ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

6 / 113
 みなさん感想ありがとうございます!
 ヒロインがみなさんの感想から決まりそうですね。中には「おい!」っていう感じのヒロイン候補を挙げて来てくれた方々も、ありがとうございます!
 みなさんのおかげもあって、楽しく書けてます。


5話

「二度と教会に近づいちゃダメよ

 数日経った日の夜。

 今日はオーフィスがお出かけ中なので、帰る必要の無くなった俺は、オカルト研究部に残っていた。

 目の前では兵藤が部長に怒られていた。

「教会は私たち悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで神側と悪魔側の間で問題になるわ。今回はあちらもシスターを送ってあげたあなたの厚意を素直に受け止めてくれたみたいだけど、天使たちはいつも監視しているわ。いつ、光の槍が飛んでくるかわからなかったのよ?」

 兵藤……。よくそんな危なっかしいことしたな。

 話を聞く限り、素直でいい奴なのかもしれないけど。

「あらあら。お説教中でしたか?」

「朱乃さん。背後から近づくとは何事ですか」

 いつの間にか俺の背後に朱乃さんが立っていた。

「あら、もう少し驚いてくれてもいいと思うのですけどね」

 ニコニコと冗談のように言う。

 いつも笑顔が絶えない人だな。

「すいません。周りの気配に敏感に反応する癖がありまして」

「フフフ、なら次はもう少し注意してみましょうか」

 当然、いつものニコニコ顔で言われた。

 やめてください、とは言えなかった。

「朱乃、どうかしたの?」

 部長が朱乃さんに気づき、そう問う。

 対する朱乃さんは、少しだけ顔を曇らせた。

「討伐の依頼が大公から届きました」

 

 

 ――はぐれ悪魔。

 爵位持ちの悪魔に下僕としてもらった者が、主を裏切り、または主を殺して主なしとなる事件が稀に起こる。

 悪魔の強大な力を自分のために使いたくなる。

 そんな者たちが、主のもとを去って、各地で暴れまわる。

 それが「はぐれ悪魔」。

 部長たちはそのはぐれを討伐するために街外れの廃屋近くに来ていた。

 俺も、無理を言ってこの場に同行させてもらっている。

 自分からは決して戦わない、という条件つきではあるが。

 制約を逃れ、野に放たれた悪魔ほど怖いものはないのだ。だからこそ、俺を戦わせたくないのだろう。

 この廃屋に、毎晩人間を誘き寄せ、喰らっている「はぐれ悪魔」がいるらしい。

 黒歌のことじゃなくて良かった……。

 とはいえ正直、いまのみんなが束になっても黒歌に敵うとは思えないけど。

 俺は今回の討伐対象が黒歌ではなかったことに大いに安心した。

 時間は深夜。暗黒に満ちた世界だ。

「……血の臭い」

 小猫がぼそりと呟く。

 俺にはそれはわからないが、殺気が充満しているのはわかる。

 こっちが本来の悪魔の在り方なのかもな。 

「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」

「マ、マジっスか!? お、俺、戦力にならないと思いますけど!」

「だろうな。だがら、今日のところは悪魔の戦い方の見学だろ」

 俺がフォローに入る。

「そ、そうか。カイトも見学なのか?」

「まあ、ねえ……?」

 無言で部長へ視線を向ける。

「ダメよ。カイトもイッセーと見てなさい」

 そこから部長たちによる悪魔講座が始まった。『悪魔の駒』についてのだった。

 悪魔はチェスの特性を下僕の悪魔に取り入れたらしい。

 つまり眷属全員、なにかしらの駒の特性を持っているわけだ。

 悪魔も面白いことを考える。

「部長、俺の駒は、役割や特性って何ですか?」

「そうね――イッセーは」

 部長がそこまで言ったところで、言葉を止めた。

 理由はすぐにわかった。

 立ち込める殺意がいっそう濃さを増したからだ。

「不味そうな臭いがするぞ? でも美味そうな臭いもするぞ? それによくわからない半端者の臭いもするなぁ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

 地の底から聞こえるような低い声音。

 半端者とは俺のことか?

「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅しにきたわ」

 部長が一切臆さず言い渡す。

 ケタケタケタケタケタケタケタケタケタ……。

 異様な笑い声が辺りに響く。

 あーあ。これはもう完全に化け物の類じゃんか。

 俺がいつも会ってるような悪魔とはまるで違うね。

 暗がりから姿がゆっくりと現れ始める。

 ずんっ。

 重い足音。下半身は巨大な獣の身体。上半身は裸の女性。

 形容しがたい異形の存在がそこにはいた。

 両手には槍らしき得物を一本ずつ所持している。

 大きさからして全長五メートルはあるだろうか。いや、もっと大きい?

 目の前にいるのは悪魔と呼ぶより、やはり化け物だ。

「半端者の存在ぃぃぃぃ! おまえが一番美味そうだぁ。まずは一人、おまえの身から喰らってやるわぁぁぁぁ!」

 バイザーは俺へと視線を合わせ、槍を振るってくる。

「なっ!? なんでカイトを!」

 部長は俺が狙われることは無いと思っていたのか。

 だから、部長の判断は遅れた。

 そして槍は俺に迫ってくる。

 自己防衛なら、文句ないだろ。

 だから――

「来い、エスト!」

 (――はい。私はあなたの剣。あなたが望むままに)

 右手の刻印が光を放ち、俺の手には白銀に輝く<魔王殺しの聖剣>が構築される。

 悪魔には、エストの方が効果あるんだよな。

 なんたって、魔王だって殺せるんだからさ!

「絶剣技初ノ型――紫電!」

 閃く稲妻のごとき光刃。

 その正体はなんのこともない、突きだ!

 突きはバイザーの槍とぶつかり、擦れあう鋼と鋼が火花を散らす。そして――

 キィン。

 鳴り響く甲高い金属音

 バイザーの握っていた槍は、手元を離れ後方に突き刺さった。

「さって、今のは自己防衛なんで勘弁してください」

 俺は一応のため、弁解しておく。

「え、ええ……」

 あれ? なんでみんな不思議なモノを見る目で俺を見るの?

「か、カイト……。おまえ普通に強いのかよ」

 兵藤が俺に向かってそうこぼす。

「なに言ってるんだ? あれくらいならできて当然だろ」

「……。……カイトを戦わせれば危ない目に遭うと思ってた私がバカだったわ」

「酷い言われようです」

 その後仕切りなおした俺達は、部長が裕斗たちの駒の説明を交えつつ、討伐が行われた。

 俺が驚いたのは、朱乃さんだ。

 バイザーに何度も何度も雷を落とし、楽しそうに笑っていた。

 部長からも、「彼女は究極のSよ」なんて告白もされた。

「……うぅ、朱乃さん。俺、怖いっス」

「すげー怖い……」

「怯える必要はないわ、イッセー、カイト。朱乃は味方にはとても優しい人だから、問題ないわ」

 俺と兵藤は互いに顔を合わせる。

「うふふふふふふふ。どこまで私の雷に耐えられるのかしらね? ねぇ、バケモノさん。まだ死んではダメよ? トドメは私の主なのですから。オホホホホホホッ!」

 きっと今、俺と兵藤が思っていることは同じだろう……。目がそう訴えている。

 ああ、俺だって思ってるさ。

 ……部長、目の前で高笑いしている人が心底怖いです……。

 それから数分間、朱乃さんのお楽しみは続いた。

 俺は静かに、視線を後ろへと向けた。

 

 

 なんてことでしょう。

 視線を前に戻した俺が見たのは、完全に戦意を失ったバイザーだった。

 そのバイザーに向かって部長は手をかざす。

「最後に言い残すことはあるかしら?」

「殺せ」

 バイザーから発せられたのはその一言だった。

 すでにあいつは、生きることを諦めてるってことか。

「そう、なら消し飛びなさい」

 ドンッ!

 部長の手の平から巨大でドス黒い魔力の塊が撃ち出される。

 魔力の塊はバイザーの全身を包み込む。魔力が宙に消えたとき、後にはなにも残されなかった。

 バイザーは静かに、消滅した。

「終わりね。みんな、ご苦労さま」

 これで終わりか。はぐれの討伐は初めて目にしたけど、呆気ないものだな。

 多分、うちに居座ってる黒猫の討伐となると、大掛かりなことになるんだろうけど……。

 はあ、バレないといいな。

 さて帰ろうというとき、兵藤が口を開いた。

「部長、あの聞きそびれてしまったんですけど」

「何かしら」

「俺の駒……っていうか、下僕としての役割はなんですか?」

 兵藤、それを聞くのか……。俺は嫌な予感しかしてないんだが。

 ニッコリ微笑みながら、俺の予想を裏切らない答えを部長は言った。

「『兵士』よ。イッセーは『兵士』なの」

 案の定、兵藤は一番下っ端だった。

 

 

「ただいまーって、オーフィスいないんだった……」

「帰ってきてすぐに落ち込まないでほしいにゃー」

 おまえはなんでいつもいつも普通に俺の家でくつろいでんだよ!

「黒歌。今日おまえご飯抜きにするぞ」

 黒歌はフフン、と笑ってキッチンの方を指差した。

 ……。

 俺の家って、いつから溜まり場になったんだっけ?

 キッチンには、ルフェイが鼻歌を刻みながら立っていた。

 俺に気づいたのか、一端調理の手を止めてこちらに手を振ってくる。

 無視するのも可哀想なので、振り返しておいた。

 いや、笑顔で手振られたら振り返すさ。

 今日は三人で過ごすのか……。ああ、俺の家の異常さを誰かと共存したい。

 できる程まともな相手……いないな。

「俺、先に着替えてくるから」

 それだけ言い残して、部屋に向かった。

 




 前回の話で、UAが2500を突破しました。引き続いてありがとうございます!
 お気に入り数も70を超えました。
 次からも頑張っていきたいです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。