ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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今回もまたまたイッセー目線でお送りします。
次回からこそカイトくんに戻すぞー!


15話

 いったい、なにが起こってるんだ?

 突如として出現した黒いゴスロリ衣装の女の子に、なぜこうも邪神は厳しい表情を見せるんだ?

 っていうか、カイトの家族!?

 妹か! 妹なのか!? クッソ! 俺もあんなかわいい妹が欲しかったよ神様! ――あ、神様いないんだっけ……理不尽だ…………。

 ……じゃなくて!

 誰なんだろ、あの子。小学生高学年くらいにしか見えないけど、強いのかな。

 と、その子は俺の側まできて、カイトへと視線を移す。

「ドライグ、カイトのこと任す。我が戻ってくるまでにカイトの容態悪化してたら……消す」

 うおぃ! なんておっかないことを言ってくれるんだ、この子は! というかドライグ!? 

 俺のこと、いや。赤龍帝のことを、ドライグのことを知ってる!?

 なんなんだ、あの子は……。

 

 俺に一言告げると、女の子は邪神へと向け音もたてず近づいていった。

 

「やはり理解できない。なぜ、あなたほどのお方がカイトと共にいる? そもそも、あなたの目的は、カイトとまるで関係ないはずだ」

 邪神は慌てているのか、早口にそう捲くし立てる。

「我、カイトの側にいたのは、カイトを一人にしないため……。でも、もう我が側にいる必要もない」

「それは、どういう……」

「カイトには、仲間、できた。だから我、今日をもって、我の目的のために動く」

「それなら、是非ともこの場から退いて頂きたい。私はあなたと争う気はなければ、ただカイトを――」

「我、おまえ消す」

 邪神が安堵し、話を続けようとした直後、女の子は邪神を指差しそう告げる。

 それを聞かされた邪神は悔しそうに顔を歪め、俺の側に倒れているカイトを睨んでいた。

「カイト……。その力を我が物にするには、その力ゆえ、障害もあるということか。おのれぇ……今日はうまくいっていたのに、全てがひっくり返された気分だ……。――だが、諦めるわけにもいかない」

『クソッ、なにが起きてんだ? それに、あの少女は――』

 後方から、アザゼルの声が途切れ途切れに聞こえてくる。

 俺たちの位置と、少しばかり距離があるせいか、女の子と邪神の会話は聞こえていないのだろう。

 おかげで、俺もアザゼルからの貴重な情報が聞こえない……。

 だが、下手に動けば邪神が放っておかないだろう。俺から部長たちのもとまで帰るのは難しいか。

 

「さて、カイトだけというのは当初より大分戦果が減るが、仕方ないか。一番の目的さえ手に入れば、全てが私のモノだ! そういうわけで、私はあなたをも倒し、カイトを手に入れる!」

 邪神が女の子に向け、魔力の塊を撃ち出す!

 デカイ! 俺たちに撃ってきたものと比較しても、今日一番の大きさだ。

 その一撃は女の子に命中し、あたりに土埃が巻き上がる。

 俺はその瞬間がハッキリ見えたが、校庭にポッカリと大穴が空くほどだった。いまは、俺の視界も土埃によって遮られてよく見えないけど……。

 ブアッ! だが突然、俺たちの周囲の土埃が上へと舞い上がり、視界が晴れる。

「なにが――ッ!?」

 だが、そこに映ったのは、邪悪な笑みを浮かべた邪神――アンラ・マンユの姿だった。

「いまの私では、あの方は倒せない。が、こうしてカイトを連れ去る策はあるものだ。さあ赤龍帝。カイトを渡せ。そうすれば、今日のところはもう帰る」

 俺に手を向け、甘言を放ってくる。

 カイト一人で全員助けてやるぞ。こいつはそう言いたいわけだ。

 でもな、部長がここにいたら、そんなことに絶対頷かない。他のみんなも、そうだろうな。

「当然、俺もそこで頷くわけねぇだろ。誰がテメェなんかにカイトを渡すかよ! ――俺たちの、仲間を!」

「おい、そこは頷くところだろ! はやくしろ! 時間がない! さっさとカイトを渡せ!」

 焦った様子で声を荒げる邪神。

 そして邪神は、俺に向け魔力の塊を向ける。先程ほど強力ではないが、いまの俺なら、食らえば重傷だろうな……。でも、わたさねぇ。

 

 

「これで最後だ。渡せ」

「……断る」

「そうか。なら、し――」

 それ以上、邪神が言葉を紡ぐことはなかった。

 傷ひとつない、先ほどまでと全く変わった様子のない女の子が、邪神の胴から下を綺麗に消滅させたからだ。

「我、あの程度ではダメージ、ない。アンラ・マンユ、残念だった」

「ガ……ッ。あの一撃で、無傷……か。さすが、無限をつかさどることだけはある……。クソッ、目の前にいながら、手に入らないかとは。おのれ、おのれぇ……」

 醜く顔を歪ませ、なおカイトに向け手を伸ばそうとする。

 その姿に、俺は恐怖した。

 ここまでの執着に、執念に。

 だが、

「我、おまえがカイトに触れるの、許さない」

 女の子が長く伸びた黒髪を揺らした瞬間、邪神は黒い球体に閉じ込められれる。その瞬間、球体ごと邪神は消え去った。

『覚えておけよ。まったく、とんだ邪魔ばかりだ。だが、次はこうはいかない。必ず、手に入れる。――ああ、そのときは、カイト。キミにもう一度、絶望を教えてあげるよ』

 最後に、邪神の声が辺りに響いた。

 そういえば、あの身体は元々緋夥多のモノだったな……。あいつも、利用されただけってことか。

 つまり、邪神はまだ生きていて、本体は全然ピンピンしてるってことだよな。ま、まあ、今日のところは勝った、ってことでいいんだよな……。あの女の子が来てなかったら、やばかったな。

 これであとはアーシアさえ来てくれれば――そうだよ、アーシアは!

「部長! アーシアはまだ来ないんですか!?」

 俺は、しっかりと聞こえるように大声で尋ねる。

「まだなの! まだ来る気配がない! 私たちの方から向かった方がいいかもしれない!」

 なんだって!? せっかく邪神がいなくなっても、カイトが助からないとなんの意味もないぞ!

 俺は急いでカイトを担ごうとするが、それよりはやく例の女の子が近寄ってきて、カイトのことを見ていた。

「カイト、怪我した?」

 俺に視線を向け問うてくる。

「あ、ああ。そうだよ。だから急いでカイトを連れて行かないと。俺の仲間に、怪我を治せる人が居るから、急いでそこまで連れてくよ」

「その必要、ない。我が治す」

 そう言い、横たわったままのカイトへと顔を近づけていき、お互いの唇を重ねた。

 ってはい!? なにやってるんだこの子は! いきなりキスですか!

 だが、注意深く見ていると、次第に傷口が塞がっていくのがわかる。空いていた穴も、もうなくなっていた。

 なにがどうなってるのかさっぱりです。

『そいつから龍の気配を感じるようになったな……』

 ドライグか。

 それってつまり、カイトがか?

『そうだ。大方、そこにいるオーフィスの仕業だろう。自身の力を宿させたな。それも、少なからず。完全に人型のドラゴンの完成というわけか?』

 つまりカイトはドラゴンとしての力を宿したと。なるほ――って、待て待て待て!

 オーフィス!? オーフィスってええ!? 神が恐れたっていう、『禍の団』のトップじゃねぇか! 冗談だろ、ドライグ!?

『いや、冗談ではない。以前と姿は変わっているが、間違いなくこいつはオーフィスだ』

 さ、最悪だ……。敵側のトップが出てくるなんて。

「ドライグのいう通り、我、オーフィス」

 女の子は俺を見てそう言う。

 確認すると、カイトの傷はもう完治しているみたいだ。

「……なんのために、ここに?」

「我、カイトのためにここまで来た。でも、我がカイトと家族なのは、今日まで。それを伝えるため、来た」

「どういうことだ」

 話を聞いていても、よくわからない。

「我、これから力貸していく。でも、カイトはこっちに来させること、できない。仲間といるべき。だから、お別れ」

 カイトの額に自分の額を当てるオーフィス。

「なにを、してるんだ」

「話したかった内容、記憶として残していく。起きたら、メッセージ、伝わる。ドライグ、話の内容、カイト以外には黙っていること、すすめる。カイトを、孤立させたくないなら」

 敵のトップといたから、ってことか? 確かに問題だけど、なんでだろ。

 このオーフィスからは、敵意も、悪意も感じない。ただ、カイトに対する思いだけしか、伝わってこない。

 本当は問題なんだけど、部長たちも聞いてないし……すいません。

「わかった。約束するよ」

「そう。我、よかった。――カイト――」

 聞き取れなかったが、カイトの耳元でなにかを最後に言い残し、オーフィスはこの場から消え去った。

 

 

「イッセー! さっきのって……」

 部長が心配そうに俺に駆け寄ってくる。

「兵藤一誠。あの少女だが――いや、いい。忘れろ」

 アザゼルはまだなにかに確信をもっていないのか、話を途中でやめにした。

 助かった……。あそこでなにか訊かれていたら、はやくもボロを出していたかもしれない。オーフィスだとバレていなければいいんだけど。

「さて、それで問題は――」

 アザゼルがある方向へと視線を向ける。

「あたしの処罰かな、アザゼル」

「そうだな。一度裏切ったんだ。簡単に済む話じゃねぇ」

「怖い怖い。やだなぁ、あたしはまだまだ強い人たちと戦いたいんだから、いまから宿敵くんとだけでも戦って――」

「そんなことしてると、早死ににゃ、ヴァーリ」

 ボロボロの状態で、まだ戦意を見せるヴァーリに、後ろから抱きつく女性がいた。

 いつからいたんだ……。気配がまるでなかった。

「そうだぜぃ、ヴァーリ。保護者の黒歌がうるさいからなぁ。今日のところは帰ろうや」

 爽やかそうな顔つきの若い男性が、空から舞い降りてきた。

「美猴じゃん。どうしたのー?」

「他の奴らが任務に失敗したから、撤退しようってことだよ。黒歌もさっきからうるさいし、さっさと帰ろうや。本部は本部で北の田舎神族と一戦交えるってことだしよ。でもまあ、おまえは休息が必要だな。派手にやられたな」

「……うるさいし」

 なに勝手に話しを進めてるんだ?

「というか、おまえら誰なんだよ」

「――闘戦勝仏の末裔だ。簡単に言うと、奴は孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」

「そ、そ、孫、悟空ぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 あいつが有名な!? 

「正確にはその力を受け継いだ猿の妖怪だ。それにもう一人も厄介や奴だぜ。まあ、詳しくはサーゼクスにでも訊くんだな。しかし、嫌な面子だな。相手にするのは面倒だぜ、こいつらは」

「ま、そういうことだ。それで悪いけど、俺っちたちは撤退させてもらうぜ」

 ヴァーリが女性に支えてもらいながら、笑顔を向けてくる。

「じゃあね、アザゼル、宿敵くん。カイトにも伝えておいてよ。今度はちゃんと闘おうってさ」

 ヴァーリが話している最中、ヴァーリを支えている女性がカイトを見ていた。

 哀しそうな、少し嬉しそうに。

 なんだ? あの人はなにを……?

「宿敵くーん。今度はキミも、相手してよね」

 そんな俺の考えは、ヴァーリの一言によってかき消された。

「いやに決まってんだろ! 俺は平和でエロに囲まれた生活を送るんだ!」

「ええー……。そんなんだと――」

 なにかを言いかけていたが、ヴァーリは二人とともに、地面に広がった黒い闇の中へ消えていった。

 




さて、あと何話でこの章終わるのかな

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