ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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さて、ここまで結構早いペースできましたが、次からはガクっと話の進み具合が落ちます。
ノロノロやってくのが作者の本来のペースなので。
ここまでは早めにやっとかないと話が進まなくなってしまうので頑張って削ってました。
次からは遠慮なく盛り込んじゃうぞ?


8話

 まったく、飛ばすのはいいけど拾いに来いよな……。

 俺は殴り飛ばされたであろう堕天使――レイナーレを担いで歩いていた。

 アンラ・マンユとの一件の後に近くに落ちてきたもんだからついでに拾ったわけだ。

「……カイト先輩。無事だったんですね」

 少し歩くと、正面から小猫が歩いてきていた。

「おう。今回は様子見って感じで逃げられたってところかな」

「そうですか。それで……その堕天使は」

「ああ、落ちてきたもんだから拾っておいた。いる?」

 小猫は一つ頷いた。

「そう。じゃあみんなのところに運べばいいのかな?」

「はい。それじゃあ私が持っていき――」

「いいよ。俺が運んでくから。変わりに案内頼めるかな。俺みんなの居場所知らないんだよね」

 小猫は少しの間無言になり、一度だけ俺に視線を向けると、後ろを向いて歩き始めた。

「……ついて来てください」

「了解。よろしく頼むよ」

 気のせいか? 小猫の顔、なんか赤かったような……。

 

「部長、持ってきてもらいました」

 小猫に案内された先にはみんなが揃っていた。

 おいおい、祐斗もイッセーもボロボロだな。それに、金髪の女の子? あの子がアーシアか。

 神器を抜かれてるな……。

 いや、考えるのは後にしよう。

「部長、堕天使です」

 俺はレイナーレを床に降ろした。

「……カイト、あなたも来ていたのは祐斗から聞いたけど、どこに行っていたの?」

 ああ、祐斗がさっきまでの間に話しておいてくれたのか。

「ちょっと神父以外の相手が居たんで、そっちの足止めというか、話をしてきたというか?」

「他にも潜んでいた敵がいたってことかしら?」

 おお! いい感じに勘違いしてくれた!

「そ、そうですね。ちょっと増援が来ないように邪魔してました! 俺が適任だと思ったので!」

 俺は瞬時に祐斗、イッセー、小猫に視線を送る。

 頼む、あの闇のことはまだ誤魔化しておきたい。

「……」

 三人は一瞬迷う素振りを見せたが、この場では黙っていてくれた。

「わかったわ。さて、それじゃあそろそろ起きてもらいましょうか。朱乃」

「はい」

 朱乃さんは手を上へかざす。すると、宙に水らしきものが生まれてくる。

 魔力か。

 宙に生まれた水の塊を朱乃さんは倒れているレイナーレへ被せる。

 水音のあと、咳き込みながらレイナーレが目を覚ました。

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

「……グレモリー一族の娘か……」

「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お見知りおきを」

 笑顔で言い渡す部長を、レイナーレは嘲笑う。

「……してやったりと思っているんでしょうけど、残念。今回の計画は上には内緒ではあるけれど、私に同調し、協力してくれている堕天使もいるわ。私が危うくなったとき、彼らは私を――」

「彼らは助けに来ないわ」

 レイナーレの言葉を遮り、部長はハッキリと言う。

「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト、彼らは私が消し飛ばしたから」

「嘘よ!」

 レイナーレは部長の言葉を強く否定する。

 部長は懐から三枚の黒い羽を取り出した。

「これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけでもわかるわね?」

 取り出された羽を見て、レイナーレの表情が一気に曇る。

 部長。あなたもイッセーのために動いていたんですね。用事というのもそれか。

 

 

「それじゃあ、部長は堕天使三人から計画を聞いて、更に三人とも消し去ってきたと」

 イッセーが弱いのはわかっているが、それでもボロボロになって一人を殴れただけだろ?

 それなのに全く疲労した様子も見せないで消し去ってくるとは。

「部長ってば予想以上に凄いですね」

 俺の少し後ろでは、部長のしてくれていたことに感動でもしたのか、イッセーが泣きそうな表情をしていた。

「その一撃を食らえばどんな者でも消し飛ばされる。滅亡の力を宿した公爵家のご令嬢。部長は若い悪魔のなかでも天才と呼ばれるほどの実力の持ち主ですからね」

 祐斗が褒め称えるように言う。

「別名『紅髪の滅殺姫』と呼ばれるほどの方なのですよ?」

 うふふと笑う朱乃さん。

 いや、笑わないでくださいよ。むしろ物騒な二つ名聞いて恐ろしくなったわ!

 それにしても、今日は発見の多い日だな。

 『龍の手』だと思ってたんだけどなぁ。いやいや、もっと強大なものだったか。

 部長もそれに気づいたのか、イッセーの左手――篭手を見ているようだ。

「……赤い龍。この間までこんな紋章はなかったはず……。そう、そういうことなのね。イッセーが堕天使に勝てた最大の理由がわかったわ。堕天使レイナーレ。この子、兵藤一誠の神器はただの神器じゃないわ。それがあなたの敗因よ」

 部長の言葉に、レイナーレは怪訝そうに片方の眉を吊り上げる。

 そうか、あいつは気づかないままイッセーと戦ったってことか。

「――『赤龍帝の篭手』、神器のなかでもレア中のレア。篭手に浮かんでいる赤い龍の紋章がその証拠。あなたでも名前くらいは知っているでしょう?」

 レイナーレは驚愕の表情を浮かべる。

「ブ、ブーステッド・ギア……。『神滅具』のひとつ……。一時的にとはいえ、魔王や神すら超える力が得られるという……あの忌まわしき神器がこんな子供の手に宿っていたというの!?」

「言い伝え通りなら、人間界の時間で十秒ごとに持ち主の力を倍にしていくのが『赤龍帝の篭手』の能力。時間が経てば経つほど力は倍になり、いずれは上級悪魔や堕天使の幹部クラスに届くようになる。それに極めれば、神を屠ることだってできると言われている」

 これは俺の中にある知識からだ。

 まさかあんな弱い人間に宿ることがあるなんてな。

 今までの所有者の中でも最弱だろうな。死にたくなきゃ頑張れよ、イッセー……。

 

 

「じゃあ、最後のお勤めをしようかしらね」

 途端に部長の目が鋭くなる。

 いままでイッセーとの感動的でもある場面だったのに。

「消えてもらうわ、堕天使さん」

 部長はレイナーレに近づきそう言い放った。

 冷たく、殺意のこもった一言だ。

「じょ、冗談じゃないわ! こ、この癒しの力はアザゼルさまとシェムハザさまに――」

「愛のために生きるのもいいわね。でも、あなたはあまりにも薄汚れている。とてもエレガントではないわ。そういうの、私は許せない」

 ……女の人って、怖いんだね……。

 俺、もっと家に来る奴らに優しくしよう。うん、ソレガイイナ。

「俺、参上」

 部長がレイナーレに手を向けかけたとき、穴の空いた壁から人影が現れる。

 白髪……。教会に入ったとき真っ先に出会った神父――フリードか!

「わーお! 俺の上司がチョーピンチくせぇ! どうしたものか!」

 レイナーレが叫ぶ。

「助けなさい! 私を助ければ褒美でも何でもあげるわ!」

 なっ! させるわけないだろ!

「おい、そこの神父! おまえここにいる全員相手にして生き残れるとでも思ってるか?」

「そうそう、俺的にもそれ思ってたよ。堕天使さまには悪いけど、ここは退こうかねぇ。クズの悪魔に圧倒されてる上司なんか願い下げだしぃ? というわけなんでぇ、俺ってば今すぐここから出て行きますわ!」

 レイナーレが絶望的な表情を浮かべる。

 だがフリードはそれを全く意に介さずイッセーへと満面の笑みを浮かべた。

「イッセーくん、イッセーくん。キミ、素敵な能力持ってたのね。次出会ったら、ロマンチックな殺し合いをしようぜ?」

 それだけ言い残して、フリードは去っていった。

「おまえも大変な変態に目をつけられたな、イッセー」

 正直、俺はまきこまれなくてよかったよ。

 マジセーフ。

 でも、あの台詞的にどうせまたどこまで会うんだろうな……。

「さて、下僕にも捨てられた堕天使レイナーレ。哀れね」

 部長の声音には、同情の念がまったく感じられない。

 レイナーレはさっきからガクガクと震えている。

 そのレイナーレの瞳に、イッセーの姿が映ると、途端に媚びたような目つきになる。

「イッセーくん! 私を助けて! この悪魔が私を殺そうとしているの! 私、あなたのことが大好きよ! 愛してる! だから、一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

 このクソヤロウ……! 

 レイナーレとイッセーの関係を聞いていた俺は、怒りがこみ上げてきたのがわかった。

 こいつはイッセーをなんだと思っているんだ!

「……この――」

 イッセーに万が一にもなことがある前に殺すべきだ。

 俺は<魔王殺しの聖剣>を手に携える。

 あとはレイナーレの前までいって、断罪してやるよ。

 だが、俺が動くより先に、イッセーが言葉を紡いだ。

「グッバイ。俺の恋。部長、もう限界っス……。頼みます……」

 それを聞いた途端、レイナーレは表情を凍らせた。

 俺は静かに、剣を消した。もう、俺の出番は必要ないようだ。

「……私のかわいい下僕に言い寄るな。消し飛べ」

 部長から放たれた魔力の一撃により、堕天使は跡形もなく吹き飛んだ。

 その後には、宙に淡い光が残った。

 神器……。アーシアって子のか。

 俺はそれを手に取り、イッセーに渡した。

 こいつが頑張ったのはあの子のためだ。なら、イッセーに渡すのがスジだろう。

 イッセーは黙って神器を見ていたが、しだいに口を開いた。

「……部長、みんな、俺とアーシアのために本当にありがとうございました。で、でも、せっかく協力してくれたけど、アーシアは……」

 イッセーは悲しみに顔を歪めていた。

 ただ、部長だけは気に留めた風もなく、イッセーから神器を受け取ってた。

 悪魔か! いや、悪魔なんだけどさ。

「イッセー、これ、なんだと思う?」

 部長がポケットから紅いチェスの駒を取り出す。

 そうか、そういうことか。部長のすることが、俺でも理解できた。

 だから神器を持ってきたわけか。

「それは?」

「これはね、イッセー。『僧侶』の駒よ」

「あなたに説明してなかったわね。爵位持ちの悪魔が手にできる駒の数は、『兵士』が八つ、『騎士』『僧侶』がそれぞれ二つずつ、『女王』がひとつの計十五体なの。私は『僧侶』の駒をひとつ使ってしまっているけれど、もうひとつだけ『僧侶』の駒があるわ」

 そう言い、眠るように死んでいるアーシアの胸に紅い駒を置く。

 そしてアーシアを悪魔に転生させた。

 その際、駒が紅い光を発して、アーシアの胸に沈んでいったが、同時に神器も淡い緑色の光を発しながら彼女の身体に入っていった。

 そしてしばらくすると、アーシアの瞼が開き始めた。

「あれ?」

 彼女は不思議そうにしていた。一度死んだはずなのだ。それは不思議だろうさ。

「悪魔をも回復させるその子の力が欲しかったからこそ、私は転生させたわ。ふふふ、イッセー、あとはあなたが守ってあげなさい」

 部長ってやっぱ、優しいよな。

 視界の端では、上半身を起こしたアーシアをイッセーが抱きしめていた。

 ……どうやら、今日の一件はこれで終わりのようだ。

 

 

「ただいまー」

 いまが何時かわからないが、帰ってくる間も、とても眠かった。それに身体がだるい……。

 アンラ・マンユと会ったせいで、体力も精神力もごっそり持ってかれたみたいだ。

「おかえりにゃん、ってどうしたの? 大分疲れてるみたいにゃー」

「呑気に、言ってくんなよ……。これでも、結構……限界……」

 俺は足から力が抜け黒歌によりかかる形で倒れこんだ。

「ちょ、ちょっと!? ……もう、しかたないにゃあ」

 俺が意識を保てたのはここまでだった。

 でも、俺は柔らかい感触が心地いいのを感じた。それと、頭を撫でられているような感覚があった気がした。もしかしたら、同居人が起きて来ていたのかもしれない。

 




カイトくん出番ないよ!
どういうことかな作者! 


……すいません私ですよ私! カイトくんの出番ないのは仕方なかったんです。
次の話からはちゃんと作ります。

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