ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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5話

 深夜十一時四十分頃。

 俺たちオカルト研究部の部員は、旧校舎の部室に集まっていた。

 みんなリラックスして、ゲームに備えている。

 アーシアはシスターの格好をしているが、他の全員は学生服姿だ。俺としては黒い服にしたかったんだけど、部員として参加する以上、学生服に控えておいた。残念……。

「皆さん、開始十分前です。ここの魔方陣から戦闘フィールドへ転送されます。場所は異空間に作られた戦闘用の世界ですので、どんなに派手にやってくれても構いません。存分に力を発揮してください」

 グレイフィアさんがそう告げる。 

 そうか、悪魔ってそんな技術もあるのか。最近の悪魔は近未来的な技術をお持ちだこと。京都の方もそうだけど、いい技術だよなぁ。俺が感心しているところ、イッセーが口を開いた。

「あの、部長。もう一人の『僧侶』はどうするんですか?」

 あ、まだ部長の眷族って居たんだっけ? 俺はよく知らないんだよな。でも、訳ありかな。

 イッセーの質問に部室の空気がガラリと変わったのがわかる。俺たち新メンバー以外のみんなは、いい雰囲気ではない。誰も、イッセーと目を合わせようとしないのだ。

「残念だけど、もう一人の『僧侶』は参加できないわ。いずれ、そのことについても話すときがくるでしょうね」

 部長がそう言う間も、やはり一度も目線を合わせることは無かった。

「イッセー、わけありだろう。この話は、いまはここまでにしておこう。気になるかもしれないが、居ない奴のことより、このあとのレーティングゲームのことを考えよう」

 俺は小声でイッセーに伝える。

 イッセーはイッセーで思うことはいくつもあったようだが、ここでは控えてくれた。

 重たい空気の中、グレイフィアさんが口を開く。

「今回の『レーティングゲーム』は両家の皆さまも他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります。さらに魔王ルシファーさまも今回の一戦を拝見されておられます。それをお忘れなきように」

 魔王さまが直々に観戦か。もしかしたらゲームの後に会えたりするのかね? まあ、人間の俺は相手にされないかな? 最悪、正体を明かせば多少の話はできるか?

 でもなんで魔王さまが直々に来るんだろうな。部長とライザーが上級悪魔とは言え、魔王が見に来るか?……グレイフィアさんは部長のこと『お嬢さま』って呼ぶし、もしかして魔王さまって、部長の…………いや、まさかな。

 部長は部長で驚いている様子だった。

「お兄さまが?……そう、お兄さまが直接見られるのね」

「部長、いま魔王さまのことをお兄さまって……? え? 俺の聞き間違いです、よね……?」

 イッセーが歯切れ悪く質問する。

 だが祐斗がさらりと答える。

「聞き間違いじゃないさ。部長のお兄さまは魔王さまだよ」

 その後の話で、イッセーが驚いたり、いまの魔王さま方の経緯を聞いたり。天使、堕天使、悪魔の三すくみの中じゃ悪魔が一番力がなかったりと、思わぬ話へ発展していった。

「そろそろ時間です。皆さま、魔方陣のほうへ。なお、一度あちらへ移動しますと終了まで魔方陣での転移は不可能となります」

 なるほど、次帰ってくるのは俺たちが勝ったときってことか。もちろん、勝負がつけば帰ってくるんだけど、負けて帰るってのはかっこ悪いだろ?

 絶剣技を全て習得してない俺にとって、今回の修行はいい修行になった。そのお披露目にも最適な相手だな、ライザー!

 俺は部長、眷族のみんなに続いて魔方陣に足を踏み入れる。途端、光を発し、俺の視界を包み込んだ。転移が始まったのだろう。

 

 

 転移した先は、いつもと変わらない部室だった。窓の外の景色には、学校の校舎が見える。

 どうやら、うちの学校を異空間に作ったらしい。改めて壁を見てみると、傷まで細かく再現されていた。いや、無駄なところに懲りすぎでしょ……。

 俺が悪魔の技術力に半ばあきれていると、グレイフィアさんからアナウンスが入った。

 どうやら、レーティングゲームの審判役をグレイフィアさんが行うらしい。

 そして俺たちの本陣がこの旧校舎、オカルト研究部の部室。ライザーの本陣は新校舎の生徒会室。『兵士』のプロモーションは本陣の周囲まで行けば可能とのことだ。

 イッセーを上手く使うにはプロモーションは必須か。それと同時に相手もこっちに向かってくることになるな。その足止め、もしくは撃破も必須。相手の『兵士』にプロモーションされたら面倒だからな……。

 俺とイッセー、祐斗が動いて手始めに潰すべきかな。

「カイトくん、通信機ですわ。耳に付けて行動してくださいね」

 俺がそんなことを考えていると、朱乃さんがそう伝えてきた。どうやらみんなにはもう配ったらしく、俺は考え込んでいて聞いてなかったようだ。

「すいません、朱乃さん。了解です」

 俺は朱乃さんか通信機をもらい耳に付ける。

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』

 鳴り響く学校のチャイム。

 多分、これ以降はでることの無いであろう、俺の最初の『レーティングゲーム』が始まった。

 

 

 

 

「と、いうことで始まったんでとりあえず俺と祐斗で相手の『兵士』を片っ端から撃破してきていいですか?」

「待ってちょうだい。確かに『兵士』は倒しておきたいところなのだけれど、作戦があるからそっちを優先させて」

 部長は祐斗に学校の地図を広げさせ、話始めた。

「とりあえずは、祐斗と小猫、カイトは森にトラップを仕掛けてきてちょうだい。予備の地図を持っていって、設置場所に印もつけてきて。設置完了まで、他のみんなは待機よ」

 とのことなので、俺たちは各自行動を開始した。その後、無事完了した俺は新しい指示により、祐斗と行動することに決まった。

 イッセーは小猫と体育館へ。あそこが重要な場所になるそうだ。

 アーシアは部長と待機。朱乃さんは朱乃さんで重要な役割を担っている。

「さて、私のかわいい下僕悪魔たち。準備はいいかしら? もう引き返せないわ。敵は不死身のフェニックス家のなかでも有望視されている才児ライザー・フェニックスよ。さあ! 消し飛ばしてあげましょう!」

『はい!』

 全員の声が重なると同時に、駆け出す。

 俺と祐斗、イッセーに小猫は旧校舎を離れる。途中、イッセーと小猫は体育館方面に向かっていき別れた。

 それを見送った俺たちは、程なくして相手を見つける。

「さあ祐斗。俺とおまえの剣技、ライザーの眷族に見せてやろうぜ!」

「ああ、もちろんさ。僕たちを放っておけなくさせれば、相手は部長のところへは行けないからね」

「おまえって心まで『騎士』なのな!」

 俺と祐斗は笑みを浮かべながら剣を握った。目標は眼下の女性三名。

 俺たちは同時に、敵目がけて走り出した。

 

 何度目かの甲高い金属音が鳴り響いた。

「これで最後っと」

「思ったより呆気なかったね」

 俺と祐斗は大して苦労せずに敵の撃破に成功した。

 朱乃さんの張ってくれた結界の中に迷い込んだ敵はこれで最後だろう。

『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、リタイア』

 直後、グレイフィアさんのアナウンスが聞こえた。

 程なくして、再び、

『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、「戦車」一名、戦闘不能!』

「だってさ、祐斗。イッセーたちも上手くいったみたいだな」

「うん、そうみたいだけど……」

 祐斗は冴えない顔をしていた。

「どうした? 嬉しくないのか?」

「いや、嬉しいんだけど、イッセーくんが女性の衣類を消し飛ばす技を習得して、使ったらしい……って部長が」

 ……。言葉が、出なかった。なにやってるんだイッセー……。

 俺は無言で、祐斗の肩に手を置いた。

「まあなにあれ、こっちは被害を出さずに作戦成功したんだ、ここから先も――

『リアス・グレモリーさまの「戦車」一名、リタイア』

 俺の言葉は途中でアナウンスによって遮られた。

 だが、俺はそんなことどうでもよかった。

 ――小猫が、やられた?

 


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