ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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4話

 大広間はあのあと、スタッフの手によって元通りに復元された。

 例の裂け目と、俺が掴んだ短剣をもとに大広間の捜査もされたが、特に異常は無く、今日のところは警戒されるだけとなった。

 

 そして、いまは若手悪魔同士、あいさつを始めたところだ。

「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

 最初にあいさつをくれたのは、先ほどヤンキーともめてたメガネの女性だ。

 知的そうだなぁ。ソーナ会長とどっちが上だろうか?

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 部長と会長が続く。

 イッセーや祐斗たち眷族悪魔は、主の後方で待機している。それはどこも同じ感じだ。だけど、俺は部長と会長に挟まれる形で、席に座らされている。

 え、なんで? と言われても俺だって知らないさ。

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 次に自己紹介したのはサイラオーグ。改めて見てもよくわかる。ここにいる上級悪魔の中では圧倒的だ。圧倒的なまでの存在感。

 強いぞ、サイラオーグは。

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

 最後に自己紹介をしたのは、なんだか優しそうな雰囲気の悪魔。といっても、俺が一番気に入らない悪魔なんだが。こいつの笑顔、緋夥多と同じ感じなんだよなぁ……。

 まあ、俺が何か言って場の空気を悪くするのは得策じゃないし、何かしているというわけでもないだろう。俺は沈黙してればいいんだ。

「それと、グラシャラボス家は先日、御家騒動があったらしくてな。次期当主とされていた者が変わり、先ほどのゼファードルが候補ということになった」

 サイラオーグの説明だ。

 つまり、本来はもっといい時期当主がいたわけか。あんなヤンキーじゃなくて。

 それにしても、部長と会長以外の眷族は強いのもいるけどなんかパッとしない奴ばっかだな。サイラオーグの眷族はいい感じなんだけど……。むしろ今のみんなじゃ厳しいな。

 それで、そろそろ訊きたいところなんだがな。なんで俺はここにいるんだい?

「カイト、話すまでもなく言いたいことが伝わってくるのだけど」

 部長にそう言われてしまった。ならさっさと進行してくれよ! 

「そうですね、とりあえずは自己紹介をしたらどうでしょうか?」

 会長がそう進めてくれる。なるほど、俺もこの流れに乗れということか。

「それじゃあ。月夜野カイトだ。一応人間で、いまは駒王町の悪魔に協力してる。人間だなんて甘く見るなよ。――あんたらよりは強いからな」

 最後の一言は余分かと思ったが、この場では言っておく必要もあるだろう。全員が部長たちのように人間である俺を認めるわけではない。なら、多少強引にでもわからせる必要がある。

「なるほど、人間とは思えんな。カイトと呼ばせてもらうが、俺の眷族にならないか?」

「いえ、私の眷族に」

 なんて思っていると、サイラオーグとシーグヴァイラから声がかかった。

 眷族の勧誘だと? そうか! 人間である俺を転生悪魔として眷族にしたい奴も当然出てくるか……。

「いや、俺は――」

「彼は協力体制にある者よ。それも、悪魔全体のね」

「ですから、特定の悪魔の眷族にはなりません」

 返事をする前に部長と会長がそう宣言する。

 お二人さん、なんとなくわかったよ。『私の眷族にならなかったのに他にはあげない』っていう気持ちが出てますよ……。

「それでは仕方ないか。では、今度俺と特訓をしよう。おまえとなら更に強くなれそうだ」

「……それくらいならいいぜ。俺を見下さない悪魔なら、協力するよ」

「見下すはずがないさ。おまえの活躍はサーゼクスさまから聞いている。――楽しみにしておこう」

 聞いている? サーゼクスさんが話したのか。

 いや、ありえないことじゃないか。

 俺がそのことを訊く前に、扉が開かれ、使用人が入ってきた。

「皆さま、大変長らくお待ちいただきました。――皆さまがお待ちでございます」

 なるほど、やっと移動か。

 みんなに続き、広間を出る。

「カイトさま。あなたはこちらです。魔王さまがお待ちですので、ついて来てください」

 出てすぐのところで待機していた使用人に呼び止められる。

 俺は別の部屋に来いってことか?

「わかりました。部長、俺はそっちに行くんで。いいですよね?」

「ええ、当然よ。私たちもするべきことをしてくるわ」

 部長はそれだけ言い残し、みんなと共に歩いていった。

「では、移動しましょうか」

 使用人先導のもと、俺は個室に案内された。

 

 

 しばらくの間、個室で待っていると、不意に扉が開かれる。

「やあ、カイトくん。悪魔の代表として、私が相手をするよ」

 個室に入ってきたのは、サーゼクスさんだった。

「なんの相手ですか? というか、俺の呼ばれた意味って……」

「いやなに、近日中に若手悪魔同士、デビュー前のレーティングゲームをしようと思っていてね。それで、キミにもその観戦をしてもらいたいと思って」

 笑顔で話しを進めるサーゼクスさん。

「それだけですか?」

「先ほど、若手悪魔の今後の目標や夢を聞いてきた。リアスはレーティングゲームでの優勝。サイラオーグは魔王に。そして、問題になったのがソーナのレーティングゲームの学校を建てることなんだが……。その一件も含め、第一試合はリアスとソーナになった」

 いきなりオカ研と生徒会の戦いかよ。

「それで?」

「キミにも二組の特訓をしてほしいという話さ。レーティングゲームは関係なしに、今日はその話をしたかったんだ。これから先、若手悪魔にも実力がなければいけない場面が何度もあることだろう。そのためにも、若手悪魔の特訓を行ってほしい」

「それはあなたたち魔王や上級悪魔がやらなければいけないことだろう?」

「しかし、上級悪魔は鍛錬をしようと考えない者ばかりでね。それに、身近な人物の方がいいと考えてのことなんだが、ダメだろうか?」

「俺の利益は?」

「いつでも冥界に来てくれて構わない。それと、キミの仲間の捜索にも、最大限の協力をしよう。また、キミの仲間には危害を加えない。どうかな?」

 ……。これは、俺の仲間を取り戻せればかなりいい条件だ。そして、最大限の協力……。

 それはつまり、

「アンラ・マンユと戦闘になった際、そのときも協力は得られるか?」

「――約束しよう」

「わかった。でもな、まだ俺は仲間を誰一人として取り戻してない。だから、その利益のうち半分は得られない。俺が見るのは部長と会長だけにしてくれ。やることが多い身なんでね」

「それもそうだね。わかった。とりあえずはこの夏休みの間、リアスとソーナは頼むよ。きっとアザゼルたちも力になってくれるだろう」

「はいよ」

 まさか、このために呼ばれたのか? 若手悪魔とも接点を持ち、そのまま特訓させるために? まあ悪くないかな。利益もあるし、みんなのレベルアップにもなる。がんばってみるか!

 

 

 

 グレモリー家本邸に帰ってみると、アザゼルがすでにいて、みんなの話を聞いていた。

「そんで、カイトはサーゼクスの頼みでこいつらの修行を見るわけだな?」

「まあ、そんなところだな」

「すでに各自のトレーニングメニューは決めちまってるんだが」

 アザゼルは俺にそう言ってくる。準備のいい総督さまだ。

「ならそれを俺にも見せてくれ。ちょっとやりたいことがあるんだ」

「イッセー関係か?」

「当然だろ?」

 アザゼルが悪い笑みを浮かべるものだから、ついつい俺もそれに乗って、笑みを浮かべてしまった。

「なんで俺の話になるんだ!?」

 イッセーが叫ぶ。

 他の全員が笑う中、イッセーだけは不安そうにしていた。

 

 

 その後、朱乃さんにお風呂に入ろうと誘われたが、もちろん逃げたさ。

 ただ、逃げた先――自室には、ガブリエルさんがすでに俺の布団で寝ていた。

 グレイフィアさんに訊くと、なんでも、俺と同じ部屋に泊まれるようにと頼んでおいたらしい。……俺の意見は?

 

 

 結局、俺はこの日ろくに寝れずに、修行開始の朝を向かえることになった。

 

 


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