ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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8話

「……結局、なにもいえなかったな…………」

 朱乃さんの問いに、とうとうなにも言えずに帰路についた。

『しかたないですわ。今日のところは、なにも聞かなかったことにしてください。さっきの発言はなかったということで』

 そう気遣われてしまう始末だ。

 でも、そのおかげでわかったこともある。俺が、どういう表情をしてみんなに接しているのか。朱乃さんは気にしていないと言ってくれたが、俺としては情けない限りだ。

 理由は、わかってるのにな……。でも、とっさに話せなかったのは、怖いからか?

 いまの仲間に、俺の本来の仲間たちの話をするのが、そんなに怖いってのかよ……。

 

 俺はこの日、同じことがずっと頭から離れず、気づくと夜中になっていた。

 

 

「さて、おじゃまするにゃー」

「…………」

 夜中、そんな訪問者の声が部屋に響く。

 声は小さいものの、夜中であり、辺りからまったく音が聞こえない俺の部屋ではよく響くのだ。

「なんの用だ?」

「にゃ!? なんで寝てないにゃ!」

 驚き、二股の尻尾を逆立てる。

「俺が起きてたら悪いのかよ……理不尽な黒猫だ。なあ、オーフィス」

「我も、そう思う。カイト、起きていても問題ない」

「なんで私がいじられるにゃん!?」

 まったく、夜中なんだから静かにしろよ。近所迷惑だ……。ああ、俺にも迷惑だな。

「それで、もう一度聞くけどなんの用だ?」

「……我、カイトと一緒に寝にきた」

 平然とそんなことを言うオーフィス。

 おいおい。おまえはなにがしたいのかたまにわからないよな……。

「拒否権は?」

「ない。我、ここで寝る」

 こうなると俺が承諾するまで絶対にここから退かないな。まあ、承諾してもこの部屋にいることに変わりはないんだけど。

 しょうがない、オーフィスならいいか。

「……わかったよ。今日だけだからな」

「我、それで問題ない。今日だけと思ってきた」

 なんだ、本人も今日だけのつもりだったのか。なら一日くらい、我が儘につきあおうかね。

 無遠慮に布団に入ってくるオーフィス。

 小学生みたいな背丈だからな。妹と思えばどうってことはない……はずだ。

「私もお邪魔するにゃー」

「いや待て。おまえが入ってくると流石に狭い」

 三人も入ったらなぁ……。 

 それに黒歌はちょっと一緒に寝るには発育が良すぎる……。

「私だけのけ者!?」

 今日はいつもよりうるさいな。夜中だってこと忘れてるのか?

 って、オーフィス? なんだ急に。

 ごそごそと動き俺の腕の中に入ってくる。

「どうした?」

「……なんでもない。我、少しの間ここで寝る。カイトも、寝るべき」

 そう言い残し、オーフィスは目を閉じた。

 寝るってこと自体、オーフィスには必要ないのだが、珍しいな。

「わかったよ。なら少しだけ、寝させてもらうよ」

「私空気にゃん……。まあ、カイトが寝てからお邪魔させてもらえばいいにゃー」

 俺、なにも聞こえない。

 さて、少しだけ。少しだけ、考える事をやめて休むとしようか。

 オーフィスに習い、俺は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「さて、行くわよ」

 部室に集まるオカルト研究部一同。部長の指示にうなずく。

 今朝、起きたときにはもうオーフィスも黒歌もいなくなっていた。夜中はなにしにきたんだろうな。わからずじまいになったけど、また聞けばいいか。

 朱乃さんは、昨日のことを本当に気にした様子はなく、普通に接してくれた。

 俺も見習わないと。

 ちなみに、今日は三大勢力の会談の日だ。

 俺も、当事者の一人として参加は強制されている。

「か、カイト先輩も行くんですか?」

「ああ、悪いな」

 縋るように俺を見上げてくるギャスパーには申し訳ないが、俺も行かないといけないんだ。

「ギャスパー、今日の会談は大事なものだから、時間停止の神器を使いこなせないあなたを連れていくことはできないの」

 部長は優しく告げていた。

「ギャスパー、なにもないと暇だろうからってイッセーがいろいろ持ってきてくれたぞ」

「ゲームは好きに使っていいし、お菓子もあるからな」

「は、はいぃぃぃ!」

 頷いて返事をする。

 それにしてもイッセーもわりと後輩の面倒見いいし、先輩としていい姿だよな。

 三大勢力の会談か……。

 何事もなく終わればいけど。

 俺たちは部室を出て、会場となる新校舎の職員会議室に向かった。

 

 

 

 

 コンコン、部長が会議室の扉をノックする。

「失礼します」

 部長が扉を開くと、そこには――

 悪魔、天使、堕天使と別れ、各陣営のトップがテーブルを囲っていた。

 悪魔側。サーゼクスさんと魔王少女。給仕係としてグレイフィアさんもいるな。

 天使側。ミカエルさんと、もう一人いるけど、知らないな。凄い美人ってのはわかるけど。

 堕天使側。アザゼルと、ヴァーリも来てたか。

 ヴァーリとアザゼルが同時に俺を視線に捉える。

 一方は口を愉快そうに歪め、もう一方は挑戦的な眼差しを向けてくる。

「久しぶりだね、カイト。でも残念、今日は戦えそうにないんだよねぇ……。あたし、最近強い人と全然戦う機会ないと思うんだけど、どう思う?」

 捉えるばかりかそう話しかけてくる。

「俺が知るわけないだろ。それに、おまえが戦わないならむしろ有難いことだね」

「カイト冷たいー……」

 まったく威厳がねぇな。本当に白龍皇なのか?

 あ、待てよ。イッセーはもっと酷いからな。なんか納得。

「カイト。いま絶対俺をバカにしただろ」

「気のせいだ。ヴァーリのことは考えてたがな」

 最近イッセーはこういうことに敏感だな。だが、イッセーよりもヴァーリが話に食いついた。

「なになに、あたしのこと考えてたの?」

 長い銀髪を振りながら俺のところまで来て嬉しそうにするヴァーリ。

「否定はしないけど、それがどうしたんだよ」

「なんでもなーい。ただ、カイトがあたしのこと考えてくれてるのが妙に嬉しくてさぁ……。戦いたい相手の中にあたしがいると思うとなんだかいい気分」

 よくわかんない奴だ。

 二天龍なら、イッセーの方がわかりやすいタイプってことかな? ヴァーリは考えてることがイマイチ掴めない。戦闘狂発言はわかりやすいけど。

「ヴァーリ、席に戻れ。会談が始められないだろ」

「はーい」

 アザゼルに呼ばれ、席に戻る。

「じゃあ、私たちも席につきましょうか」

 部長がそう言い、俺たちを壁側に配置された椅子に促す。その席にはすでに、ソーナ会長が座っていた。俺たちもそこに並んで座る。

 さて、この先がどうなるのかが決まりかねない大事な会談だ。

 期待してるぜ、アザゼル。

 




短く進めました。
朱乃さんとの話が続かず、本編に戻ってしまいましたね。
次からもそのまま会談が続きます。

本当に他作品のキャラクターを出そうか迷ってきています。
出せる機会があればなんですけどね。カイトの仲間として、回想話とかで登場させようかな。

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