんだ…」

 

アキラは唇を噛み、刀を構えた。

 

「させない!」

 

そこにギンガが飛び込んでいき、オールドホークを突き出す。それに反応したアキラはその攻撃を刀で防ぐが、ただの刀はその一撃で折れてしまう。

 

「ぐっ!」

 

「セッテ!」

 

「はい!」

 

セッテはストライクカノンを構え、アキラに向かって放った。

 

「!」

 

アキラはトーマをかばって砲撃を受け、ふっ飛ばされる。

 

「スバル!」

 

「うん!」

 

スバルは念のため持ってきていた対抗魔力物用鹵獲装置を起動させ、アキラに向けた。刹那、ふっ飛ばされていたアキラの瞳が、スバルの方に向く。そして折れた刀を捨て、手を構えた。

 

「無閃」

 

アキラは手刀で飛ばした斬撃を鹵獲装置に当てて破壊した。

 

(チッ、スマートじゃねぇがやるしかねぇ!)

 

アキラはディバイダーを出し、刃をトーマの首に向けた。

 

「トーマを傷つけたくなきゃ全員動くな!」

 

「!」

 

「大丈夫」

 

全員の動きが止まりかけたとき、ギンガが言った。

 

「アキラ君にそんなことは出来ないもの…」

 

「…………っ!俺はやるぞ!試してみるか!?」

 

アキラはディバイダーの刃をトーマの首に少し押し付けた。刃がトーマの首に僅かに刺さり、血が滲む。

 

「アキラ君、どういうことなの?」

 

そこになのはが前に出てきて話しかけた。

 

「お話してくれると嬉しいな…あと、トーマも渡してくれる?」

 

「………………わかった。あんたらバレちまったらもう工作は出来ねぇ………だがトーマをお前らに渡すのはできない。だから…一週間後だ。一週間後にお前らの本部にトーマを連れて出向く。その時俺と勝負しろ。お前らが勝てば俺は投降する。トーマも渡す………それでいいだろ…」

 

「………本当に来てくれるのかな?」

 

アキラがうなずくと、なのはが了承した。

 

「じゃあ、いいよ」

 

現状、管理局側はトーマのディバイドでかなりの損害を受けていた。此処で本気で戦うのは賢明ではない。アキラが嘘をつくとは思えなかった。

 

「…シーラ!」

 

アキラが呼ぶとシーラが上空から現れ、転移魔法ではない手段でアキラと共に消えた。

 

「…………ギンガ」

 

「……」

 

 

 

-ヴォルフラム-

 

 

 

アキラが消えてから管理局の全員がヴォルフラムに戻った。ギンガは戻ってすぐに追加装備解除して落とした。そしてその場に崩れ落ちた。

 

「ギン姉!」

 

「ギンガ!」

 

「…………」

 

言葉もなく、嗚咽もなく、ギンガは涙を流した。

 

「アキラ君…」

 

ギンガはしばらく涙を流し、落ち着いてからヴォルフラム内のメディカルルームに連れていかれた。そして、メディカルルームのベッドから通信をつないだ。会議室にははやてを始めとした多くのメンバーが集まっていた。

 

「ギンガ、精神的に辛いだろし、色々大変なのも理解してる。でも、教えてほしい………何が起きているのか」

 

「はい………すべては、あの日が始まりです。とある次元の村が全員殺された事件………そこに私たち夫妻が調査に行った日………アキラ君が殺された日………いいえ、アキラ君が殺されたと思い込まされた日」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ここが襲撃を受けた村…」

 

「ああ。生存者はゼロだ」

 

アキラとギンガはとある次元世界の無人の村を訪れていた。そこはエクリプス感染者による虐殺が行われたのだ。一体誰が虐殺したのか、何が目的だったのか、管理局ではまだ捜査中だがアキラにはそれが分かっていた。

 

フッケバインか他のエクリプス感染者による虐殺。ここ最近、頻発するようになっていた。

 

「………」

 

「近くにまだ犯人がいるかもしれないっていうことで警戒と可能なら確保する予定で来たけど………これと言って何か手掛かりらしきものがないわね………ともかく近くの調査をしましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

アキラは村の周辺調査を行った。襲撃者が近くにいるのであれば足跡が、転移魔法を使ったのであればその形跡を調べればどこまで行ったかある程度の追跡ができる。

 

調査の結果、アキラは近くの森へ向かっている足跡を発見した。それを確認したアキラはギンガのもとへ向かった。

 

「ギンガ!」

 

「何か見つかった?」

 

「ああ。あっちの炭鉱らへんに向かって足跡が確認できた。だが他にも足跡はある。炭鉱に向かっている足跡が多いからもしかしたら生存者がいるかもしれない。見てきてくれるか?俺は他の怪しい足跡を調べてみる」

 

アキラは炭鉱に向かった足跡など見付けていない。

 

雨が降ったわけでない土地で足跡を見付けるというのは中々難しい。アキラはそれを鍛えているので見付けられたのだ。ギンガはその技術が無いのでアキラの言うことを信じるしかなかった。

 

「うん分かった」

 

「じゃあ何かあったらすぐに通信機で呼んでくれ」

 

「アキラ君も気を付けて」

 

ギンガが炭鉱に向かったのを確認すると、アキラは大急ぎで先ほど見付けた足跡を追った。足跡を追い続けていると、足元に弾丸が撃ち込まれた。

 

「!!」

 

「管理局が来るとは思ってなかったが………こいつは面白いな!まさか局にも感染者がいるとはな!」

 

見渡すと、岩の上にエクリプス感染者の二人組がいた。うち一人がスナイパーライフル型のディバイダーを持っていた。

 

「一緒にすんな。お前らに聴きたいことがある」

 

アキラは黒星を抜いた。

 

「ああ?なんだよ」

 

「ここのところ一気に感染者による虐殺が増えている。明らかに異常だ。それに、二人組………以前襲われたことがある。スポンサーがいるな。誰だ」

 

「悪いがそれはそれの口からは言えないな。というか俺ら相手に刀で戦うつもり?」

 

「ああ。悪いがもう時間がない。さっさと終わらせる」

 

「はぁ?何いっ………」

 

刹那、男の背後にアキラがいた。そして、男の首ははねられた。

 

「貴様!!」

 

二人組の内、まだ生きてる方の男がディバイダーを出してアキラに向ける。しかしそのディバイダーは即細切れにされた。

 

「なっ…」

 

「IS、ハッキングハンド」

 

アキラはその男の頭を左手で掴み、ISで頭の中を探った。そして今回の件にはとある企業の男が絡んでいることが判明した。用済みとなった男の首をはね、村に戻った。

 

「アキラ君!大丈夫だった?」

 

炭鉱を調査し終えたギンガは先に村に戻っていた。

 

「ああ…………………………ギンガ」

 

「どうしたの?」

 

「ごめんな」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「私が覚えているのはそれくらいです。何が目的なのかはわかりませんが、アキラ君は私に、ISの力でアキラ君が死んだように思わせて自分自身をマスクというアキラ君を殺した男に成りすました………」

 

「じゃあ、やっぱりあれはアキラ君…」

 

「いったいどうして…」

 

周りがざわつく。しかし、ギンガは驚くほど冷静だった。

 

「考える必要はないです。すべては一週間後に明らかになりますから」

 

 

 

続く




ちなみに、橘アキラの設定は前回と前々回の話を作りたくて設定しました。エクリプス感染者であること、記憶を操作する能力を付けたのもこの話のためです。

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