ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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8話

 怒涛の十五連撃がライザーを捉え、斬り裂いていく。

 手足は千切れ飛び、彼方へと落ちていく。

「ぐ、おおおおッ!!」

 ライザーから苦悶の声が漏れる。

 不死身だったとしても、エストの力が込められてれば多少のダメージはあるだろ。

 俺は最後の一撃をライザーに叩き込み、屋上から突き落とす。

「部長、遅くなりました。それで、イッセーと祐斗をここに送ったのは俺で、その……すいません」

 部長は残ったイッセーをアーシアに治癒させながら頭を振る。

「謝ることはないわ。二人のおかげで、まだ私は戦える。イッセーと祐斗があの時来てくれてなかったら、もうこのゲームは終わっていたかもしれないわ」

「……それ聞いたら、祐斗喜びますよ、きっと」

「ええ。このゲームが終わったら、みんなになにかしてあげないと」

「その必要はないと思いますけどね。皆、あなたのために戦ったんですから」

 イッセーに目を向けると、既に意識は失っているのがわかった。アーシアのおかげで外傷は目立ってないが、もう時期リタイアだろう。

「部長、ライザーとは俺が戦います。あなたがとられたら負けは確実だ。だから、俺がやります。アーシアは、もういい。出来る限り遠くに行っていてくれ」

「ダメよ。ライザーは私が討つわ。イッセーと祐斗のためにも」

「……ダメです。部長は、ライザーの『女王』に備えてください。朱乃さんが負けた以上、必ず援軍に来ます。それに備えて、後ろに下がっていてください」

 俺はそれだけ言い残し、一人前に歩いていく。後ろから部長の声が聞こえるが、気にはしなかった。

「さって、これで終わってくれれば大いに楽なんだが……」

 下を見渡すと、千切れ飛んだ手足は燃え尽き、すでに無くなっていた。

 変わりに、ライザーの身体が燃え上がりそこから手足が再生される。

「なるほど……炎の中から蘇る、か。不死鳥ってのも伊達じゃないか」

 ライザーは再生を終え、俺を視界に捉える。

「この人間がぁ! その程度の力で俺を倒せるわけないだろう! いいか、俺を倒すには神をも屠る一撃でも用意してくるんだなぁ!」

 俺は無言のままライザーを視線に留め続ける。

 無傷なはずがない。

 大分威力は弱いが、確かに聖剣としての力が<魔王殺しの聖剣>には宿っているのだから。

 ただ、どうやら俺が未熟なせいか、聖剣として力を振るうことはまだできない。

 できて多少の聖なる力を剣に宿せる程度だ。

「貴様のような人間如きが、俺をここまでイラつかせるなんてあってはならない! このゲームの勝者はこの、ライザー・フェニックスだァッ!」

「そうかよ、ならさっさと俺に勝ちに来いよ。人間如きに斬り刻まれた焼き鳥さん」

「この人間風情がぁ!」

 俺の発言に、ライザーは相当頭に来たみたいだ。

 背中から炎が這い出て、翼の形を造っていく。その炎翼を羽ばたかせ、屋上へと舞い戻ってきた。

「なあライザー? あまり体調がよくないんじゃないか? さっきの剣技、効いてるんじゃないかな」

「……馬鹿を言うなよ。この不死鳥であるライザー、人間如きの攻撃で屈することなどなぁい!」

 自身満々にそう言いきる。

 プライドがあるのか、疲れた様子を見せない。

 聖剣で斬ったというのに再生してくる不死身さは凄いけど、そこが限界だろ。さっきから口ばかりで、攻撃してこない。ライザーの性格なら、すぐにでも攻撃してくるだろうに。

 聖剣ってのは、悪魔に毒だからな。多少なりとも食らえば、支障をきたす。あいつも、やっぱ悪魔だな。

「ライザーさま、只今戻りました」

 ライザーの横に、『女王』が降り立つ。朱乃さんを負かしてきた相手か。

「あれが残りの戦力ですね。私はどういたします?」

「いい、下がっていろ。あの人間は俺が直々に潰す」

「わかりました」

 ライザーの『女王』は後ろに下がる。

 一対一か。いいぜ、乗った!

「ならライザー、始めよう」

「いいだろう、燃やし尽くしてやる」

 

 

 俺は正面を見据え、ライザーへと駆け出す。

「またか、また正面から突破しようってのかぁ! ふざけるなよ!」

 ライザーは怒りをあらわにしながら、火炎球をいくつも作り出しこちらに向けて放ってくる。

 縦横無尽に動き回り、俺に捉えさせないよう絶妙な距離を置く。

「これはちょっと、一本じゃ辛いか?」

 左手に<真実を貫く剣>も展開し、一度立ち止まる。

 それを好機を見たのか、ライザーは三つ程の火炎球を俺に襲撃させる。

「予想通りだ。まずは炎が欲しいんだよ」

 向かってくる火炎球全てに標準を合わせ、両手の剣を交互に振るう。

「絶剣技、四ノ型――焔切り!」

 縦に、横に振るった闇色と白銀の剣が炎を打ち払うと共にその炎を宿す。

「クソッ、なんでさっきから俺の炎が消されるんだ!」

「そんなに焦るなよ、弱々しい炎を消されたくらいで」

「き、貴様なんぞに、俺の邪魔をされてたまるか、俺は、俺はーッ!」

 途端、残っていた全ての火炎球が俺に殺到する。

 だが、一つ一つが揺れながら合間を取っているものだから、焔切りでは全てに対応できない。

 その合間にも、どんどん距離が詰まってくる。

「……しょうがねぇ、エスト、レティシア、剣を短剣に変えろ!」

 握る剣たちの刀身が縮んでいく。

 縦横無尽に動くなら、この剣技だ。

 炎が眼前に迫り、視界を赤く染める。さあ、全部斬ってやるよ!

「双剣技――<大蛇>!」

 軌道の読めない斬撃が幾重にも展開され、一瞬の内に火炎球が散っていく。

 そのまま足を止めずに、最後の火炎球は跳躍してかわす。足に力を込め、飛距離を伸ばす。

 そして――

「たどり着いたぜ、ライザー!」

 再びライザーの元へと迫る。

「う、おおおおおお!!」

 すぐさま剣を元の長さに戻し、構えをとる。

「絶剣技、初ノ型――紫電!」

 突き出された白銀の剣がライザーの肩を斬り裂く。

 そこで一つの事実に気づく。

 再生が、遅い! 

 先程のような再生力を見せず、裂かれた肩は治っていない。

 少しでも、エストの力は効いていたみたいだな。動揺し、ほんの少し。隙とも言えない間を見せたライザーに追撃する。

 決めるには、ここしか無い!

「さあ、終幕だ!」

 俺は<真実を貫く剣>を手から離し、<魔王殺しの聖剣>だけでライザーを狙う。

「絶剣技、破ノ型――烈華螺旋剣舞・十三連!」

 二度目の使用で身体が悲鳴を上げる。だが、もう構ってる余裕はねぇ!

「お、俺はまだ負けられないんだよォォォォォォッ!! ユーベルーナァッ!」

 ライザーが女王の名を叫ぶ。今更女王に攻撃させたって、遅い! だが、白銀の剣が斬ったのは、ライザーの『女王』だった。

「なに?」

 まさかあのヤロウ、自分の駒を犠牲に――俺が背後を振り返ると、ライザーが今日最大の炎を放出し、部長に向けて放ったところだった。

「リアス、君の部員は強いよ。俺も、もうこの炎を作るので限界だよ」

 俺は必要以上に部長と距離を開けて戦っていた。

 ライザーが、部長を狙わないように。女王の邪魔がなければ、この作戦はうまく機能したはずだったんだけどな……。

 いまはこの距離が、仇になった。

 もう、間に合わない。

 紅蓮の炎が、部長を包み込んだ。

『ライザー・フェニックスさまの「女王」、リタイア。リアス・グレモリーさま、リタイア』

 アナウンスが響く。

 そうか、俺たちは――

『このゲームは、ライザー・フェニックスさまの勝利です』

 負けたのか。

 

 




ライザーさんの出番は無い!
いいところの無かった話となりました。

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