ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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2話

「それにしても、カイトくんはいい子ですし、私が将来部長のもとから独り立ちするとき、眷族にしたいですわ」 

「カイトは私の眷族になるを否定したのよ? 朱乃の眷族になるときが来るのかしら」

「あらあら。もしかしてまだカイトくんを眷族にできなかったことを後悔しているんですか?」

「してないわ! 本人に否定されたら仕方ないじゃない! いいわよ、イッセーが眷族悪魔になったのだし」

「カイトくんは実力もありますし、私たちのことをよく見てくれてますわ。ですから、私は意地でも眷族にします。部長のような失敗はしませんからだいじょうぶですよ」

「……朱乃、少し言いすぎじゃないかしら? 私だってカイトを眷族にしたかったのよ? 最近確信を持ったけど、あの力は普通強力だし、なにより仲間を大事にしてくれてるもの」

「部長にはイッセーくんがいるじゃないですか。カイトくんは私が貰ってもいいと思うんです」

「た、確かにイッセーはいるわよ!? でも、それとは話が別だわ」

「いいじゃないですか。イッセーくんは部長が。いい子のカイトくんは私がで」

「ちょっと! いまイッセーのことバカにしなかった!? なんでカイトにだけ『いい子』がつくのよ!」

「では『優しい』の方がいいですか?」

「そういう問題じゃないわ! イッセーのことももっとしっかり評価しなさいよ! 大体朱乃は男嫌いだったはずでしょう! どうしてカイトにだけ最初から興味持ってるのよ!」

「そういうリアスも男なんて興味ないって言ってたわ!」

「イッセーはいいの! 特別なの!」

「私だってカイトくんは特別よ! やっとそう思える男の子に出会えたのだから、いい評価をしたっていいじゃない!」

 

 よくわからんが声を張り上げ始めたな。

 うおっ!? なんか魔力の放ち合いになってきた! って危な! 真横を魔力の塊が横切っていった……。

「カ、カイト! よくわからないけどこれって原因俺たちだよな?」

「なにをいってるんだイッセー……。そんなわけが――」

 俺とイッセーの間を縫うように雷が通り過ぎる。

「なあ、イッセー……ここに居たら、死ぬ!」

「ああ、よくわかるよ。止めたいけど、止められないよ、あんな女の戦い!」

「「だったら逃げる!!」」

 俺たちは同時に、用具室へと逃げ込んだ。

 

 

 

「おや、二人してどうしたんだ?」

 用具室の奥からゼノヴィアが姿を現す。

「なに、ちょっとした避難訓練さ」

「ん? よくわからないがまあいいさ」

「それより、おまえはなんでこんなところにいるんだ?」

「初めての水着で着るのに時間がかかってしまってね。似合うかな?」

 そうビキニ姿を晒してくる。

「ああ、よく似合ってるよ。なあ、イッセー?」

「あ、ああ、そうだな。似合うと思うぜ」

 これは、あれだな。見惚れてたな?

「そうか、ありがとう。それで、二人に話があるんだが」

「なんだ?」

「私と――子供を作らないか?」

 ……。なんだって? 俺、まだ疲れてるのかな。コカビエル襲来の際に絶剣技大分乱発したからな。ああ、きっとそうに違いない!

「なんだ、二人とも聞こえなかったのか? よし、イッセー、カイト。どっちか私と子作りしよう」

「ええ!?」

「理由を聞こうか?」

「いままでは、神や信仰に絡んだことばかりしてきてね。だから、悪魔になったいま、私は新たに目標を立てた。それは、子供を産むことなんだ」

 それに俺を巻き込むなよ。イッセーなら適任だろ?

「だ、だからといって、俺たちでいいのか? っていうか、なんで俺とカイト?」

「それは当然だろ? 私は子供を作る以上、強い子になって欲しいと願っているんだよ。父親の遺伝子に特殊な力、もしくは強さを望む。その点では、赤龍帝や、コカビエルを倒せるだけの強さがあるキミたちが適任だと思ってね」

 なるほど。強い子か。確かにその点ならイッセーは適任かもしれないな。

「おいカイト! なに俺は関係ない、みたいな顔してんだよ!」

「すまん、その通りだから仕方ないだろ」

「くそっ! だったらもう俺が――」

「俺が、なにかしら?」

 イッセが覚悟を決めた瞬間、用具室の扉が破壊される。

 そこには部長が立ち尽くしていた。

「あらあら。カイトくんったら。こんなところでなにしてるのかしら」

 そこに朱乃さんも加わる。

 二人ともなんだか怖いオーラが漂ってませんか?

「これはじっくり話を聞く必要がありそうね。小猫」

「はい部長」

 おいおい、部員総出で俺たちを捕まえようってか? 俺はゼノヴィアに応じてないんだけどな……。

「イッセー。逃亡に犠牲はつきものだ。悪いな」

 ここ最近は手段を選んでたら後悔することばかりだったからな(主に黒歌の件で)。

 だからこそ、こういった状況での俺の判断は早い。

 小猫の方へイッセーを突き飛ばし、俺は用具室の壁を、

「魂すらも焼き尽くす黒き雷よ――闇魔閃雷!」

 消滅させて外へと逃亡した。

「カイトくん!? こんなところで力を使って逃げるなんて」

 背後で朱乃さんの声が聞こえるが、止まっている余裕はない。捕まれば何をされるか……。

(カイト……。こんなことで私を使うかしら?)

 生き残るためだ。悪いな。

(しょうがないわね、あなたのためでもあるのなら)

(私も使ってくれてもいいと思います、カイト)

 二人の精霊の話を聞きながら、俺は後ろの惨状から目を背けた。

 イッセーが、部員のみんなに運ばれていたのだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても刺激的な一日だった……」

 プールでの一件が収束し、俺とイッセーは校庭のほうへ歩いていた。

「にしてもカイト……俺あの後部長にアーシアにゼノヴィアに小猫ちゃんに、おまえが逃げたことで迫力の増した朱乃さんの相手して大変だったんだぞ」

 恨めしい顔でこちらを見てくるイッセー。

「いや、悪かったって。俺は俺で必死だったんだよ」

「でもな、それだけじゃなく――」

 ふとイッセーの文句が止まる。

 なんだ、校門の方を見つめたまま止まるなよ。

 俺も釣られてそちらに視線を向ける。

 少女だ。銀髪ロングの少女が校舎を見上げていた。銀髪といっても、エストと違って大分濃いな。

 身長は小猫より高いみたいだけど、黒歌程もないか?

 なるほど、イッセーが止まるわけだな。あれは美少女の類でも群を抜いてる。

「こんにちはー。いい学校だよね、ここ」

「え、あ、ああ……まあね」

 俺たちに気づいたのか、そんなことを言ってくる。イッセーもなんとか復帰し、返答する。

「なんだ、イッセー。知り合いなのか?」

「そ、そんなわけないだろ。うちは留学生も多いから、今度留学してくる人なんじゃないかな」

 俺たちの会話を聞いてか、少女は「ああ、そっかー」と言って手を打ち鳴らした。

「前回はあたしの顔見てないもんね。じゃあ改めて自己紹介するね。あたしはヴァーリ。白龍皇――『白い龍』だよ」

 途端、イッセーが距離をとる。

 額からは汗が滲み出ている。おいおい、ここで始めるわけじゃないだろうな。

 相手からは殺気を感じないんだ、早まるなよ。

 俺はイッセーの前に立ち、視線から隠す。

「いま始める気はないんだろ?」

「うん、ないよ。宿敵くーん? だいじょうぶだから安心していいよ?」

 笑顔を浮かべながらイッセーに敵意がないことを示す。

「あ、でもコカビエルを相手に簡単に倒したカイトとは、いまやってみたいかも。いまなら、全力で相手できるでしょ?」

 逆に、俺には誘うようにプレッシャーを放ってくる。

「いや、やめとくよ。俺には倒すべき存在がいるからね。いまヴァーリの相手をして体の一部でも欠損するわけにはいかない」

「それは、あたしに勝てるってことかな?」

「さあな。それはどうだろう。でも、いまやったら勝つのは俺じゃないかな」

 ヴァーリは笑顔になり、うんうんと頷いた。

「そうだよねぇ。確かにまだあたしの方が弱いんだよね。全力同士だとあたしが負けるって、カイトは何者?」

「人間だ。ちょっと変わった神器を宿してるだけのな」

「それはウソだー……。まあいいけど。知らない力と戦うのも楽しいし」

 今代の白龍皇はやっぱり戦闘狂だな。

 かわいい顔してるけど、考え方は完全に戦いを望んでるそれだ。

「今度、機会があったら二人ともやろうね。宿敵くんにカイト。どっちも楽しみにしてるよ? 宿敵くんは禁手になれることを願ってるから。カイトは――本気を見せてよ。コカビエルのときみたいのじゃなくて、もっともっと上があるでしょ?」

 そうか、緋夥多との戦闘は見てないってことか。それとも、他の力のことを言ってるのか? 神器であるエストやレスティア以外の俺の力のことを指してる? 

 

「これは、どういう状況かしら? 白龍皇。あなたが堕天使と繋がっているのなら、私の眷族と部員に必要以上の接触はしないでちょうだい」

 その後、介入してきた部長たちによって話は中断された。

 ああ、でもヴァーリが

「もう少しで終わるからちょっと待ってー。ね?」

 とのことで、この世界の強い奴らの話を少しだけした。

 その中に、アンラ・マンユの名も挙がったのには動揺した。邪神の名を挙げてくるなよ。

「じゃ、あたしそろそろいくよー。あたしもやること多くて大変な身だからね」

 そう言い残すと、ヴァーリはこの場を後にしていく。

 部長たちは厳しい顔をしていたな。大方、実力の差を感じたんだろう。

 でも、あいつは純粋な奴だと俺は思う。戦闘狂なだけで、悪意は感じなかったんだから。

 

 


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