ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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6話

 目の前にはイリヤとクロの二人。

「俺の手伝いをしに来たってことか? それじゃあやっぱりキミたちがガブリエルさんが感じた魔力の持ち主ってことだな」

 やっぱり、俺の予想は当たっていたってわけか。

 あの日は知らないフリをしたけど、まさかこの子たちから俺に話してくるとは。

「ごめんなさいね。わたしたちとしても、無関係を装いたかったの」

「なのにお手伝いか。無関係で通したかったなら、しない方がいいぞ。といっても、今回動く気はさらさら無いがな」

 兵藤たちならだいじょうぶだろう。夏休みの修行は伊達じゃない。

 オーフィスから蛇を貰ったディオドラと言えど、返り討ちが関の山さ。だから余計に行く理由がない。

「別にわたしはどうでもよかったんだけど。イリヤが気にしてるから仕方なくね」

「わ、私だけせいにするつもり!?」

『イリヤさんが最初に言い出したのは事実ですよぉ』

「うぅ……。もう! いいからはやく行動に移そう!」

「そうやって逃げる癖直しなさいよね」

 仲よさそうなことで。

 クロがお姉ちゃんってとこかな。

「というわけだから、お兄さんに協力するわけだけど。どうしたいの?」

「その前に確認させてくれ。二人とも戦えるのか?」

「その点なら任せて」

「そうか……」

 さて、ここで問題だ。俺はどうしたい? 

 いやいや、さっきまで行く気ゼロだったじゃないですか。そもそも行く方法がない。最初から詰み気味だ。行動を起こす方法がないのなら、終わるのをただ待てばいい。

 なにもしないで、今回のことは目を瞑ればいいじゃないか。

「なにも解決できなかったとしても、それが正解のときもある。正しいことなんて、誰にもわからないさ」

「え?」

「協力してくれると言った手前悪いが、することはなにもない。そもそも、仲間だった奴には協力しなくていいと言われたばかりだ。必要じゃないと言われたばかりだ。そして俺も、助けはしないと伝えたばかりだ。だからこれから先、俺が動くのは自分のためにだけだ。そして俺は、仲間を取り戻す」

「仲間を、取り戻す?」

「ああ。ある相手から取り戻さなきゃいけない仲間がいるんだ。相手は強大だけど、やらなきゃいけない」

 イリヤとクロが顔を見合わせる。鏡みたいだ。

「わたしたちも、大事なお姫さまを助けないといけない。イリヤの言った通り、わたしたちと同じってことね」

「同じ?」

「私たちも、友達を助けるために戦う相手がいるの。だから、はやく戻らないと」

「……なら、そっちに行ってやれよ。俺のことはいいからさ」

 仲間が待っているというなら、はやく助けにいってやるべきだ。俺なんかに構っている余裕はないだろ。

「もちろん助けには行く。でもそれは、お兄さんを手伝ってから」

「だから俺は――」

「なにとなにを天秤にかけてるのか知らないけど、それはかける必要があるの?」

「本当にしたいことはなに? 周りのことは関係なしに、いましたいことはなに?」

 クロとイリヤに連続で言われてしまう。

 ……。周りのことは関係なしにしたいこと? 天秤にかけた? でもそれはかける必要がない?

 兵藤との会話も、最近の部活の様子も関係なしに、俺がしたいこと……。

 ――そんなこと、決まっている。

 どれだけ嘘で塗り固めようと、自分を納得させようと正当化しても、覆らない想いといものはある。

 でも、それを言うのはなんだからしくないと思えた。

「助けるさ。……いつだって、助けるさ。仲間になったんだ。例えあいつらが俺を必要としていなくても、協力しなくていいと言われても。俺が助けたいと思ったら助けるだけだ。変に意地を張ってたのは俺か……。ああ、ああわかったよ。俺は助けに行く」

「決まった?」

「ああ。悪いな。まさか小学生程度の子供に教えられるとはな。悪いけど俺の仲間であるイッセーたちの救援に向かう。冥界――いや、次元の狭間か。そこにあるゲームフィールドに跳ぶ必要があるわけだが。残念ながら俺にその術はない……」

 今度、いく術くらい作っとくか。きっとこれからも使うだろ。この調子ならさ。

「ゲームフィールド? よくわからないけど、そこまで跳べればいいの?」

「あ、ああ。でもなクロ。悪いがその手段はいまここにない」

「なら転移するだけよ」

 転移するだけってはい? さらっと言われたけど、転移できるのかよ。

「ちょっと魔力使い過ぎちゃうから、あとでイリナから貰わないとね」

「え、ええ……!?」

『あはー、録画の準備ですね!』

「撮らなくていいから!」

「なんだ、魔力が必要なのか? ならあとで俺からもやるよ。好きなだけやるからさ。そこらへんの強者よりあると思うよ」

 俺の発言に場が静まり返った。な、なんだ?

『カイトさんってば大胆ですねぇ』

 ステッキめ。なんかイラつく。

 というかどういう意味だそれは。

「ふうん。お兄さんもくれるんだ? 女の子からしか貰ってこなかったけど、お兄さんならいいかも。うん、じゃあ約束ね」

「はいよ。じゃあ転移、頼むよ」

「任せて」

 そんな普通の会話が続く中、イリヤだけは「なにがあっても知らないから。私はなにも見てないから」とブツブツ呟いていた。

 もうなにがなんだか……。

 クロが描く魔法陣は見たことが無い。変わった魔方陣だ。描くといっても、描いているわけではなく、構築しているに近い。

 そして、魔方陣は光りだす。

「それじゃあ、転移先をイメージして」

「その場所、強固な結界で入るのを拒まれてるって話なんだけど」

「だいじょうぶ。わたしたちがここにいる時点で、ある程度の望みは叶えられる」

 意味がわからん。いや、気にするのも無駄なのだろう。

 そうやって疑って今回は失敗したんだ。もう俺にできるのは、信じて信じて信じぬくくらいのことだけだ。

「わかったよ。それじゃあ、頼む」

「ええ」

『久々ですねぇ、この感じ』

「ルビー、ちょっと黙っててね」

『それだと私空気ですね』

「……いいから黙ってようね」

 空気ぶち壊しだね。うん、もういいよ。俺のこういう扱いには慣れました!

「行くわよ」

 魔方陣が光を放ち、転移を始めた――。

 それじゃあ、イッセーたちを素直に助けに来ましたなんて言えないから、建前として、オーフィスから蛇を貰ったディオドラくんをぶっ潰しに行きますか。

 オーフィスから貰うとか、あのキモイ悪魔許さねぇ。なにがなんでも消してやる!

 だから決して、イッセーたちに協力するんじゃない。俺は俺のしたいことのために、結果的にイッセーたちを救ってしまっても、それなら問題は無いだろう。

 

 

 

 

 

 光が収束し、景色が見え始める。

 一定間隔で太い柱が並んでいる。下は石造りだ。神殿も、少し遠い位置にあるが見えるぞ。

「ここがゲームステージだと言うなら、転移は成功だな」

「面白そうなところね」

「なんか豪華」

 思い思いに感想を言ってくが、そう呑気にしてられない。

「ここにはいま、テロ組織が大勢いる。あまり離れずについてきてくれ」

 本当はもう帰ってもらいたいのだが、それはそれで危険を伴うだろう。連れていって方が安心だ。

 それだけの理由が、眼前にある。

「サーゼクスさん、アザゼル、タンニーン! 救援に来てやったぜ!」

「カイトか! こいつはいい。イッセーたちは宮殿の中だ。そっちに向かってくれ……なんだそのちびっ子どもは」

 アザゼルが指示を出すのをやめ、二人を見る。

「今回ここまで送ってくれた協力者だ。子供だと思って見てたけど、その辺の悪魔より強いかもしれないぞ。ここの結界を素通りできたのも、この子らのおかげだ」

「ほお……」

 興味あり、かな? 

「それで、悪いけど二人のこと頼むよ。流石にこれ以上連れまわすのは危険だからさ。三人が一緒に居てくれれば安全だろ」

「そんなことしてもらわなくてもわたしたちは自分のことくらい守れるわ」

 クロからの反論。

「そう言うな。このおっさんたちは強いんだからさ」

「おっさんと言うなおっさんと」

「ははは。カイトくん、元気そうで良かった。リアスから状況を聞いたときはダメかと思ったよ」

 あらら、サーゼクスさんは知ってるのね。それは心配かけて申し訳ない。

「もうだいじょうぶです。その一件も、この子らのおかげで解決しましたから」

「そうか。では改めて、リアスたちを頼む」

「はい。代わりにこの二人を頼みます」

 サーゼクスさんが頷く。それに続くように、仕方なくだぞ、と言わんばかりにアザゼルが首を縦に振った。タンニーンは見るまでもなく、すでに二人を守るように立っていた。

 さって、それじゃあ行きますか。

 あたりに突っ立ってる旧魔王派の悪魔を潰しながら行こうと考え、足を踏み出した瞬間、声がかかった。

「カイト、どうしてここにいる?」

 俺の足は一歩目を踏み出せずにもとの位置に戻る。

 そこには、いままで俺の家にいてくれ奴が立っていた。腰まである黒髪の小柄な少女。黒いワンピースを身に着け、細い四肢を覗かせる。

「そうか。今回はおまえも出張ってきてたのか。ここでの再会は予想外だったな」

 次会うときは、もっと先だと思っていたのに。こんなにはやくだったとは。

「なあ、オーフィス――」

 




ご都合展開、そして説明不足であろうこと、すいません!
話の途中、どこかで捕捉説明はします!

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