IS-Junk Collection-【再起動】   作:素品

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中学の弟が鬼哭街買ってきた

どこで育て方間違えたのか

そんなわけで始まりましたリンリン編!

ということで二人の出逢い回です


二節 天真爛漫一途純愛少女
第十四幕 一期一会


「これよりISの飛行操縦の実践をしてもらう。オルコット、頼むぞ?」

 

「はい、お任せください!」

 

四月下旬、桜の花が散り行く中、春の終わりと夏の兆しを感じさせる陽気がIS学園に生活する生徒たちを照らし出していた。

 

現在、織斑 千冬率いる一年一組はIS起動訓練、普通高校でいうところの体育の授業中である。

 

そんな中で呼び出されたセシリアは、意気揚々と皆の前に出て自身のISである《ブルーティアーズ》を展開し、千冬の指示の通りに動いている。その動きは一つ一つに洗練されたものであり、それでも千冬は彼女に向けて改善点を指摘しているが、皆に代表候補たる姿を遺憾なく示している

 

本来ならセシリアともう一人、専用機持ちである一夏が前に出ているはずなのだが、今は他の生徒と同じ様にセシリアを見ていた。というのも、彼のISである《白式》は今も修理と調整が終わっておらず、まだ戻ってきていないのだ。

 

だが、そんなことは彼にはどうでもよかった。

 

「・・・・・・・・・・・・ハァ」

 

いつもは飄々と傲岸不遜にニヤニヤ笑っている一夏にしては珍しく、げっそりとした顔で溜め息なんて物を吐いている。

 

ここで一つ、例え話をしようと思う。

 

人はどのような時に幸福を感じるだろうか? 道端に落ちていた硬貨を運良く拾ったとき。スポーツの試合で勝利したとき。志望していた学校に合格したとき。人は長く続く幸福より、瞬間に起こる幸福の方が圧倒的に多い。

 

というのも、人は学習能力、そして適応力に長けた生物だ。これにより人たる霊長類は地球上で最も繁栄したと言っても過言ではないだろう。だが、それ故に人は一定のラインを越えれば物事に"飽き"を感じるようになってしまう。

 

今まさに一夏はそんな状態に陥っていた。

 

ISスーツというのがある。ISを効率的に運用するため、バイタルデータを検出するセンサーと端末が組み込まれており、体を動かす際に筋肉から出る電気信号などを増幅してISに伝達する特殊な"ハイニーソとセットのスクール水着"である。

 

そんな格好が学園指定の衣装であるためとはいえ、走れば何がとは言わないが揺れる、跳べば零れるほどに揺れる。何のとは言わないが、後ろのくい込みを直すようなことをしている者もいる。

 

その光景は男からしてみれば、楽園か天国と思って間違いないものだ。だが、想像してみてほしい。そんなものを前にして、手も出せずにただ眺めることしか出来ず長時間もいれば、とんでもない生殺しもいいところだ。それでもいいという猛者でも、こんな状態が続けば流石に精神が紅葉おろしである。

 

「『女子校スク水体育~ポロリもあるよ!~』みたいな? ・・・・・・アホらし、学園総出で企画モノのAVの撮影でもする気かよ」

 

皆がセシリアの急上昇からの急降下と完全停止、ライフルの展開などを見ている中で、一夏は周りに聞こえない程度にそう呟いた。

 

◇ ◇ ◇

 

翌日。

 

「おりむー、大丈夫?」

 

「無理」

 

朝の教室にて、一夏は机の上に突っ伏していた。

 

そもそも異性しかいない中の生活というのは、言うほど素晴らしいものではないのだろう。性別の違いというのは生活環境そのもの違いとも言える。

 

なにより、ほぼ女子校であったIS学園は、何から何まで女性が生活するための造りになっている。男性用のトイレが未だに一つしかないのがいい例だろう。

 

そんな中では流石の一夏も参ってしまっているようだった。本音が話しかけているというのに、それも生返事である。

 

「ホント漫画の主人公とか尊敬しちまうよ。こんな状況でよく理性がすり減んないもんだ。あのダークネスなのとか、黒衣の剣士様とか、どういう精神構造してんのか知りてぇくらいだ」

 

「ねぇねぇ、おりむー」

 

「んー・・・・・・んむぅ?」

 

ぐだぐだと闇に落ちかけていた一夏に、どういうわけだか本音は正面から抱きついた。

 

「のほほん様、朝から何故このようなことを」

 

「えへへー、元気ちゅーにゅー」

 

一夏の頭を自身の胸元に抱き込みながらも、ニコニコといつものように笑っている。

 

唐突なことに、教室全体が一瞬騒然とするが、やはりいつもの二人ということで周りは微苦笑を浮かべながらに視線を逸らしていく。

 

「・・・・・・エロい気分になるかと思ったが、睡魔がくるレベルで癒されるなコレ」

 

「相変わらず仲がよろしいようですわね」

 

そんな呆れたような声が二人の横から聞こえてきた。

 

そのままの状態で二人が声の方を見れば、金髪に青い瞳の少女、セシリアが腰に手を当てつつ、そんな二人の視線を静かに見返していた。

 

「あっ、せっしーだ! おっはー」

 

「それは朝の挨拶ですの? というか、また名前が変わってますし・・・・・・」

 

「別にいいだろ。可愛いじゃん? ネス湖の未確認生物みたいで」

 

「・・・・・・うふふふふふふ、一夏さん。実は破壊されたビットの予備が本日届きましたの。是非とも以前の試合のように的になって頂けませんこと? 今度は生身で」

 

「かはははははは! トーシロ一人にも苦戦するような代 表 候 補がなに言ってんだか。輪ゴムでも飛ばしてろネッシー」

 

「F**k you?」(約:死んでくれませんか?)

 

「上等だよ、表出ろや」

 

そう言って二人は(一夏は本音に抱かれたまま)メンチを切る。ちなみにこれがいつもの会話風景である。

 

あの試合から和解したはずの二人であったが、今は顔を合わせれば皮肉を言い合うような仲になっている。

 

周囲の人間もそれに当初こそ止めに入るような者もいたが、それが二人なりのコミュニケーションなのだと合点をつけ、生暖かい瞳で見守ることに徹していた。

 

それに、ブレーキ役になる人間はすでにいる。

 

「いい加減にしろ、お前ら」

 

「「あぁん?」」

 

「しののん、おっはー!」

 

長いポニーテール、日本刀のように鋭い目を気まずげに伏せながら、箒がそんな三人を眺めていた。

 

大抵この三人が騒ぎになれば、それを止めに入るのが彼女である。そういうこともあって、一組の面々は安心(?)して騒ぎを放置できるのであった。

 

「オッス、箒。今朝は遅かったな」

 

「別に、お前には関係はないだろ?」

 

「いや、そうかもしんねぇけどよ・・・・・・」

 

そして、箒と一夏の二人は"ある一件"以来、険悪とは言わないがどこか避けているような空気が流れるようになった。箒の一方的なものではあったが、原因が判らないため、一夏も箒自身も理由を話さないので周りも対処できないでいる。

 

「よいしょ」

 

「ん、なに むぐッ!?」

 

「おぶふ!?」

 

それも本音の前では無意味であるが。

 

腕を箒へと伸ばし、その手を掴んだ本音は勢いつけて彼女を自分の胸へと引き込んだ。その際に一夏と頭が衝突したのは必然と言っていい。

 

「ダメだよ、しののん。みんな仲良くー、だよ?」

 

「いや、別に私は ぐむっ」

 

「言い訳はききません!」

 

その光景は兄妹喧嘩を有り余る抱擁力で納める母の図であった。

 

バツの悪そうな顔でいる箒と、脳天をさする一夏を抱きながらニコニコ笑顔のその表情は、まさに子を抱く幸せに浸る母親のそれである。

 

そんな時であった。

 

「すいませーん。ここに織斑 一夏って奴が居るって聞いたんだけど、って!? な、なにあの和やかな一団・・・・・・」

 

教室の入り口に現れたのは、肩口を露出するように改造された制服に身を包んだ、小柄でツインテールが特徴的な少女が、一夏たちを見て驚いたように目を見開いていた。

 

「うーい、織斑 一夏ならここですぜぇ。なんか御用で?」

 

「いや、御用っていうか・・・・・・。何してんの?」

 

「いや、マジでヤバイってこれ。下手したら涙がちょちょぎれるレベルで癒される」

 

「そ、そう」

 

明らかに変なヤツに絡んでしまった、という感情が滲み出る引きつった笑みを浮かべながら、少女は一夏たちのもとに歩き出した。

 

「ていうか、お宅どちらさん?」

 

「あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったわね!」

 

一夏たちのすぐ側までくると、少女は天真爛漫を絵に書いたような快活な笑顔と共に、自分の名前を告げた。

 

「あたしは凰 鈴音。二組に転校してきた中国代表候補生よ!」




はい、原作とだいぶ人間関係が変わりました。

セシリアが悪友。箒が知り合い以上友人未満。のほほんさんが母君。リンさんにいたっては初対面。

なんだこりゃ。

そして、のほほんさんの使いやすさが凄まじい。お陰でかなり強化されてます。これでもヒロインじゃないんですぜ?

今回の話は主に青春的学園ストーリーなノリが主で、黒サマーがゲスサマーになります。プラスの要素なんて欠片もないですね。

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