IS-Junk Collection-【再起動】   作:素品

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祝 お気に入り50 UA5000突破!

そして、大破した俺の携帯!!

何故だ!!!

ということで、決着回。


第九幕 The true true intention

二人の戦いは観客席の人間を、熱狂の渦へ巻き込んだ。

 

セシリアは自身のISを活かせる、ライフルによる長距離からの狙撃を続けている。蒼白い光芒が一夏を粉砕せんと疾走する。対して一夏の武装は近接用ブレードのみ。結果など火を見るより明らかだ。セシリアの前に無惨な様を晒すだろうと誰もが思った、が。

 

止まらない。

 

止まらないのだ。

 

ライフルが吐き出す弾は確実に白式にダメージを与えている。事実、彼の左肩の装甲は消し飛び一対の羽を模したスラスターも片方は煙を上げている。なのに一夏は特攻し続ける。途中で被弾しようと青を斬り飛ばすための進撃を止めようとはしない。

 

あまりにも荒々しく暴力的で向こう見ずな戦法に、最初の内は皆が呆れていた。だが、響く声はいつしか色づき、一つまた一つと数を増やして万雷の声援と変わっていく。

 

どれだけ不利な相手であろうと実力差が有ろうと、我武者羅に勝利しようとする様が一組の女子、しいては噂を聞きつけ興味本意に居合わせた全ての人間を魅了したのだ。

 

彼女たちには、この試合がそう見えていた。

 

◇ ◇ ◇

 

「ぎひっ、きひひひひひひひはははひゃははははははは!!」

 

唾液を飛ばし、凶笑を撒き散らしながら白が迫る。右手に持った刃は青い人形をその身に写し、空気を切り裂きながらに振るわれる。

 

「どうした どうした どうした どうした どうしたぁ!? 得物が下向いてんぞ!? そんなんで俺をヤれんのか!? ヤる気あんなら、ささっと俺を潰してみせろぉ!!!」

 

体を駆け巡る悪寒がセシリアの脳を鈍らせる。撃て、撃て、と気が焦るばかりに開始時より集中力もかなり落ちている。

 

それでも撃てば当たる。今まさに一発、白の右足に直撃した。そこだけ勢いが削がれ、空中にて前転するように体勢が崩れる。だが、

 

「ヒャッハァーーー!!」

 

止まらない。

 

止まってくれない。

 

どれだけ撃とうが、相手の男は止まらずに狂刃をセシリア目掛けて振り回す。

 

本当なら避けようとする。生物というのは自ら痛みを受け入れるようなことはしない。痛みとは警告だ。自身の生命の存続させるために、極力それを避けようとする。セシリアはそれを含めて撃つのだ。その絶対的な隙を予想し、狙い定め撃墜してきた。

 

「っ踊りなさい、ブルーティアーズ!」

 

青のスカート部位から四本の銃口が剥離し浮かび上がる。自身のISの名前の由縁ともなった自立機動型の特殊武装《ブルーティアーズ》。通称BIT(ビット)と呼称されるこれは、搭乗者の思考をトレースして動く移動砲台。

 

それが、一夏を取り囲み一斉に閃光が放たれ、白式のウィングスラスターの片方を完全に破壊する。それでも、

 

「ぃい声で啼けよ、オルコットォ!」

 

止まる筈がない。

 

推進力の急な半減で完全にバランスを崩し錐揉み状に回転しながらも、むしろ回転する勢いのままに残りのスラスターを噴かしてセシリアへ斬りかかる。

 

寸での所でライフルを割り込ませて斬撃を防ぎ唾ぜりの状態に持ち込むも、セシリアには最早余裕など欠片も有りはしなかった。

 

「俺をダンスに誘ってくれんのは嬉しいけどよ、生憎素人なんだよ。手取り足取りエスコートしてくれねぇと、ベッドより先に棺桶と寝ることになっちゃうぜ?」

 

耳まで引き裂くような笑みで顔を歪ませ、一夏はさらに力を加えてくる。金属が擦れ合う不快な音と火花が咲く中で、セシリアの頭に聞こえるのは千冬の言葉。

 

―――殺すことだけを考えろ。出来なければ、死ぬのはお前だ

 

「・・・・・・なんなんですの」

 

「あン?」

 

「あなたは一体、なんなんですの!?」

 

心が挫けそうだった。目の前の男は、大した経験も持たない成り上がりの素人だ。そんな相手に押されている。一方的に遊ばれている。それが我慢ならない。

 

「あなたみたいな人が、与えられるだけの人間がぁ・・・・・・・・・!」

 

掛かる力を右にいなし、その隙にセシリアは一夏の腹を一気に蹴り飛ばすと、すぐにライフルを構え直す。

 

狙う先に有るのはただ一人。もはやスコープさえ不要な距離で引き金が引かれた。

 

「落ちろぉーーーー!!」

 

一度に止まらず、幾度となく光が迸る。破壊の光が次々に一夏へ突き刺さり、そのまま地面へ墜落、盛大に砂が舞い上がり霧のように一夏の姿を隠した。

 

その光景に観客全てが息を呑む。オーバーキルと言える一瞬。さっきまでの猛攻が嘘だったかのようなアッサリとした幕切れに、誰もが息を吐く。

 

だが、試合終了のブザーは鳴らない。

 

「まさか、まだ・・・・?」

 

ISのハイパーセンサーをサーモグラフィに変え、四機のビットをそこに向けて放つ。

 

何故あれほどの弾雨の中で無事だったのか、疑問に思うことはあったが、それもこの試合が終われば意味のないこと。

 

未だに動かない標的に狙いを付け、ビットの銃口にエネルギーが集約され始める。

 

「これで終わ、っ!?」

 

霧の内から何かが飛び出した。

 

それを正しく視認する前に、セシリアの耳に一機のビットが破壊されたことを告げるコールが響く。

 

だが、それに意識がいかない。今度こそ脳が凍りつく。

 

突き刺すような敵意。ドス黒く纏わりつくような、対象を■■だけに向けられる圧倒的な意思が、セシリアの体に未知の恐怖を刻み付ける。

 

いつの間にかビットは残さず撃墜され、爆発音と衝撃波が彼女の元に訪れる頃には、一夏は完全に攻撃態勢を取り目の前の迫っていた。

 

もはや迎撃も回避も間に合わない絶対距離で、それは囁くように口を動かす。

 

「堕ちろ」

 

剣閃が瞬く。

 

一瞬の内に光った銀の軌跡が、セシリアにはひどく眩しく感じられた。

 

そう考えていられたのも、一瞬だった。

 

「いっ、ぎぁああああああああ!!?」

 

焼けた鉄を当てられたような痛みが、左肩から袈裟に走る。ISのダメージレベルが危険域に到達する程の一撃が、容赦なくセシリアを地面へと叩き落とす。

 

「グダグダうっせぇんだよ、オルコット」

 

痛みに身を捩り、ただ喘ぐしか出来ないセシリアに、一夏も地面に降り立ち、静かに言う。

 

「俺が何か聞く前に、テメェは何なんだよ。虚栄と見栄しか言えねぇ犬が一丁前に他人を語るんじゃねぇよ」

 

眈々と告げられるその言葉に、セシリアの体が僅かに反応する。

 

「やっぱり、無能の子供も無能か。お前の名前だって、明らかネーミングミスだろ。名前負けも甚だしい」

 

「・・・・・・うる、さい」

 

一夏のプレッシャーと痛みで、未だに満足な動きはしてくれない。

 

それでも、掠れるような声が漏れだした。

 

「じゃあ訊くけどよ、お前って、親のことをどう思ってるんだ? テメェに何もかも押し付けてくたばった不良債権に、そいつらの瞳と髪であることに何も感じねぇのか?」

 

体に力が入り始める。

 

「・・・・・・あの人たちは、確かに無能だったかも、しれません」

 

ギリギリと軋むような感覚を覚えながらも、セシリアは体を起こす。

 

「実の娘も見てくれない、一緒にいてくれない、相手にもしてくれない。最後には、わたくしを娘とも思っていなかったかもしれません。それでも―――」

 

太陽の光にブロンドの髪を輝かせ、青い瞳に確かな意思を持って一夏を睨む。

 

「わたくしは、二人を"愛しています"! 例え、周りがどう言おうが、この思いは変わりません!!」

 

セシリアの腰部のアーマーの突起が二本外れ、動き出す。

 

「ミサイルかよ・・・・・・!」

 

それを見て一夏は空中に向け回避行動を取る。

 

だが、スピードはミサイルの方が上なのは明白。徐々に迫る二本に溜め息混じりにブレードを構えるが、眼前で唐突に二本が"爆発した"。

 

「なっ、あぁ?」

 

あまりにも予想外なことに虚を突かれ、一夏の動きが止まった。

 

その時、炎の中から青が飛び出した。

 

「ぜぇああああああああ!!」

 

爆発の焔を裂きながら、唯一の近接武装『インターセプター』を振り上げ渾身の力で刃を一夏に降り下ろす。

 

それを見ながら一夏は反撃するでもなく、ただ笑う。

 

「なんだ、やればできんじゃねぇか」

 

鉄と鉄がぶつかり合う音が鳴ると同時に、セシリアの勝利を告げるブザーが響いた。

 

〈試合終了。勝者 セシリア・オルコット〉




未だ解らぬUAの意味。これって読んでもらった回数ということでしょうか。

あと、書いてて思ったんですが、この一夏って村正の雪車町 一蔵さんじゃね?

特に笑い方とか。性格なんか明らか雪車町よりだよ。

というか、雪車町さんって言って解る人いるんでしょうか。解る方は挙手!

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