ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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今回は酷い話になりました。
ゴリ押しによるゴリ押しです。そしてわけのわからない文に……


6話

「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理してイッセーに連れて行かせた私が悪かったわ」

 ギャスパーの部屋の前で部長が謝っていた。

 アザゼルの訪問があった次の日、順調に進むと思っていた俺にとっては予想外の出来事だった。 

 なんでも、イッセーの仕事についていった際に問題が起きたらしく、元の状態に戻ってしまったらしい。

 部屋の中からはさっきから泣き声と、自分の力を嫌う想いだけが聞こえてくる。

「僕は……こんな神器いらないっ! だ、だって、皆停まっちゃうし、怖がる! 僕だって嫌だ! と、友達を、仲間を停めたくないよ……」

 

 ……ギャスパーは、小さい頃の俺みたいだ。

 因子の制御ができなくて、周囲を滅茶苦茶に破壊して、両親も失ったときの俺みたいで……。自分の所為だって、塞ぎこんで、周りの奴らと関係を持たないようにしていた頃の俺と、よく似てる。

「どうすればいいのかしら……。自分の眷族が大変なときになにもしてあげられないなんて、『王』失格ね、私」

 落ち込む部長。今回の一件、部長もギャスパーも悪くない。イッセーだって、してやれることをしようとした結果だ。悪いはずがない。だからこそ、

「部長。そうやって、大事にしてくれていることはちゃんと届いてますから。仲間の存在ってのはとても大きいものなんです。ただ、ギャスパーはまだ信じきれていないだけなんですよ、自分を」

 ギャスパーはなんとかしてやらないといけない。

「カイト……。でも、私にはなにもしてあげれない」

「だからこそ、俺たちがいるんじゃないですか。俺には、なんとなくギャスパーのことがわかります。同じなんですよ、多分。だからこそ、俺に任せてください」

 部長は嬉しそうに微笑み、俺に任せてくれた。

「ありがとう、カイト。ごめんなさい。それから、お願いね」

「はい、部長」

 部長は名残惜しそうに心配そうにギャスパーの部屋を一瞥し、この場をあとにした。部長は部長で、今度行われる会談の準備で忙しいのだ。

 

 

 さて、部長もいっちまったし、始めないとな。

 とりあえずは話し合い――は無理だろうから、勝手に話すか。

 俺はギャスパーの部屋の壁に体重を預け座り込む。

「なあ、少し話さないか? といっても、返事はしなくていい。俺が勝手に話すだけだ」

 予想通り、部屋の中から返事はない。

「俺の中にはさ、バカみたいに強い力が宿ってるんだ。神器とは別にな。いまでこそしっかり制御できてるけど、小さい頃は大変だったんだぜ」

 この話は、最近朱乃さんにもした気がする。

 ギャスパーにも、届くだろうか?

「全く制御できなくて、勝手に力が集まってきて、発散して。それで周囲に被害が出て――両親も、そのとき俺が殺した……。俺もさ、そんときは流石に思ったよ。こんな力、いらないってさ。自分の力が嫌いで、憎くてしょうがなかった」

「じゃあ、なんでですか……? なんでいまは、そんな姿を見せないで、普通でいられるんですか?」

 返事があったか。予想だともう少し話してからだと思ってたんだけど。

「俺の場合は、仲間の存在が大きかったんだと思う。いまはオカルト研究部のみんなといるけど、それまでは他に仲間がいたんだ。中学にあがる前に集まりだした集団なんだけどさ、同じような境遇にあった奴らばかりだったよ。そいつらと一緒に過ごして、喧嘩して、本気で殺しあって、仲直りして。俺はそうやって、本気で力を使っても気にしない奴らと過ごして、扱い方を覚えて、制御してきた。そんでもって、次第にそいつらの存在が大きなものになって、俺からいろんなものを奪った力であっても、仲間のために使えるなら、嬉しいことじゃないか、って思えるようになったんだよ」

「月夜野先輩は、強いですね」

「……。……強くなんか、ねぇよ」

 そう、強くない。俺は……俺は強いわけじゃないんだよ。

「いま話した俺の仲間、いますぐには会えないし、生きてるかだって不明だ」

「え……?」

 部屋の中から動揺したような声が聞こえてくる。

「守れなかったんだ。俺を狙ってきた敵がいてさ、あいつら揃いも揃って俺を逆に守りやがった……。圧倒的なまでに差があった敵を目の前にして、俺を守るために盾になったり、挑んでいったり……。あれ、辛いんだ。目の前で一人、また一人と倒れていって、でもその間際、俺を笑顔で見てくるんだ。最後の最後、俺を逃がしてくれた奴なんか「守れてよかった」って笑顔で言って来るんだぜ?」

 そのとき見せた笑顔が浮かんでくる。

 満足げに微笑む姿だ。そのあとすぐ、俺は逃がされ、そいつは闇に沈んでいった。

「よくねえんだよ……ッ! 俺は守りたかった。助けたかった。力を制御できて、強い力だって扱えたのに、なにひとつ守れなかった……。いまだに、そのときの夢をよく見る。襲撃されて、俺だけが逃がされて、何もできない俺を守るために次々血を流して消えてく仲間たち……。――もう二度と、そんな思いはしたくない。だから、逃げることをやめた。向き合って、力を高めて、そんで、取り返すために。なあギャスパー。おまえはいまの仲間――眷族のみんなのことは好きか?」

 ギィ……。

 ゆっくりと、扉が少しだけ開かれる。

「……はい」

 遠慮がちに放たれた答え。

「でも、僕が一緒にいても迷惑がかかるだけです……。人見知りだし、引きこもりだし……神器は制御できないし……逆に時間を停めて怖がられるだけです」

「俺はそうは思ってないよ。第一、俺には効果なかったしな。だから、制御できるまでは俺がしっかり面倒見てやるって」

 俺なら適任だろうよ。おまえが嫌う「停める」って行為ができないんだから。

 誤って神器を使っても、気をつかうこともない。

 それでも、ギャスパーが部屋から顔以外を出すことはない。まだ、ダメか?

「でも、僕がいてもみんなは――」

「手遅れになったとしてもか? この先、眷族のみんなは強い敵と戦うことだってあるだろ。そんな中、気づいたときには全員いなくなってました、じゃ嫌だろ?」

「それは……」

「みんなのこと、大事なんだろ? だったら、みんなと一緒に歩いてこうぜ? 俺は部長の眷族悪魔じゃないけど、おまえの面倒だって見るし、おまえが怖いと思ってるもの全部取り除いてやりたいと思ってる。だいじょうぶ。おまえが思ってるほど、仲間ってのは脆くない。部長に、みんなにおまえの力を貸してやってくれ。守られるだけじゃなく、守ってやれ、支えてやれ。――それは、あのとき俺ができなかったことだけど、おまえほど仲間を大事に思ってる奴ならきっと、できることだから」

 仲間のために神器を、自分の力を嫌う程だ。そんな仲間想いのやつが、できないわけないさ。

 部屋の中で迷っているギャスパーの様子がわかる。さっきから落ち着き無く動いている。

「本当に、そう思いますか? 僕なんかの力が、みんなのためになると……」

「思ってるさ」

 即答してやった。こういうとき、間を空けるのはよくないことだろうしな。

「……僕がいて、迷惑じゃないですか……。時間を停めて、怖くないですかね……」

「ああ、そんなわけないだろ。みんな、おまえをことを考えてくれてたぞ。心配してくれてたぞ。だから、もういいだろう。怖がるな、信じろよ、自分自身を」

 部屋の中で迷っていた様子が止む。

 次第に開けられる扉の間隔は大きくなり、いま、完全に開いた。

「おはよう、ギャスパー。引きこもり生活からは起きたか?」

「……正直、まだ怖いです。でも、でも――カイト先輩と、みんなとなら何とか出来そうな気がしてきました! でも、カイト先輩……先輩の仲間はみんな……」

「気にすんな。まだ全部諦めたわけじゃないんだ。取り戻せる可能性だって、残ってる。仲間を守るために、助けるために向き合った力なんだからな。おまえだって、そのために出てきたんだろ?」

「はい。ぼ、僕にもできることがあるならと思って……」

 まだ自信はなさそうだし、ビクビクしてるけど、これでやっと一歩踏み出せそうだな。

「じゃあ、お互いに仲間のために力を振るう訓練、頑張ってこうぜ!」

 俺はギャスパーに笑顔を向ける。

「は、はい! ぼ、僕も頑張りますぅぅぅぅッ!」

 いい感じじゃねぇか。

 仲間の大切さを知って、少しでも自分も力になりたいと思ってくれたなら、俺の話も意味はあったのかな……。

 

 部員のみんなは、あのときのように傷つけさせたりはしない。守ってみせる。

 そうじゃないと、俺が壊れそうだ。今度はきっと、後悔しないように――。

 

 

 

 

 その後、無事部屋から出てこれたギャスパーは、俺とイッセー、祐斗と共に談笑を続けた。

 そのとき、落ち着くという理由から、ダンボール箱に入っていたギャスパーだったが、まあよく似合ってることで。ダンボールヴァンパイア。うん、なんかこのタイトルでアニメ作れそうだな。

 まったく。ギャスパーはまだまだ手がかかりそうだ。

 




余談ですが、カイトの元々の仲間が一人か二人出てくる話がこの先(近々)あるかもしれません。

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