ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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そろそろ朱乃さんや小猫ちゃんにも手を出したいが多分4巻くらいの内容から本気を出してくるんじゃないだろうか。


2話

「狙え! 兵藤を狙うんだ!」

「うおおおおおっ! てめぇら、ふざけんなぁぁぁぁ!」

 叫びながらも剛速球をよけるイッセー。

 球技大会が開始され部活対抗戦も開始されたわけだけど、開始されてから一度もイッセー以外は狙われていない。 

 まあ、理由は簡単なんだけど。

 部長――駒王学園の二大お姉さまの一人。大人気の学園のアイドル。

 朱乃さん――部長と同じく二大お姉さまの一人。学園のアイドル。

 アーシア――二年生ナンバー1の癒し系天然美少女。しかも金髪。

 小猫――学園のマスコット的なロリロリ少女。

 祐斗――全男子の敵だが、当てたら女子に恨まれる。

 以上、イッセーの分析から。

 

 結果だけ言おう。いま挙げた人たち全員当てられない。

 

 ちなみにイッセー――なんであいつが美男美女ばかりのオカ研にいるのかわからない。当てても問題ないだろう。いや、むしろ当てるべきだ。ちくしょう、死ね。あいつに照準を合わせろ。いいか、狙うのは眉間だ。そこ以外は当たり判定がないと思え! 死ね、死ぬんだ野獣!

 さっきから観戦中の生徒や試合相手の野球部の部員が揃ってそんなことを言い放っている。

 こちらも結論を言おう。むしろ当てろ。

 

 そういうことで、イッセーだけが狙われている。

「カイト! ふざけてないでおまえも参加しろよ!」

 イッセーのためにナレーションをつけてみたが、気に入らなかったらしい。

「今日のおまえはなんなんだよ! いつもはそんなふざけたりしないだろ!」

「いや、なんか祐斗元気ないから少しでも楽しい時間にしようかと」

 飛んでくるボールを避け続けるイッセーの側まで寄り、そう呟く。

「……そうだな。じゃあいっちょ俺も――」

「頑張って避けろよ」

「いや、そうじゃないだろぉ!?」

 イッセーの頬を掠めボールが通過していった。

「クッソ、惜しかった! あと少しで殺れたってのに!」

 相手チームが悔しがるのがこっちまで伝わってくる。

 だが観戦中の女子生徒は全く違う感想を口にした。

「ちょっと! 月夜野くんに当たったらどうするのよ!」

「あの綺麗な顔に傷でもついたら私野球部のマネージャー辞めるから!」

「いくら兵藤が隣に居たからって、投げるなんてありえない!」

 ……内容は、俺を擁護するものだった。

 なんで俺まで祐斗のように扱われないといけないんだ……。

「カイト! おまえもか! 結局女子はイケメンに弱いのかよぉぉぉぉっ!!」

「俺に聞くな! そういうのは祐斗に聞けよ! 第一、俺は女子全般とほとんど話したことないんだぞ?」

「……なのにあの人気かよ」

 イッセーが落ち込んでいくのがよくわかる。そんなに女子に擁護してもらいたいのか? 俺はあまりいい気分じゃないぞ。

「イッセー、とりあえず俺の横に居ればボール投げられないんじゃないか?」

「そ、そうか。っていやいや! イケメンの施しは受けねぇ! 俺は俺の力で立ち向かってみせる」

 俺の提案を断り、避け続けることを決めたイッセー。そうか、イッセー……おまえ――

「責められると燃えるタイプだったんだな……」

「んなわけないだろ!!」

 と、俺たちの会話になのか、イッセーに当たらないことなのか。それとも両方なのか。この状況に嫌気が差した一人の野球部部員がボールの照準をイッセーから外した。

 そして標的を祐斗に変えたのだ。

「クソォ! 恨まれてもいい! イケメンめぇぇぇぇ!」

 おまえたちのイケメンに対するその憎悪はなんなの!? イッセーも最初っから祐斗のこと「このイケメン!」「イケメンのくせに」とか言ってたし。

 でも、祐斗ならそんなボール当たるわけが――祐斗は、ボールを見ていなかった。遠い目をして、試合自体に集中していない。

「何ボーっとしてやがるんだ!」

 ボールと祐斗の間にイッセーが滑り込む。あいつの仲間想いなところは嫌いじゃない。イケメンイケメン貶してるのに、こういうときに限って一番速く動いてるんだからさ。

 祐斗を庇い、体を張ってボールを受け止めようよするが、その軌道が大きくズレる。フォークボールのように降下していく球体は、勢いだけは衰えず、イッセーの下腹部へ――

 ドォォォォォンッ!

「――ッ!?」

 イッセーから言葉にならない悲鳴が上がる。

 直撃したボールが転がり、俺の足元で止まった。。

 いまも眼前では悶え苦しむイッセーの姿。そこに駆け寄る部員のみんな。

 俺も遅れながらその場に辿り着く。

「ぶ、部長……。た、玉が、俺の……」

「ボールならあるわ! よくやってくれたわね、イッセー! さて、私のかわいいイッセーをやった輩を退治しましょうか! カイト!」

 ボールを持ったまま来た俺に部長が命令を下す。目を見ただけでわかった。そこには確かな意志が宿っている。確かに感じたぞ、「殺れ」と。

 目がマジだった。相手チームもバカなことをしてくれた。

 でも、イッセーの言った玉って絶対意味違うよね。

「あらあら、部長。そうではなくて、違うボールが大変なことになっているようですわよ?」

 朱乃さんがイッセーの現状を再確認させる。

 ようやく事態を理解したのか、部長はアーシアへと叫んだ。

「アーシア! あなたの力が必要よ! 悪いのだけれど、物影で回復してあげてちょうだい!!」

「は、はい。イッセーさん、一体どこをケガしたんですか?」

「アーシア、それを聞くな。とりあえず、大事なところだ」

 俺がそれだけ言うと、アーシアは簡単に納得してくれた。よくわかってはいなかったみたいだけど。

「小猫、人の見えないところまでイッセーを連れてってあげてね」

「……了解」

「ぶ、部長、お、お役に立てなくて……」

「いいのよ、イッセー。あなたはよくやってくれたわ。後は私たちに任せなさい」

 聞き終えたイッセーは小猫に襟元を摑まれ護送中よろしくずりずりと運ばれていった。

 完全に荷物扱いだ……。

「さあ、始めるわよ! イッセーの弔い合戦!」

 俺たちはここ最近で一番のチームワークを発揮し、ものの数十秒で相手チーム全員を外野へと送り込んだ。

『オカルト研究部の勝利です!』

 俺たちの勝利を決定付けるアナウンスが耳に届いた。

 でもこの試合中、祐斗は数回しかボールに触れることをしなかった。

 

 

 

 パン!

 振り出した雨に消されることのない音が響く。見ると、祐斗が部長に叩かれていた。

「どう? 少しは目が覚めたかしら」

 部長の声には怒気が含まれている。お怒りのようだ。

 試合中も何度か怒られていたが、いまと同じ。叩かれても無関心で、無表情のままだった。

 祐斗、おまえがいつも見せる笑顔はどこにいったんだ?

「もういいですか? 球技大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね? 少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです」

「木場、おまえマジで変だぞ?」

 イッセーの問いに、祐斗は冷たく返す。

「キミには関係ないよ」

「俺だって心配しちまうよ」

 それでもイッセーは退かなかった。だが、祐斗は苦笑した。

「心配? 誰が誰をだい? 基本、利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど? まあ、主に従わなかった僕は今回は悪かったと思っているよ」

 なんだろう、この感じは。このままだと祐斗は……。

「チーム一丸でまとまっていこうとしていた矢先でこんな調子じゃ困る。この間の一戦でどんだけ痛い目に遭ったか、俺ら感じ取ったことだろう? お互い足りない部分を補うようにしなきゃこれからダメなんじゃねぇかな? 仲間なんだから」

「そうだな、前回の一戦はダメダメだった。だからこそ、仲間同士で協力することの大切さもわかっただろ?」

 見かねた俺も参戦する。

「仲間か。キミたちは熱いな……僕はね、ここのところ仲間なんてことじゃなく、基本的なことを思い出していたんだ」

 祐斗は突然、そんなことを口にしだした。

「基本的なこと?」

「ああ、そうさ。僕が何のために戦っているか、を」

 祐斗の強い決意を秘めた表情。その表情が、初めてアンラ・マンユと出会ったときの俺と重なる。

 オーフィスと出会う少し前の俺と、いまも顔を覗かせる俺の一面とそっくりな表情。

「部長のために、おまえは戦ってるんだろ?」

 イッセーは自分が思っていたことを発した。俺も、そう思っていた。祐斗が、俺と似た表情をするなんて思っていなかった。

 俺とイッセーの思いは、即否定された。

「違うよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー――。それを破壊するのが僕の戦う意味だ」

『俺は必ずおまえを殺す! 俺の仲間を全員殺したおまえだけは、必ず――』

 あの日、死にかけの身でそう叫んだ俺の姿が思い出される。

 憎悪に歪んだ、いや。憎悪一色に塗りつぶされた瞳。もう遠くなった過去。あの頃、他人からは俺はこう見えていたのか……。

 そうか、祐斗。いつも笑って周りを見渡していたおまえの姿は、どれも本物であって、本物じゃなかったんだな。

 このとき、俺は初めて、祐斗の本当の姿を見たんだと思う。でも、その姿がどうしても俺と重なり、頭から離れなかった。

 




次回から少しずつカイトの過去もあきらかになっていく……かも

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