ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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なんとなくで書き出したこの話もかれこれ75話です。
拙い文で毎話申し訳なく思ってますが、これからもよろしくお願いします。


19話

「どういうことだよ、カイト。俺たちを全員殺す? そんなこと、おまえができるわけないだろ」

 できるわけないか。それはどっちの意味で言ってるんだろうな。

「イッセー。俺はおまえたち全員と一対一で闘うなら確実に勝てるよ。まして今は全員バラバラの状態だ。確実なんだよ」

「そういうことを言ってるんじゃねえよ! おまえは俺たちの仲間で、誰よりも仲間を――みんなを大事に思っているはずだ!」

「あー……そういうこと。だから俺が大事な仲間を傷つけることはできないって言いたいのか。まあ確かに、仲間なら大事だから傷つけないけどさ。さて、ここまで言えばイッセーも理解できるかな?」

 沈黙していたが、しばらくして、ゆっくりと口を開く。

「まさか、俺たちは仲間じゃない、なんて言わないよな……?」

 それを聞いた瞬間、自分でもわかった。

 口角が上がっていることに。きっといまの俺はあまりよくない笑みを浮かべているんだろうな。

「カイト、何か言ったらどうなんだ?」

「……」

 なにも言わないまま、笑みだけを浮かべる。

「カイトォォォォッッ!!」

 その笑みに怯んだイッセーは自分を鼓舞するように、俺の名を叫ぶ。

「……思ってなんか、いねぇよ」

 それは、自分でもよく聞き取れないほど小さな声だった。

「……え?」

 イッセーも、聞き取れなかったんだろう。まぬけな表情見せやがって。

 大体、おまえは考えが甘いんだよ。修行に対する取り組みの姿勢は認める。仲間を大事に思ってることも認めてる。だけど――。

「だけどおまえの甘さだけは認めねぇ。覚悟が足りないんだよ。おまえは力を持ってどうしたいんだ? なんのために振るうんだ?」

「それは、仲間を守るために」

「一度でも、守れたか?」

「――ッ!?」

 これは、本人にはつらいことかもな。でも容赦はしない。俺は決めたことから、覚悟したことから退かない。

「ま、守ってきただろ! アーシアだって、部長だって、みんな、みんな……!」

「それ、本当に思ってるのか?」

「思って……思って」

 ああ、迷ってる迷ってる。そうだよな、そりゃ迷うよ。

 いままで闘ってきた相手は堕天使、ライザー、コカビエル、アンラ・マンユ……。

 どれもイッセーだけで相手にできるものじゃなかった。

「アーシアを救った? 部長を助けた? みんなを守ってきた? 違うだろ。そうじゃないだろ」

「……。……それでも俺は――」

「認めろよ。まずは認めろ。おまえの力が足りないばかりに、おまえは救えなかったんだよ。一番大事なときに、おまえがなにもできなかったから仲間がつらい目に会うんだろ? 誰かが一度傷つかないと力が出ないから、これから先も同じことを繰り返すことになるんだろ」

 イッセー、それは結局、おまえが甘いからだろ? 救いたいのはわかってる。大事なのもわかってるよ。だからこそ、生半可な覚悟じゃダメなんだ。

 そしてその覚悟が決まったとき、おまえは――。

「うるせぇよ……。うるせぇよ! わかってるんだよ! 俺だってわかってるんだ! ああそうさ。俺はいつもそうだ。肝心なときに力を発揮できない! アーシアは一度死んだ。部長だって一度泣いた! 俺が大好きな人たちは、俺の力が及ばないばかりに一度悲しい思いをさせちまう……。そのあと、誰かの手助けがあって、俺は二回目のチャンスで助ける。それも、やっぱり一人の力ではできない……」

 涙を流しながらそう語るイッセー。

 わかってるんだな。なら、話は早い。

 俺はすぐさまイッセーの目の前まで走り、その顔面を思い切り殴る。

 声を上げる暇もなく、森の木へと突っ込んでいった。

 静かな森の中に、木々が倒れる音だけが響く。

 

 立たない、か……。

「そうだ、そのとおりだ。それと、話はこれで終わりだ。俺はこれからほかのやつらを殺しにいくからな。おまえはまた、誰も救えなかった悲しみでも味わうといい。安心しろ、おまえが来るころには全員始末しとくから」

 さあ、みんなは部屋にいるかな? 

 じゃあなイッセー。このままそこで倒れながら泣いてろよ。でも、守りたいなら立ち上がってくるかなぁ。

 

 

 

 

 イッセーが突っ込んでいった方向を一度だけ見直し、とくに変化がなかったので振り返り歩き出した。

 ま、やっぱ無理だよなぁ。

 でも残念だ。あと五日。言ったことは認めたから大きな進歩か? あいつが本当の意味で赤龍帝になれば俺もよかったんだが。今回ばかりはしかたない。

 今後の障害になるのなら、消すしかないからな。

 さて、次はどうしようか。とりあえずは――

「っと、やっぱ立つのか」

 背後から飛んできた魔力の塊を左手で捕らえる。

「ようイッセー。おはよう」

「いままではダメだった。けど、今回はもうやらせねぇ。おまえにみんなは殺させやしない! カイト! おまえはここで俺がぶっ潰す!」

 ボロボロになりながらも立ち上がったイッセーは俺に宣言する。

 そうじゃなくてさぁ……。いや、それでもいいか。

 なんにせよ、もう一発殴る必要がありそうだ。

「いいのかイッセー。おまえが俺の相手になるとは思わないけど」

「それでも、おまえを倒さないとみんなが危ないからな。倒すさ」

「……そうか。俺もよくそういうことしてたし、止めないけど。闘う相手は選べって。じゃないと――」

 足先に力を入れる。その力を瞬時に地面へと打ち付けて、

「すぐに死ぬぜ?」

 イッセーの背後まで滑り込む。

「――クソッ!」

「遅い!」

 なんとか俺の動きに追随する形で殴りかかってこようとするが、その手を右手で払いのけ、上半身を前に出した格好になったイッセーに、パンッ! 掌底で顎を叩いてやった。

「――……!?」

 普段こんな一撃はくらわないだろうからな。

 イッセーは脳震盪を起こした足取りになり、ふらりと後ろに後退した。

 もちろん、その隙を逃すほど今日の俺は甘くない。

「……がッ!」

 腹に一撃、蹴りをいれる。

 次に拳を顔面に入れようとした瞬間、

「まだだ」

 イッセーの手が俺の拳を止めた。

 なんだ、まだ普通に闘えるのか……。いや、結構限界が近いかな? 

「余裕、こいてんじゃねェェェェェッッ!!」

 そんなことを考えてた矢先、怒りを乗せたイッセーの拳が俺の顔面を正確に捉えた。

「おおおおおおおおおおおおッッ!!」

 そのまま力任せに俺を吹っ飛ばす。

「チッ」

 逃れることもできなそうだったので、流れにまかせ森の中へと突っ込む。

 まあ、ただでは殴られないけどな。

「……グッ」

 飛ばされた先の大木に打ち付けられ、多少の衝撃が体の中を走り抜ける。

「ハア……思ったより力ついてるじゃん」

 さて、イッセーはどうなったかな? 

 殴られた直後にその衝撃と同等の力を返しといたけど。

 と、見に行こうとすると、なんとイッセーがすでに俺の眼前に立っていた。

「おいおい、俺より早いとか、どんだけだよ……。今日のおまえは一味違うってのか?」

 同じダメージくらってイッセーの方が俺に駆け寄ってくるとか、冗談だろ。

 しっかしどうするかねぇ。

 

「あらカイト。それに、イッセーも。あなたたち、まだ修行をしてるの? 今日で終わりだと言ったでしょ。明日はパーティなのよ、早く休みなさい」

 後方から声がかかったかと思うと、そこには部長がいた。

「カイト……。早く寝よう?」

 隣にはイヅナもいる。

「カイトが帰ってこないから、探してたのよ」

「そうだったんですか。それはすいません」

「部長、カイトから離れてください! はやく!」

 イッセーが叫ぶ。

 だが部長は、

「なにを言っているのイッセー。いいからあなたも修行は終わりよ。明日に備えて休んでちょうだい」

「部長!」

 イッセーが叫んでいる間に、俺はイヅナの手をとるようにして、部長の背後に回りこむ。

 右手には静かに、<魔王殺しの聖剣>を出現させる。

「――!? 部長、いいからはやくそいつから距離をとってください!!」

 イッセーがその場から飛び出した瞬間――

「すいません、部長」

「え?」

「――やっぱ、一番最初はあなたでしたね」

 俺は冷静に、背後から部長の胸を聖剣で突き刺した。

 

「部長ォォォォォォォォォォォッッ!!!」

 辺りに、イッセーの叫びが響き渡った。

 

 

 俺はその光景を、冷静に見ていた。

 




さて、ちょっとしたこともあり、今度「精霊使いの剣舞」の世界に「俺ガイル」の主人公である『比企谷八幡』がカミトポジションにいたら。という話を書くことになりました。
どうなるのか作者も予測不能な世界にはなりますが、そちらも書け次第投稿してみようかと思います。

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