ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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ちょっと久々の投稿になりました。
短くですがどうぞ!


5話

 一睡もできなかった夜は明け、俺たちはグレモリー家の広い庭の一角に集まっていた。

 俺とアザゼルが横に並び、その前方に部長率いるグレモリー眷族のみんなが並んでいる。みんなジャージ姿でのミーティングだ。俺? もちろん私服ですよ。

「さて、これから俺たちが言うのは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。すぐに効果の出る者もいるが、長期的に見なければならない者もいる。そのことは十分に理解しておけよ」

 アザゼルが話始める。

「そんじゃ、まずはリアス。おまえだ。おまえはこのまま普通に暮らしていても、大人になるころには最上級悪魔の候補になってるだろう。だが、いま強くなりたいんだろ?」

「ええ。もう負けたくないわ」

 部長は力強くうなずく。

「なら、この紙に記してあるトレーニングを、決戦日直前までこなせ」

 アザゼルが紙を部長に渡す。

 

 

 その後もミーティングは進み、朱乃さん、祐斗、小猫、アーシア、ゼノヴィア、ギャスパーと修行内容を言っていく。

 そして、最後に残ったのはイッセー。

 こいつの内容だけは悩んだ。どこまでやっていいのか、やれるのか。でも、禁手に到るには、やるしかないだろ。 

「さて、最後はイッセーだ。おまえは……」

 アザゼルが俺に視線を送ってくる。

 はいはい、俺が言いますとも。なんたって、この修行をさらに厳しくしたのは俺だからな。

「先生を呼んだから、そいつと修行だ」

「先生?」

 イッセーが問う。

「ああ、もうすぐ――ああ、来たな」

 空を見上げると、猛スピードでこちらに向かってくるドラゴンの姿。

 そいつは地響きと共に眼前に飛来した。

「アザゼル、よくもまあ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」

「ちゃんと魔王さまから許可をもらってるんだぜ? そんなこと言うなよ、タンニーン。それならこのカイトも同じだろ?」

 俺を指しながら文句を言うアザゼル。俺だって許可もらってるっての。

「彼は悪魔の協力者だとサーゼクスから伝わっている。なんでもすでにかなりの功績をたてているだとか。まったく、サーゼクスの頼みでなければ来なかったということを忘れるなよ」

「ヘイヘイ。――てなわけで、イッセー。こいつが先生だ」

 タンニーンは俺のことも知ってるわけか。『魔龍聖』タンニーン。元龍王の一角。いまじゃ最上級悪魔か――。まさかこうも早くにその姿を拝むことになるなんてな。イッセーの修行のためとは言え、少し豪華すぎる……。でもそれを言ったら俺も呼んじまったからなぁ。

「……マジですか?」

 とうのイッセーはなんかもう死にかけみたいな表情してるし。でもな、

「ゴメン、イッセー。呼んでるのはタンニーンだけじゃなくてな」

 俺の言葉を待っていたかのように、魔方陣が展開される。そこから姿を現したのは、青銀の髪を腰まで伸ばした女性――ティアマットだ。今日は人間の姿できたか。

 肌は病的な程白く、すぐにでも壊れてしまいそうだが、吊りあがった目に宿る悪戯を企むような、闘志に燃えるような感情が、その儚さとは対象的な印象を与えてくる。

 そんな俺の使い魔――仲間だ。

「ほう、タンニーンか」

「ティアマットだと? そうか、おまえが今回の修行の相方というわけか。よくおまえが赤龍帝の修行に付き合うと言ったな」

「……カイトに頼まれてな。仕方なくだ、仕方なく! でなければあんなのすぐに消している!」

 うわー、おっかねーな、おい!

 今回の修行のために彼女を呼んだのは俺が。相当しぶったが、最後は向こうが折れてくれた。替わりになにかいう事をひとつ聞くことで決着させられたけど……。 

「タンニーン、ティアマット。悪いが――」

「なぜ先に私を呼ばない! わ、私の方がおまえの中では優先順位は上だろ!?」

 ティアマットが俺に詰め寄ってくる。なにに怒ってるんだおまえは……。

「……」

「……」

 互いに視線を絡めたまま、無言の時間が続く。

 退かないなー……。

「……」

 あ、なんか顔赤くなってきてるし。これはあれか? 怒る前兆か? それはちょっと……。

 しかもなんか泣きそうだ。これはあまり見てられないし、仕方ない、面倒だが――

「ティアマット、タンニーン」

 

「言いなおしたわね」

「言いなおしたな」

「言いなおしたね」

 みんなが同じ反応を見せる。クソッ、うるせーよ!!

 ティアマットもなんでそんなに笑顔になってんだ! 

「悪いがこの赤龍帝、イッセーの修行に付き合ってほしい。ドラゴンの力の使い方を教えてやってくれ」

「……言いなおしたな」

「うるせーよタンニーン! 修行前にてめぇから鍛えなおしてやろうか!?」

「面白い。それもいいが、いまはやめておこう」

 この――

「なあ、カイト」

 弄られた挙句潰す機会もないのかと模索しているとき、イッセーから声をかけられる。

「なにもあんな強そうなドラゴンに頼まなくても、おまえか先生が教えてくれればいいだろ? ドライグだっているんだし、直接教わればいいだろ?」

「それだとすぐに限界がくるんだよ。ドラゴンの修行ってのはやっぱり――」

「実戦方式だ。なるほど、つまり俺たちにこの少年をいじめぬけと言うのだな」

 タンニーンが俺の言葉を繋ぐように言う。

「ドライグを宿す者を鍛えるのは初めてだ」

『手加減してくれよ、タンニーン。俺の宿主は予想以上に弱いんでな』

 ドライグ……。いや、確かに言っておかないと危ないけどさ……。でもそれだと、

「死ななければいいのだろう? 任せろ。限界までで留めてやる」

 さらに厳しくなりそうなんだよなぁ。

 ほら、イッセーも「死んじゃう! 俺、殺されちゃう!」って感じですげー慌ててますよ。

 アザゼルはタンニーンの言葉にうんうんと頷いている。

「私はカイトの頼みだから殺さない程度に相手してやる。――間違って殺しても許せ」

「最後怖すぎるんですけど!?」

 イッセーがティアマットの発言に反応し叫ぶ。

「だいじょうぶだイッセー。ティアマットが嫌いなのはおまえじゃなくてドライグだ」

「つまり?」

「あっ……。どのみちダメージ食らうのはおまえだったわ」

「カイト!?」

 諦めろイッセー。禁手はそんな簡単にできるものじゃない。

「さあ、そんじゃ各自頑張れよ。二十日後、おまえらがどれだけ変わるか楽しみにしてるぜ」

 アザゼルはそう言い残し、手を振りながら去っていった。

「それじゃあ私たちも修行メニューをこなすわよ」

「「「「「「はい」」」」」」

 部長が全員に指示を出す。

「イッセー、頑張りなさい!」

 部長がメニューをイッセーに渡す。アザゼルの以外にも追加かな?

「リアス嬢。あそこに見える山を貸してもらえるか? こいつをそこに連れていく」

「ええ、鍛えてあげてちょうだい」

 タンニーンは今度は俺に視線を向ける。

「おまえはどうする?」

 俺か……。まあ、決まってるんだけど。

「イッセーについてく予定だ」

「そうか。ならおまえも参加するか?」

「たまにね」

 それだけ話すと、タンニーンはイッセーを掴み羽ばたく。

「カイト、おまえは私が運んでやろう。乗れ」

 ドラゴンの姿になったティアマットが背中を見せる。

「頼むぜ」

 俺がそこに座ると、タンニーン同様羽ばたき、後を追う。

「部長ォォォォォォォォォォッ!」

 途中、助けを請うイッセーの声と、手を部長に伸ばす姿も見えたが無視した。

 始まってもないのに逃げちゃ、なにもできないからな。

 期限は二十日間。その間に、禁手に至らなくちゃいけない。

 それはイッセーが考えてるほど、簡単にはいかないんだろうな……。そして、俺が考えてる程度には、過酷なものになるだろう。

 

 

 


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