ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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こんな駄文でも、最新話までしっかり読んでくれている人がいて感動してます! 
こんな話でもお気に入り登録してくれている人たちのためにも、頑張って更新してきたいです!


13話

 発射された二発目の魔弾を、横にズレることでかわす。

 イヅナは俺の問いに一度も答えることなく、ただ銃口を俺に向け、また、空間を歪め放ったばかりの魔弾を俺の眼前に出現させてくる。

 アンラ・マンユと同じ力かと思っていたが、こんだけ間近で感じれば少しばかり気づくことがある。

 アンラ・マンユの不気味さに比べ、この魔力は少し攻撃的だ。破壊衝動に駆られたような感じと言えばいいのか? 邪神の持つ魔力にしては、纏わりつく不気味さも、恐怖も薄いんだ。

 でも、アンラ・マンユと元は同じ魔力のはず……。どういうことだ? 

「イヅナ……。おまえ、誰に会ってこの魔力を手に入れたんだ?」

「教えるわけない。カイトは、私の敵だから!」

「――っ! そうかよ!」

 襲ってくる魔弾を<魔王殺しの聖剣>で叩き斬る。

 にしても、このままだとイヅナ自体も危ないかもしれないな。もしこの魔力が、アンラ・マンユを中継してのモノなら、下手したらイヅナも体を乗っ取られる可能性が出てきた……。

 攻撃的なぶん、違う奴かとも思ったが、やっぱり根は同じだ。

 誰が渡した力か知れないが、どちらにせよ、この魔力の根底にある闇を体の中から引きずり出してやらないと、安全とは言えなくなった! 

 緋夥多みたいな最後を向かえるのは、なんとしても阻止する! してみせるッ! 

 だが、

「ねえ、カイト。どうしたの? 私に攻撃当てないと、倒せないよ?」

 問題なのはそれだけじゃない。

 イヅナに傷を負わせないようにと思っていたら、いまのままでは埒が明かないことがわかってきた。

 イヅナのすぐ横を斬撃が通過していくだけで、イヅナ本人には一度としてダメージを与えてはいない。

 そういや、アザゼルにも『甘いところがある』って言われたっけ? これもそうなのかもな。

 俺がダメージを与えない中、イヅナは撃ちだした魔弾を次々に空間を歪め俺に当てに来る。一発一発を斬って弾数を減らそうにも、斬る瞬間に別の場所に転移させてくる。

「思ったより大分やっかいだな、おまえも!」

「そう思うなら、さっさと私を斬ればいいのに……。あのときみたく、仲間を見捨てたら? 生き残るためにさぁっ!」

 さらに弾数が増える。

 こうなると潜り抜けるも地獄、かわし続けるのも地獄か。

 もう何十発あるんだか……。ここら一帯消し飛ばして振り出しに戻そうかな。

 まあ、魔弾だから、魔力が底を尽けば維持できないだろうけど――イヅナの表情を見ても、疲労してる感じは見受けられない。

「ああ、それとなぁ! 俺は一度として、仲間を見捨てた覚えはない!」

「ウソならもういいッ! 私は見たんだ! おまえがみんなを残してアンラ・マンユから逃げたのを!!」

「だから、俺はそのときの説明をしにきてるんだって!」

「説明なんて聞く必要はない!」

 うわー……。ここまで聞く耳ないとは……。話し合いなんてできそうにないな。

「おまえが知ってることだけが、事実じゃないだろ!」

「いいや、私が知ってることが事実! あの人から聞かされた、事実だ!」

 ――聞かされた? 

 イヅナはあのときの光景を見てるはずだろ? なのに、事実を聞かされた?

 おいおい、もしかしてその人とやらが今回の首謀者じゃないのか。俺とイヅナを対立させて、狙いはなんだ? イヅナの記憶を捻じ曲げたのもそいつか……? 

 俺が考えを巡らせる中、

「カイト……。そろそろ――死んでよ」

 冷静なまでに無感情に、その言葉は紡がれた。

 瞬間、全ての魔弾が俺を囲うように出現し、

「チッ……。全方位、逃げ場無しか」

 俺の視界一面を黒で染めた。

 数瞬後、周囲に爆砕音が響き渡った――。

 

 

 

 

 

「終わったかな? いくらカイトでも、威力が数段階上がった魔弾を数十発も受けたらもうダメだよね! 結局、あれを使うまでもなかったか。でもこれで、カイトに見捨てられた皆も報われるね。あの三頭龍、ちゃんと掛け合ってくれるのかなぁ……。ま、でもあの人の言った通りカイトも殺したし、だいじょうぶだよね!」

「……勝手に殺してんじゃねーよ」

「――ッ!?」

「そう慌てるなよ。ったく、いまのは効いたぜ。まさか三発も命中するとは思わなかった」

「三発しか、当たってない……?」

 よほど不思議だったのか、ポカンとした顔で俺に訊いてくる。

「俺も必死だったもんだ。一斉に魔弾が襲ってくると言っても、一発一発が被弾するまでには、多少のタイムラグが生じる。いくらイヅナでも、すべてを完璧に同じタイミングで出現させることはできない」

「……その、僅かというにも過ぎる時間のズレを利用して、防いだとでも言うの? あの数全部を!?」

「いや、防ぐっていうか、剣で魔弾を弾いて、別の魔弾に当ててたんだよ。それだけでも全部斬るより随分簡単になるからな。魔弾による魔弾撃ちだ」

「でも、三発は命中した……」

 あはは、まあそうなんですけどね……。

 やっぱ、全部落とせる数じゃなかったな。

「強くなったよ、イヅナ。でも、その強さはおまえのじゃない。むしろ、おまえ自身を蝕むものだ。多少の違いはあるみたいだが、俺はその魔力と同じモノを何度か見てきた。その力はいますぐに捨てろ」

「イヤ。これはカイトを殺して、仲間を取り戻すための力。いま手放すわけにはいかない!」

「イヅナ……」

 これ以上は、おまえの安全を望めなくなるぞ……。

 さっきの三発、あれは元々強い魔力が数段跳ね上がった威力で造られた魔弾なんだ。俺自身、隠せてはいるが、ダメージは大きい。

 このまま続けば、俺も手加減できる余裕は無くなる……。

 かといって、

「話し合いは、する気ないんだろ?」

「当然」

 この状態じゃ、ダメだ。

 まずは、あいつの中にある魔力――闇を無くそう。

 後付の力だ。失ったって、心配はないだろう。

「悪いな、イヅナ。第三ラウンド、始めようぜ。とりあえず、ゆっくりお話できるまでにはしてやるよ」

 エスト、頼むぞ。おまえの聖なる力が頼りだ。

(はい、カイト)

(私、出番なし……?)

 悪いな、レスティア。ただ、おまえにもやってもらいたいことはあるから、頼むぞ。

(もちろんよ)

「第三ラウンド? なに言ってるの、カイト。あーあ、あれでも生きてるなら使ってもいいよね。カイト、あなたはもう終わり。これで本当に、終わり――」

 恐れていたことが、起こった。

「さあ、殺しましょう」

 闇が、イヅナの体から溢れ出てきたのだ……。

 

 救いなのは、アンラ・マンユの意識がまったく感じられないことくらいか?

 でも時間の問題かもしれない! 急いで切り離さないと! 

「フフフ、これが三頭龍から授かった力……。なんだか全部壊したい気分」

 三頭龍、か。どこかで聞いた覚えがあるぞ。いや、考えるのは後回しだ。

「その闇は、油断してると痛い目見るからな……。出てきた以上、全力でいくぞ」

「カイト、カイト。はやく壊したい、殺したい殺したいぃぃぃぃッッ!!」

 おいおい、イヅナなのか、これは! こんなおっかない感情秘めてたのか、あいつ? 

 それとも、これは闇のせいだとでも?

「ったく、どっちにしろ、消してみれば全部わかるか」

 いまや三尾まで黒くなり、刻一刻と闇が濃くなるイヅナ。この状況になっても多分、あの神器が使えれば、覆せる。

 アンラ・マンユ戦で使った、蒼色の光を放つあの神器――。

 あれさえ使えれば! 

「いくぜ、イヅナ!」

 先手必勝だ! 

「いいの? 私ごと斬るの? また、仲間を失うの? 自分の、手で」

「……」

 理解してる。これは相手の策略だと、頭ではわかってる。なのに、なのに……。イヅナの眼前で、<魔王殺しの聖剣>の切っ先が止まってピクリとも動かない。いや、動かせない……。

 結局俺は、どんなに決意を固めようと、仲間は斬れないわけか。例え、斬るのがその中にいる闇だったとしても、仲間に剣を刺すのが怖いんだ……。失敗して、失うのが不安なんだ……。

「……まさか、こんな言葉で動きを止めれるなんてね」

 ボオッ!

 前へと手を突き出し、火の球を繰り出してくる。

 狐火――いや、黒い!? これも影響受けてるのかよ! 

 クソッ、間に合え!

「絶剣技、四ノ型――焔切り!」

 縦に、振るった白銀の剣が炎を打ち払う。こんな炎、纏う価値もない。

 しかし、無理な体勢から絶剣技を放ったからだろう。この後の一撃は、避け切れなかった。

「しっかり見てないと。忘れちゃダメだよ。私が一番得意なのは、空間跳躍なんだからぁ」

「があっ……っ!」

 左肩に短刀が突き刺さる。

 その後も何本か振ってくるので、地面を転がりながらやりすごし、刺さった短刀を抜き取る。

 結構深く刺さったな。

「ここまで短刀に手を焼いたのは初めてだな……」

 冗談混じりにそうこぼすが、いまの俺には余裕がない。なにしろ、魔弾を受けたうえに、左肩をやられた。満足に剣はふるえないぞ……。

「だったら、出てきてくれ!」

 あのときのように、もう一度、力を貸してくれ! あの蒼色の光を、もう一度! 

 祈るように、あの神器を意識しながらイヅナへと向かい走る。

「あぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 痛む左肩を無視し、左手をイヅナへと向ける。

 頼む! 俺に力を! 

「なあに、それ? 左手を私に向けても、なんにもならないよ?」

「――な、なんで」

「はあ、そんな遊びに付き合ってる暇ないの。じゃ、これで終わりね」

 神器、俺の中にあるんだろ? どうして、どうして出てこない! 

 イヅナの手から、特大級の魔力の球が造られる。

 でも、これくらいなら破ノ型で対応できるぞ。

「あの神器に頼れない以上、あとはもう、俺たちの剣技に賭けるしかねぇ!」

「じゃあね、おやすみ」

 手から撃ちだされた球は俺へと迫ってきて、

「絶剣技、破ノ型――烈華螺旋剣舞・十三連!」

 俺の剣技とぶつかることなく、姿を消した。

「な――」

 十三連続にもおよぶ剣撃は虚しく宙を斬り、そして――その瞬間を狙っていたように、俺の背後から、撃ちだされた魔力の球は出現した。

「はい、おっしまい。さっきも言ったじゃん。私が一番得意なのは空間跳躍だって。私の事ばかり考えすぎて、戦闘に集中できてなかったんじゃない?」

 ダメだ、この位置からじゃもうかわせない。

 大きすぎて、横に跳んでも無駄だろう。クソ……。

 諦めかけた俺と魔力の球の間に、一筋の閃光が降り立つ。

 その瞬間、魔力の球は光によって撃ちぬかれ、霧散した。

 そして、聖なる波動を放つ槍が、俺の目に映った。

「散歩がてら来てみれば、面白い光景があるものだ。つい割って入ってしまった」

「曹操、勝手なことしないでくれる? カイトを見に来たあたしに着いて来ていいとこまで取るとか無しでしょ」

 どういう、ことだ?

 長い銀色の髪を振り乱しながら怒る少女と、漢服を羽織った若い男が、俺の前に降り立っているのだ。

「まあ待てヴァーリ。いまは言い合いよりも、目の前のあれをどうにかしようじゃないか。ああ、キミがヴァーリの言っていた面白い人間だな」

「曹操、自己紹介も後にしてくれる? というか、カイトに紹介させないから」

「やれやれ……」

 な、なにがどうなってるんだ?

 いや、助かったのは事実なんだが……。

「ヴァーリ、おまえどの面下げてここにいるん――」

「いまは我慢してよ、カイト。今日――いや、いまだけは、あたしたちはキミの味方だからさ」

 ……。

「それにしても、あれは妖怪か? なにか邪悪なモノを感じるが」

「……邪神、だと思う。確証はないが、邪神アンラ・マンユに関係ある奴の力が、イヅナに宿っちまっててな」

 曹操の疑問に、俺が答える。

「そうか、異形も異形だな。面白い」

 そう言い、曹操は手に持つ槍をイヅナに、闇に向ける。

 っていうか、あの槍って……。聖槍、だよな……。神滅具のひとつ『黄昏の聖槍』だ。

 ヴァーリと一緒にいるってことは、『禍の団』が所持してんのかよ。イヤになる話だな……。

 と、俺の気持ちも半場に、イヅナが先ほどと同じように魔力の球を繰り出してくる。それも、ひとつではなく四つはある。

「その程度、もう通じない」

 しかし、全く動じることなく笑みを見せながら光の奔流を解き放つ。刹那、極大の爆裂と共に魔力の球が全て消し飛んだ。

「おや? 手が闇に染まってきたか? 面白い、それでこそ異形のモノだ」

「おいあんた、なんで俺に協力してくれるんだ?」

「キミが人間だからさ」

「はあ?」

「――いつだって、異形を倒すのは、『人間』だ」

 




ちょっと無理やり感のある最新話です……。
ちなみに、イヅナを殺していいという前提なら、カイトくんは全く苦戦することなく倒せます。……多分!
次回から曹操はどう動くんでしょうかね。

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