ハイスクールD×D 精霊と龍神と

14話

めちゃくちゃな状態になってしまった14話!
作者は次話で挽回できるのか!?

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　目の前で聖槍を構える男は、曹操と呼ばれていた。

　こいつ、もしかして――

「なあ、曹操。あんたあの三国志で有名な曹操なのか?」

「いや、それは少し違うな。俺は曹操の子孫だよ――いちおうね」

　ま、本人さまなわけはないよな。そうか、子孫ね。

「あー曹操!　カイトに自己紹介禁止って言ったでしょ!　禁止ー!!」

　と、もう少しばかり情報が欲しい俺とは反対に、ヴァーリが曹操を遠ざけてしまう。

「おいヴァーリ。俺は話してもいいんだけど」

「カイトはよくてもあたしがダメなの!　この戦闘マニアにカイトは渡さない!」

「戦闘マニアはヴァーリ、キミだろ?　俺は人の身でどこまでやれるか試したいだけだ」

　……どこが違うんだろうか。

「まあヴァーリ、いまのところは大目に見てくれ。――さあカイト。キミももちろん戦うんだろ?」

「……。……ああ、もちろんそのつもりだけどさ」

「気になることでも?」

　当然、それはある。

　というか、それが解消できなければイヅナは救えない。救えなければ、俺の負けだ。

「イヅナと同化しつつある闇……。あれをイヅナから切り離さない限り、勝利はないんだ」

「あの少女ごと葬るのはダメなのか?」

　まあ、こいつらはその案を出してくるよな。

「それじゃダメだ。それを実行するっていうなら協力はいらないし、それに」

「それに?」

「俺はおまえらから消す」

「――っ。これは怖い怖い。いい殺気を放ってくれるね。それならそれで俺は面白いと思うけど――」

　それ以上、曹操が言葉を紡ぐことは無かった。

　ただ、これだけはわかった。曹操は俺の目を見て、言葉を紡ぐことをやめたのだと。

「曹操、カイト怒らせたねぇ。ダメだよー?　カイト、仲間の話だけは本気で怒るから。ほら、固まってないでカイトに協力するよ」

「……。……ああ、わかった」

「カイトも。その目は、あまり出さない方がいいよ。無意識だと思うけど、あたしたちでもそれはダメだ。落ち着いてほしいかな」

　……なに、言ってるんだ。確かに俺の中に怒りの意志はあった。その意志は曹操に向いていたかもしれない。けど、そこまでのものなのか?　

　まあ、協力しに来てくれたんだし、まずは落ち着こう。

　平常心だ。曹操がイヅナを傷つける行動に出たら、そのとき潰せばいいだけのことだ。相当強いのはわかったけど、それでも敵わない相手じゃない。『黄昏の聖槍』も残念だけど、俺には――。

「カイト、カイト?」

「ん?　ああ、なんだヴァーリ」

「聞いてなかったの?　私たちであの闇、なんとかできるかもって話」

　なんだと?

「それ、本当か?」

「もちろん!　ね、曹操?」

「ああ。俺の聖槍とヴァーリの力があれば、可能かもしれない」

　さっきの状態からはウソのように、自信に溢れた目をして話す。

　そういう目は、信じたくなっちまうんだよな……。強い意志が通ってると、どうしても。

　曹操はただの自信家ではないらしい。それこそ、徹底的に相手を見極めることの方が彼のやり方なのかもしれない。

　先ほどから、イヅナの動きを牽制しつつ、観察をしているようだ。

「で、具体的にどうするんだ?　俺の役割は?」

「カイトは闇が切り離されたら、そいつを斬っちゃってよ。闇に意識があっても困るからね」

「わかった」

　二人が俺の前に立つ。

「そうだ。カイト、これが終わったら、キミもこっち側に来ないか?　俺たちはいつでも歓迎するけど」

　そして、そんなことを漏らして、俺の答えを聞くより先に走り出した。

　答えぐらい聞いていけよな。ったく。……答えは、この戦いでイヅナを救えたら教えてやるよ、曹操。　

　眼前では、ヴァーリが禁手し白銀の鎧を纏った。

「にしても、やっぱあの状態のイヅナでも聖槍は警戒するのか。いいな、聖槍。アンラ・マンユにも多分効果あるよな……」

　それはこれから闇を切り離せるかどうかで決まってくるのだが。

　できることなら、聖槍は俺の側に置いときたいな……。かといって『禍の団』に降るのはなぁ……。

　っと、その考えも一旦隅に追いやってっと。

　そういや、俺さっきと比べて随分と思考が緩くなった?　周りがしっかり見えてる?　ああ、そうか。だからさっきもイヅナの攻撃をかわせなかったんだ。

「いつもいつも、大事なことは全部周りから教えられるな……。そうだよな、イヅナだけ見てちゃ、救えないよな。本当に見るべきものが、見えてないんだから」

　結局、ヴァーリと曹操には二重の意味で助けられたな。

　じゃあ俺も、そろそろ呆けてないで参戦しようか。あいつを助けるのは、俺のわがままだからな。

「それにしても、思ったより面倒だな、殺さないで制圧というのも」

「だねー……。それにあの子、空間跳躍できるんだよねぇ。あたし初めて見たよ」

「ああ、それは俺もだ」

「って、曹操!?」

「――周りには気配れよ。あいつは不意打ち大好きだからな」

　曹操のすぐ背後に出現した魔弾を斬り裂く。

「やっと来たみたいだね」

「おう、悪いな。でもやっぱあいつの空間跳躍は面倒だよな。しかも闇のせいで一撃の威力も上がってるし、それをさらに数段階上げて魔弾として撃ってくるからな」

「けれど彼女自身が跳び回ればもっと当たると思うんだが?」

　なるほど。確かにイヅナ自身を空間跳躍させれば、この場から逃げることも、俺たちを倒すことも容易になると考えてるのか、曹操は。

「あいつ、生物は跳ばせないんだ。あいつは独自の空間を持ってて、そこを中継して魔弾とか短刀を跳ばしてきてるんだけど、その空間が生物を寄せ付けないらしくてな」

「それは興味深い話だな」

　おいおい、興味持つなよ。悪用されても困るぞ、俺が。

「てなわけで、あいつは空間跳躍じゃ逃げられないし、俺たちの側にも出現できないってわけだ」

「……けど、やはりこの攻撃は邪魔だな」

　そう言い、飛んでくる魔弾を消滅させる。

「仕方ないか。まだお披露目には早いかと思うけど、特別サービスだ」

　曹操の持つ聖槍がまばゆい光を放つ。

「――禁手化」

　マジで!?　曹操も禁手できるのかよ……。これ、後々イッセーたちの障害になるよなきっと。

　変化はすぐに訪れた。神々しく輝く輪後光が曹操の背後の現れ、曹操を囲うようにボウリングの球ほどの大きさの七つの球体が宙に浮かんで出現した。

「これが俺の『黄昏の聖槍』の禁手、『極夜なる天輪聖王の輝廻槍』――まだ未完成だけどね」

「へえ……。綺麗なもんだけど、それ亜種か?　話に聞いてた禁手とは大分違うな」

　知ってる限りの神滅具の情報は頭に叩き込まれてるが、亜種となると能力も未知数……。

「さあ、行こうかカイト」

「……ああ、能力を聞いときたいとこだが、そんな余裕も無いしな」

「話してないでいいから参加してよ!　さっきから全部あたし一人で対応してるんだけど!?」

　あ、ヴァーリ……。

「「すまん、忘れてた」」

「あとで二人とも潰すから!」

　仕方ないよな。曹操から情報は欲しいんだけど、いや本当に。

　けど焦るのがよくないってことはもうわかってるから。

「さあ。七宝はひとつ――女宝」

　曹操が発言すると、球体のひとつが魔弾をかいくぐりながら高速で移動していき、イヅナのもとへ飛んでいった。

「こんな、もので!」

　イヅナも反応して、迎撃しようとするが、

「弾けろッ!」

　曹操の言葉に反応して、球体が輝きを発し、イヅナを包み込む!

「って曹操!　あれイヅナだいじょうぶなんだろうな!」

「問題ないさ。残念だけど、あれは攻撃力を持ってないからね」

「は?」

「こんな光に、私が止められるとでも!?」

　イヅナが光に包まれるなか、魔弾を放ちにかかるが――。

　手に持つ銃を怪訝にうかがう。何度か引き金を引くが、撃たれることはない。

「女宝は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。相当な手錬れでもない限りは無効化できない。さあ、これで彼女の力は封じた」

「こっから先はあたしと曹操であの闇を引きずり出すよ、カイト」

　……俺の敵だっていうのに、なんだかなぁ。

「頼むぞ、二人とも。俺に力、貸してくれ!」

　こいつらと一緒に戦うのは、悪くない――。