ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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新章です。
今回から夏休みですので、冥界に行きます。
カイトくんは他の若手悪魔との絡みはあるのか?


冥界合宿のヘルキャット
1話


 俺の状態も元通りになり、少し経った頃。

 もう夏です。そして、夏休みに入った初日です。

「なんだかんだで、引越し終わりか」

 夏休み前に、俺の家に来ることを発表されていた朱乃さんの引越しがついさっき終わったわけだ。

 部長やイッセーをはじめとする部員のみんなや、なんとガブリエルさんまで手伝ってくれた。

 いいのか、四大セラフともあろう方にお手伝いさせて!

 ま、まあ本人は『こういうこともしてみると楽しいものですねぇ。またどなたか来ないですかぁ』と楽しんでおられたのでいいか。

「さて、みんなご苦労様。今日から朱乃はカイトの家で暮らすことになるから、急ぎの用件があったらカイトの家に行くか連絡しなさい」

「「「「「はい、部長」」」」」

 一通りの作業を終えたみんなへ、部長からの指示が出された。

 

「それで、みんなはこの後どうする? 今日はうちに泊まってくか?」

 もう夕暮れ時なのだが、せっかく手伝ってくれたわけだし、俺の家でよければ泊まってってもらって構わないんだけど、と俺は思っていたんだ。

 けど、

「いいえ、今日はやめておくわ。朱乃の荷物は大体運び込んだけど、まだ整理もあるでしょうから」

 部長のその一言により、本日は解散ということになった。

「それにしても、カイトの家ってデカイよな。何人暮らし用なんだ?」

 そんな中、イッセーが口を開く。

「大体10人なら簡単に入るよ。暮らしてくなら、15人くらいじゃないかな。……あーでも使ってない部屋多いし、20人ならいけるか?」

「うわぁ……」

 俺の答えに、イッセーはなんともいえない表情をつくりだす。

 なんだよ、自分で聞いといて。

「それはそうと、カイト。夏休みのことで話があるから、後日また来るわね。それと、次は眷族みんなで泊まりにこさせてもらうわ」

 夏休み? ああ、なんか話があがってたっけ。

 というか、今度は部員みんなで泊まりに来るんですね。

「わかりました。夏休みのことも、泊まりにくることも、楽しみにしてますよ」

「ええ。さあ、それじゃあみんな帰りましょうか。――朱乃、楽しく過ごしなさい」

「はい部長」

 最後にそれだけ言い残し、みんな各々の方向へ帰っていった。

「じゃあ、俺らも中入りましょうか」

「そうですね」

 

 

 

 朱乃さんの部屋は二階――俺の部屋の三つ隣を空けておいたが、そこにはダンボール箱がいくつかと、すでに置かれた棚などが設置されていた。

「これ、全部出すんですよね?」

「はい。カイトくんも手伝ってくれますか?」

「それはもちろん。これ、開けてもだいじょうぶですか?」

 と、俺が手近にあった箱に手を伸ばすと、

「それではなく、その隣のをお願いできますか?」

 朱乃さんから指示が飛んでくる。

 なるほど、こっちなら開けてもだいじょうぶな物が入ってるのね。

 伸ばしていた手を、少し横にずらして、ひとつ横の箱を手に取る。

 蓋をしているテープを剥がしてみると――

「朱乃さん!?」

 俺はすぐさま振り返り、笑顔を浮かべている朱乃さんを呼ぶ。

「なんですか、これは!」

 朱乃さんを見たまま、後ろにあるダンボール箱の中身を指差す。

「あらあら。間違えてしまいましたわ」

 舌を出しながら言う朱乃さん。いや、わざとだろこれ……。

「いいから、あの箱は朱乃さんが自分で整理してくださいよ」

「手伝ってくれると言ったのはカイトくんですわ。だから、お願いしますね」

 いや、確かに言いましたけども……。

 俺はもう一度、箱の中へと視線を向ける。……無理だ。

 ――そこにあるのは、色とりどりの下着類なのだから。

「朱乃さん、流石にこれはちょっと……」

「お願いしますね」

 反論を許さない朱乃さんの手により、俺は箱の中の全ての衣類を整理させられるのだった――。 

 後になって聞いた話だが、このときの俺を朱乃さんはこう言っていた。

「表情が完全に無になっていて、見ていて心配になるほどでした」と。

 そう思ってくれてたなら変わってくれと思うことになるのは、まだ少し先の話。

 

 

 

 

 

「……冥界に帰る? ああ、そうですよね、部長たち悪魔は本来そちらが故郷ですし。この時期に、というわけですか。それじゃあ、いってらっしゃい」

 先日、部長から夏休みの話があるというのは、このことだったのか。

 朱乃さんの引越しから数日。部長がすでに帰省の準備をしてきたのだろう。部員のみんなも連れて、うちに来ていた。

 朱乃さんも荷物をすでに準備している。

 なので俺も一応あいさつをしておいた。

 さて、どうやら話を聞いていると、8月の20日過ぎまで冥界で過ごすらしい。夏休み殆どいないな。

 ならその間、俺はこっちでゆっくりしてるか。ああ、八坂と九重に会いに行くか。

「カイト、いってきますって言ってるところ悪いけど、あなたも行くのよ?」

「はい?」

「ガブリエルさまも来られますわ」

 ……そういやテロのときそんな話があったような。

 

 

『少し先になるが、リアスたちが夏休みに冥界に来るんだ。そのときに一緒に来たまえ、カイトくん。そこで話を聞こう』

 

 そうだそうだ。確かにサーゼクスさんが言ってたや。

 つまり、俺も来いと。

 そのために俺を呼びに来たのが目的か。

「っていっても俺荷物とか準備してませんよ?」

「それならだいじょうぶですよぉ。堕天使の総督さまが準備しておいてくれましたからぁ」

 ガブリエルさんがそんなことを報告してくれる。

 チラリとみんなの後ろにいたアザゼルを見ると、

「悪いな、カイト。ガブリエル一人じゃ準備は無理だろうと思ってよ。おまえがいない間にお邪魔したぜ」

 そんなことを言ってきやがった!

 おまえの準備ってまともなのか凄く心配になるよ。

「ま、まあじゃあすぐに行けるみたいなんで、行きましょうか、部長」

「ええ。それじゃあ、行きましょうか」

 

 

 

 どのようにして行くのかと思ったら、俺たちが向かった先は駅だった。

 あのあと、服装だけは駒王学園の夏服に着替えさせられた俺なのだが、どうしたことだろう。

 目の前にエレベーターがあるが、それ以外は特に変わったことはない。

「じゃあ、まずはイッセーとアーシアとゼノヴィア来てちょうだい。先に降りるわ」

 と、疑問に思っていると、部長からイッセーたちが呼ばれた。

 降りるって、エレベーターでか?

「お、降りる?」

 イッセーも同じ考えなのだろうか? そんなことを部長に問う。

「入ればわかるわ。慣れてるみんなは順番に来てちょうだいね」

「はい、部長」

 祐斗がそれに応じる。

「って、俺はなにも知らないんですけど」

「あー……。カイトは後でも全然平気だと思ってるわ」

 少し間が空いてから返ってきた返事を最後に、エレベーターの扉は閉まる。

「俺の扱い、なんか雑じゃないか?」

「あはは……」

 祐斗、そんな乾いた笑い漏らすなし。

 

 次に、祐斗と小猫、アザゼルがエレベーターに乗っていった。

「で、結局どういう構造なんですか、これ」

 最後に残った俺と朱乃さんとガブリエルさんがエレベーターに乗り、俺はその際に気になっていたことを訊く。

「この駅の地下に、秘密の階層があるの。悪魔専用のルートで、普通の人間には一生たどり着けませんわ。この町には、他にも悪魔専用の領域がいくつも隠されているんですよ」

「最近の悪魔のみなさんはこんなこともしているんですねぇ。天界もできればいいのですが」

「それは初めて知りました。案外わからないものなんですね」

 今度、いくつか探してみようかな。

 でもなぁ。それで問題起こしたらと思うと実行に移せないし。まあそれは今度考えてみるか。

 というか、ガブリエルさん。天界は駅のエレベーターから行くにはちょっと無理がないですか?

 下がること一分。停止したエレベーターの扉が開く。

 視界に映るのは、広い駅のホームだ。

 人間界の駅を再現している感じか? 転生悪魔も多いだろうし、そういう気配りか?

「全員揃ったところで、三番ホームまで歩くわよ」

 俺たちを見た部長が、みんなに声をかけ、歩き出す。

「カイトくん。向こうに着いたら、楽しいことをたくさんしましょうね」

 小声で、右となりにいる朱乃さんからそう言われる。

 なんだかんだで、朱乃さんも夏休みは楽しみなのか? なんだがとても楽しそうな表情をしている。

「私も、向こうでお話したいことがありますから、時間をとってくださいねぇ」

 今度は左となりにいるガブリエルさんからだ。

 三すくみの会談のときにも、似たことを聞いた覚えがある。

 なんだろうな? というか、俺は長い期間冥界に行くわけだが、殆ど暇な時間になる、なんてことはないのか? 基本することないだろ。

 とか考えながら通路を右に行ったり左に行ったりしたあと、再び開けた空間に出た。

 眼前には列車らしきものもある。

 にしても模様が多いな。あ、グレモリーの紋様発見。それにサーゼクスさんの紋様もあるな。

「これはグレモリー家所有の列車よ」

 ああ、やっぱりか。もうなんでもありだな!

 俺たちはこの列車に乗り込み、冥界に向かい出した。

 それにしても、夏休みに入ったあたりからか? なんとなく、懐かしい香りがした日が幾日も続いたことがあった。

 今日は感じなかったが……。いや、まさかな。

 あいつが、帰ってくるはずはないんだ――。だから、それは全部俺の記憶が生み出した、偽物なんだろう。

 なあ、イヅナ。

 

 列車の中で揺られながら、俺はなんとなく思っていた。この夏休みは、簡単には過ぎてくれないであろうことを。

 

 




最後にフラグをたててしまったような……。
だ、だからって、回収するなんて思わないでよね!

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