ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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こ、今回の章も長引きそうなんだからね


9話

 会談は順調に進んだ。

 ミカエルさんが意見の述べ、それにサーゼクスさんが肯定の意を見せる。

 主にこの二人の会話が続くのだが、たまにしゃべるアザゼルの一言でこの場が凍りついたりもした。

 それにしてもミカエルさんの隣に座ってる天使はかなりの美人だな。

 誰なんだ? 会話に参加してるわけじゃなく、聞いているだけに見えるが……。ウェーブのかかったブロンドの髪に、おっとりしてて優しそうな女性だ。

 俺がその女性のことを見ているうちに、部長の報告が終わっていた。報告というのは、先日のコカビエルの件だ。

 ヴァーリに連れていかれたコカビエルのその後や、この一件の細部はアザゼルが説明をしてくれた。

 だが、ミカエルさんも、サーゼクスさんも表情は硬い。まだアザゼルを不審に思っている点があるのだろうか。

「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、どうしてここ数十年神器の所有者をかき集めている? 最初は戦力の拡大を図っているのかと思っていた。天界か我々に戦争をしかけてくるのではないかとも予想していたのだが……」

「そう、いつまでたってもあなたは戦争をしかけてこなかった」

 サーゼクスさんの言葉を継ぐようにミカエルさんが意見を述べる。

 二人の意見を聞いたアザゼルは苦笑する。

「神器の研究のためさ。なんなら、一部研修資料もおまえたちに送ろうか? って、研究していたとしても、それで戦争なんか始めねぇよ。今更そんなもんに興味はない。だが、おまえらが警戒し過ぎて俺の研究の邪魔をされても困る。だから、手っ取り早く和平を結ぼうぜ。もともとそのつもりもあったんだろ? 天使も悪魔もよ?」

 和平をアザゼルから提示してきたか。

 堕天使の総督が和平なんて発言をするものだから、各陣営は少しの間驚きにつつまれた。

 部長や会長はまだしも、サーゼクスさまも多少なりとも驚いているのがわかるほどだ。

 しばらくして、落ち着いてきたミカエルさんが微笑みを浮かべながらいう。

「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。このまま三すくみの関係を続けても、いまの世界の害となりますからね。失ったものは大きいけれど、いないものをいつまでも頼るわけにはいきません。人間たちを導くのが、我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番なのです」

「我らも同じだ。魔王がいなくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望まない」 

「そう。次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。そして、人間界にも影響を与え、世界は終わる。俺らは戦争を起こせない」

 真剣な表情でそう話すアザゼル。

 ふざけているようで、彼もまた、しっかりと考えはあるのだろう。

 その後、会談は戦力の話だったり、各陣営との対応、これからの協力体制についてが話合われている。

「――さて、こんなところかな?」

「そうですね。私もその案で一度まとめてみましょう」

「んじゃあ、決まりだな」

 そうトップ陣が頷きあう。一通り終わったみたいだな。

「さて、俺はうまくやっただろう、カイト。どうだ、満足いく結果になりそうか?」 

 席から立ち上がり、俺にドヤ顔で言ってくるアザゼル。

「ああ。でも、俺がああいわなくてもこの結果に落ち着いていたんじゃないかな」

「……さあな。それで、どうなんだ?」

「……。……わかったよ。協力関係になるんなら、今度ゆっくり見せてやるよ」

 俺がそう答えると、目に好奇心を宿しだす総督。

 こいつ、このために和平を持ちかけたんじゃないだろうな……。

「アザゼル……その話、詳しく聞いてもよろしいですか?」

 後ろからミカエルさんの声。

 俺たちの会話、聞こえてましたか。

「カイトくん少しの間アザゼルをお借りします。その間は彼女とお話でもどうぞ」

 ミカエルさんの向けた視線の先。先ほどまでミカエルさんの隣の席に座っていた女性だ。

「あの人は、誰ですか?」

「ああ、そうですね。紹介していませんでした。彼女は私と同じ四大セラフの一人で――」

「ガブリエルと申します」

 女性天使が柔和な笑みを浮かべながら名乗ってくれる。

 ガブリエルって言えば、天界一の美女って名高いお方じゃないか! 相当人気もあるって聞いたことあるぞ!

「おや、もう彼女も来たことですし、この場は譲りましょう。――アザゼル。カイトくんとの話は今日の会談でどう作用したのか、あちらでゆっくり話しを訊きましょう」

 ミカエルさんはそう言い残し、アザゼルを会談の席に再び連れ戻した。

「ま、待ってくれミカエル! お、おいカイト! おまえもなんとか――」

「悪いな、アザゼル。彼女と話すことの方が優先だ。和平を結ぶんだ、だいじょうぶ。きっと生きてられるから」

 その会話に、サーゼクスさんが加わったことは言うまでもないだろう。

 数分後、室内にアザゼルの悲鳴が響き渡った。

 

 

「それで、話というのは?」

 仕切りなおし、俺は彼女――ガブリエルさんに視線を向けなおす。

「そうですねぇ。あなたには少し、謝るべきことがあったのでお話をしたかったんです」

「謝るべきこと? それって――」

 なんのことですか? という言葉を紡ぐよりはやく、違和感が襲ってきた。

 視界に映っていたイッセーたちの動きが一瞬停止する。

 この光景は、練習中何度も見てきた。そう、これはギャスパーの時間停止だ。

 

 

 

<イッセーSide>

「おっ、赤龍帝の復活か」

 アザゼルが俺の方を見て言う。

 最近何度も味わってきた感覚だったからわかった。いまのはギャスパーの神器の能力の影響だ。

 周囲を見渡すと、三大勢力のお偉いさん方全員と、部長、木場、ゼノヴィア、それにカイト以外は停まっている。ああ、『白い龍』も動けるみたいだ。

「な、なにかあったんすか?」

「どうやら――」

「テロだよ」

 俺の質問に答えてくれそうな部長の言葉を遮りアザゼルが言った。

 テロ!? な、なんでいまなんだ? こんな大事なときですよ!?

「イッセー、落ち着けよ」

 冷静な声音でカイトが話しかけてくる。

「いま、俺たちは攻撃を受けてる」

「しかたねぇさ。いつの時代も勢力と勢力が和平を結ぼうとすると、それをどこぞの集まりが嫌がって邪魔しようとするもんだ」

 アザゼルが続いて、そう説明してくれる。

 外の様子を見てみると、黒いローブを着込んだ魔術師みたいな連中がこちらへ魔力の弾に似た攻撃を放っているようだった。

「あいつらは?」

「いわゆる魔法使いって奴だ。それよりも、この状況を作り出したのはおまえらのとこの吸血鬼だな。おかげで外に待機してた俺たちの部下もダメだろう」

 アザゼルは室内の様子を見回す。停まっているみんなを、だ。

「ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている……。お兄さま、私が旧校舎に行きます。ギャスパーは私の下僕です。私が責任持って奪い返し、この状況を覆します」

 強い意志を持って部長が進言する。

「言うと思ったよ。妹の性格ぐらい把握している。しかし、旧校舎までどう行く?」

「旧校舎に未使用の駒である『戦車』を保管していますわ」

「なるほど、『キャスリング』か。それなら相手の意表を突けるかもしれない」

 聞いたことがあるな。キャスリング――『王』と『戦車』の位置を瞬間的に入れ替えさせる技だ。

 これなら、外に出る必要もない! 流石部長だ。

「だが、一人で行くのは無謀だな。グレイフィア、『キャスリング』を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」

「そうですね、お嬢さまともう一方なら可能かと」

 部長以外にも一人なら行けるってことか。なら、

「サーゼクスさま、俺も行きます!」

 俺が行くしかないだろ!

 サーゼクスさまが俺に視線を向けるが、すぐにアザゼルの方へ移る。

「アザゼル、噂では神器の力を一定時間制御する研究をしているそうだな。それで赤龍帝の制御は可能か?」

「……そういうことか。おい赤龍帝」

 アザゼルが納得いったように俺を呼ぶ。けどな、

「俺は兵藤一誠だ」

「じゃあ兵藤一誠。こいつを持っていけ」

 懐からなにかを取り出し、俺に投げてよこす。

 キャッチしてみると――手にはめるらしきリングだ。それも二つある。

「そいつは神器をある程度抑える力を持つ。例の吸血鬼を見つけたらそれを付けてやれ。制御の手助けにはなるだろう。もう一個はおまえのだ。『赤い龍』の力を使いこなせないんだろう? なら、はめろ。短時間なら、代価を支払はないで禁手になれる。そいつが代わりになってくれるからな」

 マジですか!? それなら俺が部長についていっても足手まといにならないかも!

「そういえば、あいつらは何者なんだ?」

 素っ気ない態度でカイトが口を開く。

 まるで、それを訊くことが義務であるから訊いているだけのような感じだ。

「俺が神器を集めていたのも、それが理由だ。備えていたのさ」

「備えていた?」

「ああ。だが、決しておまえたちと戦争しようってことじゃない」

「では?」

「――『禍の団』」

 カオス、ブリゲード……? 聞きなれない単語だ。

「この組織と背景が判明したのはつい最近。そいつらは三大勢力の危険分子を集めているそうだ。中には神器持ち――『神滅具』持ちも数人確認してるぜ」

「その者たちの目的は?」

 ミカエルさんがそう訊く。

「破壊と混乱。単純だろう? この世界の平和が気に入らないのさ。――テロリストだ。しかも、最大に性質が悪い。組織の頭は二天龍の他に強大で凶悪なドラゴンだよ」

 アザゼルの告白に、俺とカイト以外が絶句している。

 な、なんなんだよいったい!

「……そうか、彼が動いたのか。『無限の龍神』オーフィス――。神が恐れたドラゴン……。この世界ができあがったときから最強の座に君臨し続ける者が」

 全員が表情を険しくさせるなか、カイトだけは一人、

「……始まっちまったか……。もう動き出すなんて、聞いてなかったぞ……」

 寂しそうにそう呟いていた。

 




ガブリエルさんはここで登場です。
まあ、カイトとしか話してないのでこの先もしばらくは、オカ研の中ではカイトのみが知り合いとなります。

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