アホばっかのバカ達へ~アホメンパラダイス~   作:黒やん

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明けましておめでとうございます。
今年は頑張って投稿出来るように頑張ります。











第53問

「ああ、そう言えば自己紹介をしてませんでしたね。アキくんの姉でケイくんの嫁の吉井玲と申します」

 

「一から十までボケ倒さないと気が済まんのかアンタは」

 

「はじめまして、佳史の許嫁の木下優子です。以後お見知りおきを」

 

「お前も場をややこしくしてんじゃねぇよアホが」

 

「「あいたっ!?」」

 

自己紹介で無駄に火花を散らせ始めたバカ二人を物理的に鎮圧する。こうしなければ止まらねぇから仕方ない。

他の奴らは玲さんの濃すぎるキャラにポカンとした表情で呆けていた。……まぁ、そりゃそうなるか。ある意味じゃFクラスの奴らより面倒だし。

 

「おい明久、何とかしろこの空気」

 

「僕!? いや僕関係ないよね!? 大体佳史と姉さんと木下さんのせいだよね!?」

 

「姉の不始末は弟の責任だ」

 

「そうですよアキくん。義兄の問題は義弟の問題です」

 

「アンタは後半日くらい黙ってろ!」

 

優子とにらみあっているのに油断も隙もない。ちゃっかり明久に荷物を渡してしまっているしな。

そしてようやく復活した奴らも自己紹介を返す。雄二は雄二で同類を見つけたせいか、普段より格段に明久に優しいな。……なんか、気持ち悪いが。

 

「佳史よ、知っていたのなら話してくれてもよかっただろうに」

 

「何がだ?」

 

「明久の姉上のことじゃ。ワシを初見で男と見抜いてくれた記念すべき二人目じゃったの」

 

若干普段より高めのテンションで秀吉が言うが……まぁ、何て言うかな。ドンマイ秀吉。あの駄姉は『明久に女子の友達なんかできるはずがない』って思ってるだけなんだ。多分瑞希と美波も男だと思ってそうだし。

 

「は、はじめまして。姫路瑞希と言います」

 

「よろしくお願いします、瑞希さん。……ん? 瑞希?」

 

「? どうかされましたか?」

 

「いえ……」

 

そう言いながらもじっと瑞希を見据える玲さん。もちろん俺達全員訳がわからず? マークを浮かべている。

しばらくそのままじっとしていたが、突然玲さんが思い出したと言わんばかりに右拳を左手の平に下方向へ打ち付けた。……どうでもいいがリアクションが古いな。

 

「ああ! そう言えば昔アキくんが小学生の頃ーー」

「シャラァァァァップ姉さん!!!」

「むぐっ」

 

今までに類を見ない俊敏さで明久が玲さんの口を塞ぐ。

 

「ぷはっ……何をするんですかアキくん。姉さんの口を塞ぐなんて……さては発情期ですね?」

 

「明久くん……」

「アキ……」

 

「違うからね! 僕人間! それにそこの二人もゴミを見るような目を止めて!?」

 

「しかし残念でしたねアキくん。姉さんは既にケイくんという心に決めた人がいますので、アキくんの想いには応えられません」

 

「何堂々と見当違いの方向に突き進んじゃってるの!? 違うからね!? 僕は姉さんが爆弾発言するのを防いだだけだから!」

 

「後、俺を巻き込むんじゃねぇよ」

 

「ふふ……ケイくん、照れなくてもいいんですよ?」

 

「それでも許嫁はアタシですから」

「駆け落ちって、一度は憧れるシチュエーションですよね」

 

「「…………」」

 

「いや、聞いてよ。僕の話」

 

ものすごく面倒くせぇ。

 

「まぁ、そんなどうでもいい話はいいとしてだ」

 

「「「「よくない!!」」」」

 

「早く勉強会始めるぞ。ただでさえ時間が無いんだからな」

 

雄二が今までの話を完全にぶった切って勉強の用意を始め出す。秀吉や康太も勝手知ったるとばかりにてきぱきと準備を進める。俺達は何度も明久の家に来たり泊まったりしているために、明久の家のどこに何があるかは大体把握しているのだ。

秀吉が机の上を片付けて、康太が台所から布巾を持って来て机を拭く。そして雄二がソファーを退けて空き部屋に放り込む。そのついでに俺と明久が全員分の座布団を用意する。それで準備は完了だ。

 

「「…………」」

 

「さて、じゃあ始めるか。……どうしたんだ姫路に島田。早く始めるぞ」

 

「全く……無駄な時間を取ったな」

 

「あはは……佳史と姉さんが絡むと大体こうなるからね。ほら、二人とも遠慮しなくてもいいから座りなよ」

 

そのまま俺達は普通に座って勉強の用意をするが、女子二人と玲さんは固まったままだ。何事かと思いながら首を傾げていると……

 

「えと、その……」

「あまりにも手際が良すぎるから……」

「アキくん、ケイくん。本当に大丈夫ですよね? イケナイ道に足を踏み入れてませんよね?」

 

この後、もちろん駄姉は説教(物理)しました。最後の方はなんか気持ち悪くなってました、まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……ん? なんだ、もう結構いい時間だな」

 

雄二のそんな言葉に時計を見ると、もう6時を少し過ぎていた。確かにそろそろ帰る頃合いか。

 

「じゃあ、そろそろ御開きにするか。晩飯も作らないといけねぇしな……」

 

「そうじゃのう。ワシらも母上が夕げの用意を始める時間帯じゃ」

 

「それなら、ぜひご一緒にお夕食はいかがですか? 皆さんがせっかくいらっしゃったことですし。まぁ、大したおもてなしはできませんが……」

 

解散ムードが漂っていた中に、台所へ布団で簀巻きにして転がしておいた玲さんからそんな声がかかる。

え? 何で簀巻きかって? 仕様がねぇだろ、勉強教えてるのにちょっかいかけてきてウザかったんだから。

 

「夕飯を……大丈夫なんですか?」

 

「ええ。偶々食材を多めに買っておりまして」

 

この駄姉、さては食材を買う量間違えたな。

まぁ、ご馳走してくれると言うのなら俺に否はないが……

 

「では、お言葉に甘えさせてもらうかのぅ」

「……お世話になる」

 

と、全員が首を縦に振ると、明久によって解放された玲さんがふらつきながらもリビングに戻り、明久に微笑んだ。

 

「ではアキくん、お願いしますね」

 

「うん、任せてよ姉さん」

 

『いや、玲さんじゃないのかよ!?』

 

俺以外の全員のツッコミが吉井家に響いた。

 

「あ、明久くんお料理出来たんですね……」

「まさかアキが料理出来るなんて……」

 

「お前らそこからか」

 

女子二人は論外。まだ明久が料理できない人間だと思い込んでいたらしい。まぁ、普段のこいつの食生活を見ていればわからなくはないが……

 

「あー……明久の(あね)……玲、さんは料理しないんですか?」

 

「え? 料理って家庭で一番立場の弱い人がやるんじゃないの?」

 

「我が家の方針で、そうなっております」

 

「明久……お前も苦労してたんだな……!」

 

「え!? 家だけなの!? おのれ母さん! よくも10年ちょいも僕を騙し続けてくれたな!?」

 

いや、気付けよ。中学生とか大体皆弁当だろうが。大体母親の手作りだろうが。朝急ぎすぎて中途半端に混ざったり片寄ったりして無駄に食欲がなくなる手作り弁当だろうが。

(*佳史による偏見です。よいこはお母さんに言ったりしないでね!)

 

そして雄二がいつになく明久に優しい。奴には雪乃さんというある意味瑞希にも劣らない必殺料理人がいるからな……

 

「はぁ……仕方ない。俺も手伝ってやる」

 

「俺もやろう」

 

「……一人じゃ大変」

 

「じ、じゃあ私も……」

 

『女子は座ってて!!!』

 

なんとか自分達の命は守れたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ムール貝にアサリ、そんでサフランか。こいつはパエリアの材料だな」

 

「そうだね。若干何であるのかわからないのもあるけどパエリアだ」

 

なんやかんやで台所に男子四人が集結する。まぁこの面子なら多分滅多なことにはならないだろう。

しかしパエリアか……

 

「悪い、俺はパエリアを作ったことがないんだ」

 

「そうなの? 佳史って大抵何でもできるイメージあったんだけど……」

「言われてみれば、和食以外はハンバーグくらいしか作ってるのは見たことねぇな」

「……その分、和食は絶品」

 

俺がそう言うと、何故か全員が驚いた顔をする。俺だって人間だぞ? 出来ないこともあるんだよ。

そして、明久は少し悩んだ後、俺に鍋を渡してきた。

 

「なら、佳史が炊いてみる? 僕もタイミングとかコツは教えるからさ」

 

「いいのか?」

 

「うん。佳史なら多分滅多なことにはならないだろうしね。まぁまずは下拵えしないとだけど」

 

言うが早いか、明久は俺と同じく野菜やイカを切り始める。そこからは俺達には特に会話は無く、リビングの女子+秀吉の会話が聞こえてきた。

 

『こちらが、アキくんとケイくんの7歳の頃のお風呂の写真です』

 

『小学生の頃ですね。懐かしいです……って、佳史くんこの時から明久くんと友達だったんですね』

 

『……やっぱりそうでしたか』

 

『え?』

 

『いえ、何でもありません。こちらがアキくんとケイくんが10歳の頃のお風呂の写真です』

 

『ふむ、佳史が珍しく眠りこけているのぅ……って姉上!? 鼻血! 鼻血がもう凄まじいことになっておるぞい!?』

 

『我が生涯に……一片の、悔い……無し!!』

 

『そんなわけなかろう!? 姉上カムバーック!!』

 

バカしかいねぇ……!!

 

「佳史、落ち着こう。子供の頃だし大丈夫だよ。僕らはちゃんと料理に集中しないと」

 

「わかってる。流石に包丁放り出したりはしない」

 

明久と声を掛け合って何とか自分を抑える。あのバカ共は後で説教だ。とりあえず早く晩飯をーー

 

『そしてこちらが昨日のアキくんのお風呂の写真になります』

 

『『ゴクリ……』』

 

「この駄姉がぁー!! さては着替えか!? 着替えを持って来た時かぁーー!!」

 

とうとう我慢の限界が来た明久が台所を飛び出して行こうとするが、雄二と俺が両肩を押さえて止める。

 

「放して二人とも! 僕はあの駄姉の暴挙を止めなくちゃいけないんだ!」

 

「バカ野郎、料理をナメるな」

「包丁を抜き身のまま置いていくのはマナー違反だろうが」

 

そのまま暴れる明久を抑えていると、リビングから更に会話が聞こえてくる。

 

『ふ、ふふ……中々やるわね吉井くんのお姉さん……! でもね、アタシには最後の切り札が残ってるのよ……!』

 

『切り札、ですか? 今となっては負け犬の遠吠えとしか思えませんね』

 

『その余裕もここまでよ! 刮目せよ、これがアタシの切り札……昨日の佳史のお風呂の写真だぁー!!』

 

『ゴクリ……!!』

 

「このボケ共がぁぁぁぁ!!」

 

もう我慢出来るか! この色ボケのアホ共が! 今日こそは根性叩き直してやる!! 月夜ばかりと思うなよ!!?

 

『ちょっ、佳史落ち着……ってもういない!? 流石に速すぎるよね!?」

 

『あー、もう無理だな。明久、大人しく下拵えしとけ』

 

『なんかしっくりこないなぁ……』

 

向こう側で何か言っているが、今は知ったこっちゃない!

 

「どこで撮ったんだそんなもん! きっちり鍵は締めたはずだ!」

 

「愛の力よ」

 

「どや顔すんな鬱陶しい! 没収だ没収!」

 

「ああ!? 我が家の家宝が!?」

 

「姉上……勝手に家宝にするのはやめてほしいのじゃ……」

 

秀吉が遠い目をしながら呟くのと同時に、写真は破り捨てる。優子が絶望の叫びと共に崩れ落ちた。

 

「け、ケイくん……」

 

「ああ!?」

 

「あの……その……大きいですね!」

 

「うるさいんだよボケぇぇぇぇぇ!!」

 

見たのか!? まさか見たのかコノヤロー!

 

とんでもない爆弾発言をした駄姉を片手絞めで絞める。もはや説教とかそんなレベルじゃない。身体に叩き込むしか対処法は残されていない!

 

「ケイくん! ケイくん!」

 

「ギブするなら今すぐさっき見たものを忘れろ駄姉!」

 

「……………………」

 

絞めが効いてきたのか、顔を紅潮させて息が荒くなる駄姉。そろそろ危ないかと仕方なく手を放そうとすると、何故か玲さんが放そうとする手を抑えていた。

 

「…………もっと、お願いします……」

 

「……………」

 

俺は黙って簀巻きを一つ作り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「後はゆっくり炊くだけだよ」

 

「なるほどな……」

 

駄姉を黙らせた後、明久に教わりながらパエリアを作る。他の奴らの助けもあってか、何事もなく出来上がりそうだ。

 

『あの、玲さん? 大丈夫ですか?』

 

『……危なかったです。危うく新しい扉を開いてしまうところでした』

 

『本当にギリギリね……』

 

 

『あ、姉上……?』

『…………』

 

他のことは無視しながら作業を進める。フライパン(っぽい形のやつ。パエリア専用らしい)を使って米を炊くのは初めてだが、土鍋と同じ要領でいいのか?

 

そんなことを考えながらしばらく経ち、明久の許可が出たので火を止める。さて、そこからふたを開けると……

 

「……パエ……リア……?」

 

『そんなバカな』

 

出てきたのは、実に見事なアサリの炊き込みご飯であった。

 

 

 

その後は玲さんが明久のエロ本をサーチしてきたり、玲さんと優子が暴走したり、瑞希と美波がちょっとした女の戦いを繰り広げたり、玲さんを簀巻きにして天井に吊り下げたり、玲さんが実はハーバード出だと皆が知ったり、優子をてるてる坊主にしてベランダに吊り下げたりと色々あったが、特に支障なく勉強会は終わったのだった。


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