IS-Junk Collection-【再起動】   作:素品

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必要な伏線回なのですが、クオリティに自信なし

こういう展開は正直苦手です

特にガオガイガーとトップを狙え1・2を見た後では

ということで、セシリアシャワー(エロはなし)回


第十一幕 BLUE TEARS

▽ ▽ ▽

 

―――おとうさまぁ! おかあさまぁ!

 

小さな女の子が泣いてる

 

青いドレスの裾を握り締めて、声を張り上げて泣きじゃくって父と母を呼んでいる

 

それを、空に浮かぶ雲を眺めるように見ていると、霧が集まるように二人の人の姿になりました

 

―――もっといい子になりますから、みんなより一番になりますから!

 

綺麗な金色の髪の女性は、憮然とし、眼下の自分と同じ髪の少女を見ているだけ

 

青い瞳の男性にいたっては、疲れきった笑みを貼り付けて、女性の方を見るばかり

 

―――ひとりはもう嫌です! ■■■■を見てください! ■■■■はここにいます!!

 

二人は歩き出しました

 

泣きながらも二人に追い付こうと少女は走りますが、距離は開いていくばかり

 

ついにその背中さえ消えてしまったとき、少女は座り込んでただ泣き続けました

 

ずっとずっと、泣き続けました

 

ずっとずっと、泣いています

 

◇ ◇ ◇

 

熱い水がシャワーから噴き出し、白磁の肌を流れ落ちる。白人としてはボリュームに欠けるが、それでも十分と言えるサイズの白い双丘に加え、腹部には無駄な脂肪など一切なく、腰から臀部、足首にまで至る流曲線は彫像のような美しさがある。

 

「いっ!? ・・・・・くぅ、あ」

 

そんな彼女、セシリア・オルコットに電流のような痛みが走る。

 

苦悶に満ちた声が喉を通って、食いしばった歯の間から漏れだし、不意の痛みから体が跳ねるように小刻みに痙攣する。

 

鏡に映る自分の姿を見れば、左肩から右の腰にかけて赤黒い"線"が引かれている。間違うことなく、先程の試合に一夏によってつけられた傷だ。常駐している保険医が言うには、ただの内出血であるらしいが、そもそも絶対防御の上からこれ程までのダメージを与えること自体が異常なことである。

 

セシリアは自身のソレを指でなぞりながら、自分の発した言葉を思い出していた。

 

「"愛しています"、か・・・・・・」

 

誰に向けたことかなど、もはや語る必要もない。

 

そんなことを思ったこともなかった。いや、思わないようにしていた、思い出さないようにしていた。そうしなければ、今の自分が、"優等生のセシリア・オルコット"が崩れてしまうから。

 

だが、限界だった。もう耐えられない。

 

溢れ出した思いが、堰を切ったように止まらない。

 

「お母様、お父様・・・・・・」

 

こうでもしなければ、とっくに心が潰れていた。

 

誇りある家名を底辺まで落とし、あまつさえ自身らの尻拭いさえ押し付けて逝った二人を、無能と罵り、愚か者として憎まなければいけなかった。

 

そうでもしなければ、生きていけなかった。

 

後釜を狙って這いよる下衆な輩から、家を守り、己を守るには、誰よりも強く誰よりも上に立たなければならなかった。

 

そのために、全てを押し込めた。

 

敵を払い、自身を高め、名を売って、己を殺す。過剰に主張をして印象を固定させ、誰も歯向かうことの出来ないような絶対的な存在にならなければならなかった。

 

だがそれも、あの"男"によって砕かれた。

 

「ぁ、あぁ・・・・・・」

 

涙が止まらない。

 

傷が痛むからではない。望んだ勝利を得られなかったのが悔しいからではない。

 

守るべきものを踏み台にするしか出来ない自分の不甲斐なさ、そうやって手に入れた強さも結局は無為に転じてしまった脆弱さ。何よりも、今の今まで愛する二人を貶し続けることでしか保てなかったセシリア・オルコットというものが、情けなくて憎くて仕方がなかった。

 

とどのつまり、彼女は一切強くなんてなれていなかった。

 

朝起きて両親がいないことに気づいては泣き、一人だけの食事に声を上げて泣き、振り向いてくれない二人の背中を見ては夜通し泣き 泣いて、泣いて、泣いて、泣き疲れて寝るような日々を過ごしていた、あの頃から。父と母を同時に亡くし、有無を言わせず当主になってしまって今に至るまで、何も変われてなどいなかった。

 

思えば彼女のISも、随分と皮肉の効いた名前である。

 

「『Blue Tears』、青い涙。今も変わらず、ただ泣き続けるだけのわたくしには、うってつけなネーミングですわね」

 

自虐的な笑みが頬を吊り上げるが、流れ出る涙は減るどころか増えるばかり。

 

いつもは青く光る左耳のソレも、今はくすんで煤けて見えてしまう。

 

―――お前の名前だって、明らかネーミングミスだろ。名前負けも甚だしい

 

「・・・・・・名前」

 

不思議と頭をよぎったあの男の言葉に、視線が上がる。

 

シャワーの放水を止め、結露できた鏡の露を手で拭うと温水で火照った肌に若干充血した青い瞳。水分で張り付いた金色の髪を絡ませた自身の姿が見える。

 

名前。

 

自分の名前。

 

名付け親は父らしい、その名の意味は判らない。彼がどのような願いをこれに込めたのか、もはや本人に聞く術はないからだ。

 

ただ、大体の察しはつく。

 

「織斑 一夏・・・・・・。彼は、知っているのでしょうか?」

 

―――知りたい

 

知っているはずがないと解りながらも、彼に問わずにはいられない。

 

―――知らなくては

 

言の真意を、最後の微笑みの理由を。

 

気づけばセシリアの涙は止まり、蛇口から垂れ落ちる水滴の音がやけに大きく響いていた。




原作とは大分変わりました。今更ですかね?

まぁ、見ての通りフラグは立っていません。うちのイギリスはチョロインだなんて言わせません。

こういった感じにフラグをバキバキへし折っていこうと思います。

チョロインと言えば更識妹も相当チョロイですよね。やはり、イケメンだからですかね主人公が。こっちは黒いですけど

一応、次回でイギリス編は終了になります。

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