ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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今回は少し飛び飛びに話が進んでいっているかもしれません。


7話

 考えはまとまっても、行動に移すにはいろいろと条件が多い。

 どうしたものか。

 街中をぶらぶらと歩いていた俺は、ファミレスの中に見覚えがある顔をいくつも発見した。

 これは――チャンスかもしれないな。

 

 

 中に入り、待ち合わせだと嘘を言いイッセーたちの席に近寄る。

 イッセーに小猫、それに匙もいるな。どうなってるんだあの面子は。向かいにはゼノヴィアとイリナか。イッセーも俺と似た考えを持ってるのか?

 ここからだと案外会話が聞こえるな。

 どうもゼノヴィアとイリナを食事に誘ったらしい。奢りってことはあの二人、金欠なのか……。

 そんな話を聞きながら、席まで到着する。

「で、私たちに接触した理由は?」

「決まってるだろ。エクスカリバーの破壊に協力させろ」

「「「「「え!?」」」」」

 瞬間、テーブルを囲っていた全員の視線が俺に集中する。

「か、カイト!? なんでここに……」

 イッセーが立ち上がり、俺に問う。

「偶然おまえたちを見かけてな。俺は俺で、エクスカリバーの破壊をグレモリー眷族が協力できるようにそいつらに掛け合う気でいたんだよ」

「そ、そういうことか。実は俺たちもそのために動いていたんだ」

 やっぱり、イッセーも同じ考えか。どうも、仲間思いな奴だよな。

 でもこれ、教会側の二人からしたらよく思われないよな? 悪魔と共闘だしな……。

「そうだな。一本ぐらい任せてもいいだろう。破壊できるのであればね」

 ただ、ゼノヴィアはすんなり許可をくれた。

 隣のイッセーは口をポカンと開けてしまっている。

 そういえば、最後の「破壊できれば」のあたりで一度俺を見たな。なにか意図があってしたことなのか?

「ちょっとゼノヴィア。いいの? 相手は悪魔なのよ」

「私たちだけで三本回収とコカビエルとの戦闘は辛い。それに、聖女がいるのなら協力したって問題ないだろう」

 そう言い、俺へと向く。ああ、いいぜ。正直、聖女って響きは大嫌いだが、こういうときだけはあって助かる。

「それに、私たちが力を借りるのはドラゴンと聖女からだ。悪魔からじゃないさ」

 なんか、子供の言い訳にも聞こえるけど、まあいいさ。

「良かったな、イッセー。これで動きやすくなる。はやく、あいつに教えてやろう」

「ああ、そうだな。でもカイトが独自で動こうとしてるなんてな」

「意外か? 俺、これでも仲間のことは大事にしてるんだぜ?」

「……そうだな。なんだかんだで俺とアーシアのときも、ライザーのときも協力してくれたもんな」

「おまえが大変だったときは、祐斗も助けてくれたろ? なら次は、おまえの番だ」

 イッセーは首を縦に振り、ゼノヴィアに向き直る。

「それでいいよ。じゃあ、今回参加するもう一人の仲間を呼んでいいかな?」

 携帯を取り出し、連絡を入れ始めるイッセー。

 さあ祐斗。おまえのためにまた仲間が動いてるぞ。それでもまだ、おまえは一人で行動するのか?

 

 

 

 

 

「話はわかったよ」

 聖剣破壊の計画を話すと、祐斗はすぐにファミレスまで来てくれた。

 だが祐斗は、エクスカリバー使いにそれを承認されるのは気に食わないらしい。いまも、その相手であるゼノヴィアを睨み続けている。

「やっぱり、聖剣計画のことで恨みを持ってるのね。でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だから――」

「だから計画失敗と判断された者が始末されたことが許されるとでも?」

 祐斗は憎悪の眼差しをイリナに向ける。

 いまの発言は、俺もいただけない。フォローになってないんだよ、それ。 

 

 

 その後も話し合いは続き、教会側、それと祐斗からも情報がもたらされた。

 祐斗にとっては、一番の収穫であっただろう情報もあったな。

 バルパー・ガリレイ。祐斗たちを聖剣計画で処分した者の名が挙がったんだ。ただ、どうにもいまは堕天使側についているらしい。

 コカビエルにバルパー……。そして聖剣をめぐる戦い。今回の一件、繋がっているんだろうな……。

 それといくつかの話、連絡先を交換して、教会組は去っていった。

「今回の作戦、なかなかに際どかったかもな。一歩間違えば悪魔と天使とで戦争が起きてたぞ」

「ああ、やっぱり?」

 俺とイッセーは思い切った行動をしたわけだ。

「……イッセーくん、カイトくん。どうして、こんなことを?」

「ま、仲間だしな。それに俺は前にも助けられてるわけだから、今回は俺の番かなって」

 祐斗の問いに即答するイッセー。

「俺としては、おまえに仲間といる時間ってものをもう一度考えなおしてほしいからなんだけどな。まあ、俺が言えたことじゃないんだけど…………」

 俺の言葉に困惑する祐斗。多分後半の意味がわからないんだろう。

「……祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは……寂しいです」

 そこに小猫も加わる。

 少し寂しげに表情を崩しながらも、祐斗の袖を掴み離そうとしない。

「……お手伝いしますから、だから……いなくならないで」

 これには祐斗もとっさに突き放せなかったのか、苦笑いする。

「ははは。まいったね。小猫ちゃんにそんなこと言われたら、僕も無視できないよ。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな」

 お、いつもの笑顔に戻ってきたじゃないか。

 その表情を見て、小猫も安堵したのか、小さく微笑む。

「よし! 俺らエクスカリバー破壊団結成だ! がんばっていこうぜ!」

 気合の入った声を上げるイッセー。

「……あの、俺も?」

 俺たち三人がイッセーのあとに続いて手を突き出そうとしたそのとき、匙が聞いてきた。

 そういえば、いたんだっけな。

「つーか、結構俺って蚊帳の外なんだけどさ……。結局、木場とエクスカリバーが関係あるってことでいいのか?」

 匙は祐斗の事情を知らずにここまで連れて来られたのか?

 なんか、不憫だ……。

「……少し、話そうか」

 祐斗自身からそう切り出し、聖剣計画のこと、自分の身に起きたことを話だした。

 匙はその話にいつしか涙を浮かべ、号泣しながら協力することを誓ってくれた。いいやつだ、とってもいいやつだ。

 ただ、匙の話を聞いてみて、わかった。こいつも、イッセーと同じなんだ……。

「木場のことも知ったし、いい機会だ! 俺の話も聞いてくれ! 俺の目標は――ソーナ会長とデキちゃった結婚をすることだ!」

 …………。俺は声が出なかった。いや、出たとしてもかける言葉が無かっただろうけど。

 だが、イッセーは違った。隣で涙を流しながら、何度も首を振っていた。

「匙! 俺の目標は部長の乳を揉み――そして吸うことだ!」

「……ッ」

 一拍あけ、匙の目からも涙が流れ落ちた。

 それからは、酷かった。

 二人して自分の欲望に素直に向き合い、話を続け、意見を出し合い始めたのだ。

 そのおかげか、イッセーと匙の仲はよくなりそうだけどな。

「……あはは」

「……やっぱり最低です」

 祐斗と小猫が嘆息する。俺は――静かにイッセーたちから意識を遠ざけた。

 


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