ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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 ヒロインにグレートレッド。という声が多い。最近はグレートレッドさんが人気あるんですかね? 
 ……どう扱えと?


6話

 面倒なことが起きた。

 朝目が覚めるなり思うことがこれってのも嫌だ。

 寝起きはもっとこう、爽やかにいきたいよね。

 というわけでおやすみ。

「二度寝してる場合かにゃー!」

 原因を作った駄猫がうるさい。耳栓どこだ?

 手を伸ばすとなんだか柔らかいモノに当たった。

 ふにふにしてんな。なにこれ?

「いいから起きるにゃ!!」

「うおっ……」

 強引にソファーから落とされる。

「クッソ……無駄に朝食なんか作ろうとすっからだろ。っていうか黒歌。着物はだけてんぞ。ちゃんと着ろよ」

「誰のせいにゃ!」

 いや、こっち見てなんだよ。

 いつも着物が変にはだけてんのはおまえが好きでやってるんだろ?

「痴女は黙ってろ。俺はちゃんと朝飯作ってくるから」

「誰が痴女にゃ!!」

 黒歌が近場にあった包丁を投げ飛ばしてくる。なんで近場に包丁なんかあるんだ?

 ああ、キッチンにフライパンがあると助かるよ。

 ギィィィィン。

 朝から耳に痛い音だ。

 フライパンで飛んでくる包丁を防ぐとこうなるのね。

「で、ルフェイはもう帰ったのか?」

「アーサーに呼ばれて帰っていったにゃー」

「そうか」

 昨日はあの後結構話してた気がするんだけど……。最近の子は元気だな。

 にしても黒歌め。なんで朝食作ろうとして謎のスライムっぽい物体ができあがるんだよ。

 しかもこの処理のために起こしやがったな。うわー……ねばねばのぐちょぐちょだ。

 俺は十分に及ぶ戦闘(掃除)により、なんとかスライムを撃破した。

 そして俺は朝食を作り始めた。

 

「……カイト。我、帰った」

「ん? おお。昨日はどこ行ってたんだ?」

 後ろにはいつの間にか、オーフィスが立っていた。どうもオーフィスだけは察知できない。

「グレートレッド、倒すために蛇、渡してきた」

「……。……そうか」

 俺はしばらくオーフィスの頭を撫で続けた。

 見た目小学校の高学年にしか見えないオーフィスだが、下手に力を使われると世界が簡単に滅びかねない。

 まあ、今はただの可愛い子にしか見えないんだけどさ。

 オーフィス……。いくら蛇を渡しても君の願いをあいつらは――――いや、やめよう。

 俺がいつか、あそこ以外にも居場所を作ってみせる。もっと、もっと楽しい場所を。

「優しいような、悲しいような、苛立ちのような。カイトの瞳には、なにが映っているの?」

 黒歌が投げかけてくる。

「さあな。俺にだってわからない。俺は、半端な存在だから――」

「そうね。龍に、魔王に、人間に。どれだけの素質があるんだか」

 やれやれと首を横に振る黒歌。

 おまえだってはぐれのくせしてなに言ってんだ。

「俺の素質だって、半分は後付けのモノだろ?」

「でもカイトは力を望んだ。その力、なにに使うつもりかにゃん?」

「……あいつらを、潰すためだ。天使、悪魔、堕天使。いろんな組織に身を隠している奴らを、消し去るために!」

「怖い顔……。落ち着くといいにゃ」

「……ああ、悪い」

 俺は話しを区切った。すると、服の袖が引っ張られる。

「なんだ、オーフィス」

「カイト、我あとどれだけ撫でられる?」

 どうやら、俺はいまの間ずっとオーフィスの頭を撫で続けていたらしい。

「あっ……嫌だったか?」

「……。…………我、好き」

 その後ソファーに座り、膝にオーフィスを乗せたまま朝食をとった。

 食べにくいだろって? 

 オーフィスを退かす方がどうかしてる!

「カイト、やっぱりそれはどうかと思うにゃん……」

「いいだろ。座りたいなら座っててもらえば」

「ここ、我の席」

「ほら見ろ、ご満悦だよ」

「……もうどうでもいいにゃ」

 黒歌は疲れたように横になった。そして、時計に目を向けてこう言った。

「カイト、今日は学校に遅れるって言っとくべきだと思う」

「なんの話――……」

 時計は、登校時間を20分ほど過ぎていた。今からどれだけ頑張っても、遅刻しか待っていなかった。

 俺は静かに、家を後にした。

 登校した頃、すでに一時間目の授業は終わっていた。

「カイトくん、今日遅刻してきたんだって」

「いいじゃない。ちょっと悪い感じも素敵」

「イケメンイケメンイケメンイケメン。黒髪イケメンサイコー!」

「これで正統派の木場きゅん×ちょい悪のカイトくんの構図が――ブハッ」

 最後の奴鼻血かよ。

 というか最近女子が怖いぜ……。多分理由は祐斗とよく部室にいくからだろう。

 ……遅刻なんて、もう絶対にしないんだからね!

 

 

 そんな日常が何日か過ぎた頃。

 パン!

 部室に乾いた音がこだました。

 兵藤が部長に頬を叩かれたらしい。

「何度言ったらわかるの? ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ」

 遅れてやってきた俺は、さっぱり話しについていけていない。

「祐斗。これなんの一件?」

「ああ、カイトくん。いや、実は――」

 俺はその後、兵藤の話を聞かされた。

 アーシアというシスターを攫った堕天使の下に行って救い出したいわけか。

 で、部長はそんなことは許さないってことね。

「なら、俺一人でも行きます。やっぱり、儀式ってのが気になります。堕天使が裏で何かするに決まってます。アーシアの身に危険が及ばない保障なんてどこにもありませんから」

「あなたは本当にバカなの? 行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることはできないのよ? それがわかっているの? あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ! あなたはグレモリー眷属の悪魔なのよ! それを自覚しなさい!」

 部長が激昂した。あの人もこんな姿を見せるんだな。

 いや、仲間をそれだけ大事に思ってるってことなのか。

「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。アーシアは大事な友達です。俺は友達を見捨てられません!」

「あの子は元々神側の者。私たちとは根底から相容れない存在なの。いくら堕天使のもとへ降ったとしても私たち悪魔と敵同士であることは変わらないわ」

 部長と兵藤が睨みあう。

「アーシアは敵じゃないです!」

 兵藤が強く否定する。そうか、おまえはそこまで。

「だとしても私にとっては関係のない存在だわ。イッセー、彼女のことは忘れなさい」

 イッセーの表情がより険しくなる。

 そこへ朱乃さんが部長に近づき、耳打ちする。

 部長の表情も険しくなる。

 部長は一度兵藤を見ると、次に俺たち部員全員を見渡す。

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」

 なにかあったのか? 

「ぶ、部長、まだ話は終わって――」

 兵藤が諦められないのか言葉を発するが、遮るように部長が人差し指を口元へとつける。

「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ。まず、ひとつ。あなたは『兵士』を弱い駒だと思っているわね?」

 兵藤は静かに肯定した。

「それは大きな間違いよ。『兵士』には他の駒にはない特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ。実際のチェス同様、『兵士』は相手陣地の最深部へ赴いたとき、昇格することができるの。『王』以外のすべての駒に変化することが可能なのよ。イッセー、あなたは私が『敵の陣地』と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れたとき、『王』以外の駒に変ずることができるの」

 へぇ。部長、そういうことか! 面白いな!

「それともうひとつ。神器について。イッセー、神器を使う際、これだけは覚えておいて」

 部長は兵藤の頬を撫でて告げた。

「――想いなさい。神器は想いの力で動く。そして、その力も決定される。あなたが悪魔でも、想いの力は消えない。その力が強ければ強いほど、神器は応えてくれるわ」

 想い、か。確かにそうだな。

 俺のときも、そうだっけ――。

「最後にイッセー、絶対にこれだけは忘れないこと。『兵士』でも『王』を取れるわ。これは、チェスの基本よ。それは悪魔の駒でも変わらない事実なの。あなたは、強くなれるわ」

 それだけ言い残して部長と朱乃さんは魔方陣でどこかに行ってしまった。

 それを見送った兵藤は一人、その場から去ろうとする。

 一人、か。まったく。

「兵藤」

 俺は呼び止めた。

「行くんだろ?」

「行くさ。行かないといけない。アーシアは友達だから、俺が助けないと」

「どうしてもか? 殺されて終わるぞ」

 いくらプロモーションできても、こいつ一人じゃ相手になんないだろ。

「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」

「……いい目だ。でもダメだな。死ぬ気で行かれては困る」

「ならどうしろって――」

「俺も行くから、生きて帰ってこようぜ?」

「なっ……」

 兵藤は驚いたように言葉を一瞬失う。

「俺はおまえの友達だと言うアーシアのことは知らないけど、おまえはここの部員だからな。俺、仲間には割りと優しいよ? それに残った二人も行く気満々みたいだし」

「まあね。僕は君の意見を尊重したいところもある。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」

「……私も行きます。三人だけでは不安ですから」

 祐斗も小猫も賛同してくれた。

 なんだかんだいって、ここの悪魔はみんな仲間を大事にしてるんだな。

「さて、それじゃあ行こうか。兵藤、しっかり救い出せよ。おまえの手でな」

「ああ! んじゃ、四人でいっちょ救出作戦といきますか! 待ってろ、アーシア!」

 さて、俺もたまには『仲間』のために剣を振るうとするか。

 俺たち四人は教会に向かって走り出した。

 


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