ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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4話

 次の日の放課後。

 俺は昨日の二人組に用があり、部活が遅れることだけを部長に伝えて出てきていた。

 二人組とはもちろん、教会関係者である二人だ。

 昨日の場所まで行くと、目当ての奴らはすぐに見つかった。

「よお、約束通り来たぞ」

「見てゼノヴィア! ちゃんと来てくれたじゃない!」

「そのようだなイリナ。これで来なかったら断罪ものだった」

 さらっと恐ろしいこと言われたよな、いま……。

 にしても、栗毛の方はイリナって言うのか。

「それじゃあ、さっそく案内を頼んでもいいかな?」

「ああ、そのつもりだ。俺も時間に余裕があるわけじゃない」

 俺たちは自己紹介を簡単に済ませ、早足に駒王学園オカルト研究部へと向かった。

 

 

 

「さて、ここがオカ研――リアス先輩の居る場所になるんだけど」

「そうか、ありがとう」

「これから先はいろいろ一般の人には理解できないことばかりだから、あなたは早めに帰って――」

 俺は二人が何か言い出したのを無視し、ドアを開ける。

「部長、遅くなりました。それと、部長に用がある二人組を連れてきたんですけど」

「ちょっと、なにしてるの! キミはここまででいいから、って部長!? キミ部員!?」

 イリナが驚きの声を上げる。

「騒がしい人たちね……カイト、あなたも話は聞いていきなさい」

「はい。ということだから、とりあえず中に入ってくれ。そんでもって、今回ここに来た理由をしっかり話してもらおうか」

 俺は二人に向き直り、入るように促す。

「悪魔じゃない……なのに悪魔と一緒にいるってことはキミも協力者ってこと?」

 イリナが目つきを鋭くする。

 やっぱ、悪魔と一緒に居るってだけで印象は悪くなるのかな。

「待てイリナ、早まるな。ただの部員だったらどうするつもりだ!」

「え? あ……ただの部員だったら悪魔なんてこと話しちゃマズいわ!」

 ゼノヴィアの指摘に途端に慌てだすイリナ。こいつらはここに何しに来たんだ……。第一、ただの人間を部長が部室に残すわけないだろうに。

 教会関係者ってどこかズレてるのかな。

「いいから二人とも座れって。話があるから連れてこさせたんだろ?」

「それはそうなんだが……。カイト、キミは悪魔のことを知っていてこの場に居ると思っていいのか? そうでないなら、いますぐにでも出て行くべきだ」

「彼は私たち悪魔側の協力者よ。この場にいるのは当然だわ」

 ゼノヴィアの問いは、部長によって解消された。ああ、これで俺は完全に教会の敵ってわけか。

「そう……。せっかく親切な人だと思ったのに残念」

 イリナが本当に残念だというようにへこむ。だがそれももう知ったことじゃない。この瞬間から、俺たちは敵同士なのだから。

 イリナを無視し部屋の中を見渡す。

 ソファーには部長と朱乃さん、反対側にゼノヴィアとイリナが座っている。他のグレモリー眷族のみんなは隅の方で様子を窺っていた。

 部長と朱乃さんは、二人が入ってきてから真剣な表情を崩していない。

 祐斗は――案の定、聖剣に気づいてやがる。瞳は怨恨の色で染まり、ずっと二人を睨んでいる。いま、この場で一番危ないのは祐斗だろうな。

「それで、ここに来た理由を話してもらおうかしら? 私としては、あなたたちにこの場に長く居て欲しくないの」

 最初に口を開いたのは部長だった。

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及びプロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました。

 重たい空気の中、話だしたのはイリナだ。

 エクスカリバーが盗まれた、ねぇ。聖剣盗んでなに企んでんだ?

「なあカイト、エクスカリバーってそんな何本もあるものなのか?」

 小声で疑問を口にしたのはイッセーだ。だが、俺はこの疑問に答えられなかった。

 理由は簡単だ。俺が話す前に、

「ゴメンなさいね。私の下僕に悪魔に成り立ての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」

 部長がそうイリナに提案したからだ。イリナはそれにひとつ頷き話を続けた。

「イッセーくん、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」

「いまはこのような姿さ」

 ゼノヴィアが傍らに置いていた、布に巻かれた長い物体の布を取る。

 現れたのは一本の長剣だった。

「これがいまのエクスカリバーか。うん、エストの方が出来がよさそうだし、綺麗だ」

「わかるのか。というかエスト? なんのことだ?」

 俺の感想に、ゼノヴィアが食いついてしまう。言うべきじゃなかったな……。

「気にしなくていい。それに、わかるさ。弱いけど、よく似てるからな」

 俺の返答の意味がわからなかったのか、渋い顔をされるが、話が戻される。

「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。折れた破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。そのとき、七本作られた。これがそのひとつ」

 はぁ……もう少し魅力的なら一本くらい欲しかったんだけど。こんなんじゃアンラ・マンユにダメージなんか通らないな……。

 所詮は折れた聖剣ってことか。

 

「私の持っているのは『破壊の聖剣』。七つに分かれた聖剣のひとつだよ。カトリックが管理している」

 イリナの方は長い紐のようなものを懐から取り出す。

 その紐に意志があるようにうねうねと動き出し、一本の日本刀へと姿を変える。

「私の方は『擬態の聖剣』。こんな風にカタチを自由自在にできるの。このようにエクスカリバーはそれぞれ特殊能力を有しているの。こちらはプロテスタント側が管理している」

 自慢げに言っているが、どうにも俺には響いてこない。やはり魅力を感じないからだろうか。

「イリナ……悪魔にわざわざエクスカリバーの能力をしゃべる必要もないだろう?」

「あら、話したからって悪魔の皆さんに後れは取らないわ」

 自信満々に言ってくれる。というか、俺はそこにすら入ってないのか。

 少しは俺にも注意しとけよ。 

 というか、二本もエクスカリバーを見せるもんだからさっきから祐斗のプレッシャーがどんどん強まっている。やめろよ、抑えろよ! いますぐに破壊するなんて思うんじゃないぞ!

 

「それで、その話がなんの関係があるのかしら?」

「聖剣が奪われた話はしたな。いまその聖剣は、日本に、いや。この地に持ち込まれている」

 部長の目が細まる。

「エクスカリバーを奪ったのは?」

「グレゴリの幹部、コカビエルだ」

「コカビエル……。古の戦いから生き残る堕天使の幹部……。聖書にも記された者の名前が出されるとはね」

 部長も相手の名前に苦笑していた。

 堕天使の幹部と来たか。それも戦争を続けたがってるふざけた奴だろ? なんだか話が嫌な方向に流れてきてないか?

「それで、私たちの注文だが、私たちの戦いが終わるまで一切事件に関わるなということだ」

「ずいぶんな言い方ね」

「本部は悪魔と堕天使が手を組む可能性があると見ているからね」

「私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて。魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!」

 部長の瞳に冷たいものが宿り、言葉にも怒気が含まれる。これはかなりキレてるな。

 まあ、当然と言えば当然か。自分の領土で起きている事に干渉するなと言われ、その理由が他の組織と手を組まれたら困るからだと言われたら、そりゃキレる。

「それが聞けただけでも十分さ」

「正教会からの派遣は? まさかあなたたち二人で堕天使の幹部から聖剣を取り戻すつもりではないでしょう?」

「いや、私たち二人のみだ」

「死ぬつもり? 相変わらず、あなたたちの信仰はわからないわ」

 部長の問いから始まった話は妙な方向へ流れ、イリナが口を挟む。

「我々の信仰をバカにしないでちょうだい。ね、ゼノヴィア」

「まあね」

 これが教会関係者の覚悟なのか? 正直、やっぱりイカレてると思うよ。これが信仰だとしたら、間違ってる。

「さて、言いたいことは伝えた。そろそろおいとまさせてもらおうかな」

「そうね」

 二人が席を立ち、部室を去ろうとしだした。

 祐斗、よく耐えたな。

 俺はここまでの間、最悪の行動へと移さなかった祐斗へ視線を向けた。いまだ、怨恨の消えない瞳を向けてはいるが、この場では耐えれているように見える。

 そうだ、このまま速く出て行け。

 だが、俺の想いは届かなかった。

 ゼノヴィアは一人の少女に気づいた。

「――まさか、『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 彼女たちが立ち去るには、まだ時間が必要そうだ。そして、このままならきっと、もう普通に帰るのは無理だろう。祐斗と、イッセーの雰囲気も変わってくるのがわかる。

 俺は静かに、目を閉じた。これから起こるであろう面倒事から、目を逸らしたかったのかもしれない。

 




活動報告で、原作からのヒロインを募集しています。他作品は含みませんが、暇があったらお願いします。一応、期間としては来週いっぱいまでと考えています。

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