アホばっかのバカ達へ~アホメンパラダイス~   作:黒やん

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第35問

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!」

 

凄い勢いで僕らの部屋の扉が開け放たれ、女子と簀 巻きにされた将くんが入ってきた

 

「な、何事じゃ!?」

 

「木下はこっちへ!そっちのバカ三人とイケメン一 人は抵抗を止めなさい!」

 

「バカだってさ雄二。ついに僕以外はバカ扱いにな ったんだね」

 

「バカはお前だ明久。イケメンは俺に決まってんだ ろ」

 

「それ以前に何故お主らは咄嗟の判断で窓に向かえ るのじゃ…?」

 

そこは今問題じゃない!

 

「…で?団体さんが俺達に何の用だ」

 

一人だけ窓に向かっていなかった佳史が女子の先頭 にいた小山さんに聞く

 

その間に僕達も窓から手を離して女子勢に向き合う

 

「まぁ雑賀くんがこんなことするとは思えないんだ けど…」

 

「だから何をだよ」

 

雄二が面倒くさそうに言い捨てる

 

「よくもまぁシラを切れるものね。あなた達が犯人 だってことくらいすぐにわかるというのに」

 

何で僕達と佳史で扱いがこんなに違うんだろうか

 

「犯人ってなんのことさ?」

 

「コレのことよ」

 

小山さんの手には何か小さな機械が乗せられていた

 

「……CCDカメラと小型集音マイク」

 

「女子風呂の脱衣所に設置されていたの」

 

「えぇっ!?それって盗撮じゃないか!」

 

「…それで俺達がその犯人だ、って事か?」

 

佳史がそう言うと木下さんが前に出てくる

 

「ええ、そうよ。佳史達以外に誰がこんな事をする って言うの?」

 

いっぱいいると思う。主に異端審問会の奴らとか

 

「なる程な……下らない。行くぞ秀吉」

 

そのままスタスタと出口のドアに向かう佳史

 

「待ちなさい。逃げようったってそうはいかないわ よ。今回はアタシも怒ってるんだから」

 

そしてその腕を掴んだ木下さんが―――

 

次の瞬間、地面に叩き伏せられていた

 

『…………え?』

 

その場にいた全員が固まる。そりゃそうだ。佳史は めったに自分から手を出さない。出すとしても自分 の身や誰かを守る時くらいだ

 

その佳史が自分から木下さんに手を出した

 

これは珍しいどころか初めてと言ってもいいくらい の出来事だ

 

「…あまり調子に乗るなよ。小娘共」

 

佳史が周りを睨む。ただそれだけなのに空気が凍り つくような感じがした

 

「俺達以外にそんなことをする奴がいない?よく言 えたな。証拠もそれを証明する手段も無いんだろう ?そんなことで犯人を断定できるならこの世に裁判 なんか必要ないな。被害者の独断と偏見で犯人が決 まるんだからな」

 

「そんなことは…」

 

「無いとは言わせんぞ。現に今お前らがやっている ことはそうなんだからな。明久達がお人好しだから 特に騒ぎになってないが…お前らのやっていること は立派な犯罪だ」

 

「なっ!?…私達が何の犯罪を「名誉毀損。俺が何 も言わなかったら更に暴行罪、殺人未遂、拷問禁止 法違反…後脅迫か」

 

「脅迫?」

 

「自白の強要。これを脅迫と言わずに何て言うんだ ?」

 

『………』

 

ついに誰も喋れなくなる

 

「…本当に、お前には失望したな

 

じゃあな―

 

――“木下”」

 

「!!」

 

「佳史!?」

 

「……行くぞ秀吉」

 

「ま、待つのじゃ!」

 

凍りついた空気と、目から光の消えた木下さんを残 して、佳史は部屋を出て行った

 

――――――

 

「佳史よ、少し言い過ぎでは…」

 

「だったらあのまま大人しく殴られてろってか?」

 

「そうは言っておらぬ。姉上のことじゃ」

 

「…知らねぇよ。ただ心底見損なっただけだ」

 

「しかし…」

 

「しつこいぞ。兎に角、あっちが何らかのリアクシ ョンを取るまでこっちは絶対に動かない」

 

「…はぁ(こうなった佳史には何を言っても無駄じ ゃの。まぁ…完全に見捨てた訳ではないからよしと しておくのじゃ)」

 

――――――

 

「何だか今日はいつも以上に命の危険が多いような 気がするよ…」

 

「俺なんて部屋でゴロゴロしてたらいきなり縛り上 げられたんだぞ…」

 

結局あの後、逆ギレした女子勢に拷問された

 

「……見つかるようなヘマはしないのに」

 

「全くだ。覗くなら堂々と肉眼で目に焼き付けるっ てんだ」

 

「君らは一回本気の拷問を受けてもいいと思う」

 

僕がそう言うと死ぬほど意外そうな顔をされた。む しろその表情が出来る事が意外だよ

 

そういえば雄二は無事なんだろうか。返事がないし 。さっきは霧島さんに随分痛めつけられたみたいだ し

 

「………上等じゃねぇか。佳史があそこまで言っても ここまでされたんだ。本当にやってやろうじゃねぇ か」

 

雄二の怒りを孕んだ低い声が響く。何か火がついた らしい

 

「まさか本当にって…」

 

「…やるのか?坂本」

 

「ああ…あっちがそう来るのなら、本当に覗いてや ろうじゃねぇか!」

 

よりによってコイツは何て事を言い出すんだろう。 こんな警戒されているタイミングで覗きに行くなん て頭が悪いにも程がある

 

「…つーか坂本、そんなに代表の裸がみたいならお 前なら頼めばイケるんじゃないか?」

 

「……できれば記録に残して欲しい」

 

「誰が見せるか!」

 

見たいってことは否定しないんだ…

 

「…話が逸れたな。犯人を探すためだ」

 

「……さっきのカメラとマイクは脅迫犯の物と同じ だった」

 

「マジかムッツリーニ!」

 

「……間違いない」

 

ムッツリーニが断言するんだ。こういう物に関して は間違いない

 

ただ…

 

「つまり、どういう事?」

 

「しょーゆーこと」

 

今なら「カッと来てやった」っていう犯人の気持ち がよくわかる

 

「ネタはいらん。こういうことだ」

 

雄二にしては珍しく素直に図に書いて説明してくれ た(原作三巻P59参照)

 

「なる程、よくわかったよ。つまり火傷の痕がある 人を捕まえたらみんなが幸せなんだね!」

 

「間違っちゃいないが…何だかな」

 

「気にするな。兎に角、これでもう迷う余地はない な」

 

「そうだね!やってやろう!」

 

覗きなんて褒められたことじゃないけど、この際仕 方がない

 

「しかし坂本は代表の事となるとやる気が凄いな」

 

確かに。普段とは雲泥の差だ

 

「…実はこの前、いつものように翔子にクスリをか がされて気を失ったんだが」

 

「お前よくそれで代表のこと好きでいれたな」

 

「目が覚めたらヤツの家に拉致されていたんだ」

 

「佳史と真逆だな。優子は毎日佳史に奇襲をかけて は返り討ちにされているというのに」

 

「霧島さんは一途だなぁ」

 

「いや、そういう問題じゃないと思う。…それで? 両親に紹介でもされたのか?」

 

「いや、そうじゃない。ただ、ヤツの家に…」

 

部屋でも用意されてたのかな?今の雄二ならそれく らいされていても不思議はない

 

「―俺と翔子の別邸が建てられていたんだ」

 

チェックメイトだね

 

「どんだけデカいんだよ、代表の家…」

 

「あんな台詞を聞かれたら、間違いなく俺は、俺の 未来は…!」

 

最近はめっきり見なくなった雄二の壊れた姿を、こ んな所でまた見るハメになるとは

 

「とにかくさっさと行こう。後40分で女子の入浴 時間が終わっちまう」

 

「……女子風呂の場所なら確認済み」

 

ムッツリーニと将がスタスタと部屋を出て行く。そ の足取りに迷いは無い

 

……本当に君達が犯人じゃないよね?信じていいん だよね?

 

「よし。雄二起きて!覗きに行くよ!」

 

「ぐふっ!――はっ!」

 

雄二を起こして、僕達は女子風呂を覗きに向かった

 

……そして、結果的に僕達はよりによって廊下で正 座しながら英語の反省文を書かされる羽目になった

 

 


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