ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

81 / 113
さあ、やっと今回でこの章も終わりです。
一番長かったですね。次回はどうしようかな。番外編飛ばして本編進めるか、番外編やるか。
悩む……。

では、短めですがどうぞ!


25話

 八月後半――もう休みも終わりが見えてきた頃だ。

 グレモリー眷属と、俺を含むその他数名は、本邸前の駅で冥界とのお別れのときを迎えていた。

 なんだかイッセーが部長のお父さんお母さんといろいろ話していた。いや、内容筒抜けですよ。まあ、はい。将来が楽しみなんだろう。

 イッセーも大変だ。本人としては、話の内容がしっかりわかってれば幸せなんだろうけどさ。

 本人がわかるまでは俺も教えないでおこう。それは俺の問題ではないし。

 と、他の様子を見ていると、小猫が部長と――なにかの業者か? 何人かでなにかを話していた。

 業者と思われる人たちになにかを伝えると、満足したのだろう。解散するように散っていった。

「……カイト先輩、これからもよろしくです」

 俺とすれ違うさい、そんな声が耳に届いた。

 声の主は小猫だ。よろしくって、いまさら何を言うやら……。

 

 

 俺は誰と話でもなく、列車に乗り込む。

 続くようにしてみんなが入ってくるが、俺の横には行きと同じようにガブリエルさんが――と思ったのだが、通路を挟んで反対側の席にイヅナと座ってしまった。イヅナへの配慮かね? 一列に三人座れればいいんだけど。

 よし、これはこれでラッキーだ。

 どうやら帰りは一人でゆっくりしている時間が確保できたらしい。

 そのまま列車は出発した。

 

 

 イッセーはどうやら夏休みの課題が多く残っていたらしく、列車内でがんばっていた。

 俺はとっくに終わっている。

 なぜかって? ガブリエルさんが横に居る生活だったからに決まっている。天使さまの前で課題もやらずにいることなどできなかったのだ……。

 まだ終わってない奴ら、浄化される前に終わらせることを勧める。やってなかったらはやくやるんだぞ。

「おいイッセー。こことそこ、間違えてる」

「え!? ど、どこだ!?」

「そこだ。そう、そこ。あとその三問前」

「あ、ああ……」

 と、前に座るイッセーの課題をたまに見てやりながら、間違い探しをし、直す点だけ教える。

 いやー……。これ終わるかな?

 とイッセーの課題の件はあきらめ座席に座り込む。

 それを待っていたかのように小猫が俺の席の前にひょこっと現れ、そのまま流れるように俺の膝に座った。おお、猫耳がピコピコ揺れてる。いや、動かしてるのか。よく見えるのは当然。なんたって、正面から俺の顔を覗き込むように座ってるんだから。

 おいおい、なんだなんだ? そういうのはイッセーにやってやれよ。多分喜ぶ。

「小猫? ちょっと顔近いんだけ――」

「にゃん♪」

 離そうとしたところ、満面の笑みで微笑まれた。

 はあ……。小猫の肩にかけようと上げた手をおろす。

 今回はがんばったことだし、こうして甘えてくることくらいは許してやるか。

 かわいかったし、俺としても文句はない。

 ああ、でもあれだ。今度猫耳と尻尾触ってみたいな。狐は触ったことあるけど、猫って一度も無いんだよなー……。

 朱乃さんが無言のニコニコフェイスプレッシャーを放ったり、イヅナがいいなーという感じで見ていたり、なんか某協力者さんからメールで『イチャコラ禁止!』とか送られてきたけど……。怖い。妹を名乗る協力者さん怖い……。

 でも、今日くらいは許してやろう。

 若干の恐怖を覚えつつも、列車は俺たちの住む人間界へと――。

 冥界に行ったの正解だったな。結果的にはいい夏休みになった。

 もし。もしまた、ヴァーリたちが協力してくれるような事態が起きたとき、俺はどうするのだろう。どう、判断を下すのだろう。

 今回は拒否し、拒否された。では次回は? 次回があるのだとしたら、俺は――。

 

 

 

 

 

 

 

 帰りは、この町に存在する他の地下ホームに列車は止まった。

「カイトの家なら、ここからの方が近いわ」

 なるほど。

 部長がそう言ってくれるので、間違いないだろう。

「わかりました。ありがとうございます。それでは部長、みんな。また今度」

 簡単にあいさつを済まし、列車を降りる。

 俺に続くように、ガブリエルさん、イヅナ、朱乃さんがみんなにあいさつし降りてくる。

 そして、最後に。

 小猫までも降りてくる!?

「おい小猫。なんのつもりだこれは」

「……? 帰るときに言ったじゃないですか。『これからもよろしくです』って」

「え? どういうこと?」

 俺の疑問を残し、列車が出発する。多分、行きに使った駅へと向かうのだろう。

 いや、それはいい。

 無言のまま、小猫の答えを待つ。

「今日から私も先輩の家で暮らします。さっき、業者の方に頼んで荷物を運んでもらうように手配してもらいました」

 ……俺の意見はどこにいった!

 いや、いいよ。別に家に来るのはいいけど一言くらい相談してほしかったなー。

 というか、そろそろうちの男女比が酷いことになってきてるんで、誰か男子組も 来ないかな? イヅナと小猫で一気に二人も増えるとか。

「納得はいかないけど納得した。改めて、これからもよろしく」

「はい、よろしくです」

 仕方ないことはいくらでもある。これもその部類なのだろう。

 いまから追い出すのもかわいそうではあるし。それに――。

 

 家にまた猫がいるのは悪くない。黒猫ではなく白猫だが、いつかは二匹になるといいな。

 そうなれば、いい。

 優しい姉ちゃんと妹が暮らせる場所ぐらいには、なってくれればそれでいいさ。

「さって、帰って夕飯にでもしよう。今日は俺が作るよ」

「なら私も手伝いますわ」

「カイトさんばかりでは悪いですし私もやりますよぉ」

「私は料理できないからカイトが作るの待ってる」

「私はお菓子でも作ります」

(そのときは私たちも食べるから。期待して待ってるわ)

(オトーフは入れてください、カイト)

「せめて手伝ってくれ……」

 陽が沈み始め、暗闇が世界を包みだすころ。

 俺の周りには、笑顔と笑い声が飛び交っていた。夏にこうして緩い時間を過ごすのは、随分久々な気がした。

 

 

「やっぱ、こういう雰囲気の方が好きだ。他のみんなも、救わないとな」

 ふと足が止まる。みんなを、後方から見る。

「だいじょうぶだよ。みんな、待っててくれる」

 一人、同じように止まっていたイヅナが俺にだけ聞こえるようにつぶやき、手を握ってくる。

「そう、だな……」

 待っててくれる。そうだな。みんながまだ、アンラ・マンユの手中にあるのなら、待っててくれるはずだ。

 あの日なくした笑顔はまだ戻ってこない。

 だけど、戻ってくる。戻してみせる。

 それまでは。

 いや、それからも――。

「カイトくん、イヅナちゃん。はやく行きますわよ?」

「先輩、はやくです」

「ごはん作る時間なくなっちゃいますよ~」

「ああ、すぐ行く」

 この光景は、無くさないでいたい。

 今度は、部員みんなでこの光景を見たいもんだな。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。