ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

59 / 113
3話

「若手悪魔が魔王領に集まる行事に参加!?」

 なぜか今日も列車に乗せられた俺に伝えられたのは、若手悪魔が魔王領に集まる恒例のしきたり行事に、部長たちも参加するということ。部長と同じ年齢くらいの若手悪魔たちが一堂に会するらしい。なんでも、名門、旧家の跡取りたる上級悪魔がお偉いさんのもとに集まって、あいさつをしながら互いを意識しあうための行事らしい。

 これにはソーナ会長も参加するとか。

 で、そこに部長の眷族たるみんなが参加するのはわかる。よくわかる。

「……なんで、俺もいかなきゃならないんだ?」

 そう、俺の疑問はそこだ。

 俺は誰かの眷族悪魔でもなければ、そもそも悪魔というわけでもない。

 呼ばれる必要がないのだ。

「ごめんなさい、私もそれは聞かされていないの。お兄さまに言われたのは、『カイトくんも一緒に連れてきなさい』ということだけで」

 部長が俺の疑問に答えるが、明確な答えではない。

 これは、行ってみてからのお楽しみというやつか? そもそも楽しみでもなんでもないんだけどな。

 他の若手悪魔なんて興味ないんだけど……。

 

 

 途中、地下鉄に乗り換えたりし、着いたのは、都市で一番大きな建物の地下にあるホームだった。

 ボディーガードもいたのだが、どうやら地下までしか同行できないらしい。というか、俺のことを一切警戒していなかった……。最初に止めてくれてもよかったんだよ? 

 という俺の考えは無視され、当然俺も上へ向かうエレベーターの中だ。

 その中で、部長は俺たちを見回し、

「皆、もう一度確認するわ。何が起こっても平常心でいること。何を言われても手を出さないこと。――上にいるのは将来の私たちのライバルたちよ。無様な姿は見せられない」

 そう言った。表情は真剣そのもの――いや、いつも以上に気合も入ってるな。

 というか、それ俺の立場は? 

 なにしに行くのか目的も定かじゃないってのに……。

 俺がそれを口に出す前に、エレベーターが停止し、扉が開いた。

 部長たちに続き、外に出ると、そこは広いホールだった。

 待機していたであろう使用人の後に続いていくと、一角に複数人の人影。

「サイラオーグ!」

 部長は、そのうちの一人に声をかける。知り合いか?

 呼ばれた側も部長を確認し、近づいてくる。男性だ。黒髪の短髪で野性的なイケメン。いい体格してるな。というか、俺を除けば、この場で一番強い。

「久しぶりだな、リアス」

 部長とにこやかに握手を交わす。

「ええ、懐かしいわ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるの」

 従兄弟ねぇ。だからなんとなくサーゼクスさんに似てる顔つきなのか。

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 黒歌から少し習ったな。バアルってあれだろ? 魔王の次に偉いっていう。

 にしても、上級悪魔なんだろうけど接しやすい雰囲気だな。

 俺も少し話してみたいところだ。

 ま、いまは部長と話してるみたいだから邪魔する気はないけど。

「それで、こんな通路でなにをしていたの?」

「ああ、くだらんから出てきただけだ」

「……くだらない? 他のメンバーも来ているの?」

「アガレスもアスタロトもすでに来ている。あげく、ゼフォールドだ。着いた早々ゼフォールドとアガレスがやり始めていてな」

 すげー嫌そうに言うなぁ。表情だけでわかるぞ。

 やりあい始めた、ねぇ。部長やソーナ会長を見る限りそんな野蛮には見えなかったけどな。

 俺が視線を背けた瞬間だった。

 ドオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 建物が大きく揺れ、巨大な破砕音が聞こえてくる。

 ……もう、帰っていいかな? 

 だが部長は気になったのか、音の鳴ったほうへ向かった。

「まったく、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

 サイラオーグさんとその眷族も部長のあとに続く。みんな行くのか……仕方ない、俺も続くか。

 音の鳴った先は、大きな扉の先だった。

 そして、俺が足を踏み入れた瞬間、魔力の塊が俺の眼前へと飛んできた。って、

「なにしやがる!」

 俺はそれを左手で真上に弾く。

 女になるような安定しない力でも、これくらいのことならもうできるぞ。魔力を纏うことなんて余裕だ。

「いい腕だな。なぜ人間がいるのかと思ったが、なるほど」

 サイラオーグが独り言のように呟く。なんだ、俺のことを知ってるような言い方にも聞こえるが?

 いや、それより――。踏み入れた部屋は破壊され尽くした大広間だった。

 中央には両陣営に分かれた悪魔たちが睨みあっていた。殺意も気合も十分。まさに一触即発の状況だ。

「ゼフォードル、こんなところで戦いを始めても仕方なくはなくて? 死ぬの? 死にたいの? 殺しても上に咎められないかしら」

 そのうちの片方。女の悪魔が口を開く。殺す気満々だな。美少女なのになんて言葉を言ってくれる。って、メガネかけてるのね。ソーナ会長とキャラが被って――ることはないか。

「ハッ! 言ってろよ、クソアマァッ! 俺がせっかくそっちの個室で一発しこんでやるって言ってやってんのによ! アガレスのお姉さんはガードが固くて嫌だね! そんなんだからいまだに男も寄ってこずに処女やってんだろう!? ったく、魔王眷族の女どもはどいつもこいつも処女くさくて敵わないぜ!」

 なんだ、この悪魔は……。顔に魔術のタトゥー、緑色の髪も逆立ってるし、上半身裸ときたか。そんで体にもタトゥー。

 ヤンキー悪魔かな? 

 で、問題を起こしてるのはこの二人で、多分主な原因はこのヤンキーくんだろう。

「ここは時間がくるまで待機する広間だったんだがな。もっと言うなら、若手が集まって軽いあいさつを交わすところでもあった。だがな、若手同士であいさつしたらこれだ」

 サイラオーグがそう説明してくれる。

 なるほど、さっきの一撃もその余波みたいなもんか。

 俺、本当なら夏休みはほとんどをアンラ・マンユと仲間の情報集めに使う予定だったのに……。それに、八坂と九重んとこに行く予定だったんだが……。その予定も満足に実行できなくなった上に、こいつらのせいで無駄なことばかり――。

 ……――うぜぇ。

 俺は一歩前に踏み出し、そのまま前進する。

「お、おいカイト!?」

 イッセーが戸惑った声で俺を呼ぶが、知ったことか。

「部長、悪いけどこの場での問題行動、ひとつ増やすわ。あのヤンキーくん、ちょっと殴ってくる」

「か、カイト!?」

「――俺も止める気でいたんだが、彼がやるのか。面白い。この場に集められた人間だ。やらせよう」

 俺を止めようとした部長を、サイラオーグが阻む。

 彼は彼なりに、俺の力を知りたいだけかもな。でも、止めないでくれるのはありがたい!

「あんたら、それ以上争うってなら叩き潰すぞ。悪いがいま俺は怒ってるんでね」

 この一言に、二人の悪魔が揃って視線を俺に向ける。

「アガレス家の姫シークヴァイラ、グラシャラボス家の凶児ゼフォードル。はたして相手になるのか……」

 サイラオーグの声。

 それ、どっちに言ってるんだ? 俺に、ってことはないよな。

「人間? こんなところに来てる奴がいんのかよ! ハッ! 生意気なクソヤロウだ! いいぜ、まずはテメェからブッ殺してやるよッ!」

 わかりやすいキレ方だ。俺みたいな人間に止められちゃ、こうなるよな。

 でもな、

「――いま俺、怒ってるっつたろ?」

 拳をヤンキーの顔面へと撃ち込む。抉るように、鋭く!

 そのままの勢いで、下へ! 下へ! 下へ!!

 バキャッ!

 床へと叩きつけ、そのまま力を加える。

 その直後、床に亀裂が入った。って、やばっ!

 ちょっと力を入れたことに後悔しながら、すぐさまその場から後退する。

 視線を前方に向けると、亀裂はすでになく、そこにはポッカリと穴が開いていた。あ、ヤンキーがいねぇ……。落ちたな、下の階に。

「お、おのれ!」

「よくも主を!」

 ヤンキーの眷族だろう。ヤンキーを殴ったせいか、俺に敵意を向けてくる。

 ……もう少し、相手は選べよ。

 ヤンキーの眷族に背を向け、部長たちのもとに戻ろうとする。が、向こうは俺へと飛び掛る体勢に入り――。

「主を介抱しろ。まずはそれがおまえたちのやるべきことだ。彼に剣を向けてもおまえたちに得はない。そもそも相手にならん。それより、これから大事な行事が始まるんだ、主を回復させてこい」

 その一言でヤンキーの眷族の動きを止めたのはサイラオーグだ。

 眷族たちは、下の階へと向かっていった。

 にしても、ただ床に叩きつけるだけのつもりだったんだが――。まだ力の扱いは完全じゃないってことか。

 サイラオーグはもう一方のアガレス家の悪魔となにか話したあと、自分の眷族に言った。

「スタッフを呼んで来い。広間がメチャクチャすぎて、リアスや彼と話も出来ん」

 なんか俺も話し相手に入れられてる……。

 ってこら、俺の方を見るな! なんでこう、俺の周りは問題ばかりなんだ!

「――危ない!」

 唐突にイッセーが叫ぶ。俺に言ったのか?

「後ろだ!」

 サイラオーグが続く。瞬時に背後に視線を配る。

 ――ッ!?

 俺のすぐ後方には、次元が裂けたような穴が出来ていて、そこから短剣が一本投擲されていた。

「――このッ!」

 すんでのところで短剣の柄を掴み取る。

 短剣には気にせず、穴を確認するが、すでに消えていた。

「周りに警戒して!」

 部長がみんなに呼びかける。

 次出てきたらそこにすぐさま<魔王殺しの聖剣>を突っ込んでやる!

 全員が警戒し続けていたが、再度出てくる気配がない。

「もう、だいじょうぶなんじゃないすか?」

 イッセーがこの場の空気に耐え切れなくなったのか、そう言う。

「……そうみたいね」

 と、そこにこの部屋に入ってくる影があった。

 全員が揃ってそちらに向け構えをとる。

「よお、兵藤って、なんだなんだ!?」

 知ってる声。と思って顔を確認すると、

「匙……。よかった、おまえか」

 イッセーが安堵の声をもらす。そう、そこにいたのはソーナ会長と匙たち眷族悪魔だった。

「なんだよ、この状況……」

 広間の様子を確認した匙は、そう呟いた。

「その、なぁ……」

「ごきげんよう、リアス、兵藤くん、カイトくん。なにがあったのかは大体予想がつきます。私たちに一斉に構えをとったのはわかりませんが」

 どうやら、会長たちも到着したようだ。

 会長たちには、部長が説明をしにいってくれた。……さっきの、もしかして――。多分、間違いない。俺の知ってる限り、あんな真似できるのは一人だけだ。

 だとしたら、だとしたら――俺の仲間の中に、生存者がいる――

 




この章内で、曹操を出すかもしれない。そしてTSの可能性がある――かも。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。