ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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2話

<イッセーSide>

 それはある日の部活中に起きたことだ。

「私たちがカイトに頼りっぱなし?」

「……はい。先輩が入部してからずっと、少し頼りにしすぎている部分がある気がします」

 すべてはこの会話から始まった。

 

 

 カイトがまだ部室に来ていないときに始まった会話だが、そう言われると確かにその通りかもしれない。

 ライザーのときも、コカビエルのときも。会談で起きたテロのときも。グレモリー眷属でもないのに、特訓にも付き合ってくれるし。本当に、いろいろ頼りすぎかもしれない……。

「カイトが普通に協力してくれていたから、そのあたりのことは深く考えてこなかったのよね……。それに朱乃や小猫なんかは家にまで……。確かに公私にわたって頼りすぎてるわね、私たち」

 部長からも同意の意見がとぶ。

 この話題を切り出した小猫ちゃんも、首を縦にふり肯定していた。

「思えば、敵の主力と相手をしているのは基本カイトくんですね」

「そういえばそうだな。俺たちも相手はするけど、カイトと一緒にって感じだよな。あいつが主力と戦わなかったこと無いだろうし」

「そういう面でも、僕たちより体力、精神をすり減らしている可能性があるね」

「最近、カイトくんが家でため息をつく回数が増えている気がしますわ」

 木場と朱乃さんの意見。

 こうして意見を上げていくと、カイトの存在が大きすぎる!

 というか、これだけやってまだ部活にも来て俺たちの仕事手伝うって、よく体がもつなぁ。

 という俺たちの会話には入ってこないで、ゼノヴィアとアーシア、ギャスパーは隅の方で三人で話していた。

 多分、夏休みに冥界から帰って直後にアーシアへプロポーズなんぞしてきた野郎について話しているのだろう。おのれディオドラ・アスタロト! 

 最近も気に入られようとラブレターや映画のチケットやらと送ってきやがって!

 あんな野郎にうちのアーシアちゃんはあげませんっ!

「これは少し、カイトには休んで――」

「失礼しまーす」

 俺がアーシアのことで熱くなっているうちに、部長がなにかを言いかけたところで、話題になっていたその本人が部室に入ってきた。

「あれ? 全員どうかした?」

 普段と違う空気を感じ取ったのだろう。そんなことを訊いてくる。

 本人に話すのは避けたいし、どう誤魔化すべきかな?

「カイト、これから少しの間、私たちにはやるべき仕事があるの。それも、グレモリー眷属に頼みたい案件がね。それが片付くまで、カイトは部活を休んでもらっていいかしら?」

 部長!? 俺そんな話聞いてませんよ!

(木場)

 不安になり、近くにいた木場に話しかける。

 俺が小声だったこともあり、木場も合わせてくれた。

(なにかな、イッセーくん)

(部長の言ったこと、本当か? 俺、聞いてないんだけど?)

(僕も聞いてないからだいじょうぶだよ。多分、カイトくんのためを思ってのことだろうからね)

(そうか)

 よかった。そういうことなら、俺も納得だ。俺たちを代表して部長がカイトをどうにかしてくれるってことだな。

「……急な話ですね。まあ、わかりました。それで、期間はいつごろまでですか?」

「体育祭が終わるまでにはなんとかするわ」

「了解です。じゃあまた体育祭が終わったら部活来ますね」

「ええ。こちらの勝手に巻き込んでごめんなさい」

「気にしなくていいですよ。部長たちにも仕事があるんですから。それに、朱乃さんと小猫はうちに帰ってきますし、少しは話も聞けるでしょうから」

 それだけ言い残し、カイトは部室を出て行った。

 疑いもしなかったな……。 

 カイトは仲間のことは疑ってかかったりしないからか? 

「フフフ、これでカイトくんも少しの間は休めますわね」

「そうね。カイトには悪いけれど、こうでもしないと休んでくれそうにないし。そういうわけだからみんな、これからしばらくカイトには休んでもらって、私たちだけで活動するわよ」

「カイトくんばかりを頼らないように、僕たち自身ももっと強くならないといけませんね」

「そうね。部活中に修行もするわよ!」

「「「「「「「はい、部長」」」」」」」

「お、なんだなんだ。全員揃って――カイトがいないか。まあいい。リアス、レーティングゲームの試合記録、もって来たぜ」

 部長に応えた直後、アザゼルが入ってきた。

 そうか、本来今日はみんなで試合のチェックをするんだった! 

 そうして俺たちは、若手悪魔の試合を見始めた。

 

<イッセーSide out>

 

 

 

<カイトーSide>

 

 まったく、いきなりなんだと言うんだ。

 部室に来て見れば仕事が入ったからグレモリー眷属だけで対応する。それは当たり前のことだが、まさか部活に出なくていいと言われるとは。

 確かにグレモリー眷属にきた仕事なら、俺が協力する必要も、権利もないのはわかっている。ただ、部活に来なくていいっていうのは、少し違う気がする。

 わかってる。依頼された者にしか知られてはならない情報だってあるだろう。部長との会話中、イッセーと祐斗がなにかを小声で話していたり、小猫が一瞬慌てた表情になったのを見ている。なにかを隠しているには明白だ。多分、仕事の内容ではあると思われるが……。

 そうやって正当化してなお、来なくていいといわれるのは、少しつらい。

「まあ、考えてても仕方のないことか」

 体育祭が終わればまた部活に行けばいいし、家には朱乃さんも小猫もいる。クラスにはイッセーにアーシア。ゼノヴィアだっているし、祐斗もクラスは違うが学年は一緒だ。

 話す機会も多い。

 だから、この苛立ちにも思える感情は、そっとしまっておこう。

 他のみんなに、わからないように。

 

 本来なら部活にいる時間だが、今日からしばらくお休みなので暇な時間ができた。

 かと言ってどこかに行って遊びたいわけでもない。

 できることと言えば遠回りして家に帰るか本屋によっていくことだけだ。

 最近本が増えすぎて本棚が重さに耐え切れず板が曲がってきたり、棚に入らない本が何十冊も積み重なったタワーが何本も設立されている。

 そんわけで本屋に寄るには却下だ。せめて新しい本棚が届くまで我慢しよう……。

 で、遠回りして帰るわけだが。

 なつかしいな。

 俺が来ていたのは、町外れにある公園だ。噴水のある、俺がオカ研のみんなと付き合うに至る原因をつくった場所だ。

 それはつまり、イッセーが堕天使レイナーレに襲われた場所ってわけだが。

 いまはもちろん、そんな物騒なことはなく、人気のないただの公園だ。

 と、コロコロコロ、トンッ。

 ひとつのボール? が転がってきて、足に当たり停止した。

「子供の遊び道具かなにかか?」

 拾って確かめるも、ただのボールだということ意外さっぱりわからん。

「す、すいません! そのボール私たちのなんです!」

 と思っていたのも束の間。

 小学生としか思えない女の子がこちらに走ってきた。

「キミらのか。ほらよ」

「わっと……。ありがとうございます」

「はいよ。遊ぶのはいいけど、あまり遅くならないようにな。この町には悪魔、天使、堕天使が出るかもしれないからね」

「はい? よくわからないけど気をつけます」

「ああ。じゃあな」

 軽くあいさつだけして、少女は走って来た道を戻っていった。

 俺もそれに倣うように、来た道を戻る。ちょうど、少女とは反対の道にだ。

 にしてもまだ公園で遊ぶ小学生がいるなんてなぁ。それも町外れの公園なんかで。

『まったく。使い方を失敗するからボールがこんな方まで飛んでいっちゃうんですよ』

「ご、ごめん……」

『急ぎましょう。クロさんが呆れて帰っちゃうかもしれないですよ』

「ちょ、それ本当にありそうだからやめてよ!」

『大体イリ――』

 まだそう遠くに行ってない少女の声が聞こえる。

 そこまでで、俺は背後を振り返った。

 眼前では、少女が角を曲がり姿を消すところだった。

「あの子、誰かと話してたみたいだけど、もう一人いたっけ?」

 少女との会話中のことを思い返してみるも、やはりあの子以外に見た覚えはなかった。

 




カイトが部室を出て行ったあと、部室にはディオドラが来たとか来なかったとか。
多分来たんだよ、はい。でもその部分はカットだ!

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