ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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今回も全てイッセー視点でいきます。


13話

 正面から敵対してよくわかる。

 バケモンだよ、あのアンラ・マンユって奴は。

 コカビエルのときなんか比べ物にならないくらいの殺気を感じる。

 でもな、俺だって仲間を、おっぱいを守んなくちゃいけないんだ! あんなヤロウに俺の大事なモン全部持ってかれちゃ困るんだよ!

「宿敵くん。あたしが斬りこむから、その間に特大の一撃、よろしくね。だいじょうぶ、隙はつくってあげるって」

 並び立つヴァーリから指示を受ける。

「だいじょうぶなのか? おまえ、もうさっきのでボロボロだったけど」

「宿敵くんが突っ込むよりは、時間稼ぎになると思うよ。じゃ、よろしく!」

 俺の意見を聞くより速く、上空へと飛び出していってしまう。

 ま、まあ確かにヴァーリの方が圧倒的に強いんだけどさ……。こういうのは普通男の役目というか。

「はあ……。気分切り替えて、やるか!」

 俺は邪神に向け、手をかざす。

 ヴァーリとの戦闘で動き続けていて、照準が合わない。でも、言ったからな。隙はつくるって。

 なら、信じるしかないだろ!

 左手に魔力の小さな塊を作り出す。

 まだだ、まだ足りない! 今回ばかりはこんなんじゃ倒せやしない! 

「もっとだ! もっとよこせ! 俺の仲間を守れるだけの力を!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 音声が何度も壊れたように繰り返される。そのたびに俺の力が高まっていくのを感じる!

 そのまま、決定的瞬間が訪れるのを待つ。

 ヴァーリと邪神が拳を打ち合う中、その瞬間はやってきた――。

 邪神から放たれた拳を掴みとり、その場に固定させる。

「捕まえたぁ」

『Divide!!』

 その位置から離れられなくなった邪神の力は半減され、ガクッっと感じる力量差が減少する。

 邪神も力が半減し、ヴァーリから逃げることができなくなった。

「宿敵くん、いま!」

「おう!」

 ヴァーリの合図に合わせ、邪神へと照準を合わせる。

「いっけぇぇぇぇッッ!!」

 籠手によって高められた膨大な魔力の一撃が前方に放たれる。 

 いままでで一番の攻撃だ! やられてもらうぜ、アンラ・マンユ!

「ちょ、大きすぎるわ、イッセー!」

 後方から部長の叫び声が聞こえる。大きいって何が……。

「宿敵くんのバカ! もっと一点に集中して絞って撃ってよ! ああ、もうっ!」

 アンラ・マンユを抑えていたヴァーリからも叫び声があがる。

 そう、俺もいまわかった。

 感情の高ぶりに呼応してか、俺の放った魔力の塊は、大きすぎたんだ。人一人ならすっぽり覆えるほどには。

 自分も巻き込まれると悟ったヴァーリの行動は、早かった。

 寸前まで引き付けて、あと少しで直撃というところで、

「この、貴様――ッ!」

「じゃあね、邪神さん」

 邪神を蹴り飛ばし、俺の放った一撃に突っ込ませ、巻き込まれるのを回避したんだ。

「結果、オーライ……?」

「まあ、そうかな。でも宿敵くん。ちょっとは力の使い方覚えようよ……」

 残念な子を見る目で言われてしまった。

 ごめんなさいね、力の扱い下手で。

 ドォォォオオオンッッ!!

 そんなやり取りをしている間に、俺の放った一撃が大爆発を起こし、轟音を上げた。

「流石にこれなら……」

「宿敵くん。さっき、あたしが単独で戦ったとき、あいつの力の片鱗を見たよ。あれは間違いなく――異質だ」

 仕留めたと思った俺のもとに、そんな言葉が放たれる。

 要するに、ここからが本番ってわけか。

「まったく、いやになるぜ。なんでこう、俺の周りには強い奴らしか来ないかね」

「いいじゃん、それ。あたしだったら最高だけどなぁ」

「嬉しそうに言うなよ。俺はな、俺は部長たちと楽しくエッチな生活を送りたいんだよ!」

「……宿敵くんはなんていうか、残念な子だよね、ホント……。宿敵なのがガッカリだよ。せっかくいい感じに実力つけてきてるのにさー」

「うるせえな! 懸命に頑張った俺の姿がいまの俺ってだけでだな――」

 文句でも言おうとした矢先、爆発で起きた煙が消え去っていく。

 だんだんと上空の様子が見えるようになっていき――

「流石に焦ったぞ、赤龍帝、白龍皇。力が半減したときにはどうしたものかと思ったさ。まあ、今のが最初で最後のチャンスだっただろうがな」

 アンラ・マンユは、何事もなかったかのようにその場にたたずんでいた。

 ところどころ火傷の跡や、煙を上げているみたいだが、それ以外にダメージを受けているようには見えない。

 異質、か。俺が戦ってきた中じゃ、完全にこいつが一番強い。

 俺とヴァーリ。二人を相手にしてこれだもん。

 俺だけだったら瞬殺されてるって、ホント。

「あーあ……。全然効いてないよね、あれ。強い存在がたくさんいるってのは嬉しいけど、いまあたるには早すぎるかな」

 ヴァーリも余裕はなく、邪神を睨み続けている。

「そう警戒するな」

 だが、力んだ様子のない邪神は、そう一言告げた。

「警戒なぞ、するだけ無駄だ」

 次に声が聞こえたのは、俺のすぐ近くだった。

 ――ッ!? 俺とヴァーリはすぐさま後ろに飛び退く。

 まるで見えなかったぞ! 気づいたときには、俺たちの目の前にまで邪神の姿が迫っていた。

「これしきも見えないか。ならやはり、私を倒すことは不可能。最初の一撃で終わらせるべきだったな、赤龍帝!」

 クソッ、こんなときまで俺は未熟だってことを思い知らされるのかよ!

「だがまずは、白龍皇――」

「カハッ……ッ!」

 ズドンッ! という音と共に、ヴァーリが宙に殴り飛ばされる。

 いまの一撃、一瞬だったけど、空間が歪んだ!?

 見ると、殴られたであろう箇所の鎧は弾け飛んでいた。

 一撃であの威力って、やばすぎるだろ!

「ヴァーリ!」

 俺は、彼女が追撃されることを恐れ、アンラ・マンユに挑みかかる。

「少し、待っていろ。あと一撃で、白龍皇は戦闘不能だ。そうしたら、カイトと共に連れて行く」

 俺の拳はかるくかわされ、カウンター気味に顔面に一発貰ってしまう。

「がはっ!」

 兜が破壊され、俺は数メートル飛ばされた。

 でもなぁ、こんなもんで寝てられねぇんだよ! 俺は立ち上がり、左手を強く握る。

 まずは一撃。そっから始める!

 背中の噴出口から魔力を一気に噴かせて一直線に向かう。

「突貫か? そういったバカは嫌いじゃないぞ。――だが、力量差を考えろ」

 拳が届くよりはやく、今度は魔力の弾で弾かれる。

 ガシャァァァァンッ!

 今度は校舎へと突っ込む。

 ぐ……いてぇ。俺ひとりだと、拳すら届かないのかよ……。

 カイトはこの先、あんなのを相手に闘おうっていうのかよ……。いまの俺じゃ、歯が立たない。

 けど、立とう。俺の仲間は誰一人、あんなヤロウに連れてかせねぇ!

 兜を直し、ダメージにより痛む体を引きずり、校庭へと出る。

「遅かったな、赤龍帝。いま、終わったところだ」

 始めに、邪神の声が聞こえた。

 そちらに視線を向けると、邪神の横には、ヴァーリが倒れ伏していた。

 綺麗な銀髪は血により真っ赤に染まり、鎧なんてどこにも無かった。

「最後までいい抵抗をしてくれたぞ。おまえがもう少し実力をつけていたら、こうはならなかったかもな。いや、カイトが油断していなければ、そもそも私が負けていた可能性もあるかな。ああ、そうだ、次はそこのリアス・グレモリーだ。強く綺麗な女はいい。私の手元で飼いならしてやろう」

「――黙れよ」

 フツフツと、怒りが感情を支配してくる。

 ああ、やっとわかった。今の俺の中にある感情。これが殺意なんだ。

「カイトも惨めだな。この程度の実力の者に協力するとは。おかげで、簡単に手元に置けそうだがね。力は弱いが、他にも何人かいい女がいるな。向こうの校舎の方。金髪に黒髪、青髪もいたな。全員連れて行こうか」

 会議室のある校舎を指しながら、笑みを浮かべる邪神。そっちは、アーシアたちがいる場所だろ。

 こいつは、なにもかも奪う気か?

「そして全員、俺の――」

「黙れっつってんだろうがァァァァッッ!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 俺の周囲が弾け飛んだ! 俺の全身はかつてないほどの質量のオーラに包まれていた。

「ほう。怒りによりドラゴンの力が跳ね上がったか。ヴァーリに届きうるな。面白い」

 邪神の声が聞こえるなり、すぐさま俺の正面へと移動してくる。

「もう少し遊んでや

「うるせぇ!」

 その瞬間に、拳を放つ。

 ムカつくその、顔面へ、鋭く撃ち込む!

「グッ……!? この……。まさか私のスピードに順応したのか?」

「そんなことできてねぇよ。俺はただ、正面に来たおまえを殴っただけだ」

 そう、俺は決してあいつの動きを見えているわけじゃない。ただ、攻撃に移る際にその位置に来て停まる瞬間を狙っただけだ。

「そういうことか。なら――」

 俺が拳を握りなおした瞬間だった。

「――手加減はやめにしよう」

 その一言が聞こえるよりはやく、俺の体は宙に舞っていた。

 頬のあたりが痛む。

 そして、今になって気づく。兜がまた、破壊されている!?

 どうなってんだよ、これ! 

 いや、それより速く、ますは体勢を立て直さないと!

「遅い」

「ぐあ……!」

 向きを反転させた俺に、魔力の弾がいくつも当たる。

 当たった箇所の鎧は壊れされ、修復が追いつかない。

「やはり、この程度か。もういい」

 振り下ろされた拳に、抵抗できず殴られる。

 ドシャッ。

 俺はなにもできず、地面に叩きつけられた。

「やはりまだ未熟だったか。もしやと思ったが、ベースとなる本人が弱すぎるな」

 俺の襟を掴み、持ち上げつつそう呟く。

「赤龍帝。恨むなら、カイトと出会ったことを、協力関係を持ったことを恨め。彼の存在は、私のもとこそふさわしい。とは言ったものの、よく頑張った。最後は楽に――死ね」

 手刀の形をつくり、オーラを纏わせていく。あれで一撃死ってやつか?

 ああ、抵抗したいけどできねぇ……それだけの力が残ってない……。これで死ぬのは、二度目か。

 すいません部長。俺、俺……。

 無慈悲にも、邪神の手が俺へと突きこまれた。

 

 

 

 

「どういう、ことだ……?」

 聞こえるのは、狼狽した邪神の声。

 俺の体には、まだ痛みはない。それどころか、突きこまれたはずの手は途中で止まっている。いや、止められている?

「アンマリ、スキカッテ、スルナヨ」

 普段とは違い、ゾッとするような声。無感情で、それでいて冷たい。

「まだ、動けたとは驚きだ」

「アア。キョウセイテキニ、セイギョ、ウバッタ。アイツノノゾミダ」

 いつものように笑みを見せ、そいつは言った。

「オレノナカマ、キズツケンナヨ」

「――カイト……。なるほど、中に宿る魔王の因子の暴走か。どうせなら闇に覚醒してほしかったよ」

 普段と雰囲気がまるで違うカイトが、アンラ・マンユの腕を掴み、止めていたんだ。

 

 


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