ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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さらっと流したかった回。
なのでさらっといこう。


7話

 次の休日、俺は朝早くに送信されてきたメールの着信音で夢の世界から起こされた。

 

 ……せっかくの休日だというのに、誰だろうか。俺の睡眠の邪魔をするような奴は黒歌以外考えられないんだが、あいつはメールなんか送ってこない。

 渋々メールへと目を向けると――

「イッセーも来るから俺も来い、だと? なんでイッセーのついでみたいな感じで睡眠の邪魔をされないといけないんだ……」

 だが、断るわけにもいかないだろう。

 これ、送ってきたの朱乃さんなんだから……。無視したらどうなるかわからないからね。

 ……いくか…………。

 俺はゆっくりと体を起こし始めた。

 

 

 

「にしても、呼び出された先が神社ってどうなんだ?」

 俺はイッセーと途中で合流し、指定させた場所まで来ていた。赤い鳥居に、そこまで続く石段。

 隣ではイッセーが苦笑いを浮かべている。

「そうだよな、悪魔にとっては超アウェーだし!」

 悪魔なら誰でもそう思うんだろうな。

 まあ、俺は人間だし聖女だし、むしろ大歓迎されそうな気もしなくはないが。

 と、俺は石段の下に見知った人物を捉える。俺たちをここまで来させた張本人――朱乃さんだ。

「いらっしゃい、カイトくん、イッセーくん」

「どうも、朱乃さん」

 それにしても、なんで巫女装束? 神社だからですか?

 当然、そんなことは聞いていない。

 それより先に聞くことがあるからだ。

「イッセーはまだしも、なんで俺まで呼ばれたんですか?」

「あらあら、気になりますか?」

「それはもちろん。ここに呼ばれたのは、朱乃さん以外に俺たちに用がある人がいるからじゃないんですか?」

「……よくわかりますね。他の方に話を聞いていたのかしら」

「まさか。勘ですよ。朱乃さん一人で、俺たちを呼んだりしないでしょう?」

「カイトくんだけなら呼ぶかもしれませんわよ? ――とりあえず、本殿へ行きましょうか」

 そう言い、朱乃さんが石段を登りだす。俺たちはそれに続いて歩く。

 呼び出した人物が俺の睡眠を邪魔するに値しないとわかったら、地中に埋めてさっさと帰ろう。

 人の恨みは根深いのだ。

「カイト? なんか顔怖いぞ?」

 気にするなイッセー。人は怒りを押さえ込むのが苦手なんだよ。

 つまるところ、俺は睡眠の邪魔をされたことを忘れてはいないのだ。

 

 

 石段を登り終えると、すぐに俺たち以外の存在に気づかされた。

「彼が赤龍帝と、コカビエルを倒したという人の子ですか?」

 輝くまでに金色の羽が舞う。

 豪華な白ローブに身を包んみ、頭部の上に金色の輪っかが漂う。――天使か。

「初めまして赤龍帝、兵藤一誠くん。それに月夜野カイトくん」

 堕天使の総督の次は、天使側のトップに会えるとは。

 その青年の背中からは、十二枚の翼が生えている。

「私はミカエル。天使の長をしております」

 俺の恨みと怒りを忘れさせる程には、ここにいるには大物過ぎる人物だった。

 

 

 

 

「実は、あなた方のどちらかにこれを授けようと思いましてね」

 朱乃さん先導のもと、本殿へ連れられた俺とイッセーに、ミカエルさんがそう申し出た。

 ミカエルさんが指差す方向へ向いてみると、そこには聖なるオーラが滲み出ている一本の剣が宙に浮いている。

 あれは――

「アスカロン……?」

「わかりますか。これはゲオルギウス――聖ジョージといえば伝わりやすいでしょうか? 彼の持っていた龍殺しの聖剣『アスカロン』です」

「随分と有名な龍殺しを持ってるんだな、天使側は。でも、俺はいらねぇよ。イッセー、おまえが貰っとけ」

 俺の発言を聞き、ミカエルさんは不思議な表情を見せる。

「何故ですか?」

「俺にはもう相棒とも呼べる剣が二本あるんで、アスカロンを貰っても持つ手が足りないんですよ。それに、聖剣なら俺のエストの方が余程強力ですし、必要としません。逆にイッセーはこれから白龍皇と戦う宿命にあるのなら、持っておいて損はないでしょう」

「そうですか。ではこれは赤龍帝に渡しましょう。こちらで術式を施しましたので、悪魔のあなたでもドラゴンの力があれば扱えるはずです。あなたが常に帯刀するよりは、ブーステッド・ギアに同化させるといった感じでしょうか」

「わ、わかりました」

 イッセーはその後、籠手を出しアスカロンを収納した。

 そして少しの間ミカエルさんと話をした。どうやら、ミカエルさんは今回の会談で悪魔、堕天使と和平を結びたいらしい。今回がそのチャンスだとかで、いろいろ難しいことを語ってくれたな。

「っと、時間のようですね。そろそろ私は行かねばなりません」

 天使の長も忙しいのか、帰る時間がやってきたらしい。

「あ、あの、俺あなたに言いたいことがあるんですけど」

「会談の席でか、その後に聞きましょう。必ず聞きます」

 イッセーが帰ろうとしたミカエルさんを止めようとしたが、そう約束され話は終了した。

 ミカエルさんは全身を光に包ませ、一瞬の閃光のあと、この場から消え去った。

 おいおい、ここにいた時間三十分もなかったぞ……。トップはそんなに忙しいものなのか。

 

 

 

 

「お茶です」

「ありがとうございます」

 ミカエルさんが去った後、イッセーは部長に連れていかれ、俺もそのときに帰ろうとしたんだ。

 でも、なぜか朱乃さんに捕まり、境内のお家にお邪魔している。

 なんでも、朱乃さんはここで生活しているらしい。

「それで、なんで俺だけ残されたんですか?」

「まえに、カイトくんの話は聞かせてもらいましたわ。だから、今日は私のことを少し聞いてもらおうと思って」

「……堕天使の、ですか?」

「ええ。カイトくんはもうなんとなくわかっているのでしょうけど、私から話ておきたくて」

 朱乃さんは表情を曇らせながら話を進める。

「私はもともと、堕天使の幹部バラキエルと人間の間に生まれた者です」

 やっぱり、そうなんだな。

 朱乃さんはそう言うと、背中から翼を広げる。

 いつもの悪魔の両翼ではなく、片方が悪魔で、もう片方は堕天使の黒い翼だ。

「穢れた翼……。悪魔になっても消えることのない堕天使の証。この羽が嫌で、悪魔になったの。――でも、生まれたのは堕天使と悪魔の羽、両方を持ったもっとおぞましい生き物。ふふ、穢れた血を身に宿す私にはお似合いかもしれません」

 自嘲する朱乃さん。

「カイトくん。カイトくんは、どう思います? 堕天使は好きじゃないわよね……。コカビエルに町を破壊されかけて、その仲間に殺されかけて、怪我させられて……。むしろ、嫌いよね」

「そんなことないですよ」

 俺の一言に、俯けていた顔を上げる。

 ここから先、上辺だけの言葉を紡いではいけない。本心から思えることだけを話そう。

 そうじゃないと、こういうときは伝わらないんだ。

「俺は堕天使だろうと悪魔だろうと、天使だろうと嫌いじゃないですよ。ただひとつ。アンラ・マンユとその下についてる奴らが嫌いなだけですから。それに、俺、朱乃さんのことは好きですよ? 優しい先輩ですし、俺の大事な仲間であることに変わりないし」

「でも、私は堕天使との血を引いている悪魔なのよ?」

 それがなにか問題あるのだろうか? 俺の仲間には、いろんな血が混ざり合った子も何人もいたぞ。それこそ、天使と悪魔だの、妖怪と堕天使だの。吸血鬼と人間なんてまだマシな方だ。なにより、

「俺だって、魔王と聖女ですよ? 男なのに聖女って名乗んないといけない俺の方こそ、気持ち悪いじゃないですか」

「カイトくん……」

「俺は、いまの生活が気に入ってますよ。なにより、朱乃さんが嫌いならプールのときだってあんな話しませんよ。俺はあのとき、普段の朱乃さんが側にいてくれるようにと思って話てたんですよ? その、堕天使の血が流れてるとか関係なく、いつも通り変わらない朱乃さんが側にいてくれると嬉しいなと思って。だから俺、朱乃さんのことは嫌いっていうより、好きですから」

「…………」

 あれ? 朱乃さん黙っちゃったんだけど……。俺、なにかやらかしたか?

 って、ああ! なんか泣き出しちゃったんだけど! ……笑ってる……? 

 涙を溢しながらも、朱乃さんは微笑みを浮かべていた。

「……そんな嬉しいこと言われたら……本当の本当に本気になっちゃうじゃないの……」

 はい? なんの話でしょうか?

「カイトくん、リアスがイッセーくんの家に住んでいるのは知ってる?」

 突然なんの話だ? まあ、それは部員みんなが知ってることだし俺もわかってるけど。

「知ってますよ。それがどうかしたんですか?」

「決めました。カイトくんの家はそれなりに広いんですか?」

「ええ。多分わりと広い方だと思います。一度に十人以上の団体客が泊まりに来ても余裕で泊まれるくらいには」

 それを聞き、機嫌のよくなる朱乃さん。な、なんだ?

 もう涙は収まり、表情はずっと笑顔を浮かべている。

「ふふふ、近々リアスと話してみますね、カイトくん」

 なにをですか!?

 正直話にまったくついていけない俺です。

「それで、ひとつお願いがあるんですけど、これから二人のときは『朱乃』って呼んでくれる?」

 上目遣いで懇願される俺。

 さっきはよくわからないことで泣いてたからな。出来る限りお願い事は聞いてあげないと。

「……朱乃」

「……いいものですね」

 なんか凄い嬉しそうだな。

「それにしても、抵抗なく呼んでくれましたね」

「俺の仲間には年上も多くいましたけど、みんな名前で呼び合ってましたから、慣れですかね」

 その後、どうでもいい話をしながら過ごしていた俺に、朱乃さんは突如として口を開いた。

「そうですか。やっぱり、ずっと引きずってるんですね。だから、いまの仲間である私たちを見るとき、その表情に迷いのような、悲しみのような、怯えたような。あまりよくない感情を浮かべるときがある。カイトくん、その表情をしているとき、なにを考えているんですか?」

 

 予想もしていなかった指摘に、俺はすぐに応えることができなかった。

 ただ、ただ朱乃さんを見ていることしか、できなかったんだ。

 

 




ずっと考えていたことですが、他作品のキャラがもう少しいてもいいかなーとか考えてるこの頃です。緋弾のアリアとかからも何人か欲しかったりしてます。
まあ出す出さないは横に置いておく感じ。まずはこの会談までの話を書いていきたいですね。流れはこの話を書き出したときから決まってるのではやく進めていきたい。

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