ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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久々です。ちょっと久々の投稿になりました。
次回からは新章に入ります。
今回はその前に起きた話を簡単に。
では、どうぞ。


番外編

 どうも、みなさん。

 実はですね、

「ゴホッ、ゴホッ……あー……」

 冥界から帰ってきてすぐ、風邪をひきました。

 部長がなんだか面倒事に巻き込まれてる気がしなくもなかったんだけど、無理言って冥界の医師に診察してもらったところ、風邪と診断されたわけだ。

 イヅナが帰ってきて安心して気が抜けたかな? それともオーフィスの力に体が慣れてないせいか? かわらないことだらけだ。

 まあそんなわけでいまは自室で休んでる。

 学校が始まるまでもう少し日があるし、時期的にはよかったんだけど……。

「おまえら部屋から出てかないわけ?」

 部屋全体を見渡す。まだ昼間だというのに。

 そこに座り込んでるのは、エスト、レスティア、小猫、イヅナ、朱乃さん、ガブリエルさん。

 はいコンプリート。いまいる家の住人全員いますよこれ。

 ティアマットだけは、いま出掛けていて居ないけどね。

 というか、俺の部屋そこまで広くないからね? それに全員つきっきりの看病とかいらないよ?

「カイトがよくなったらね」

「先輩がよくなるように仙術を」

「マスターであるカイトが治ったら」

「前みたいに医療班がいればいいのに」

「カイトくんの面倒は私が見ますわ」

「ここは私がぁ」

 順番に、レスティア、小猫、エスト、イヅナ、朱乃さん、ガブリエルさんだ。

 誰も出てく気はないようで……。

「でもさ、このままだと俺寝れないんだけど。それに、落ち着かない」

 その一言が引き金になったのか、全員が円陣を組み、なにかを話し始めた。

 全貌が見えてこないが、あーだこーだ言っていることだけはわかる。

 そして、納得したような笑顔を全員が見せながら、なにも言わずに部屋から撤退していった。

「……なんだったんだ?」

 わけがわからん。

 経験則からいって、こういうときは大抵ロクなことが起きない。

 ただ、考えても仕方が無い。

 せっかく静かになったし、観衆の目からも解放された。ここは一度、ゆっくり眠りにつこうじゃないか。

 少し熱が上がってきたことを自覚しながら、深い眠りについた。

 

 

 

 

 ……次に目を覚ましたとき、後頭部に柔らかい感触があった。

 いや、枕も柔らかいけどさ、全然違う感触だよ。

 このまま二度寝したいとこだけど、そう怠けているわけにもいくまい。視線を真上に向けると、

「……」

「……」

 微笑ましい笑顔を浮かべていたレスティアと目が合った。

 こうした自然な笑顔を見る機会が少ないせいか、俺に見られたことを察すると顔を背けてしまう。

 もったいない。膝枕をしてくれていたのが誰かわかっていれば寝たフリをしながら見る手もあったのに。

「っていうか、いつまで顔背けてるつもりだ? 首痛めるぞ」

「……」

 無視。

「おい、いい加減にこっち向ゲホッ!」

「――カイト!?」

 咳が出た。それだけだというのにすぐに向き直りやがった。

 なんだろう、心配性にも程があるぞ……。

「だいじょうぶだいじょうぶ。ただの咳だ」

「驚かさないで。まったく……」

「悪いな。でもおかげで元気出たぞ?」

「どういう意味よ」

「おまえが心配してくれてるのもわかったし、普段見ない自然な笑顔も見れたしな。普段から見れる機会が増えると嬉しいけどさ」

 言い終わるがはやいか、レスティアの顔が瞬間的に真っ赤に染まった。

 おいおい!? レスティアの方が風邪ひいたんじゃないだろうな?

 だが、心配するよりはやく、

「なら、カイトの前では笑顔を見せてあげるわ……たまになら」

 そんなことを早口に言われた。

「ほら、もう寝なさい」

「いや、さっきまで寝てたんだけど。というかいまのどういう意味――」

「いいから! 病人は寝てなさい」

 問答無用で膝に押し付けられ、結局レスティアを枕にして寝かされることになった。

 これ、もう明日まで状況は変化しないよね。

 もういいや……。レスティア本人が楽しそうだし。

 家の中で俺の意見が通ることはそう多くない。逆らえないのも事実だ。

 だからいまは、もう一度寝ようか。

 

 

 

 

 朝、か。

 時計を見ると、ちょうど六時になるところだった。

 レスティアはもっと早くに起きたようで、すでに部屋にはいなかった。

「すーすー……」

「んんっ……」

 代わりに重さを感じた。

 ダルさではなく、確かに重量を感じる。それほど重くはないけど。

 気になって手を触れると、とてもやわらかい感触がした。でもなんだろ、さわさわといい感じの毛並みが――。

 視線を配らせると、猫耳尻尾付きで白衣を着た小猫と、狐耳三尾付きの巫女服を着たイヅナが仲良く寝ていた。

 巫女服で寝れるって凄いなおい。というか袴は!? なんで脱ぎ捨ててあるのかな!? クソッ、三尾が出てる時点で不審に思うべきだった……。

 寝起きからそんな格好で寝られてるとゆっくりできないだろうが……。

「とは言ったものの、体がポカポカしてるのは二人のおかげか」

 一晩かけて全身の気の巡りを良くしてくれたのだろう。

 ああ、だからレスティアがいないのか? 交代制にしてたのかもな。

「ありがとな、二人とも」

 まだ眠る二人の頭をなでてやった。

 無邪気な寝顔に癒される。

 

 ……わけでもなく。

 外が騒がしい。

 ガチャン。パリン! さっきからそんな音が頻繁に鳴っている。それと女性陣の悲鳴。

 なにやってるんだ? 

 考えをまとめる暇もなく、部屋のドアが開けられる。

「あら、カイトくん。起きたんですか?」

「カイト。おはようございます」

 入ってきたのは、ナース服に身を包んだ朱乃さんとエストだった。

 朱乃さんの手にはプレートが握られている。その上にいくつかの皿と茶碗が見える。

 と、俺の視線に気づいたのだろう。

「これはカイトくんの分の朝食ですわ。途中エストちゃんがお皿を割っちゃったり、レスティアちゃんが毒物を作っちゃいましたけど、いま持ってきたのはだいじょうぶですよ」

 ……俺の相棒たちの仕業でしたか。マスターである俺は文句が言えないな。

「ありがとうございます、朱乃さん。エストも、がんばったのはわかったよ。ありがとな」

「はい、カイト」

「それではカイトくん。私たちで食べさせてあげますね」

 はい? いやーそれは流石に。

「自分で食べられますよ?」

「いいですから。はい、あーん」

「カイト、あーんです」

「……」

 もちろん、このまま黙っていても二人が許してくれるわけでもなく。

 俺の上で寝ている小猫とイヅナを起こさないようにそっと上体を起こしながら、結局二人に食べさせられた。

 その後、朱乃さんがナース服をはだけさせる事件も起きたが、そのおかげで俺の熱はまた上がったという……。

 

 

 

 昼下がり。次に部屋にやってきたのはガブリエルさんだった。

「カイトさん、具合はどうですかぁ?」

 間延びしたようにゆったりとした感じで話しかけてくる。

「少し熱が上がりましたよ……」

「あら~ダメですよ? しっかり寝ていないといけませんよ」

 最後に「めっ」と人差し指で額を小突かれた。

 それ以降はなにをするでもなく、他愛ない話をしていて時間が経過していた。

「もうこんな時間ですね。カイトさんはまた寝ていてください」

「わかりました」

「はい。では、おやすみなさい~」

 俺の頭をなでなでと撫でていき、満足したのか、満面の笑みを浮かべながら部屋を出て行った。

 特になにをしていたわけじゃないが、とても癒された気分だ。

 そのおかげか、心地よい気分で深い眠りにつけた。

 

 はやく治して、残りの夏休みをみんなと楽しく過ごそう。

 俺はそう心に決めた。

 

 

 数日後、無事風邪は治った。みんなの看病のおかげか、治るまでの間一人になることもなく、退屈な時間はさほどなかった。

 余談だが、その間に祐斗が見舞いに来たことは内緒だ。とくに、クラスの女子どもには……。


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