IS-Junk Collection-【再起動】   作:素品

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私の五体倒置が見たいならそう言ってくれればいいのに。

スイマセン、本当にありがとうございます

ということで入学式です


一節 A crybaby clown
第一幕 Who are you?


◆ ◆ ◆

 

世界は明るい光で包まれていた。

 

木々は青々とした葉で、地面は色とりどり多種多様な花々で彩られ、風は暖かさと仄かな甘さを含んだ空気を運んでくる。

 

上を見上げれば、気が遠くなりそうな程に澄みわたった蒼き空と、命に熱と光を与える太陽が燦々と輝いて見せる。浮かび流れていく雲も合わさり、眺めているだけで体が多幸感で満ちていく。

 

端的な言葉で表現するなら、天国というのに相応しい景色が眼前に広がっていた。

 

気づけば目の前に人が立っていた。数人、数十人、正確な数は判らない。ただ、しっかり判別がつくのは三人だけ。

 

一人は自身の最も敬愛する女性。

 

一人は自身の最も仲の良い少女。

 

一人は自身の最も■■■■■■。

 

彼女たちを含む、全ての人間が慈愛の笑みを浮かべている。慈しむように、我が子を抱きしめるように、深く深く何よりも深く、神の寵愛のような優しく蕩けるような愛で世界が・・・・・・

 

―――もういいよ

 

その一言で光がガラスのような、無数の欠片に変わって砕け散る。

 

これは夢だ。ひどく身勝手で、ご都合的で、自身には過ぎ過ぎた無惨で無様な無味夢想。今更こんなものは求めてない。求めようとなんかしていない。求めたとかころで叶わない。求めるには遅すぎる。

 

さぁ、そろそろ起きよう。

 

舞台は整った。

 

◇ ◇ ◇

 

「うぅ、どうすれば・・・・・・」

 

新春の訪れを告げる暖かな風が吹き抜ける中、この日とある学園の教室で一人の女教師が、困惑と悲壮の感情で身を震わせていた。

 

彼女の名は、山田 真耶。

 

本土より数km離れた海上に作られ、移動手段はモノレールという、とんでもない立地の学園の教師の一人だ。

 

とある『競技用パワードスーツ』の操縦者、及び専門のメカニックの育成を目的とした超特殊国立高等学校、というのがこの学園の肩書きだ。そのパワードスーツもかなり特殊なものであり、それが理由で通学する生徒は"一人"を除いて全てが女子。

 

加えてこの競技の教導を行う場所がここしかなく世界規模での受験激戦区となっているため、入学できるのは本当にエリートのみ。倍率なんてものは諦めを越えて悟りを開く水準を維持してなおも上昇中なのだから笑えてしまう。

 

話は戻るが、先述のとおりこの学園には男子生徒が一人だけ在籍している。大勢の女性の中で男一人なんていうサブカルチャーではドがつくほどの定番となっている展開だが、彼の場合入学に関する絶体条件を満たした、世界でもただ一人の男性という名目がある。

 

それ故に、ここに入学させられたのは彼自身の『保護』が目的である。

 

今だかつてない異例に世界が驚愕した。報道陣はこの事を一気に騒ぎ立て、研究職の変人たちは彼の遺伝子や体細胞の提出を求めたりした。そんな環境では、いずれ暗い意味でのニュースで世界を席巻することを危惧した政府は、特例として彼を学園に"隔離"したのである。

 

さて、その世界的有名人となった男は入学式終了後に貼り出された組分け表に従い、一年一組の教室にいた。そして、時間帯はホームルーム。入学式当日から授業があることもあり、時間を非常に圧している。そんな中でも無謀にも行われた『自己紹介』。勿論、ここ数日で一気に知名度を広げた少年のそれに期待が集まるのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・んがっ」

 

「早く起きてくださーい!」

寝ていた。

 

教室の生徒と教師、総計三十名の質量さえ感じさせる視線の米字砲火を一身にあびながら、少年は腕を枕に爆睡していた。

 

「机はお布団じゃないんですよ? 今はホームルームの時間ですよ? 自己紹介してください!」

 

「ぐぅ」

 

「ぐぅ、じゃなくて!」

 

「がぁ」

 

「がぁ、でもないです! も、もう、こうなったら無理矢理にでも・・・・・・」

 

「ぐるぁ!!」

 

「ひぅぅぅ!?」

 

寝言に本気でビビる小動物系副担任山田 真耶。天然な雰囲気に成人しているのか疑わせる童顔さ、加えて小柄な体躯に一つの黄金率を完成させた豊かな母性の象徴を実らせ、そのアンバランスさと少しの背徳性が異様なエロさを醸し出している。そんな彼女の涙目になっている姿は、見ている者の嗜虐心をくすぐるように掻き立てる。事実、顔を俯かせて必死に何かを堪えている淑女が数人いる。

 

「スマナイ、遅れた」

 

そんな混沌とし始めた教室内に、新たな声が響いた。全員が反射的にそちらの方に視線を動かすと、切れ長の鋭い瞳に黒のスーツ姿の女性が立っていた。

 

「あっ、織斑先生!」

 

地獄で仏を見つけたかのように、真耶は暗い表情を一変させる。さっきまでのそれはどこへやら。

 

二、三言、織斑と呼ばれた女性は真耶と話すと振り返り、自分を羨望と恍惚の表情で眺める生徒に向けて話し始める。

 

「私は織斑 千冬だ。君たち新入生を教導し、次の学年までに世界に通用する操縦者に育てるのが仕事だ。授業では私の言うことをよく聴き、理解するよう努めろ。解らない者には解るまで教えてやる。この一年、よろしく頼む」

 

「「「「キャーーーーー!!!?」」」」

 

話が終わった瞬間、空気が爆発した。

 

「千冬様!? 本物の千冬様なの!!?」「夢? 夢じゃないよね!? もし、夢ならこのまま永眠してもいい!!」「誰か私を殴って! このままじゃ、このままじゃ私・・・・・・!」「誰ぞカメラを、カメラを持てぇい!!」「そ、そんな、放課後に先生と二人きりだなんて・・・・・・!」

 

再び教室が混沌と化す。轟く喜びの悲鳴と叫びが教室どころか学校中に木霊する。よく見れば窓ガラスもビリビリと震える程に。ちなみに先程の淑女たちは、一心不乱に『平常心』という単語を机に書き殴っている。

 

そんな状況を作り上げた女性、織斑 千冬はそちらに目を向けず、このソプラノの暴風の中でいまだに眠っている少年を視界の端に捉えた。そんな少年に千冬は溜め息を吐くと、おもむろに出席簿を右手に構え、振り上げる。すると・・・・・・。

 

「んぐ・・・・・・、あぁん?」

 

少年は目を覚ました。

 

「起きたか?」

 

「・・・・・・あれ、なんで砂漠の狼がここに?」

 

「まだ寝惚けているのか? さっさと立って、自己紹介を済ませろ」

 

だらしなく着崩した白い制服と青のネクタイが、寝起き感を加速させている少年は、頭がまだ覚醒しきっていないのか、ふらつきながらも立ち上がり、振り替える。それから勢いよく首を鳴らし、幾分かスッキリした笑顔で口を開いた。

 

「織斑 一夏です。これから一年間よろしくお付き合いを!」




学校の設定がうろ覚え

なんか姉さん丸くなってますね。何があったんだろ?(目そらし)

あと、淑女の皆様はメインキャラクターです。名前はないけど

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