IS-Junk Collection-【再起動】   作:素品

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インフルエンザがストライクフリーダムで急降下してきました(意味不)

遂に新しい節目ですが、熱の所為かこの作品の雰囲気忘れてます。

ということで、黒サマーだって漢の子回

1/30 少し文章直しました


三節 被虐死願と哀玩人形と■■■■■
第二十八幕 男の事情と羞恥心と


とある真夏の放課後。

 

燦々と輝く太陽と絶え間なく鳴る蝉の声の二重奏が、季節の変化と憂鬱な熱気がIS学園を包み込んでいた。

 

「重い・・・・・・」

 

そんな気だるい空気も和らぐ完璧な空調の学舎の中を金髪の少女、ティナ・ハミルトンは手に大量の教本を抱えながら、廊下を歩いていた。

 

「あぁ~、本当にツイてない。こんなことになるんなら、大人しく鈴のノロケ話聞いてれば・・・・・・、どっちもどっちか」

 

若い身空の少女に似つかわしい深い溜め息を吐きながら、覚束ない足取りで歩を進めていく。

 

そんな彼女が廊下の角に差し掛かったところで、大きな人影とぶつかった。

 

「あぁもう、なんなのよ! 一体だ、れ・・・・・・」

 

重い教本を持っていた疲労とぶつかった衝撃で尻餅を着く。苛立ちもあってか、ティナが角から出てきた人物に文句を言おうと目線を上げた先にいた人物に、言葉を失う。

 

「あぁっ?」

 

烏の濡れ羽を思わせる黒々しい髪に苛立たしげに細められた三白眼。座り込む彼女を見下ろす長身の男は、様々な噂と悪名を学園に打ち立てる人間、織斑 一夏がいた。

 

(・・・・・・ホント、厄日よねぇ)

 

いっそ泣いてしまおうか、とも思ったが目に見えて不機嫌の塊なコイツに泣き落としが通じるとは到底考えられない。

 

乾いた笑いを浮かべながら、昨日までの自分を憂いてため息を吐く。

 

「―――はぁ、わかってるよ。だから、耳元で一々言わないでくれ」

 

そんなとき、どこか呆れたように疲れたような声で、落ちた本を拾いながらティナの様子を窺うように身を屈める一夏がいた。

 

「どこまで運ぶんだ?」

 

「えっ、手伝ってくれるの? あなたが?」

 

「・・・・・・置いていくぞ」

 

「あーっと、待った待った。こんなの乙女の細腕じゃ無理だって。だから、協力お願いします!」

 

ティナが焦りながら頭を下げると、小さく舌打ちしながらきっちり半分の量を集めると彼女が立つのを待った。

 

「で?」

 

「あっ、え~と、二階の資料室まで、です」

 

「オーケー、さっさと済ませちまおうぜティナさん」

 

「? 何で私の名前知ってんの?」

 

「リンリンと部屋一緒だろ? 知ってるよ」

 

適当に一夏はそう返すと、ティナを置いていくように階段を目指して歩いていく。少し遅れて集め終わった教本を抱えて、彼女も慌てながらに一夏のあとを追った。

 

ルームメートである鈴音から一夏の話は聞いていたが、ここまでツンケンした奴とは聞いていなかった。だが、こちらが何かを言う前に助けを買って出るあたり、まだ良心的といえる人間だと考えるべきか。どちらにしろ、彼女の一夏に対する第一印象はよくわからないやつで留まった。

 

そんなことよりも、ティナはさっきから気になってしょうがなかったものがある。

 

(なんでずっと女の子背負ってんだろ?)

 

一夏の背中、女性より広く大きなそこにはしがみつくように、頭の両横で髪を結った女の子がぶら下がっていた。

 

◇ ◇ ◇

 

翌日の昼頃。

 

「今日は、菷さんはいらっしゃらないようですね」

 

「そうみたいねぇ」

 

一組の教室でセシリアは未だ主の現れない空席を眺めながら、隣でストローから牛乳を啜る鈴音に話しかけていた。

 

IS学園が襲撃される事件が発生してからしばらく経ち、最初こそ慌ただしい日々も最近になって落ち着きを見せ始めていたが、生徒たちの心に確かな傷痕をつけていった。それこそ、自主退学するようなものは居なかったが、中には不登校気味になる者も少なからずいたのだ。

 

菷の場合、来るには来るのだが、来ても何処か身の入っていない印象をクラスの人間たちに思わせていた。

 

「まぁ、篠ノ之は違う理由でしょうけどね」

 

「えぇ、どうせ"あの方"が関わっているのでしょう。ね? 一夏さん」

 

二人が思い浮かべるのは同様の人物。軽薄な態度に底意地の悪い笑みを浮かべた、悪餓鬼のことを。

 

そして二人同時に視線を動かした先には、椅子の背にもたれ掛かる一夏の姿があった。

 

「それで? どうなのよ一夏」

 

「知るか」

 

「本音さん、クラッチ」

 

「・・・・・・えい」

 

「!? ちょっ、おまぁおおおおごぉ!?」

 

セシリアの号令と共に"背中に乗った本音"が一夏の首を締め上げた。

 

「なんか、すっかり見慣れた光景になったわよね、これも」

 

そう。例の事件から、どういうわけなのか一夏の背中には本音が取り憑いている。それもトイレやシャワーといった場面を除けば、朝食の時間から教室、寮の消灯時間までぴったりとくっついて離れようとしなかった。しかも、一夏の行動にも目を光らせており、彼がヘタなことをしようものなら今のようなチョークが一夏の首に回るのであった。

 

最初こそ一夏も温かい目でスルーしていたが、三日で笑顔が陰り、五日で逃避行動が始まり、一週間目には諦めきった彼がいた。そして、二週間に至った今では血色も悪くげっそりとした見るも無惨な有り様になっている。

 

「それで、いったい何をなさったんですか?」

 

「ぐぐっ、ろ、ロープ・・・・・・」

 

「隠すおつもりで?」

 

「タップ、たっぷぅ~・・・・・・!」

 

「セシリア、あと本音も。そろそろ落ちるわよ、そいつ」

 

もはや通例となってしまっている一連の流れにため息もそこそこ、鈴音が止めに入る。

 

本音が取り憑いてからというもの、主導権はすっかりセシリアのものとなっている。暴れようとすれば本音の絞首刑が控え、畏縮したところをセシリアが突く。

 

まさに阿吽の呼吸というやつである。

 

「で、何をなさったんですか?」

 

「・・・・・・意見の相違だよ。あっちはそっちで、こっちはこっち。そんな程度のすれ違いだ。お前らには関係ねぇんだから、気にするだけ馬鹿ってやつだぜ?」

 

「あっ、まーたそんなこと言うと・・・・・・」

 

「ぎっ!? しまったあああああ!!」

 

一夏の絶叫が教室中に響きわたった。

 

真面目な話をしているわりには締まらない、それこそいつものシーソーゲームのような掛け合いが繰り広げられているが、攻守が逆転され一方的に彼が組み敷かれている様は何ともシュールである。

 

「のほほん様! 理由こそ存じ上げませんが、いい加減私の背中から降りていただけませんか!?」

 

「やだ」

 

「いやいや、やだじゃねーんすよ! いくら男である俺だって、四六時中女の子背負ってるのは骨なんですぜ?」

 

「・・・・・・しらないもん」

 

「そんな可愛く言われても困るもんは困るんでがすよ! 最近になって、やっとこさ慣れてきたけど、最初の頃なんか一日終わる毎に体中ビキビキで大変だったんだぜ?」

 

それから一夏が、疲れる、流石に冗談キツイなど愚痴を言い始めた。内容とすれば所詮は日頃溜まっていた鬱憤晴らしのようなもので、如何に仲のいい二人でもここ最近のことは腹に据えかねるものがあったようだ。

 

「・・・・・・だって」

 

そんな一夏へ返事をするかのように、本音は腕に力を込める。

 

ほぼ反射的に一夏は身構えるが、それはいつもの制裁のような締め上げるものでなく、堪えられない何かを我慢しているような、どこか訴えかけてくるような感覚を彼に抱かせた。

 

同時に、耳元から流れてくる小さな旋律に身を震わせた。

 

「だって、まだ"ゴメンなさい"って、言ってもらえてないもん・・・・・・」

 

か細い、すぐにでも折れてしまいそうな小さな声が、本音から放たれた。

 

それを聞いた者の反応は二通りある。

 

一つは、ぐだぐだと垂れ流していた小言が止まり、ぎゅっと抱き締められる感触にだらだらと額から冷や汗を流し始める者が一人。

 

そして他の全員は、それぞれが思い思いに柔軟運動をしながら拳や首から破砕音を奏で、額には青筋を浮かべて一人の罪人に歩み寄っていく。

 

判決は有罪、死刑執行。

 

「・・・・・・皆さん。とりあえず、話をしようではありませんか。きっと僕たちは解り合える!」

 

もはや止まらない。

 

皆の心は言葉にせずとも既に一致し、決していた。

 

今さら捌かれるのを待つばかりの羊の鳴き声に、わざわざ耳を貸す者などあるはずがない。

 

「君たちは一つの視点でしか世界が見えていない! そうだろう!? 君たちの胸に宿るその赤い憤りはもっともなことだと思う。だがしかし! 一時の感情に捕らわれ、曇った瞳で視る事柄が本当に真実であると言うのか! 冷静になれ! 正すべきことを間違うな!!」

 

じわりじわりと距離が狭まっていく。

 

断頭台の刃を研ぐような音さえ流れてきそうな剣呑な空気。息をする度に入り込むのは、肺を焼き尽くさんとする零下の風。

 

虚しく哭くは男一人。

 

現れるは赤い三角頭の処刑人を筆頭に行進する執行者たち。

 

今宵の(とばり)を下ろすは、降り下ろす断罪の拳と共に。

 

「ああもう、ぶっちゃけるよ! 最初こそ戸惑ったよ俺だって! 喧嘩別れしたみたいな次の日の朝に、前触れもなく乗っかって来たときは! けどよ・・・・・・、"やっこい"んだよ。背中に当たって潰れて密着する二つのビッグマウンテンが。二つのOverdo Weapon(えろすのぼうりょく)が、俺の背中にパイルダーしてんだぞ!? 支える時に文句も言われずにパンストに包まれた桃源郷をキャッチできるんだぞ!? 受け入れるしかねぇだろ!? 散々々お預け食らって碌に発散もできねぇ寮生活の中で、これ以上ない千載一遇の合法的にお触りできるチャンスだったんだよ・・・・・・。これは普段から我慢してる俺に神様がくれたご褒美なんだ! それを享受してる俺の何処が悪いっていうんだよ?!」

 

「「「「「「「全部悪いわ、この変態が!!!!」」」」」」」

 

ごっちーん、という間の抜けた音を鳴らしながら、式典でよく見かける酒樽のようにカチ割られた頭を抱えて一夏がコンクリートの染みに変わる。

 

侮蔑と羞恥の入り交じった視線を一身に浴びながら這いつくばる一夏のもとに、制裁が始まる前に引き剥がされていた本音が"とてとて"と傍らに寄って膝を着く。

 

その顔は耳まで赤く染まっており、視線も合わないのに一夏を直視出来ずにいる。

 

「え、えっとね、おりむー?」

 

「なんでしょうか」

 

「そ、そのー・・・・・・。え、えっちなのは、"めっ"だよ!」

 

「・・・・・・・・・・・・はい」

 

今日もIS学園は騒がしくも平和である。




俺は悪くない(裸エプロン先輩風)

最近、頭の中でのキャラクターたちが全て八尋ポチさんの絵で再生されてる。これが末期か。

転校生は次の次くらい。次はクッソシリアルになる予定です。ちなみに今回から菷さんが動きます。

ではでは。

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