カラスに復讐を誓いつつ仕立てあげました
ギャグ回のような話数稼ぎ回
IS学園入学式から翌日。学生寮から、食堂へと続く廊下を二人の男女が歩いていた。
「なぁ、箒ちゃん」
「・・・・・・・・・・・・」
「いい加減、機嫌治せって。ありゃ、事故なわけなんだし」
「・・・・・・・・・・・・」
「たかだか、"俺の着替えを見たくらい"で、なに意地になってんだよ」
「〜〜〜〜〜〜!」
事件は朝に起きた。
現代の侍ガールこと、篠ノ之 箒の朝は早い。日の光が空を明るく照らし出す頃に目覚め、剣道着に着替えいまだ寒さの残る初春の空気の中、剣道場にて日頃の日課である素振りをしていた。毎日欠かさず、愚直なまでには行われてきた鍛練が、今の彼女を形作っているのは言うまでもない。
箒自身、その日の鍛練にはいつも以上に熱が入っていた。まず、間違いなく同室になった一夏が原因だった。何年も会えずにいた彼との再会で、表面に出さないながらも、箒の心は一睡も出来ないほどにに歓喜とその他諸々の感情で浮わついていた。当然、武士道を志す彼女がそんな自分のことを許せる訳もなく、内容も普段より大分濃密になる。
それ故に失念していた。
箒が自室に戻る頃、一般人が起き出すその時間帯に起きた織斑 一夏が、室内でパンツ一丁でいるような事態が起きうることを。
「う、うるさい! 大体、同室に異性がいるというのに、平然とし、し下着だけでいるお前が悪いのだ!」
「えっ、俺着替えもしちゃ駄目なの?」
「あっ、違う! いや、違うというか・・・・・・」
最初の勢いもしだいに小さくなり、顔も赤く染め上がっていき、ついには喋らなくなってしまった箒を眺めながら一夏は、漫画でなら頭の上に光る電球が浮かんでいそうな表情でニヤニヤと笑い出す。
「なぁ、箒」
「・・・・・・なんだ」
「見てどうだった?」
「そうだな、中々に鍛えられていて腕の辺りなど・・・・・・っ!?」
虚を突くように出された質問に、反射的に出てしまった答えに今度は首まで赤くなる箒を見て、腹を抱えて一夏は笑いだす。
「ひゃはははははは! 何、あなた筋肉フェチなの? ナイスカットみたいなこと言っちゃうの? く、黒光りした兄貴なポージング見ながら、な、ナイスカット! ハハハハハハ、シュール! 超シュール! ねぇねぇ、あの競技の判定基準と魅力を教えてくださいませんかぁ? てか、キャラと見た目を鏡で確認してからそう言うこと言えよ! って、おい。箒さん、その竹刀どっから出したん? いやいや、ちょっぴし待とうぜ、いや振りかぶんなって悪かった、謝るか がはぁ!?」
◇ ◇ ◇
IS学園は全世界各国から多種多様な人間が在籍する教育施設である。それは言語だけでなく、風習や文化にも大きな差が出るということでもある。
とくに食文化は決定的と言えるほどの差が生まれることは必至だ。
それを懸念した政府は、食堂に属する料理人を一流どころでどんな要望にも答えられる、超一流の人材と機材を用意した。話によれば、ISの整備や保持のために必要な器具や施設などの次に金がかかっているとかいないとか。
「あぁ、痛ってぇ」
そんな食堂で、一人お椀の納豆を箸でかき回している一夏がいた。
先の一件が相当頭に来たのか、それとも単純に気恥ずかしさから一夏の前にいるのが辛いのか、箒は昨晩の『リポD事変』で仲良くなったのであろう、ヘアピンを着けた女子に愚痴とも泣き言とも言えるようなことを言っている。
ちなみにだが、現在の食堂は緊迫した空気が流れている。一夏という唯一の男子が座るテーブルにどうにか座れないか、そのために皆が牽制し合い出し抜こうと策を巡らす。この男が行く先には事件しか起きない。
「つーか、頭腫れてコブになってるし。まったく冗談の通じないヤツはこれだから・・・・・・」
「おりむ〜!」
そんな空間にに間伸びした声が響く。視線が自然と集まる先には、三人の女子。約一名は一夏にとってはよく見知った顔である、布仏 本音の姿があった。
「朝から元気だなぁ、のほほんさん。てか、そのやたら愛らしい格好なに?」
「ふっふーん、可愛いでしょ! コンコン、狐だよ〜?」
そう言って、黄色の獣耳フードの付いた狐の着ぐるみを着た布仏は、朝食の乗ったトレイを一夏の左側に置いて自身も隣に座る。やはり、制服同様袖が余りまくっている。彼女なりにポリシーがあるのだろうか。
その後、不安気にに立っている残り二人に一夏が座るように勧めると、一転させて花が咲いたように笑顔を浮かべていそいそと一夏の隣に腰を降ろした。
周囲からタイミングを逃しきった多数の女子が、小声で嘆き声を上げているのに一夏は気づかないフリをした。
「わっ、織斑くんって朝から沢山食べるねー」
「・・・・・・まぁ、男って燃費悪ぃし。俺としてはお前らそれで足りるのかって感じだし」
「お菓子食べるからモーマンタイ!」
「太るぞ?」
「私って太んないんだー」
「・・・・・・なるほど、ウェストに行かず上に行くから、そうなったのか。趣(おもむき)深いな」
視線を布仏の一ヶ所に固定しながら、一夏はそんなことを呟いた。
それを聞いた横の二人は、それがどういう意味なのかを察したのか、赤くなりながら俯きがちに朝食の処理に集中し始める。
そんな視線に布仏も何かを感じたのか、一夏に向けて、強いては全員に向けての爆弾が投下された。
「おりむーの好きなタイプって、どんな人?」
食堂が凍りつく。
比喩的表現であるが、雑談に花を咲かせていた女子から一人黙々と食べていた青髪の少女まで、全員が息を飲み呼吸さえ止める。
だが、あくまでも一瞬のこと。
すぐに全員がなに食わぬ顔で食事を再開させるが、これから一夏が語るであろう言葉を一字一句聞き逃すまいと耳を澄ませ、偶然居合わせた報道部員はボイスレコーダーのスイッチを入れ待機する。
「それ、昨日も言ったろ? 気が強くって自分を通そうとするタイプ」
「だーかーら、なんでそーいう人が好きなのかーって」
ふむ、と布仏の質問に味噌汁を啜りながら一夏は考える。
そして、周囲も一夏の次の言葉を今か今かと固唾を飲みながら、平静を装いながら待つ。
そして、
「なんか、苛め甲斐がありそうだろ?」
再び食堂が凍りつく。あまりにも予想外と言えば予想外な答えに誰もが、布仏さえも思考をストップさせる。
「どうせなら最後まで抵抗して欲しいよなぁ。んで、プライドを底から崩していって、心底悔しそうな涙目で睨まれたいね。そこからさらに攻めにせめて、地べたに這いつくばってるのを上から眺めたい。あのイギリスさんとか正にだよ。犬耳と首輪がスゲー似合いそうじゃね? どうせならメイド服とか着せて、羞恥心一杯の顔で傅けさせたいよなぁ」
ハハハ、と一夏は一頻り笑ってから味噌汁を飲み干すと、空になった器を乗せたトレイを返却口に返し、食堂の出口から出ていった。
あとに残ったのは男子高校生のマジな妄想話を聞いて居たたまれない雰囲気になってしまった空気と、冷めていく朝食。
少しして、ポニーテールの女子が何処から取り出したのか、竹刀片手に食堂を駆け出していく姿があったとか。
ギャグを書きたいのに、コレを書いていて自分にギャグセンが無いのに気付かされました。
稚拙な内容で申し訳ない。
次はイギリスと黒サマーの出番です。